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2005年

2004年

槻ノ木隆の
NEW PRODUCTS IMPRESSION
リンクシス RV082-JP
~Dual WANポート搭載の有線LANルータ~

写真01:
RV082-JP。ちなみにCD-ROMの中身は製品マニュアルのPDFとAcrobat Readerのみ
 このところ、リンクシス製品のレビューが続いており、しかも変なものばかり取り上げている気もする。今回の製品に至っては新製品ですらなかったりするのだが、まぁご容赦いただきたいと思う。

 今回取り上げるのは、Hawking Technologiesの「FR24」に続く、Dual WANポートを装備するリンクシスの「RV082-JP」である。実はこの製品、発表されたのは2003年末のこと。

 当時は価格も88,000円と高価で、一般ユーザー向けというよりは事業者向けであることが明確だった。しかもこの製品、2004年7月末で一般販売を1度中止している。要するにシステムベンダー向けの販売に特化させる、ということだったらしい。にもかかわらず、2005年5月末には一般販売を再開するといったことになっており、値段も大幅に下げられた。価格比較サイトなどで調べると、現在の最安値は3万円前半まで落ちている。

 今回評価に使ったRV082-JPは、秋葉原の俺コンアキバで購入したものだが、実売価格で38,800円だった。確かに普通のブロードバンドルータとは比較にならない程高いが、Dual Portという特徴を考えれば、他にはない低価格な製品とも言える。

 先に示したFR24は筆者宅で元気に動いているわけだが、さすがに12Mbpsというスループットは如何ともしがたく、そろそろ代替ルータを、と探してた矢先だけに、この製品の性能が非常に気になるところだ。そういうわけで、極めて個人的な動機でこの製品を取り上げてみたいと思う。





業務用色の強いパッケージ

 さて、真っ白な箱にLinksysのロゴが入っただけ、というパッケージを開くと、中に入っているのは本体と電源ケーブル、LANケーブル1本、ゴム足、最小限のマニュアルとCD-ROM、それにラックマウント用の金具とネジだけである(写真01)。余分なものは一切入れないという潔さや、19インチラック搭載用の金具が標準で付属してくるあたりが、いかにも業務向けという雰囲気である。コネクタ類とLEDなどはすべて前面に配され(写真02)、背面は電源コネクタだけ(写真03)、というあたりにもそうした傾向を強く感じる。

 フロントには8ポートのLAN、WAN1およびWAN2/DMZ兼用ポートが設けられ、その横にリセットスイッチが配される(写真04)。LED類は必要十分というべきか、最小限というべきか微妙なところではあるが、詳細な情報が必要ならWebの設定画面からもっと細かく取れるため、実用上はこれで十分だろう(写真05)。ちなみに本機はファンレス構成で、一切騒音はない。側面には通気穴こそ用意されているが(写真06)あまり熱くもならず、家庭で使っていても支障はない。


写真02:
本体サイズは279×241×44mm(幅×奥行×高)。家庭用ルータとしてはゴツいが、業務用としては小さい方である
写真03:
製品シリアルやMACアドレスは裏面にまとめられている。業務用ならこの辺を前面に記しても良かったような気もするが、裏面記載の製品も多いから、特に欠点というほどでもないだろう
写真04:
カラーリングと相まって、LinksysというよりはCiscoの製品のような錯覚を覚えそうだ

写真05:
各ポートのLink状況と、DMZ/Dual WANのどちらのモードで動いているかはここから判別できる
写真06:
あまり積極的に通気を考えているようには見えない穴。かといって、利用時にふさぐのは感心できない




業務向けらしいメニューの設定画面

 RV082-JPの場合、CD-ROMからのセットアップなどはないので、設定はWebブラウザ経由でのみとなる。LANポートにPC(でもMacでも何でも良いが、DHCPクライアントになれるもの)を接続し、http://192.168.1.1/にアクセスするだけである。

 設定画面は最近のLinksysに共通のものであるが(画面01)、システム概要で表示される項目はやはり家庭用ルータの画面とはだいぶ異なっている。基本的なセットアップの中で、Dual WAN/DMZポートをどちらにするかの設定が行なえる(画面02)。WAN接続の場合、ここから各ポートについてDHCP/Static IP/PPPoE/PPPoE MultiSession/IP Unnumbered/PPTPからどれを利用して接続できるかを指定する形になる。


