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高速PLC&同軸アダプタ編
第1回:HD-PLC


 HD-PLCは、電力線を使ってネットワークを構築する高速PLC規格の1つです。日本国内ではもっとも製品数の多い高速PLC規格で、環境によっては高速なLAN接続が可能になります。


コンセントを介してネットワークを構築できる高速PLC

 高速PLC(Power Line Communications)は、家庭内にあるコンセントを使ってLAN環境を構築できる技術です。図1にように、コンセントに高速PLCアダプタを接続することで、宅内の電力線を介してLAN接続が行うことが可能になります。


図1:PLCの利用イメージ

HD-PLCに対応した松下の「BL-PA300KT」。対応製品は各社から発売されている
 例えば、玄関先に電話回線があり、同じ場所にインターネット回線の口がある場合を考えます。この場合、玄関先にモデムを設置するのは問題ないとしても、そこから自分の部屋へとLANケーブルを伸ばしていくのは難しい場合もあります。

 一方、高速PLCでは玄関脇にあるコンセントに機器を接続し、自室のコンセント側にも機器を接続することで、LANケーブルを部屋まで引き込むことなく、ネットワークの接続が可能になります。

 また、自宅の部屋すべてでネットワークを使いたい場合にも有効でしょう。もちろん、同様のことは無線LANでも可能ですが、こちらは電波を使用するために建物の構造によっては通信が上手くいかない場合などもあります。一方、高速PLCでは電力線を使うため、接続が切れるといった心配はないでしょう。

 その高速PLCですが、実用化されている規格が何種類かあります。今回取り上げた「HD-PLC(High Definition-Power Line Communications)」も規格の1つで、松下電器産業が提唱しています。日本国内の中ではもっとも利用されている高速PLC規格で、「HD-PLCアライアンス(Webサイト)」という組織が普及に努めています。

 松下以外のメーカーからも対応製品が発売されており、同じHD-PLC規格の製品であれば異なるメーカーの製品でも通信が可能です。また、相互通信を確実な確実なものにするための相互接続性試験(プラグフェスト)もHD-PLCアライアンス主催で実施されており、ユーザーにとって選択の幅が広がる結果となっています。また、ルータ内蔵モデルやコンセント直結型など多様な製品が用意されており、ニーズに合わせた製品選択が可能な点もメリットの1つでしょう。

 HD-PLCの通信速度ですが、当初の第1世代では理論値で最大190Mbps、最近登場した第2世代では最大210Mbpsとなります。実際の転送速度は65~90Mbps程度で、100BASE-TXと比べて若干遅い程度です。もっとも、別室に設置したポータブルNASに接続するとか、インターネットにアクセスするといった程度であれば、この通信性能でも問題ないと言えます。

 なお、高速PLC製品を導入するにあたっては、以下の点に留意する必要があるでしょう。

(1)5MHz~20MHzの周波数帯でノイズが発生する場合があり、付近でアマチュア無線などを利用している場合には受信に影響を与える可能性がある。

(2)他の電気製品の中で上記周波数帯に影響を与えるものがあり、こうした製品を使用している場合には高速PLCの通信性能が低下したり、通信できなく場合がある。

(3)宅内の電力配線が老朽化している場合や、たこ足配線を行っているなどの場合、これらが起因となって通信できないケースがある。

 (1)に関してはレアケースかもしれませんが、(2)や(3)のケースは特に築年数が長い家屋などでは関係がある場合があります。なお、高速PLC製品の登場とともに、PLC対応のノイズフィルタ付きタップも発売されているため、これらの使用で通信の改善も見込めます。ただし、コンセントの口数が少なく、たこ足配線を余儀なくされている家屋などでは、(3)に示したように通信が難しい場合がある点を注意したほうが良いでしょう。


2008/07/07 10:58

槻ノ木 隆
 国内某メーカーのネットワーク関係「エンジニア」から「元エンジニア」に限りなく近いところに流れてきてしまった。ここ2年ほどは、企画とか教育、営業に近いことばかりやっており、まもなく肩書きは「退役エンジニア」になると思われる。
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