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スイッチングハブ編
第6回:Jumbo Frame


 Jumbo Frameは、ギガビット通信が可能な1000BASE-Tで利用されるようになった技術です。これを利用する際には、スイッチングハブを含め、接続機器のすべてがJumbo Frameに対応している必要があります。


フレームサイズを拡大して通信向上を図る「Jumbo Frame」

 最近はPC側でも10BASE-T/100BASE-TX/1000BASET-Tに対応した製品が増えてきました。スイッチングハブやNASなどでも、10BASE-T/100BASE-TX/1000BASET-Tに対応した製品と、10BASE-T/100BASE-TXに対応した製品の間で、価格差がなくなりつつあります。

 こうした状況ですと、「それであれば、1000BASE-Tで接続しよう」と考えが出てくるのは当然と言えるでしょう。NAS製品などでも、高速通信に対応するモデルでは160Mbps(=20MB/Sec)を超えるアクセス性能を持っており、最大100Mbps(=12.5MB/sec)の100BASE-Tではネットワーク自体がボトルネックになってしまいます(図1)。

 一方で、1000BASE-Tの場合ですと、帯域は1,000Mbps=125MB/secとなるので、上記のボトルネックは解消され、PCはNASのフルスピードである20MB/secの通信速度でアクセスが可能になります。(図2)。一昔前はともかく、最近ではNASをはじめとしたネットワーク機器の高速化が進んでおり、扱うデータ量も以前より増えていることから、1000BASE-Tが使える環境であれば、使ったほうが得策です。


図1:100BASE-TXの場合 図2:1000BASET-Tの場合

図3:データの構造
 ということで、1000BASE-Tを使いましょうで話が終われば良いのですが、実際に使っても「あまり速度の向上を感じない」というケースがしばしばあります。これは何に起因するかというと、フレームサイズが小さいという点になります。このフレームサイズのフレームというのは、ネットワーク上でのデータの塊と考えれば良いでしょう。

 例えば、あるWebサイトから大きな画像をダウンロードする場合、ネットワークの中ではこれを小さく分割し、さらにその前後にヘッダとフッタを付加した「フレーム」という状態にしてから転送を行ないます。このフレームのサイズは決まっており、ヘッダが14バイト、フッタが4バイトとなり、データは最小で46バイト、最大で1,500バイトになります。つまり、先ほどのヘッダとフッタを付加したフレームの合計サイズは64~1,518バイトということになります。

 このフレームにおける問題点はというと、現在の通信事情から見るとサイズが小さすぎるという点です。例えば、フルに転送を行なった場合、以下のようにデータが流れることになります。

10BASE-T (10Mbps = 1.25MB/sec) : 毎秒 823.5フレーム
100BASE-TX (100Mbps = 1.25MB/sec) : 毎秒 8234.5フレーム
1000BASE-T(1,000Mbps = 1.25MB/sec) : 毎秒82345.2フレーム

 800フレームや8,000フレームの処理は、最近のPCであれば容易と言えますが、流石に80,000フレームともなると無駄が多すぎます。これは、上述のようにフレームサイズが小さすぎるため、ヘッダ/フッタの処理が増えてしまい、結果としてボトルネックになるわけです。

 そこで、これの対策としてデータ長を1,500バイトより大きくする「Jumbo Frame」というものがあります。例えば、Jumbo Frameの設定値を6,000バイトにすれば、フレームの数は単純に4分の1になりますから、その分のオーバーヘッドが減少し、速度の向上が期待できます。


図4:フレームの中身 図5:Jumbo Frame

 Jumbo Frame自体は、100BASE-Tの頃から議論されていましたが、機器の高速化に伴い「なくてもいける」ということで、結局標準化されずに終わってしまったもので、1000BASE-Tの時代になって改めて見直されたものです。

 一方、「標準化されない」点が若干のネガティブ要素を残しています。例えば、標準化されていないがゆえに「どの程度のサイズまで拡張するか」のコンセンサスが取れていません。筆者がこれまで使用した製品の中でも、4KB/6KB/9KB/12KB/自由に設定可能などというように製品ごとに設定がまるで違っており、共通で使用できる設定がなかなか見つからなかったこともあります。

 また、ルータや家電機器などではJumbo Frameに未対応のものにあります。これら機器は1,517バイトを超えるフレームを認識できないので、通信ができなくなってしまいます(厳密に言えば、これらの機器からのフレームを受け取ることはできても、これらの機器にフレームを送れません)。従って、Jumbo Frameを使用する場合、ハブを含めたすべての機器がJumbo Frameに対応している点が必須になります。

 ちなみに、スイッチングハブに関して言えば、最近発売されている1000BASE-T対応の製品のほとんどがJumbo Frameに対応しています。パッケージに「Jumbo Frame対応」と明記してあるケースがほとんどなので、こうした製品を選べば良いでしょう。ただ、その際には最大どの程度までのサイズに対応しているかを調べるのは重要です。最低でも9KB程度のサイズに対応していないと、組み合わせで問題が出ることが多いので注意しましょう。


関連情報

URL
  スイッチングハブ編 索引ページ
  http://bb.watch.impress.co.jp/cda/koko_osa/21429.html

2008/05/12 10:53

槻ノ木 隆
 国内某メーカーのネットワーク関係「エンジニア」から「元エンジニア」に限りなく近いところに流れてきてしまった。ここ2年ほどは、企画とか教育、営業に近いことばかりやっており、まもなく肩書きは「退役エンジニア」になると思われる。
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