画面01:
シリアルナンバーやポートステータスの表示などは、あまり家庭用では見かけない機能だ。ルータ本体はマシンルームに鎮座、なんてケースもあるから業務用では当たり前の機能ではあるが……
画面02:
DMZとして使う場合、DMZとして割り当てられたIPアドレスをここで指定する形になる

 パスワード(画面03)、日時指定(画面04)の説明は不要だろう。DMZホスト(画面05)はいわゆる「なんちゃってDMZ」で、おそらくはDual WAN構成で公開サーバーを立てる場合などに使うのであろうが、さすがにこれを1台でやらせるのは欲張りすぎな気もする。


画面03:
できればユーザー名も変更できるようにして欲しいところだ(ユーザー名がadminで固定されるから、相対的に侵入がしやすくなることになる。まぁ、パスワードを推測しにくいものに変えることである程度は防御できるが)
画面04:
NTPが標準サポートなのは、性質を考えれば当然か
画面05:
Dual WAN+DMZを安全に構成するためには、RV082-JPとLANの間に「別の」ルータをもう1台挟むべきであろう。間に入れるルータは安価なものでも良いから、そうした構成を取ることを前提にすれば、便利な機能となる

 DMZモードではあまり意味はないが、Dual WANの場合にはPortフォワーディングも設定できる(画面06)。また、UPnPフォワーディングもサポートされている(画面07)。さらに、One-to-One NAT(画面08)という、あまり見ない機能を備えているのも特徴的だ。


画面06:
ポートフォワードとポートトリガの両方が用意されているのは便利
画面07:
このあたりは業務用というよりは家庭用向けといった感じではある
画面08:
これは複数のグローバルIPを、複数のLAN側プライベートIPと1対1対応させるNATで、このあたりで再び業務用といった趣を見せる

 MACアドレスの複製(画面09)は普通のことで、ダイナミックDNS対応(画面10)はやはり家庭向けか? ルーティング設定(画面11)は家庭向けであっても普通に存在する、普遍的な項目なので、このあたりはあるべきものが当然のようにあるというわけだ。DHCPに関しては、MACアドレスベースでの静的割り当ても可能になっており、機能的な過不足はない(画面12)。リース一覧を簡単に表示できるのも便利だ(画面13)。


画面09:
家庭向けのみならず業務用でもこの機能を持つものは多い。むしろ、ないほうが驚きだろう
画面10:
対応するのはDynDNS.orgのみ。仕様上はDual WANで両方が別々のドメインに対応ということが可能だが、現実問題としてあり得るのかはちょっと謎。このあたりは家庭向けっぽい
画面11:
基本はNAT(NAT+というべきか)を使った動的ルーティングだが、必要に応じてその他のモードでも動作できる。とはいえ、これらがどの程度使われるのかはちょっと謎だ。業務用途では多少はあり得るだろう

画面12:
配布アドレスはあくまでClass Cのセグメントに限定される。試しにLAN側をClass Bに設定してみても、配布範囲はClass Cのままである。現実問題としてこれ1台でClass Cを超える範囲を賄うケースは少ないと思うが、ちょっと整合性が気になるところだ
画面13:
一覧がぱっと見られるのは、案外便利である。リースしたアドレスを破棄できるのはちょっと珍しい

 システム管理では、Dual WANの動作設定(画面14)、SNMP(画面15)あたりが特徴的な部分。あとは診断(画面16)、リセット(画面17)、ファームウェア更新(画面18)、再起動(画面19)、設定のバックアップ/リストア(画面20)など、わりと一般的な機能が用意される。

 ちょっと業務寄りなのが、ポート管理の部分。ポート設定(画面21)でできることそのものはあまり多くないが、一応QoSの設定などは可能だ。むしろ、ポートごとにステータスを確認できる(画面22)ことの方が便利であろう。


画面14:
Dual WANの構成を代替構成(プライマリ回線がダウンしたらセカンダリを起動する)と、ロードバランシング(両方の回線を同時に使う)のどちらかで選べる。ロードバランシングの場合は、それぞれの回線の最大速度を設定することで、この範囲でバランシングを行なえるようになる
画面15:これはSNMPを使って管理する場合にEnableにする。SNMPについてはこちらを参照 画面16:
pingまたはnslookupを実行できる。もうすこし、結果をCopy&Pasteしやすくしてくれると便利だったのだが

