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2005年

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槻ノ木隆の
NEW PRODUCTS IMPRESSION
コレガ CG-BARPROG
~2万円前後を実現したギガビットルータ~

個人ユーザーにも現実的な価格のフルギガビットルータ

写真01:
コレガの「CG-BARPROG」。サイズは33×104×156mm(幅×奥行×高)
 コレガが発売した「CG-BARPROG」は、WAN/LANの全ポートがギガビットイーサネットに対応したルータだ。LAN側がギガビット対応という製品はNTT-MEやプラネックスコミュニケーションズなどから出ているものの、WAN側まで対応している製品はマイクロ総合研究所の「NetGenesis SuperOpt-GFive」に次いで2製品目。しかも、2万円前後で入手できる求めやすい価格設定が魅力だ。

 その外観は黒を基調としたもので、わりとコンパクトに収まっている(写真01)。もっとも、本製品は無線LAN機能を搭載していない有線LAN専用ルータであることを考えれば、このサイズは決してインパクトがあるサイズとは言い難い一面もある。

 前面部は鏡面仕上げがなされており、そこに各ポートリンクLEDや電源、ステータスLEDが配置される(写真02)。オーソドックスではあるが、各ポートのリンク速度などをチェックする上では見やすい作りで、好印象を受ける。

 背面もオーソドックスな作り(写真03)。WAN/LANの各ポートと設定初期化スイッチ、電源コネクタが並ぶ。ACアダプタはアダプタ部が一体化したものだが、OAタップの向きによっては干渉を避けられる形状となっている(写真04)。

 このほか、パッケージ内には、LANケーブル、設定CD-ROM、初期設定ガイド、同社の出張サポートサービスの案内などが同梱されている。シンプルながら、初心者にもやさしい内容となっているのが印象的なパッケージだ。


写真02:
前面部。WAN/LAN全ポートのリンクLEDは非常に見やすい
写真03:
背面。WAN×1、LAN×4のすべてがAUTO-MDI/MDI-Xをサポート。WANポートだけ目立つようにマークされているのも好印象だ

写真04:
ACアダプタはコンパクトだが、OAタップを選ぶ形状




コンシューマユースのシンプルな設定画面

画面01:
付属CD-ROMから起動する設定画面への接続ソフト。設定画面自体はWebブラウザでアクセスする
 それでは、設定画面を順に見ていきたい。本製品では、付属CD-ROMのオートランにより(画面01)のアプリケーションが起動し、ここから設定画面にログインできる。とは言え、このアプリケーションはネットワーク内の本製品を検出し、そのWebブラウザで該当のIPアドレスへアクセスする仕組みで、設定画面はルータ内で完結している。つまり、Webブラウザに直接IPアドレスを入力するのと変わらないわけで、アクセスする方法が異なるだけだ。

 設定画面にアクセスすると、まずは接続ウィザードが表示される(画面02)。ここで指定が可能なのは、DHCPによる自動取得/固定IP/PPPoEの3種類で、PPPoEを選んだ場合は、フレッツ・スクウェアへのマルチセッション接続も自動設定できる(画面03)。

 もちろんウィザード以外に個別で設定する方法も残されており、こちらでは「マルチPPPoE」「PPPoE/UnnumberedIP」「LOCAL OFFICE」「DHCP/固定IP」と表記された各接続方法が選択可能だ(画面04)。


画面02:
初期IPアドレスは「192.168.1.1」。最初に設定画面にアクセスした際にはウィザードが表示される
画面03:
ウィザードからはDHCP/固定IP/PPPoEの各接続を選択可能
画面04:
WAN側の詳細設定では、4つの接続方法が選択できる

 各設定について、まず後者から簡単に触れておきたいが、固定IPやDHCPの設定画面はいたって標準的なもの(画面05)。また、LOCAL OFFICEという項が設けられているが、こちらは単純にネットワークのルーティングに特化したシンプルな設定画面を用意しているだけだろう(画面06)。このあたりは、どの製品も大差はない画面で、本製品も無難にまとめている印象だ。


画面05:
DHCP/固定IPの画面。固定IPを選択した場合は、IPアドレス・サブネットマスク・ゲートウェイの3項目が表示される
画面06:
ローカルルータとして使用する場合に選択する「LOCAL OFFICE」の設定画面。画面05の固定IPでも代用は可能だ

 PPPoEは2種類の画面が用意される。1つはシングルセッション接続用の設定画面で、こちらはIP Unnumberedを使用する場合も利用する(画面07)。

 もう1つはマルチセッション接続用の設定画面で、こちらは2画面に分かれる。本製品では5アカウントが登録可能で、そのうちどのアカウントを実際に使うかを指定する形式となっている。画面08がその使用するアカウントを指定する画面だ。ちなみに、本製品では同時2セッションの接続が可能で、画面08の表記に従うならば、セッション1/セッション2でそれぞれ1つずつアカウントを指定できることになる。

