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プラネックスコミュニケーションズ BRC-W108G
~IXP425+Airgo True MIMO採用の高性能無線LANルータ~

個人ユーザーにも導入しやすいデザインのMIMO対応ルータ

写真01:
プラネックスコミュニケーションズの「BRC-W108G」外観。本体サイズはアンテナをのぞく部分が約32×150×184mm(幅×奥行×高)とされている。アンテナはMIMOの特徴ともいえる3本組のもので、完全に伸ばした場合で90mm弱
 プラネックスコミュニケーションズの「BRC-W108G」は、2005年2月に発売されたバッファロー製品とネットギア製品に続き、国内3製品目となるMIMO(Multi Input Multi Output)に対応した無線LANルータだ。

 ただ、ネットギアの「WGM124」は、同社Webサイトで参照できるインストレーション・ガイドなどを見てもわかるとおり、設定画面が英語表記となっているなど、海外製品をそのまま日本で発売している形になる。正式な日本向け製品としてはプラネックス製品が2製品目といっても差し支えないだろう。

 デザインは、縦置き/横置きの両方に対応するスマートなデザインを採用している(写真01)。本連載で4月に紹介したバッファローの「WZR-G108」は、やや大ぶりな横置き専用ボディに加え、インターフェイスの配置が側面であるなどユニークな外観だったのに比べると、一般的なデザインに落ち着いた印象だ。

 ちなみに付属の縦置きスタンドだが、ストッパーなどもなく、単に製品を“置くだけ”の作りになっている。製品側面が片側だけ軽い曲面になっており、この筐体の構造を利用してズレを防ぐ仕組みだ。


 前面部にはLED類が並ぶ(写真02)。WAN/LANの各ポートのLED、無線のLED、電源LEDといったシンプルな構成で、特に目立った特徴はない。LEDの前にクリアパネルが付けられており、写真ではやや不鮮明に写るかも知れないが、実際の視認性は悪くない。

 背面もシンプルなレイアウトだ(写真03)。電源コネクタやWAN、LAN×4のほか、電源リセットと設定初期化を兼ねるスイッチが設けられている。


写真02:
前面にはLED類が並ぶ。ちなみに写真を見ると本体が少し傾いているのがわかるが、縦置きスタンドはストッパーなどがないため、本体デザインを使ったズレ防止はあるものの、バランスはやや悪い
写真03:
本体背面。WAN、LANの全ポートがAUTO-MDI/MDI-Xをサポート。ちなみにリセットスイッチは、1~3秒間押した場合は電源リセット、4秒以上では設定が初期化される

 付属のACアダプタは、同社製品らしい大型のACアダプタとなっている(写真04)。OAタップの干渉を避けるためにショートケーブルが付属しており、これまた同社製品ではおなじみの品である。

 さて、「BRC-W108G」は無線LANルータ単体の製品名となり、加えてMIMO対応の無線LANカード「CQW-NS108G」(写真05)がラインナップされるほか、両製品をセットにした「BRC-W108G-PK」といったモデルも発売されている。


写真04:
付属のACアダプタはやや大ぶりだが、同社製品ではおなじみのショートケーブルが付属している
写真05:
MIMO対応の無線LANカード「CQW-NS108G」。ルータとカードをセットにした「BRC-W108G-PK」もラインナップされている




IXP搭載ルータを踏襲した設定画面

 続いては、設定画面について触れたい。まずトップ画面は(画面01、02)の通り。この画面、どこかで見覚えがある方もおられると思う。本連載では2003年に紹介したNTT東西の「Web Caster 7000」とよく似ているのだ。また、プラネックスコミュニケーションズのIXP422搭載ルータ「BRC-W14V」なども似たような画面構成となっている。詳しくは後述するが、本製品もIXP425を搭載している。つまり、IXPシリーズを搭載したルータ製品で採用されていたファームウェアをブラッシュアップして使われていると考えて良いだろう。