画面17:
リセット画面。説明の必要はないだろう
画面18:
ちなみにRV082-JPの場合、2005/2/4付けのV2.0.0.21 JPが最新版。米国のRV082の場合、2005/7/28に1.1.6.14がリリースされているが、もちろん互換性はないし、PPPoEなどの仕様が異なっているので入れるわけにはいかない。まるっきり改定がない(米国版だと2005/4/28以降のファームにはQuickVPN Utilityなる機能が入ったが、日本版ではこうした話はなし)のはちょっと不満が残るところ
画面19:
バックアップバージョンに戻せる、というあたりがちょっと斬新である

画面20:
当然このバックアップ先/リストア元は、接続しているクライアント側である
画面21:
一応、設定/管理ができるからDumb Hubではないのは間違いないが、Intelligent Switchと呼ぶには機能が少なすぎる。優先度にしてもIEEE 802.1pとは無関係なようである。ある程度まともな制御をやりたい場合は、RV082-JPの下にIntelligent Switchをぶら下げるのが無難だろう
画面22:
ぱっとステータスを見ることができるのは便利。ただ、集計を取りたいと思った場合などには使いにくいインターフェイスではある。こうした場合はSNMPを使ってリモートからデータを取るのが正しいアプローチなのであろう

 ファイアウォールに関しては、不必要に細かくはないが、必要な機能は用意されている(画面23)。他にアクセスルール(画面24)とコンテンツフィルタ(画面25)も用意される。このあたりは家庭用というよりは業務用っぽい感じだが、最近は家庭用でもこの程度の機能を持つものはあるので、それほど奇異なわけではない。


画面23:
ファイアウォールを有効にすると、SPI/DoS/リクエストブロックの各項目が有効になる。ちなみにDoSでは、SYN Flooding、Smurf、LAND、Ping of Death、IP Spoofing、reassembly attacksなどをルータで止めるというレベルで、例えばHTTPリクエストを集中して掛けられた場合にはスルーする模様だ
画面24:
これはアプリケーション(というか、ポート番号)と時間をベースにアクセス許可/拒否を決められるもの。小さい事業所などでは便利だろう
画面25:
おなじみ、禁止ドメインを指定できるコンテンツフィルタだが、今時1つや2つ制限しても意味ないわけで、外部からリストを読み込ませるとかいう機能がないと現実問題として使えないだろう

 VPNに関しては概要(画面26)、Gateway to Gateway(画面27)、Client to Gateway(画面28)、VPNパススルー(画面29)の設定が可能だ。現実問題としてRV082-JPの場合、本店と地方拠点間でVPNを構築し、この際各拠点はプライマリとバックアップの回線を(例えばBフレッツとADSLなど)用意して回線を多重化する、なんて使い方が1番多いと思われる。

 実際、リンクシスの構成例を見ると、そんなケースばかりが出てくる感じだ。従って、この部分はRV082-JPのかなめであり、過不足ない設定が可能になっている。

 ログに関しては、当然Syslogに加え、メールでの送信などが用意される(画面30)ほか、システムステータスが表示できるようになっている(画面31)。このほか、ウィザード(画面32)とサポート(画面33)が用意されるが、これはおまけのようなものである。


画面26:
大まかな情報はこの画面で表示でき、詳細ボタンを押すと各トンネル/グループごとの情報が別ウィンドウに一覧表示される
画面27:
ゲートウェイ種類にはIPアドレスのほかIPアドレス(Static/Dynamic)+FQDN/USER FQDNが用意される。IPSecの暗号化はDESのほか3DES/AES-128/AES-192/AES-256が、認証はMD5とSHA1がそれぞれ準備されている。また詳細設定を選ぶと、もっときめ細かな設定が可能だ。このあたりの用意されている機能を見ると、CPU(Intel IXP425)の暗号化アクセラレータが持つ機能の範囲で、使える限りの機能を並べましたという感じである
画面28:
対クライアントでも設定項目はほとんど変わらない。詳細設定の中でいくつか項目が減る程度である

画面29:
これはパススルーだから、単にするかしないかの話で、たいした設定はない
画面30:
個人的な感想を言えば、SyslogとE-Mailで同じログが送られてきても困るわけで、各々で別々にロギング項目が選べるとより便利な気はする
画面31:
ログそのものの閲覧は画面30で行なえるので、こちらは単なるポートステータス。ただ、ほぼ同じ内容はポート管理→ポートステータス(画面22)でも行なえ、単にLANの分がまとめて表示されるのが便利という程度

