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2005年

2004年

槻ノ木隆の
NEW PRODUCTS IMPRESSION
[特別編]OSによるルータパフォーマンスの違いを見る

 前回取り上げた、バッファロー「WZR-G108」の記事において、Windows XP ProfessionalとFedora Core3において、大きく結果が異なるという現象が起きた。この点について、もう少しテスト対象のOSを増やしてチェックしてみたい。





前々回のアイ・オー・データ製ルータも再テスト

写真1:
前回の記事で紹介したバッファローの「WZR-G108」
 前回紹介した、バッファローのWZR-G108の記事における結果では、クライアント側環境を固定して、サーバー側のOSをWindows XP Professional、Fedora Core 3という2つのパターンで検証した。結果を振り返ってみると、ルータを介した場合の結果で、前者は40~45Mbps程度、後者は90Mbps弱と、倍近い差が発生している。

 ちなみに、当該製品の公称スループットは同社の製品紹介ページにも記されているとおり、FTP転送の実効スループットで94Mbpsとされている。サーバー側に採用されているOSは「RedHatLinux 7.3」となっている。

 さらにさかのぼって、前々回に取り上げたアイ・オー・データ機器の「WN-APG/R」の記事にも注目してみたい。こちらの記事では、サーバー側にWindows XP Professionalを使用した環境でしかテストを行なっていないが、結果は30Mbps台前半という低い速度に終わっている。

 この製品の公称スループットは、同社の製品紹介ページによれば、FTP転送時の実効スループットが92.47Mbpsとされている。こちらの測定環境は、サーバー側OSにWindows 2000 Serverが使われているようで、同じWindows NTベースのアーキテクチャを使ったOSではあるのだが、公称値とテスト結果が大きくかけ離れるものとなった。

 そこで、まず前回テストの裏付けと、前々回テストのリトライを行なってみたい。テストに用意した環境は表1、図のとおりだ。サーバー側環境は前回、前々回と大きく変わらないが、HDDをやや高速な製品に変更したほか、CPUをEM64Tに対応するPentium4 660へと変更している点が違いとなる。

 クライアント側にはエプソンダイレクトのノートPC「Endevor NT7200Pro」を使用。今回は無線LANのテストは行なっておらず、内蔵されたNICであるBroadcomのギガビットイーサコントローラを使用している。


写真2:
こちらは前々回の記事で紹介したアイ・オー・データ機器の「WN-APG/R」
写真3:
クライアントPCとして利用した、エプソンダイレクトの「Endevor NT7200Pro
表1:テスト環境
サーバー クライアント-ノートPC
エプソンダイレクト
Endevor NT7200Pro
CPU Pentium4 660 PentiumM 765
マザーボード Intel D925XCV NA
メモリ PC4300 DDR2 SDRAM 1GB DDR SDRAM 512MB
HDD WesternDigital WD360GD 80MB HDD(Ultra ATA/100)
LANカード Marvell Yukon Broadcom NetXtreme


図:テスト環境

 実施するテストは、サーバーとクライアントをハブを介して直接接続する「直結」である。これは、最大1,000Mbpsでの接続となる。ほか、各ルータを介した場合のスループットで、NATやIPフィルタリングなどを一切設定しない状態で使用する。

 転送条件は3つである。Internet Explorerの「対象をファイルに保存」を使用した、HTTPプロトコルによるダウンロード。Windows標準のFTPクライアントによる「get」「put」の各コマンドを利用したダウンロード/アップロードである。これらをクライアントから実行し、500MBのテキストファイルを3回転送した平均値を結果として提示する。

 では、結果を紹介したい。表2がサーバーにWindows XP Professionalを使用したもの。表3がFedora Core3を使用したものである。バッファローのWZR-G108のダウンロード側の結果は、前回のテストと極端に違うものではない。ただ、従来の本連載ではサーバー側からクライアント側OS上のHTTP/FTPサーバーを参照している上り方向のテストを、今回はOSの評価を主題としているのでクライアントからアップロードするテストへ変更しているが、この結果は、Windows XP Professionalをサーバーとした場合のほうが優れるという結果になっている。サーバー側の視点でいえば上りということになるが、この方向で傾向が逆転する点にも注意を要しそうだ。