画面01:
設定はWebブラウザから行なう。初期IPアドレスは「192.168.1.1」。ちなみに、この画面は最初の起動時のみ表示されるAdminユーザーの設定画面で、2回目以降の起動時には、ここで設定したユーザー名/パスワードを入力するログイン画面となる
画面02:
ログイン後、最初に表示される画面。ネットワーク構成が一覧できる

 それでは、順に設定画面をチェックしていこう。WAN側の設定にはウィザードが用意されており、インターネット接続、VPN接続に分けて設定が用意される(画面03~05)。


画面03:
左側のフレームに表示されるメニューから「簡単接続ウィザード」を実行すると、WAN側設定のウィザード画面が表示される
画面04:
画面03でインターネット接続を選択して進めると、この画面が表示される。本製品ではPPPoE接続と固定IP/DHCPに対応。もちろんIP Unnumberedもサポートしている
画面05:
画面03でVPN接続を選択して進めると、この画面に。PPTP/IPsecクライアントとしての動作のほか、PPTPサーバーとしても動作させられる

 もちろん、このウィザードを終わらせたあとも設定変更は可能だ(画面06)。ただし、多くのルータは同じWAN側接続の設定画面でPPPoE/固定IP/DHCPの切り替えを行なえるのに対し、本製品ではPPPoEと固定IP/DHCP(つまりローカルルータ)の設定が完全に分離しているのが特徴だ(画面07、08)。


画面06:
左フレームの「ネットワーク詳細設定」を選択すると、WAN/WAN-PPPoE/LANといった各ネットワークポートのステータス表示や設定を変更するためのメニューが表示される
画面07:
本製品において“WAN Ethernet”はローカルルータとして使用する場合の設定であり、固定IPとDHCPのみが利用可能。PPPoE以外、例えばCATVなどで利用する場合も、この画面も利用することになる
画面08:
PPPoEの設定画面。キープアライブがデフォルトで、自動切断を指定するというスタイルは意外に珍しい。なお、本製品の設定画面全般に言えることだが、例えばIPアドレスを自動取得にした場合はIPアドレス設定画面が表示されないなど、不必要な設定項目をできるだけ表示させないという配慮がなされている

 一方のLAN接続設定だが、こちらはルータ自身のLAN側IPアドレスの設定と、LAN側ポートへ接続したクライアントへIPアドレスを割り振るDHCPサーバー機能の設定を兼ねた、一画面のシンプルな構成になっている(画面09)。

 続いては、NATやパケットフィルタリングなど、そのほかの設定を見ていきたい。これらの設定は、画面左側フレームの「セキュリティ設定」の欄から設定が行なえる(画面10)。ここではプリセットされた設定が3種類用意されている。ただし、“最小”レベルは「何も設定を行なっていない」状態であり、2種類のプリセット+ユーザーカスタマイズモードといった雰囲気だ。


画面09:
LAN側の設定画面。LAN側ネットワークに関する設定は、この1画面ですべて行なえるようになっており使いやすい
画面10:
セキュリティに関しては2種類のプリセットされた“最大”“標準”のセキュリティレベルと、何も設定が施されていない“最小”のセキュリティレベルが用意される

 NATの設定については、セキュリティ設定画面内の「ローカルサーバ」タブから指定できる(画面11)。こちらの画面内から「新規作成」を選択すると画面12が表示され、LAN上の転送先IPアドレスやプロトコル・ポートを選択することになる。が、この設定画面がかなり使いにくい。

 プロトコルとポートは、あらかじめプリセットされたサービス内容に加え、ユーザー定義のサービスを追加できるものの、いずれにしてもこの画面からチェックボックスにより選択することしかできない。この表示されるサービス数が膨大で、画面12のスクロールバーの小ささからもわかるとおり、かなりの量をスクロールさせないと最終行を表示できない。当然、目的のサービスを探すのにも一苦労といった具合である。例えば、ゲームやアプリケーションのサービスは別画面にするとか、もう少し画面構成に工夫が欲しいところだ。