画面32:
基本設定ウィザードはシステム概要(画面01)からも、アクセスルールウィザードはファイアウォール→アクセスルール(画面24)→ルールを追加からも起動できるので、この画面がなくても実は困らない
画面33:
オンラインマニュアルを見る場合には便利……に思えるが、実はリンクシスのダウンロードページに飛ぶだけで、しかも肝心のRV082-JPのページはPDFが置いてあるだけである。これなら、クライアントにCD-ROMで配布されたPDFを入れておくほうが便利だろう

 概して、家庭用よりもちょっと設定項目は豊富だが、業務用にしては不足気味というか、割と中途半端な感じではある。ただ、本稿の趣旨は家庭向けルータとしての評価だから、その範囲で言う限りにおいては十分な機能と設定項目を持っている(一部機能は明らかにオーバークオリティ)と結論づけて構わないだろう。

 業務用としては物足りないかもしれないが、その場合の比較の対象は10万円を超えるルータなのであって、4万円未満という価格のこの製品にそこまで求めることの是非をまず論ずる必要がありそうだ。





十分な性能

 さて、それでは性能を具体的に測定してみたいと思う。今回は、ちょっと機材の関係でいつもと異なるサーバー類を用意した。Dual WAN環境ということで、Windows XP Professionalが動作するサーバーを2台、クライアントも同じくWindows XP Professionalが動くものである。各々のサーバーの構成は表1に示すものだ。昨今のマザーボードの場合、オンボードでGbEコントローラが搭載されているが、今回はあえてこれを避けてIntel 21143-PDが搭載されたLANカードをPCIバスに装着する形で、最大速度を100BASE-TXに合わせるようにした。

表1:テスト環境
Server1 Server2 Client
CPU Pentium 4 670 Pentium 4 XE 3.4GHz Athlon 64 4000+
M/B Intel D945GPT Intel D925XCV ASUSTeK A8N32-SLI
Memory PC2-5300 512MB×2 PC2-4300 512MB×2 PC3200 512MB×2
Video 内蔵グラフィック nVIDIA GeForce PCX 5750 nVIDIA GeForce 6600 GT
HDD Seagate Barracuda 7200.7 SATA 120GB
LAN Intel 21143-PD LANカード(PCI)
OS Windows XP Professional 日本語版+SP2


・直結環境(図1)

 さて、まずは直結環境での比較である。従来のテストだとサーバーとクライアントが1対1だから、単に双方向で示せばよかったが、今回は3台での構成なので、真面目に総組み合わせをやるとテストパターンが膨大になってしまう。そこで、以下の6パターンに絞って測定を行なった。

Server1→Client(Server1から単独ダウンロード)
Server2→Client(Server2から単独ダウンロード)
Server1、2→Client(Server1と2から同時にダウンロード)
Client→Server1(Server1へ単独アップロード)
Client→Server2(Server2へ単独アップロード)
Client→Server1、2(Server1と2へ同時にアップロード)


 結果は表2の通りである。httpではIISの性能の関係で単独だと70Mbps程度だが、同時アップロード/ダウンロードだとほぼ100BASE-TXの性能をフルに使いきっていることがわかる(以前このあたりで詳細なテストを行なっている)。今回、ついでにNetperfの2.1pl1も用意して、TCP Stream/UDP Streamにおける転送性能も測定してみたが、こちらも90Mbpsを軽く超えていることがわかる。


図1:直結環境

表2:直結
転送方向 転送速度(Mbps)
ftp Server1→Client 83.81
Server2→Client 75.96
Server1、2→Client 93.98
Client→Server1 93.62
Client→Server2 94.69
Client→Server1、2 99.49
http Server1→Client 83.03
Server2→Client 70.32
Server1、2→Client 97.06
Client→Server1 72.09
Client→Server2 77.40
Client→Server1、2 93.91
Netperf TCP STREAM Client→Server1 92.14
Client→Server2 93.83
Client→Server1、2 94.66
UDP STREAM Client→Server1 95.62
Client→Server2 95.63
Client→Server1、2 95.93


・Dual WAN環境(図2)