表2:Windows XP Professional SP2
プロトコル 転送条件 直結 バッファロー
WZR-G108
アイ・オー
WN-APG/R
http Download 137.33Mbps 49.97Mbps 31.73Mbps
ftp Get 148.80Mbps 52.96Mbps 33.79Mbps
Put 222.67Mbps 93.60Mbps 56.24Mbps

表3:Fedora Core 3
プロトコル 転送条件 直結 バッファロー
WZR-G108
アイ・オー
WN-APG/R
http Download 87.47Mbps 89.07Mbps 56.93Mbps
ftp Get 78.85Mbps 92.53Mbps 55.25Mbps
Put 217.87Mbps 72.19Mbps 58.43Mbps


 一方、アイ・オー・データ機器のWN-APG/RのWindows XP Professionalにおける結果も前々回の結果と同様だ。ただ、Fedora Core 3を使った場合は、ダウンロード/アップロードともに55Mbps強と性能が大きく跳ね上がり、いずれもFedora Core 3環境のほうが優れている。

 ちなみに、直結状態の結果を見ると、Fedora Core 3のダウンロード結果が奮わない。100BASE-TXポートを持つルータを介した場合よりも、ギガビットイーサ対応ポートで直結した場合のほうが遅いということもあり得ない話で、異常値と思われる結果になっている。

 それはともかく、前々回はスループットにおいて高い評価はできなかったアイ・オー・データ機器のWN-APG/Rだが、環境においてはもう少し評価を見直しても良さそうである。





さまざまなWindows環境を試す

 さて、ここまでの結果を見ると、クライアントからのアップロードを除けば、Windows XP Professinalは速度が落ちるという結果が見えている。そもそもサーバー用のOSでないWindows XP Professionalだけの現象であれば、大きな問題ではないが、それでもローカルの簡易サーバーとして利用する例もあるだろうし、無視はできない。

 さらに気になるのが、Windows XP Professionalだけの問題であるか、という点だ。そこで環境、テスト条件はまったく統一し、サーバー側のOSを「Windows 2000 Professional」「Windows XP Professiona x64 Edition」へと変更してテストした結果が表4と表5だ。

 まず、Windows 2000 Professional(表4)の結果を見てみると、これはWindows XP Professionalに酷似した結果といえる。クライアントからダウンロードを実行した場合のスループットが奮わず、アップロードはまずまず高性能といった傾向である。

表4:Windows 2000 Professional SP4
プロトコル 転送条件 直結 バッファロー
WZR-G108
アイ・オー
WN-APG/R
http Download 142.40Mbps 50.48Mbps 32.53Mbps
ftp Get 140.53Mbps 50.67Mbps 32.11Mbps
Put 257.87Mbps 80.80Mbps 57.52Mbps


 ところが、Windows XP Professional x64 Edition(表5)の結果を見てみると、この傾向が大きく変わる。とくに顕著なのがHTTPのダウンロードで、これはFedora Core 3に迫る性能の高さを見せている。しかし、FTPはGetがやや高い程度、Putに関してはWindows XP/2000 Professionalにも劣る結果になっている。

表5:Windows XP Professional x64 Edition SP1
プロトコル 転送条件 直結 バッファロー
WZR-G108
アイ・オー
WN-APG/R
http Download 220.00Mbps 84.27Mbps 51.23Mbps
ftp Get 148.27Mbps 53.39Mbps 33.63Mbps
Put 177.07Mbps 73.52Mbps 55.79Mbps


 ここで注目したいのが、IISのバージョンの違いである。Windows 2000/XP Professionalには、同じIIS Ver.5系が使われている。一方、Windows XP Professional x64 EditionではIIS Ver.6が採用されているのだ。

 そこで、Windows XP ProfessionalのHTTP/FTPサーバーソフトを変更してみることにした。使用したのは、HTTPサーバーが「Apache Ver.2.0.54」、FTPサーバーが「War FTP Daemon 1.65」である。結果は表6に示したとおりだ。

表6:Windows XP Professional SP2
+Apache+War FTP Daemon
プロトコル 転送条件 直結 バッファロー
WZR-G108
アイ・オー
WN-APG/R
http Download 197.60Mbps 46.72Mbps 31.68Mbps
ftp Get 213.07Mbps 50.61Mbps 31.28Mbps
Put 216.27Mbps 74.64Mbps 57.04Mbps