 実際の接続設定はシングルセッション用の画面に、そのアカウントが扱う接続先の指定などを行なう、いくつかの項目が追加される格好となっている(画面09)。


画面07:
シングルセッションのみ使用する場合の設定画面は、IP Unnumberedに関する項目も用意される
画面08:
本製品は2セッションの同時接続に対応。マルチセッションPPPoEの設定画面では、5つのアカウントから実際に接続する設定を選択することができる
画面09:
マルチセッションPPPoEの設定画面には、その接続設定で利用する接続先のIPアドレスやドメイン名などを指定できる

 では、接続設定以外の画面についても、いくつかピックアップして紹介していこう。まずはLAN側の設定だが、こちらはルータのLAN側IPアドレスの指定と、LAN側ポートへ接続したクライアントに対するDHCPサーバーの設定のみ(画面10)。DHCPサーバーの設定は、割り当てるIPアドレスの範囲を指定するだけで、静的な割り振りやリース期間の設定などは行なえない。

 続いて、NAT関係の設定は入力ポートに対する出力先のIPアドレスとポートを指定する、こちらもシンプルなもの(画面11)。出力先のIPアドレスは、同社の他製品でも見られるクライアントPCをあらかじめ登録しておく方式が取られている。

 セキュリティに関する設定は、DoS攻撃に対するファイアウォール機能、URLフィルタ機能、VPNの許可を指定するなどの項目が用意される(画面12)。いわゆるパケットフィルタのような機能は有しておらず、LAN、NATの設定画面からもわかる通り、家庭内LANのようなシンプルなインターネット/ネットワーク環境で利用するならば十分だが、複雑なネットワークを組もうと思うと、ちょっと心許ない印象だ。


画面10:
LAN側の設定。ルータ自身のLAN側IPアドレスと、DHCPサーバーで割り当てるIPアドレスの範囲指定を行なえるのみの簡単なもの
画面11:
バーチャルサーバーと名付けられたNATの設定画面。受信ポート番号と送信先のIPアドレス/ポート番号を指定できる。IPアドレスの指定はPCデータベースにPC名とIPアドレスを事前に登録しておく必要がある(DHCPサーバーがIPアドレスをリースしたクライアントは自動的に登録される)
画面12:
セキュリティ設定の画面。WAN側からのアクセスを制限するセキュリティ面の機能はDoSファイアウォールのみ。ちなみに画面左側のフレームに「アクセス制限」という項があるが、これはLAN側からWAN側へのアクセスを制限するもの




100Mbpsを超えるスループットは確認できる

画面13:
今回の環境ではその効果が出なかったが、Jumbo Frameもサポートしている
 続いては、本製品の性能をチェックしていこう。テストに用意した環境は表1・図1の通りだ。ちなみに、本製品ではギガビットイーサネットのJumbo Frameも使用できる(画面13)。

 ただ、今回の環境で初期設定値である「1518」を超える値を指定した場合、(クライアントで利用している3C940でJumbo FrameをEnableにしても)テスト結果が極端に下がる(1Mbps未満)という現象に見舞われた。恐らく、3C940とのネゴシエーションの問題だろうとは考えられるが、今回はJumbo Frameを設定した場合の結果を割愛している。


表1:テスト環境
サーバー クライアント
CPU Pentium4 550 Pentium 4 3.20E GHz
マザーボード Intel D925XCV ASUSTeK P4C800
メモリ PC4300 DDR2 SDRAM 1GB PC3200 DDR SDRAM 1GB
HDD Seagate Barracuda 7200.7(ST3120026AS) Seagate Barracuda 7200.7(ST3120026AS)
LANカード Marvell Yukon(88E8050) 3com 940-MV00
OS Windows XP Professional+SP2(IIS 5.1) Windows XP Professional+SP2(IIS 5.1)



 では、結果を見ておこう。LAN環境における結果を表2、インターネット接続時における結果を表3に示した。まず、LAN環境においては、下りで100Mbpsを超える性能を見せており、WAN/LAN双方がギガビットイーサ対応であることの効果が表われている。

 しかしながら、下りの性能は100BASE-TXではまず見られない数値ではわるが、ギガビット機としては奮わない結果で、環境のスループットがボトルネックになった印象は拭えない。これは、以前に紹介した通り、使用しているOSに依存しているためだろう。本製品のポテンシャルの一端は垣間見えるものの、テスト次第では、もう少し数値が伸びる可能性は高そうである。

表2:計測結果(LAN)
プロトコル 転送条件 速度(Mbps)
直結状態 ftp サーバー → クライアント 162.67
クライアント → サーバー 154.13
http サーバー → クライアント 153.60
クライアント → サーバー 152.27
コレガ
CG-BARPROG
ftp サーバー →
クライアント
ファイアウォールなし 152.80
ファイアウォールあり 145.60
ファイアウォール+NAT 148.27
クライアント →
サーバー
NATあり 97.07
NAT+ファイアウォール 94.40
http サーバー →
クライアント
ファイアウォールなし 148.80
ファイアウォールあり 149.07
ファイアウォール+NAT 152.00
クライアント →
サーバー
NATあり 94.13
NAT+ファイアウォール 92.80