 各マシンの性能がわかったところで、RV082-JPを入れてDual WAN環境でのテストを行なってみた。結果は表3に示す通りである。まとめると以下の通りだ。

・HTTPプロトコルでファイアウォールをEnableにすると、Client→Server1、2へのアップロードができない(なぜかFTPは通る。不思議である)。

・概してダウンロード(Server→Client)は高速だが、アップロード(Client→Server)は遅い。もっとも遅いといっても、例えばFTPならば94.86Mbpsが87.37Mbpsになるとか、HTTPなら88.36Mbpsが86.65Mbpsになるという程度で、確かに遅いことは遅いが十分な性能とはいえる。

・NATのみの場合とNAT+ファイアウォールの場合を比較すると、ほとんど性能が変わらない。せいぜいが1Mbps未満の差であって、ファイアウォールの有無は性能にほとんど影響を与えていないことがわかる。

 PPPoEを使わない、つまりプロトコルオーバーヘッドが最小限での環境ではあるが、それでもこの数字はかなり優秀な部類に入ると思う。


図2:テスト環境その1

表3:Dual WAN
プロトコル オプション 転送方向 転送速度(Mbps)
ftp NAT Server1→Client 58.14
Server2→Client 58.82
Server1、2→Client 87.37
NAT+
ファイアウォール
Server1→Client 58.03
Server2→Client 58.47
Server1、2→Client 87.32
NAT Client→Server1 94.34
Client→Server2 94.58
Client→Server1、2 94.86
NAT+
ファイアウォール
Client→Server1 94.28
Client→Server2 94.44
Client→Server1、2 94.85
http NAT Server1→Client 57.87
Server2→Client 60.24
Server1、2→Client 86.65
NAT+
ファイアウォール
Server1→Client 57.77
Server2→Client 58.48
Server1、2→Client 86.50
NAT Client→Server1 48.99
Client→Server2 52.91
Client→Server1、2 88.36
Netperf TCP STREAM NAT Server1→Client 85.76
Server2→Client 87.01
Server1、2→Client 94.32
Client→Server1 80.10
Client→Server2 82.64
Client→Server1、2 79.30
NAT+
ファイアウォール
Server1→Client 84.80
Server2→Client 86.54
Server1、2→Client 94.29
UDP STREAM NAT Server1→Client 95.56
Server2→Client 95.57
Server1、2→Client 95.85
Client→Server1 80.32
Client→Server2 82.98
Client→Server1、2 81.68
NAT+
ファイアウォール
Server1→Client 95.57
Server2→Client 95.57
Server1、2→Client 95.82


・DMZ環境(図3)

 あえてDual WANではなくDMZにしたらどうなるか? というテストも行なってみた。このケースの場合、Client→WANへのアップロードというケースはあまり考えられない。そこで、テストケースを以下のように切り替えてみた。

DMZ⇔WAN
DMZ⇔LAN
DMZ⇔WAN,LAN

 先のテストでServer2とClientが入れ替わるような形である。結果は表4に示す通りであるが、DMZ→WANとDMZ→LANの性能を比較すると、FTP/HTTP/Netperfのどの数字を見ても明らかにDMZ→LANが高速である。おそらくパケットフィルタリングをDMZ→LANでは行なっていない、ということなのであろうが、結果として10Mbps程度の性能差がついている。とはいえ、DMZ⇔WANのスピードはそれでも80Mbps程度をキープしているのは優秀だと言える。


図3:テスト環境その2

表4:DMZ
プロトコル 転送方向 転送速度(Mbps)
ftp DMZ→WAN 50.21
DMZ→LAN 60.23
DMZ→WAN,LAN 84.15
WAN→DMZ 86.15
LAN→DMZ 94.60
WAN,LAN→DMZ 99.91
http DMZ→WAN 50.34
DMZ→LAN 62.09
DMZ→WAN,LAN 89.50
Netperf TCP STREAM LAN→DMZ 88.79
WAN→DMZ 80.91
LAN,WAN→DMZ 93.18
UDP STREAM LAN→DMZ 95.57
WAN→DMZ 80.89
LAN,WAN→DMZ 88.14


・PPPoE環境(図4)

 最後にSingle WAN環境に戻し、ONU経由でBフレッツ ニューファミリータイプに接続した場合の性能を比較してみた。表5がその結果であるが、フレッツ・スクウェアの速度測定では平均88Mbpsをマーク。またSpeed.rbbtoday.comを使って東京大手町にアクセスした結果でも70Mbps前後の成績をマークしており、こちらもかなり優秀な部類に入る。


