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ネットワーク対応プリンタ&複合機編
第8回:IrSimple/IrSS


 ネットワークを使った連携からは少し外れますが、最近のプリンタや複合機ではIrSimple/IrSSに対応する製品が増えてきました。これらは赤外線を使った通信方式になります。


携帯電話・デジカメと直接通信できる「IrSimple/IrSS」

図1:接続方法のいろいろ
 最近のプリンタや複合機では、接続性の高さも1つのセールスポイントです。例えば、PCなどにUSBケーブルなどを介して直接接続するだけではなく、ネットワーク対応として有線LANや無線LANを経由した接続が可能になっています。また、これに加えてデジタルカメラや携帯電話なども通信の対象に入ってきました。

 以前では、デジタルカメラなどで撮影した写真はPCにいったん取り込んだ上で、印刷する方法が主流でした。しかし、ここ数年でメモリカードリーダーが搭載されたことでPCを利用することなく印刷が可能になり、また、デジタルカメラを直接USBケーブルで接続する方法や、携帯電話とBluetoothで接続して印刷する製品も登場してきました。

 ただ、デジタルカメラや携帯電話では、まだ不便と感じるシーンも少なくありません。例えば、デジタルカメラの場合、物理的にケーブルを接続する必要性がありますし、携帯電話ではBluetoothに対応している必要があります。

 従って、メモリカードリーダーが利用するのが無難とも言えますが、携帯電話の場合、メモリカードが携帯電話の場合、裏蓋の中に装着しているケースもあって、使い勝手が良いとは言えません。また、Bluetoothがすべての携帯電話やデジタルカメラの搭載されていれば、解決策となり得ますが、コストの問題のあり、そこまで広く普及していないのが実情です。

 こうした用途に向けて、「USB-IF(USB Imprementation Forum、URL)」が普及に努めているのが「Wireless USB」です。Wireless USBは、USB 2.0と同じ最大480Mbpsの通信速度を無線で接続できるようにした規格です。米国では製品もいくつか登場していますが、Bluetoothと比べて普及が遅れている状況です。

 また、最近では「TransferJet(URL)」と呼ばれる近接無線転送技術のコンソーシアムが発足しました。これも無線による通信となりますが、到達距離は3cmと限定された通信になります。また、現時点ですべてのプリンタ/デジタルカメラ/携帯電話メーカーが参加しているわけではなく、今後どのような流れになるかは、まだはっきりしません。

 こうした中で、携帯電話やデジタルカメラを簡単に接続する方法として搭載され始めているのが「IrSimple/IrSS」です。これらは、赤外線を使った通信方式になります。


IrSimple/IrSSの利用イメージ

 携帯電話ではもともと、赤外線による通信をサポートしていました。例えば、電話番号やメールアドレスなどを、赤外線を使って携帯電話同士で交換された方もいるかと思います。この際、使用していたのは「IrDA(Infrared Data Association)」と呼ばれるもので、1993年に登場した規格です。

  実際、IrDAは普及が見込まれるとして一時期はPCなどでも多く搭載されていました。方式自体は非常に簡単で、実装も赤外線対応のLEDとフォトカプラがあれば実現できるため、低コスト(原価で言えば100円未満)で済みます。ただ、ネックになっていたのは転送速度の遅さで、簡単な情報のやりとりには対応できても、画像などのファイル転送には時間を要してしまいます。

 そこで、ハードウェアはそのままに、通信のプロトコルを改良したのが「IrSimple」です。これにより、IrDAの10~100倍(IrDAにも複数の規格があるため、どちらと比べるかで性能比が変わります)の速度で転送が可能になりました。ちなみにIrSimpleは双方向の通信であり、片方向としたのは「IrSS」と呼ばれます。

 もちろん、高速とは言ってもIrSimpleは理論値で4Mbps(=500KB/sec)、実際の転送速度も数百KB/secといったところです。少し昔のデジタルカメラや携帯電話で撮影した写真なら毎秒1枚程度は送れるでしょうが、最近の1000万画素クラスのデジタルカメラで撮影した写真では1枚転送するのに数秒かかる計算となり、転送枚数が多い場合には少し辛いかもしれません。

 上述のようにIrSimple/IrSSは携帯電話やデジタルカメラなどで搭載例は増えていますが、広く使われるまでには至っていません。また、速度面で将来的にはWireless USBやTransferJetが取って代わる可能性はありますが、これらが普及するのもまだ先と言え、当面の手段としてIrSimple/IrSSが利用されるかと思われます。


関連情報

URL
  ネットワーク対応プリンタ&複合機編 索引ページ
  http://bb.watch.impress.co.jp/cda/koko_osa/22819.html

2008/10/06 11:34

槻ノ木 隆
 国内某メーカーのネットワーク関係「エンジニア」から「元エンジニア」に限りなく近いところに流れてきてしまった。ここ2年ほどは、企画とか教育、営業に近いことばかりやっており、まもなく肩書きは「退役エンジニア」になると思われる。
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