画面11:
NATの設定は「ローカルサーバー」の画面から行なう。まずは指定した設定の一覧が表示されるので、ここから新規作成を選択すれば、実際の設定画面が表示される
画面12:
こちらがローカルサーバーの設定画面。転送先のIPアドレスと、ポートを指定するだけのシンプルな内容。ただ、ポートの指定はあらかじめ登録されたサービス名から選択するというスタイルのため、膨大な量のサービスからポートを指定する必要がある。できれば、一般的なポート番号を数字で指定するだけのシンプルな画面も欲しい

 この画面構成はパケットフィルタについても同様である(画面13~15)。しかも、多くのルータとは異なり、パケットフィルタの設定はWAN/LANの受信/送信で設定画面が分けられているのも特徴で、こちらは逆に画面を1つにまとめて、同一画面から設定が施せたほうが良いように思う。このあたり、全体の設定画面構成に独自性が強く、かなりとっつきにくい印象を受けた。


画面13:
パケットフィルタリングの設定。まずは、WAN/LAN各ポートのどの方向に対して設定を行なうかを選択
画面14:
続いては、ローカルサーバー同様に指定した設定の一覧表示がなされるので、ここから新規作成を選択すれば実際の設定画面となる
画面15:
パケットフィルタリングの設定画面。送受信IPアドレスを指定できたり、対象パケットの処理方法を指定できたりと、まずまず高機能なのだが、やはりポート番号はローカルサーバーのようにあらかじめ登録されたサービス名から選択する形式となる

 セキュリティに関するもの以外の設定は画面16のように、1画面から選択が可能だ。VPNの設定変更などが行なえるほか、PPPoEブリッジ、IPv6ブリッジなどビジネス用途に向いた機能が充実しているのが特徴といえる。このなかで個人ユースでも重宝しそうなのがダイナミックDNSの設定で、DynDNS.orgのほか、国内のダイナミックDNSサービスであるDynamic DO!.jpとMyDNS.JPに対応したIPアドレス更新機能を有している(画面17、18)。どちらも日本語に対応しているダイナミックDNSサービスであり、英語が苦手な人も安心できる機能といえる。


画面16:
そのほかの設定は、すべて「カスタム設定」から行なう。アイコンが一覧表示され、必要なメニューへアクセスできるようになっている
画面17:
最近のルータでは一般的となったダイナミックDNS対応。定番のDynDNS.orgに対応する設定画面は独立して用意される
画面18:
こちらは日本国内の2つのダイナミックDNSサービスに対応する設定画面。ルータメーカーが自社製品ユーザー専用の日本語ダイナミックDNSサイトを開設する例はあったが、国内で行なわれている汎用的なサービスに対応するルータは貴重だ

 さて、無線LANの設定は画面6で示したネットワーク詳細設定画面のメニューから、「LAN無線アクセスポイント」を選択すると開かれる(画面19、20)。本製品の無線LAN機能の特徴としては、やはりMIMO対応である点が最も大きいのだが、バッファローの「WZR-G108」と同様にアクセスポイント側でMIMOに関する設定を行なう必要はなく、IEEE 802.11gに対応させておけばOKだ。


画面19:
無線LANアクセスポイントに関する設定画面。MIMOへ対応させるのに必要な設定はなく、「802.11モード」欄を“802.11b/802.11g”または“802.11g”へ設定しておけば問題ない
画面20:
同じ画面の下部には、フレームバースト転送の設定などを行なえる詳細設定欄が設けられる。セキュリティに関する設定もここで行なう

 ちなみに無線LANのセキュリティはWEP/WPA/IEEE 801.1xに対応。画面は使用するセキュリティ機能にチェックすると、必要な設定項目が表示される仕組みになっている(画面21)。

 一方の無線LANクライアント側だが、こちらのユーティリティはアクセスポイントの検出→接続や、ESS-IDやWEPなどを指定しての手動接続といったことが行なえるのみの、割とシンプルなユーティリティである(画面22、23)。もちろん、クライアントユーティリティを使わず、Windows XPのWireless Zero Configで設定を行なうこともできる(画面24)。

 MIMOの設定については、クライアントユーティリティにも指定がなく、これもバッファローの「WLI-CB-G108」と同じく、ドライバの詳細設定から「Enhanced Rates」を“ON”に指定することでMIMOが有効になる(画面25)。もちろん、デフォルト状態でONになっており、またONの状態でも通常のIEEE 802.11gアクセスポイントへの接続は問題なかった。