図4:テスト環境その3
表5:PPPoE
測定サイト 転送方向 平均速度(Mbps) 最高速度(Mbps)
フレッツ・スクウェア Download 88.08 88.50
Speed.rbbtoday.com
(東京大手町)
Download 73.86 75.56
Upload 63.63 73.60





シンプルな内部

写真07:
基板裏面には何も実装されておらず、ここに見えるのがすべての構成パーツである
 この高性能を実現する内部であるが、これがまた恐ろしいほどに単純である。ケースの分解にはドライバは不要であり、上蓋とフロントパネルを取り去ると、こんな内部が出現する(写真07)。中央に位置するのがIntelのIXP425で(写真08)、その左脇には同じくIntelのTE28F128(128Mbit、70ns)と、台湾Deuteron ElectronicsのP2V28S40BTP(128Mbit/133MHz)×2が配される。

 LAN側には(いつの間にやらInfineonに買収されてしまった)元台湾ADMTekのADM6999(写真10)が、WAN1とWAN2/DMZには同じくInfineonのADM6996L(写真11)がそれぞれ配されている。

 ここから考えると、WAN1とWAN2/DMZの合計スループットは最大100Mbpsに制限されるようで、実際実験結果もこれを裏付けている。また、WAN1⇔DMZの通信では、1度ADM6996LからIXP425にパケットを送り、ここでルーティングを行なってからもう1度ADM6996Lに送り返すという処理が行なわれることになる。当然、これはあまり効率が良くないことになるが、先にも述べた通りWAN1⇔DMZのルーティング性能はやや落ち込んでいることが実験結果からも示されており、逆になんでルーティング性能が低いのかがこれで理解できるともいえる。


写真08:
533MHz駆動のIXP425。533MHz駆動のXScaleコアに2つのMII、1つの暗号化アクセラレータ、それと3つのNPEを内蔵する。配線を見る限り、LANがMII-0、WAN1とWAN2/DMZがMII-1に接続されている模様だ
写真09:
フラッシュは生産終了品。SDRAMのMIRAブランド(なんで社名と無関係なMIRAブランドなのかは不明)は、格安メモリモジュールなどでよく見かける。ただSDRAMはPB Freeの166MHz品で、これを133MHzで使うことで安定動作を狙っているようだ

写真10:
9ポートスイッチのADM6999。1ポートがIXP425に、残り8ポートがLAN側に接続される
写真11:
5ポートスイッチのAMD6996L。要するにWAN1とWAN2のスループット合計は最大でも100Mbpsになる(IXP425とADM6996Lの間が100Mbpsだから)というわけだ。とはいえ、LAN側も100BASE-Tだから、これで良いという割り切りなのかもしれない




家庭用としては最強に近いかも

 このルータの場合、業務用として使うとなると、単体ではやや機能に欠ける感は否めない。が、自宅に複数回線を引き込んでいて、これを使ってロードバランシングや障害時の代替処理を行ないたいなんて人には、まったく問題なく使えると断言できる。純粋にルーティング性能を考えれば、マイクロ総研の「NetGenesis SuperOpt-GFive」あたりにはやや負けているわけだが、それでも実用上はまったく不自由ないルーティング性能を確保している。

 もちろん、一般家庭で代替回線やロードバランシングといった需要がどこまであるかといわれたら、これは極めて稀ではあるだろうとは思うが(筆者にしても、仕事が仕事だから代替回線必須という話であって、そうでなければBブレッツに1本化しているだろう)、そうした極めて稀なユーザーには最適な製品であろう、と結論づけたいと思う。とりあえずこの試用機の代わりにFR-24送ったら、編集部は泣くだろうか?




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関連情報

URL
  製品情報
  http://www.linksys.co.jp/product/router/rv082-jp/rv082.html
  リンクシス
  http://www.linksys.co.jp/

2006/01/19 11:13

槻ノ木 隆
 国内某メーカーのネットワーク関係「エンジニア」から「元エンジニア」に限りなく近いところに流れてきてしまった。ここ2年ほどは、企画とか教育、営業に近いことばかりやっており、まもなく肩書きは「退役エンジニア」になると思われる。
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