 これはWindows XP Professional+IISと比較して、直結状態ではダウンロード速度がかなり速度が向上する傾向にあるが、ルータを介すると同等かやや低い程度に落ち着いてしまう。

 ということは、ダウンロード速度の向上からわかるとおり、サーバーソフトの種類による性能の変化のほか、OS側のNIC-ルータ間の処理にも違いがあるということだろう(NICのドライバはいずれも同一のものを使っている)。

 さて、少しOSは変わるが、さらに大きな問題となるのがベースが同じであるサーバー向けのWindowsシリーズで同じ現象が起きないかという点だ。サーバー向けで大きな性能の低下が見られるようでは致命的である。そこで、以下の各OSをサーバーにした場合のスループットを測定することにする。

・Windows 2000 Server SP4(表7)
・Windows Server 2003 Standard Edition SP1(表8)
・Windows Server 2003 Web Edition SP1(表9)

表7:Windows 2000 Server SP4
プロトコル 転送条件 直結 バッファロー
WZR-G108
アイ・オー
WN-APG/R
http Download 229.87Mbps 89.60Mbps 56.27Mbps
ftp Get 223.20Mbps 89.60Mbps 55.41Mbps
Put 135.47Mbps 80.13Mbps 58.21Mbps

表8:Windows Server 2003 Standard Edition SP1
プロトコル 転送条件 直結 バッファロー
WZR-G108
アイ・オー
WN-APG/R
http Download 150.67Mbps 77.20Mbps 48.85Mbps
ftp Get 193.87Mbps 92.00Mbps 58.05Mbps
Put 223.73Mbps 76.48Mbps 59.49Mbps

表9:Windows Server 2003 Web Edition SP1
プロトコル 転送条件 直結 バッファロー
WZR-G108
アイ・オー
WN-APG/R
http Download 151.20Mbps 85.07Mbps 49.68Mbps
ftp Get 181.07Mbps 93.07Mbps 58.88Mbps
Put 179.47Mbps 93.07Mbps 60.29Mbps


 結果は、各OSともまずまずの性能といって良いものになっている。ただ、局所的に見ると、Windows Server 2003 Standard EditionのHTTPダウンロードや、同Web Editionの直結状態でのテストは、やや奮わないものになっているが、クライアント向けの各Professionalと比較すれば、速度面の安定性は高そうだ。

 ちなみに、先述のとおり、アイ・オー・データ機器のWN-APG/Rのメーカー測定環境は、Windows 2000 Serverであった。この環境での公称値は92.47Mbpsとされているが、実際は55Mbps前後に落ち着いている。同製品にとってはFedora Core 3、Windows Server 2003の各環境に並ぶ高い値になっているものの、公称値は及ばない結果となった。





サーバー環境による性能差に留意を

 このように結果を見てくると、サーバーで多用されるLinuxやサーバー向けWindowsでは、極端に性能差が発生せず、少なくとも個人や小規模オフィスで問題になることはないだろう。ただ、本来はクライアント向けであるWindows XP/2000 Professionalをサーバーに利用する場合は、性能に注意を要することは間違いなさそうだ。

 また、ルータの性能をチェックするに当たり、可能であれば複数のサーバーでチェックする必要があるようだ。これは、筆者の自戒の意味もあるが、メーカーに対しても訴えておきたい。今のところ、この傾向差を利用したPRはなされていないように見受けられるが、例えばメーカーが複数のOSを試し、もっとも良かった値を公称値としてアピールすることもできるわけだ。

 公称スループット値について論議が交わされたのは今は昔の話になるが、今後、大規模から小規模まで多様化するサーバー環境において、各メーカー間で測定環境に至るまでも統一が必要になる可能性も小さくなさそうだ。




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2005/05/18 10:52

槻ノ木 隆
 国内某メーカーのネットワーク関係「エンジニア」から「元エンジニア」に限りなく近いところに流れてきてしまった。ここ2年ほどは、企画とか教育、営業に近いことばかりやっており、まもなく肩書きは「退役エンジニア」になると思われる。
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