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スイッチングハブ編
第9回:ストア&フォワード


 「ストア&フォワード」は、スイッチングハブの転送方式の1つです。ストア&フォワード以外の異なる方式もありますが、家庭用製品のほとんどは同方式を採用しています。


家庭向けスイッチングハブの多くで採用される「ストア&フォワード」

 スイッチングハブのカタログやスペックを見ていると、スイッチングの方式として「ストア&フォワード」という用語が出てきます。業務用の高機能かつ高価な製品以外は、まず間違いなくストア&フォワードを使っていると考えて良いでしょう。今回は、これについて説明していきます。

 例えば、図1で左にあるPCからスイッチングハブを経由して、右側のPCにパケットを送るケースを考えます。この場合、以下のような動作をします。


図1:スイッチングハブ経由でPCにパケットを送る

(1)左のPCからパケットが送り出されます。このパケットには、データ部の前に、宛先や送出元情報などを格納したヘッダが付加されています
(2)スイッチングハブでは、届いたパケットを受信部で受け取ります
(3)受信部は受け取ったパケットをそのままバッファに格納します
(4)そして、バッファにパケットが貯まると、送信部側が先頭からパケットを取り出し、宛先を確認します
(5)送信部は宛先を確認したのち、該当するポートにパケットを送り出します。
(6)スイッチングハブから右のPCにパケットを送り出します

 ここで(3)がストア(格納)、(4)がフォワード(相手先を確認して送出)という動作になるため、この方式をストア&フォワードと呼ぶわけです。この方式は簡単に実装が可能で、必要であればバッファにパケットを1度蓄えた時点でパケットの検査し、データが壊れていた場合には破棄するなども行なえるため、ネットワークを効率的に使えるといったメリットもあります。

 一方、パケットをバッファに1度格納する必要があるため、スイッチングハブを送るよう命令を受け取ってから実際にパケットを受け取ってから再び送り出すまでの間に遅延(レイテンシ)がある程度発生してしまう面もあります。

 ちなみに、ストア&フォワードを利用しない例として、図2にカットスルーのケースをまとめてみました。ここでは、(1)パケットが送り出され、(2)スイッチングハブが受け取るところまではストア&フォーワードと同じですが、その先の送受信部のバッファはありません。

 そして、送受信部ではパケットの先頭に付いた宛先だけを切り離して(カット)(3)、その内容から宛先を判断して送り出すポートを決め(スルー)ます(4)。これに合わせて、パケットはそのまま送出され(5)、相手のPCに届く(6)というわけです。


図2:カットスルーの場合

 カットスルー方式の場合、ストア&フォワードに比べて遅延を非常に小さく抑えられるというメリットがあります。しかし、宛先の判断を高速に行なわないと、むしろ遅くなる(このため、高機能な判断部が必要になり、コストが高くなってしまう)場合や、パケットの検査ができないので破損したパケットが届いてもそのまま送り出してしまう、といったデメリットもあります。

 ただし、後者の点に関しては、データ部の一部まで確認する形で壊れたパケットを効果的に排除するという方法があります。以前は「修正カットスルー」と呼ばれましたが、最近は「フラグメントフリー」と呼ばれるようになっています。

 こちらはストア&フォワードより高速に動作し、破損パケットもある程度除去できるため、カットスルーよりも効果的に動作します。ただ、それでも高価になる方法である点には変わりがありません。このため、家庭用の製品でこれらをサポートする製品はほぼ皆無と言って良いでしょう。


関連情報

URL
  スイッチングハブ編 索引ページ
  http://bb.watch.impress.co.jp/cda/koko_osa/21429.html

2008/06/02 11:12

槻ノ木 隆
 国内某メーカーのネットワーク関係「エンジニア」から「元エンジニア」に限りなく近いところに流れてきてしまった。ここ2年ほどは、企画とか教育、営業に近いことばかりやっており、まもなく肩書きは「退役エンジニア」になると思われる。
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