画面21:
WEP/WPA/802.1Xに対応するセキュリティ機能の設定項目
画面22:
無線LANカードのユーティリティ。シンプルな作りで、APの検出やESS-IDを指定しての接続など、最低限の機能を持つのみ
画面23:
接続状態を示す画面。接続状態を見た実効帯域や使用チャネルなどの確認が可能

画面24:
クライアントユーティリティはタスクトレイのアイコンにも常駐しており、こちらからWindows XPのWireless Zero Configを有効にすることもできる
画面25:
以前に紹介したバッファロー製品同様にAirgo製のチップセットを使っていることもあって、ドライバのEnhanced Ratesの設定によってMIMOの有効/無効を切り替えられる点は同じ仕様である




有線・無線ともに素晴らしいスループットを発揮

 続いては、本製品の性能をチェックしていきたい。テストに用意した環境は表1と図1のとおりだ。

表1:テスト環境
サーバー クライアント クライアント-ノートPC
東芝
Dynabook SS MX
CPU Pentium4 550 Pentium 4 3.20E GHz ULV PentiumM 733
マザーボード Intel D925XCV ASUSTeK P4C800 NA
メモリ PC4300 DDR2 SDRAM 1GB PC3200 DDR SDRAM 1GB DDR SDRAM 768MB
HDD Seagate Barracuda 7200.7(ST3120026AS) Seagate Barracuda 7200.7(ST3120026AS) 40MB HDD
(TOSHIBA MK4026GAX)
LANカード Marvell Yokun(88E8050) 3com 940-MV00
OS Windows XP Professional+SP2(IIS 5.1) Fedora Core3(Kernel 2.6.11-1.27FC3) Windows XP Professional+SP2(IIS 5.1) Windows XP Professional+SP2(IIS 5.1)


図1:テスト環境

 まずは有線LAN環境における結果(表2、3)だが、サーバーをLinuxにした状態のスループットは90Mbpsオーバーと、素晴らしい結果を見せている。ただ、直結状態のパフォーマンスを上回るという現象を見せており、これだけの結果を出していてなお環境側がボトルネックになっているようだ。また、NATを適用すると途端にスループットが落ち込む傾向があり、これはサーバーOSがLinuxであろうが、Windowsであろうが関係ない。1つの特徴といえそうだ。

表2:計測結果(有線LAN、Windowsサーバー)
プロトコル 転送条件 速度(Mbps)
直結状態 ftp サーバー → クライアント 85.12
クライアント → サーバー 84.67
http サーバー → クライアント 82.45
クライアント → サーバー 82.21
プラネックス
BRC-W108G
ftp サーバー →
クライアント
パケットフィルタリングなし 50.21
パケットフィルタリングあり 50.16
パケットフィルタリング+NAT 40.99
クライアント →
サーバー
NATあり 46.72
NAT+パケットフィルタリング 45.55
http サーバー →
クライアント
パケットフィルタリングなし 47.57
パケットフィルタリングあり 47.60
パケットフィルタリング+NAT 38.69
クライアント →
サーバー
NATあり 43.23
NAT+パケットフィルタリング 43.28

表3:計測結果(有線LAN、Linuxサーバー)
プロトコル 転送条件 速度(Mbps)
直結状態 ftp サーバー → クライアント 93.20
クライアント → サーバー 82.13
http サーバー → クライアント 89.87
クライアント → サーバー 75.97
プラネックス
BRC-W108G
ftp サーバー →
クライアント
パケットフィルタリングなし 94.40
パケットフィルタリングあり 94.40
パケットフィルタリング+NAT 86.13
クライアント →
サーバー
NATあり 45.23
NAT+パケットフィルタリング 45.68
http サーバー →
クライアント
パケットフィルタリングなし 90.13
パケットフィルタリングあり 90.40
パケットフィルタリング+NAT 83.73
クライアント →
サーバー
NATあり 42.91
NAT+パケットフィルタリング 43.76


