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無線LANルータ編
第26回:無線LANの高速化技術


 IEEE 802.11a/g/n以外にも、無線LAN製品の中には独自の高速化や通信距離の延長を図った技術に対応した製品が多数登場しています。


独自の技術を使って無線LANの転送速度や通信距離を向上

 現在市場に出ている製品が対応するIEEE 802.11a/b/g/nには、大まかに言って以下のような通信性能を持っています。

・IEEE 802.11b :公称値11Mbps、実効値6Mbps前後
・IEEE 802.11a/g:公称値54Mbps、実効値27Mbps前後
・IEEE 802.11n :公称値54~300Mbps、実効値は対応速度により異なる。現在はドラフト

 これらは規格化されていますが、一方で無線LANチップベンダーが独自に拡張している技術もあります。例えば、米Atheros Communicationsの無線LAN高速化技術「Super A/G」。過去に清水理史氏が実力の検証を行なっていますが(記事URL)、これは要するに通信パケットの圧縮や待ち時間の最小化などの細かな技術を積み重ねたものです。それ以外にも、各社から同様の技術やMIMOに対応した製品が登場していました。

 こうした拡張では、転送速度の向上以外にも、通信距離の延長にも役立つ場合がほとんどです。というのも、一般論として転送速度が上がるのは、信号の強度が十分に高い場合だからです。


図1:信号強度と転送速度の関係

 この信号強度と転送速度の関係を図1に簡単にまとめました。図にあるように、要するに信号の強度が低下すると、大量のデータが送信されてもノイズの影響を受け、エラーによる再送が発生してしまうため、転送速度を落とさなければ満足な通信ができなくなってしまいます。そして、ある程度まで信号強度が落ちてしまうと通信ができなくなってしまうわけです。

 上述の「Super A/G」などは、信号の電波出力自体は変更していませんが、有効に使用できる信号強度を増やすことで、実質的に信号の電波出力を増やしたのと同様の効果が得られています。

 また、物理的に信号の電波強度を強めた技術としては、バッファローの「AirStation Booster」があります。これは、信号の電波出力を引き上げることで到達距離を伸ばすというものです。そのほか、IEEE 802.11a/b/gではサポートしていない0.25/0.5/3Mbpsの転送速度に追加対応することで「接続がきれにくい」ことを目指したものが、Athelosの「XR」になります。

 なお、こうした技術の恩恵を受けるには一部を除けば、ルータとクライアント側の双方が「Super A/G」といった各技術に対応している必要があります。


関連情報

URL
  無線LANルータ編 索引ページ
  http://bb.watch.impress.co.jp/cda/koko_osa/17754.html

2007/11/19 11:03

槻ノ木 隆
 国内某メーカーのネットワーク関係「エンジニア」から「元エンジニア」に限りなく近いところに流れてきてしまった。ここ2年ほどは、企画とか教育、営業に近いことばかりやっており、まもなく肩書きは「退役エンジニア」になると思われる。
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