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無線LANルータ編
第12回:ファームウェアの更新


 ファームウェアは、ルータやアクセスポイントの内部で使われるソフトウェアのこと。普段使用している際には無縁と言えますが、不具合の修正などで更新の必要がある場合もあります。


ルータが内蔵するファームウェア。新機能や不具合時には更新の必要性も

図1:PCの内部
 無線LANルータやアクセスポイントは、見かけは普通の機器に見えますが、内部的にはPCに近いものがあります。PCを使うためには、OSやアプリケーションをインストールしなければならないのと同様に、無線LANルータなどでもやはり専用のソフトウェアをインストールする必要があります。

 図1と図2はPCと無線LANルータの内部を比較したものです。PCを立ち上げる場合、まずOSやプログラムをHDDから読み出してメモリに格納し(1)、CPUはこのメモリにアクセスしながら処理を進めます(2)。処理の中でネットワークにアクセスしたり(3)、HDDへアクセスすることもあります(4)。

 一方の無線LANルータですが、内部にOSやプログラムを格納した数十~数百MBのフラッシュメモリを搭載しています。電源が入るとフラッシュメモリからOSやプログラムをメモリにロードして(5)、以後CPUはメモリをアクセスしながら処理を進め(6)、必要に応じて有線LANや無線LANをアクセスするといった具合です(7)。

 無線LANルータにはチップセットやHDDはありませんが、これはコストダウンや小型化、起動の高速化などを狙ったもので、本質的には大きな差はありません。強いて言えば、1度起動したあとはCPUからフラッシュメモリにアクセスすることは原則としてないという点が唯一の違いでしょうか。


図2:無線LANルータの内部

 このフラッシュメモリに格納されているOSやプログラムを「ファームウェア(Firmware)」と呼びます。ファームウェアは、基本的にはメーカーが工場出荷時にインストール作業を行なうので、ユーザーが意識する必要はありません。ただ、出荷後に問題が発見された場合や、プロバイダーの新サービスに対応して新機能を追加した場合などは、ファームウェアを更新して本体を対応させるケースがあります。

 ただ、そのためにルータやアクセスポイントをメーカーに発送するといった作業は、ユーザーとメーカー双方にとって、作業や金銭的な面でも負担が少なくありません。そこで、メーカーはファームウェアをWebサイトなどで公開し、ユーザーはこれをダウンロードして自分で更新を行なうのが一般的です。

 実際の更新ですが、まず最初にアクセスポイントで現在使われているファームウェアのバージョンを確認します(画面1)。この例では、「Version 1.40」が現在適用されているバージョンになります。次にメーカーのWebサイトに移動し、公開されている最新バージョンを確認します(画面2)。このケースでは、最新バージョンも同じくVersion 1.40ですので、更新の必要はないことがわかります。


画面1:無線LANルータのシステム情報画面 図2:メーカーのファームウェア情報ページ

図3:ファームウェア更新作業用の画面
 ただ、最新バージョンが公開されていた場合には、更新内容を確認して必要があるのならばダウンロードを行ないます(これはクライアント側PCにダウンロードします)。その後、ルータの管理画面の中に用意されている「ファームウェア更新」(画面3)から、ダウンロードしたファイルの場所を指定すると、これをルータが読み込み、更新が行なわれるという仕組みです。

 PCでも、OSやアプリケーションの更新が必要なのと同様、ルータなどに搭載するファームウェアも更新が必要になる場合があります。上述の通り、手順は簡単なのですが、Windows以外のOS環境ではOSに対応した更新ファイルが用意されていない場合もあるなど、作業に手間がかかる場合もあります。また、定期的に手動で更新をチェックするのを忘れる場合も少なくないでしょう。

 こうしたこともあり、最近ではルータ単体でファームウェアを更新できる機能を持ったり、定期的に自動更新チェックを行なう機能が入ったりした製品も増えてきています。

 なお、ファームウェアの中にはベータ版というものがあります。これは評価中のバージョンで基本的にメーカー保証はありません。どうしても必要な機能や修正がある場合を除いて、正式版のみを利用する方が良いでしょう。


関連情報

URL
  無線LANルータ編 索引ページ
  http://bb.watch.impress.co.jp/cda/koko_osa/17754.html

2007/07/09 10:57

槻ノ木 隆
 国内某メーカーのネットワーク関係「エンジニア」から「元エンジニア」に限りなく近いところに流れてきてしまった。ここ2年ほどは、企画とか教育、営業に近いことばかりやっており、まもなく肩書きは「退役エンジニア」になると思われる。
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