 一方、NTT東日本のBフレッツ・ニューファミリープランの回線と、BB.exciteを利用したPPPoE接続時の結果は表4に示したとおりだが、こちらは目立った値とはいえない結果に落ち着いた。もっとも、この結果を見るに、回線側がボトルネックとなったためルータの性能が十分に発揮されていないように思われる。

 ということで、有線LANに関しては通常利用する範囲ではほぼ問題ないどころか、ルータの性能をフルに発揮するシチュエーションすらなさそうなほど優秀な性能を持っているといえる。

表4:計測結果(WAN)
平均値(Mbps) 最大値(Mbps)
フレッツ・スクウェア 35.12 36.25
Speed.RBBToday Download 36.75 36.84
Upload 5.45 5.58


 無線LANに関しては、表5に各規格を利用した場合のスループットを示している。IEEE 802.11b/gについては、いたって標準的な速度であるが、MIMO接続時はIEEE 802.11gのおよそ倍程度の速度となっており、ほぼ理論どおりといって良い結果である。さらに無線の到達距離テスト(表6)においても、MIMOは全エリアに渡ってほぼ同じレベルのスループットを発揮するという結果を見せた。

表5:計測結果(無線LAN)
MIMO 802.11g 802.11b
ftp サーバー →
クライアント
パケットフィルタリングなし 38.91 20.13 5.53
パケットフィルタリングあり 38.80 20.05 5.50
パケットフィルタリング+NAT 38.29 19.79 5.49
クライアント →
サーバー
NATあり 38.32 19.89 5.54
NAT+パケットフィルタリング 38.05 19.81 5.51
http サーバー →
クライアント
パケットフィルタリングなし 39.17 20.35 5.51
パケットフィルタリングあり 39.09 20.16 5.54
パケットフィルタリング+NAT 38.80 19.79 5.45
クライアント →
サーバー
NATあり 38.27 19.87 5.46
NAT+パケットフィルタリング 38.53 19.84 5.51

表6:計測結果(到達距離テスト)
MIMO 802.11g 802.11b
A地点(約0.5m) 38.91 20.13 5.53
B地点(約3m) 38.99 20.03 5.53
C地点(約7m) 38.75 18.16 5.52
D地点(約6m) 38.64 17.07 4.81
E地点(約13m) 38.72 11.20 4.79


図2:到達距離テスト環境

 ちなみに、バッファローの「WZR-G108」「WLI-CB-G108」との相互接続性も見てみたが(表7)、同じ無線LANチップセットを使っていることもあってか、何の問題もなく接続が行なえ、異なるメーカー製品が原因と思われる速度低下も見られなかった。全般にバッファローのWLI-CB-G108をクライアントに利用したほうが1Mbps程度高速な結果を見えているが、これは相互接続性というよりは、ドライバのチューンの問題のように思われる。

 ただ、ちょっと気になるのは、バッファロー製品のスループットが、紹介時よりも大幅に向上しているのだ。基本的に大幅な環境変更はないが、クライアントのノートPCを変更したことや、ファームウェアをアップデートしたのが影響したのだろう。

表7:計測結果
(バッファロー製品との相互接続)
AP
/CARD
プラネックス バッファロー
プラネックス 38.91 38.67
バッファロー 39.47 39.55





Mini PCI対応タイプの無線LANモジュールを装着

写真06:
本製品の筐体をあけた状態。基板はすべてシールドに覆われている
 最後に本製品の内部構造をチェックしてみたい。筐体はネジ止めなどがされておらず、ツメを外すだけで簡単に分解ができる。筐体をあけてみると写真06のとおり、基板全体を覆うアルミシールド板が現われるが、このシールドも特にネジ止めなどはされていないので、簡単に取り外しが行なえる。

 シールドを外した状態が写真07だ。ご覧のとおり、メイン基板へのアドオンとして無線LANモジュールが取り付けられているのがわかる。この無線LANモジュールはエッジのコネクタを見る限りMini PCIのようであるが、Mini PCI規格で規定されたTypeIIIAよりも、さらにボード長があり、PCカードのような形状となっているのが特徴的だ(写真08~10)。


