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無線LANルータ編
第24回:スループット


 「スループット」という用語はいろいろな場所で用いられますが、ネットワークの世界では実際の転送速度を示す場合に使われます。


ルータ製品の速度を示すスループット

画面1:筆者宅FTTH回線のスループット
 スループットという用語は、ネットワークの世界では転送速度を示すものです。例えば、IEEE 802.11gの転送速度は54Mbps(約6MB/秒)となります。ただ、これは理論上の数値で実際の数値とはイコールにならないことがあります。

 ADSL接続サービスを例にあげると、48Mbpsや50Mbpsと言った速度を謳うコースもありますが、実際に接続すると5Mbps程度だったというケースも珍しくありません。ADSLの場合、回線収容局から自宅までの距離、それに経路上にある電話線や周囲の環境によって大きく左右されるからです。こうした場合、公称値を50Mbps、実効値を5Mbpsとし、スループットは後者の5Mbps側を指すケースが多いです。

 「では、FTTHならば問題ないのか」についてですが、画面1で筆者宅で利用しているBフレッツ ニューファミリータイプの計測結果(計測サイト)を示しました。ここでは、ダウンロードが73Mbps、アップロードは45Mbpsというスループット結果が得られました。

 こうしたスループットの話は回線サービス以外にも、ルータ製品にも言えます。例えば、図1のような無線LANルータのケースを考えます。無線LAN機能以外にLANを4ポート、WANを1ポートを持った、一般的な構成の製品です。


図1:各パーツごとのスループット

 図1の製品の場合、有線LANで繋いだ機器間は100Mbpsの通信が期待できます。これは途中にあるスイッチングハブが100Mbpsのスループット性能を持っているためです。一方で、無線LANと有線LANのそれぞれに接続した機器で通信しようとした場合、無線LANの54Mbpsという速度がネックになり、通信スループットは最大でも54Mbpsになってしまいます。

 ただ、有線LANで接続した場合も、インターネットなどに接続するためのWAN回線を使用する場合は間にルーティングエンジンの性能が最大70Mbpsとなっているため、実際の速度は70Mbpsが限界になります。従って、図1の製品では、スループットは70Mbpsということになります。
 こうしたスループット数値は、製品によって数字を例示している場合もあります。例えば、コレガの「CG-WLBARGSX(製品URL)」は1万円を切る無線LANルータですが、実効スループットは55Mbps、83Mbps、97Mbpsの3つが上げられています。

 これは、図1の製品例に沿って言えば、「ルーティングエンジンの性能が最高83Mbps」「スイッチングハブの性能が最高97Mbps」「ルーティングエンジンにPPPoE処理を行なわせた場合が最高55Mbps」というようになります。従って、ADSLでは十分と言える数値ですが、FTTHでは環境によっては少し心許ないかもしれない、という感じになります。

 スループットの数値は、メーカーによって測定方法も異なるため、ユーザーの環境で同じ数値が出るとは限りません。メーカーでは製品の最大性能がアピールできるよう計測することも少なくないため、メーカー公称値は、その製品の最大性能値と考えておけばよいでしょう。

 パッケージに書かれているスループットが70Mbpsだったとすれば、ユーザーの環境で70Mbps出るとは限りませんが、条件はメーカーによって違うものの、実際にテストして出た数字であることは間違いないので、購入する際の目安の1つにはなります。


関連情報

URL
  無線LANルータ編 索引ページ
  http://bb.watch.impress.co.jp/cda/koko_osa/17754.html

2007/11/05 11:05

槻ノ木 隆
 国内某メーカーのネットワーク関係「エンジニア」から「元エンジニア」に限りなく近いところに流れてきてしまった。ここ2年ほどは、企画とか教育、営業に近いことばかりやっており、まもなく肩書きは「退役エンジニア」になると思われる。
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