 一方、インターネット接続のテストについては、回線にNTT東日本のBフレッツ・ニューファミリープランを使用している。現在、一般的に利用可能な最大100Mbpsの回線であり、ここにおいてWAN側がギガビットイーサに対応していることの効果はない。今後、1Gbps接続の回線サービスが普及する段になって、その効果を体感できることになるだろう。

表3:計測結果(WAN)
平均値(Mbps) 最大値(Mbps)
フレッツ・スクウェア 73.77 76.28
Speed.RBBToday Download 57.20 59.75
Upload 52.37 57.28





StarのARM9互換プロセッサを搭載

 それでは、本製品の内部を紹介していきたい。本製品はプラスチックのツメを外すことで、簡単に分解が可能だが、内部の基板は(写真05)の1枚。裏面にはチップが実装されておらず(写真06)、同じく全ポートがギガビット対応が特徴のマイクロ総研のSuperOpt-GFiveに比べると、非常にシンプルな印象だ。


写真05:
基板表面。かなりシンプルな構成で、ギガビット対応製品としては集積度が高い印象だ
写真06:
裏面。目立ったチップは実装されておらず、SDRAM用と思われる空きパターンがある以外に特徴はない

 まずメインコントローラは、台湾Star Semiconductorの「STR9102」を使用(写真07)。200MHz駆動のARM922コアに2ポートのGbE MAC、4ポートGbEスイッチ、ハードウェアNAT、IPv4のオフロードエンジンなどを詰め込んだネットワークプロセッサである。ここまでハードウェアを搭載していれば、CPUが220MIPSそこそこのARM9でも十分なスループットが確保できるはずである。その一方で機能は限られるようで、パケットフィルタリングなどに未対応なのも仕方がないところだろう。このあたりは全部CPU任せになっていると思われる。

 ちなみに内部のGbEスイッチは、CPUと2つのGbE MAC、および(恐らくは)PCIバス経由のデバイスを接続する形になっているようで、ここからいきなりLAN側の4ポート分が出せるわけではない。そこでLAN側についてはさらにVitesse Semiconductorの「VSC7385」を搭載(写真08)している。これは5ポートのスイッチであるが、ちょっと面白いのはRGMIIインターフェイス経由で外部のCPU(この場合はSTR9102)でコントロールする以外に、内蔵している8051相当のCPUを使って自分自身でコントロールすることも可能な点だ。ただ、今回の構造を見ると、VSC7385専用のフラッシュメモリやRAMは配置されていないので、このあたりは普通にSTR9102からコントロールしていると思われる。とは言え、機能的にはインテリジェンススイッチに近く、どうしてこういう構成にしたのかちょっと興味をそそられるところだ。


写真07:
ARM922互換のネットワークプロセッサ、Star Semiconductorの「STR9102」をメインプロセッサに搭載
写真08:
5ポートのPHY層を搭載するスイッチ、Vitesse Semiconductorの「VSC7385」

 このほか、メインメモリにESMTのDDR SDRAM「M13S128168A」(写真09)、フラッシュメモリにMacronics社の「29LV800BTTC」(写真10)といったところが使われているが、このあたりは標準品である。


写真09:
メモリはESMTの「M13S128168A」。128Mbit(16MB)を1枚実装するのみ
写真10:
こちらはMacronics社の1MBフラッシュ、「29LV800BTTC」




対象が限られるのが惜しい製品

 以上の通り、本製品を試用してきたが、設定画面や付属品などから見るに、個人ユースに特化しすぎた印象が強い。しかし、その個人ユースにおいて、WAN側のギガビットイーサの効果を享受できるとすれば、7月にサービスが開始されたケイ・オプティコムの「eo光ネット 1ギガコース」程度だ。光回線であっても回線末端からルータやPCまでは100Mbpsというサービスがほとんどであることを考えれば、現状では高い効果を期待するのは難しい。

 一方、LAN側のネットワークをギガビットイーサ化するために有効かといえば、WAN側が100BASE-TXでも良いのであれば数千円から高スループットのルータが販売されており、これにギガビット対応スイッチングハブを組み合わせたほうがコスト的には安く上がる。配線がシンプルになる以上のメリットがないわけだ。

 ということで、WAN/LAN全ポートがギガビットイーサに対応して2万円前後という、製品自体のインパクトは決して小さくない。しかし、将来的にギガビット接続サービスが開始されたときにルータを継続使用するための投資と割り切れるのならば魅力的な製品、と言えるだろう。




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関連情報

URL
  製品情報
  http://www.corega.co.jp/product/list/router/barprog.htm
  コレガ
  http://www.corega.co.jp/

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2005/08/11 11:00

槻ノ木 隆
 国内某メーカーのネットワーク関係「エンジニア」から「元エンジニア」に限りなく近いところに流れてきてしまった。ここ2年ほどは、企画とか教育、営業に近いことばかりやっており、まもなく肩書きは「退役エンジニア」になると思われる。
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