写真07:
シールドを開くと、メイン基板とそこに取り付けられた無線LANモジュールの存在を確認できる
写真08:
無線LANモジュールはPCカード程度のサイズだが、接続はMini PCIのカードエッジコネクタとなっている

写真09:
RF部のシールドをはがした状態。各RF部がキッチリ仕切られているのがわかる
写真10:
ちなみに裏面は何も実装されていない

 基板は、こちらの記事にあるような、Arigo Networksが示しているAirgo True MIMOのリファレンスデザインによく似たもので、メインコントローラの「Airgo AGN103BB」(写真11)を中心に、RFシンセサイザーの「Silicon Laboratories Si4133」(写真12)、RFレシーバ「Airgo AGN100RF」×3(写真13)といった構成である。


写真11:
こちらがAirgo True MIMOチップセットのメインコントローラとなる「AGN103BB」
写真12:
3つのRF部とは独立した区画に搭載されている、Silicon Laboratoriesの「Si4133」。2つの信号を合成するRFシンセサイザーである

写真13:
RFチップは「AGN100RF」。本製品ではこれを3つ搭載する

 次にメイン基板のほうに目を向けてみたい(写真14)。無線LANモジュールの直下部にはチップなどが実装されておらず、基板の片側に集中して配置される格好だ。

 メインのプロセッサはインテルの「IXP425BB」で、266MHzで動作している(写真15)。


写真14:
無線LANモジュール部を外すとメイン基板はシンプルな配置の印象を受ける
写真15:
メインプロセッサはインテルのIXP425BB。266MHzで動作している

写真16:
フラッシュには同じくインテルの「28F640」を搭載。64MビットのStrataFlash
 ちなみに、ルータ製品でIXPシリーズが使用されている例はそれほど多くなく、搭載製品であっても廉価版チップであるIXP422などを採用する例が多かった。本製品ではハードウェアVPNなどの機能を1つの売りとしており、IPsecのハードウェアアクセラレーションなどを持つIXP425を採用する必要があったのだろう。

 フラッシュには同じくインテルのStrataFlashシリーズにラインナップされている「28F640」(写真16)を搭載。メインメモリにはG-Linkの「GLT51280L16」(写真17)といった構成となっている。

 このほか、目立ったところでは、Micrel Incorporatedの「KS8995M」(写真18)を搭載。最大5ポートまで制御可能なスイッチであり、本製品ではうち1ポートのPHY層をIXP425のMAC層と組み合わせて利用していると想像される。


写真17:
メインメモリはG-Linkの「GLT51280L16」。512MビットのSDRAMである
写真18:
スイッチはKENDINブランドの「KS8995M」を採用。マネージメント機能などを有する高機能な5ポートスイッチだ




設定画面にクセはあるものの無難な製品

 バッファロー製品よりも外観がスマートである点や、設定が日本語表示である点など、個人向け製品としてオススメしやすそうというのが試用前の印象だったが、機能が多すぎるゆえ設定画面でやや使いにくさを感じる部分が多い。

 限られた機能を使うだけなら設定画面に対する不満はないと思うので、個人ユーザーが導入して後悔する製品でないのは確かだ。ただ、より簡単に設定を行なえるMIMO対応製品という視点なら、バッファロー製品のほうをお勧めしたい。

 また、そうした個人ユースに特化した使い方は本製品のポテンシャルを考えると非常にもったいない使い方でもある。やはりSOHOや中規模オフィスなど、ビジネス寄りで利用してこその製品といえるだろう。




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関連情報

URL
  製品情報
  http://www.planex.co.jp/product/broadlanner/brc-w108g.shtml
  プラネックスコミュニケーションズ
  http://www.planex.co.jp/

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2005/06/29 10:56

槻ノ木 隆
 国内某メーカーのネットワーク関係「エンジニア」から「元エンジニア」に限りなく近いところに流れてきてしまった。ここ2年ほどは、企画とか教育、営業に近いことばかりやっており、まもなく肩書きは「退役エンジニア」になると思われる。
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