プリントサーバー機能とは、NAS搭載のUSBポートを使って、USB接続型プリンタをネットワーク全体で共有できるようにするものです。また、FTPサーバーは、FTPプロトコルを使ったデータを送受信できる機能になります。
■ NASを介してプリンタをネットワーク共有する「プリントサーバー機能」
前回説明したメディアサーバー機能は(記事URL)、NASに付加価値を与える性質のものでした。そして、今回紹介するプリントサーバー機能とFTPサーバー機能も同様です。こちらはメディアサーバー機能が盛り込まれる以前から、広く採用されていました。
まず、プリントサーバー機能についてです。オフィス用プリンタなどでは現在、ネットワークに最初から対応する製品が増えてきましたが、安価な製品の場合はネットワーク対応が省略されているケースもあります。利用するPCが1台ならば、そのPCにプリンタを接続すれば良いのですが、複数台のPCがある環境でPC1台にプリンタ1台を用意するわけにもいきません。
だからといって、印刷のニーズが出るたびにプリンタを台車で運んでいくのはスマートさに激しく欠けます(笑い話のようですが、過去にはこうした運用方法も現実にありました)。もちろん、こうしたことをしなくても、どれか1台のPCにプリンタを接続し、これをネットワークで共有させることで(図1)、すべてのPCがプリンタを利用できるようになります。
|
図1:PC経由でプリンタ共有
|
この方式は便利なのですが、難点はプリンタを接続したPC(図1のプリントサーバーPC)を常時起動しておく必要がある点です。もちろん、ファイルサーバーなどがある環境であれば、これにプリントサーバーを兼用させてしまうのも手ですが、こうしたマシンがないと意外に「常時立ち上がっているPC」がないものです。
ところがNASにプリントサーバーの機能があれば、図2のような構成が可能になります。PCに比べるとNASの消費電力は小さいですし、プリンタのそばに設置することも比較的容易でしょう。小規模なオフィスとか自宅などでは、むしろこういう構成の方が便利かもしれません。
|
図2:NAS経由でプリンタ共有
|
|
画面1
|
この機能、USBポートさえ搭載していれば、後はファームウェア更新で対応も可能な場合もあり、製品発表時には未搭載でも後日追加されるケースもあります。例えば、バッファローの「HS-DHGLシリーズ」はプリントサーバー機能を当初持っていませんでしたが、「Ver.1.10」で同機能が追加されました(画面1)。
欠点を挙げるとすると、双方向通信に対応したものが少ない点でしょうか。プリンタは原則として「データを受け取って印刷する」ものですから、PC→プリンタの方向の通信ができれば問題ありませんが、最近の製品ではインクの減り具合をレポートしたり、印刷状態を常時知らせてくれたりといったレポート機能が充実したものが多く、逆方向の通信も少なからず存在します。また、最近流行の複合機も双方向通信が必要になります。こうしたケースでは、NASとは別に双方向通信に対応したプリントサーバーを導入するのが賢明でしょう。
もう1つのFTPサーバー機能は、NAS上のデータにFTPを使ってアクセスできるようにするというものです。ほとんどのNASはWindowsのファイル共有が主で、最近ではMacintoshに対応する製品も登場していますが、それ以外のOS(例えばLinuxとかUNIX系)や非x86系マシンのファイル共有には対応していません。
ハイエンドNASではUNIX/Linuxで使われているNFSというファイル共有をサポートしていますが、これはむしろごく少数です。そこで、未対応なクライアントはNASに直接接続できず、PCなどを介在してファイル転送を行なう必要があります。
しかしながら、NASにFTPサーバー機能が搭載されていれば、FTPを使ってファイルの転送を直接行なえるようになります。FTPはファイル共有よりも簡単に搭載できるので、この機能を持ったクライアントは非常に多く存在します。こうしたクライアントとの接続の便宜を図るための機能、と考えておけば良いでしょう。
■ URL
NAS編 索引ページ
http://bb.watch.impress.co.jp/cda/koko_osa/20269.html
2008/01/21 11:10
槻ノ木 隆 国内某メーカーのネットワーク関係「エンジニア」から「元エンジニア」に限りなく近いところに流れてきてしまった。ここ2年ほどは、企画とか教育、営業に近いことばかりやっており、まもなく肩書きは「退役エンジニア」になると思われる。 |
|