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2005年

2004年

槻ノ木隆の
NEW PRODUCTS IMPRESSION
Linksys WRT54GC Preview

 通常このコーナーでは発売された製品を取り上げるのが常だが、今回取り上げる米Linksysの「WRT54GC」はまだ日本未発表である。ただ、近々発売されるという話(参考記事)を聞き及んだので、ちょっと先にご紹介したいと思う(そういえば昔、こんなのも取り上げたけど、これも未発売のままだなぁ)。





ルータを持ち運ぶわけ

リンクシスの「BEFSR41C-JP」
 さて、この「WRT54GC」は筆者の私物である。今年サンフランシスコにいった折、FRY'sで見つけて購入したもので、購入金額は75.99ドルだった。このWRT54GCを購入する前はAirLink+の「ARW027/A」を、さらにその前はリンクシスの「BEFSR41C-JP」を、出張では利用していた。「なんで出張にルータが必要やねん?」と突っ込みが入りそうだが、2つの理由からこれが必要なのである。で、まずはこのあたりをちょっと説明したい。

 筆者は泊りがけの出張の際には、ホテルはインターネット接続可能なところを選ぶようにしている。そして、筆者の場合国内の泊りはほとんどなく、もっぱら海外が多い。米国や台湾がメインなのだが、最近は無料もしくは非常に安い値段でADSL回線を利用できるようになっている。

 が、だからといってPCをそのままインターネット回線に繋いでみると、非常に楽しいことになる。ほとんどのケースでホテル全体が1つのLANのセグメントになっているから、ほかの部屋のPCが丸見え(ということは、当然こちらも丸見え)になってしまうわけで、いくらなんでもこれは無用心すぎる。

 すべてのPCにソフトウェアファイアウォールを入れるのも一案だが、それよりは何かルータを挟んだ方が簡単である。どのみち複数台のPCを繋ぐために最低限スイッチングハブは持っていかないといけないわけで、その代わりにルータを持っていってもそれほど荷物がかさばるというわけではない(特にBEFSR41C-JPは非常にコンパクトでACアダプタも小さかったから、この手の目的には最適であった)。

 もう1つの理由は、SoftEtherを使って仕事場のサーバーと繋ぎたかったからである。さすがにホテルのADSL回線は、速くても数百KB/secだったりするから、大きなファイルを持ってくるとか、VNCでリモートデスクトップというのは非現実的である。それでも、ちょっとした設定ファイルを参照する場合や、自宅にインスタントメッセージを(仕事場経由で)送る程度には十分なスピードである。

 あと、妙なところでは仕事場のドメインコントローラとSoftEther経由で接続することで、複数のノートがお互いを認識できる(これなしだと、「ドメインコントローラがないので認証が確認できない」とか言われて、ノート同士が接続できなかったりする。仕方なく以前は出張中だけ別のワークグループに切り替えて使ったりしていた)というのもメリットである。

 問題は仕事場のLANと、ホテルからリースされるネットワークアドレスが同じ“192.168.1.0”というケースがしばしば発生することだ。仕事場のLANのネットワークアドレスを変えればすむのだが、軽く10台を超えるマシン(しかも固定IPアドレスを振っているものが多い)があるだけに、なかなか手がつけられないでいた。ところがルータを介してやれば、ホテル側のLANを別のネットワークアドレスに変えられるので、SoftEther経由で問題なく仕事場と接続できるというわけだ。


 まぁそんなわけでしばらくはBEFSR41C-JPを使っていたのだが、やがてどうしても無線LANが欲しくなってきた。最大の理由は、「ベッドに寝っ転がってメールチェックとかをするのに、無線LANがないと大変」という点である。ルータからベッドまで10mを超える(特に米国とかでは、部屋が無駄に広いことに注意)なんていうこともざらで、だからといって15mのLANケーブルを持ち歩くのは馬鹿馬鹿しい。そこで(やはり)Fry'sにいったら、AirLink+のARW027/Aがたったの19.95ドルで投売りをしていた。当然機能は値段相応だし、無線LANもIEEE 802.11bのみなのだが、どうせホテルでもそんなにスピードが出るわけでなし、持ち込んでるノートもIEEE 802.11bしか対応してないので、これで十分という判断である。

 実際性能面では問題がなかったのだが、「持ち運びが邪魔」という別の問題が出てきた。本体サイズは171×115×34mm(幅×奥行×高、アンテナ部含む)でまだ我慢ができる(といいつつ、中を開けたらスカスカで、「もっと小さくできるだろう!」と思ったり)が、ACアダプタが53×40×75mm(幅×奥行×高、コンセント部含まず)とごつく重いため、全体としてはかなりかさばる感じになる。「もうちょっとスマートな製品はないかな~」と探していた結果、見つかったのがLinksysのWRT54GCというわけだ。梱包した場合のサイズは、BEFSR41C-JPとほぼ同等、ARW027/Aの場合の大体半分程度に収まってくれたため、大満足である。





スマートな外観

写真01:
うしろのフロッピーはサイズ比較用に持ってきたもの。ACアダプタについているベルクロのケーブル止めは純正品でなく、100円ショップで売ってたものだ
 さてそのWRT54GC、外寸は98×25×98mm(幅×奥行×高)と非常にコンパクト。3.5インチのフロッピーディスクよりもわずかに大きい程度である。また、アンテナ類は内蔵のため、すっきりしているのも嬉しい。ACアダプタも比較的小さめで、それほど邪魔にはならない(写真01)。フロントパネルは4つのLANポートと電源/WAN/Wirelessというシンプルなものだが、実用上はこれで十分だろう(写真02)。背面は4つのLANポートと1つのWANポート、それと電源入力端子のみが並ぶ(写真03)。


写真02:
LEDは縦置き、横置きのどちらでも見えるように工夫されている
写真03:
このバックパネル、実はシールなので、ケーブルを引っ掛けたりすると(写真のように)ゆがんでしまうのがちょっと残念

 横置きのときには写真02/03のように使えばよいが、側面部にはこんな形でスタンドが組み込まれており、これを使って縦置きにすることも可能だ(写真04)。また底面には、工場出荷時のIPアドレスや管理者のログイン名/パスワードがちゃんと掲載されているのにはちょっと感心した(写真05)。


写真04:
このスタンドを回転させると、リセット用のスイッチが顔をのぞかせる
写真05:
持ち運び用だから、ずっと1カ所に置いて不特定多数が使うというケースは稀だろう。むしろ、出先でネットワークにうまく繋がらず、ルータはリセットしたは良いが「あれ、初期パスワード何だっけ」とか悩む(やったことが何度かある)ことが考えられるだけに、こうした配慮は実にありがたい

 また米国ならでは、と思うのはちゃんと外部アンテナ接続用のコネクタが用意されていること(写真06)。ただ、この機能は日本版では削られてしまうかもしれない。

 実際使ってみると、こんな具合(写真07)に邪魔にならずに使える。とりあえず携行には最適であろう。


写真06:
筆者はせいぜい部屋の中だけで届けば良いから内蔵アンテナで十分だったが、カバー範囲を広げたければ別売りの外部アンテナ(例えばHGA7S)を取り付けることが可能。外部アンテナは何種類かあり、Fry'sでは普通に売っていた。HGA7Sだと39.99ドルである
写真07:
米国のホテルで。広めのテーブルなので、ゆったりと置けるのが嬉しい。壁際にイーサネットの口があるので、ここからショートケーブルでWRT54GCに接続している




せっかくなので分解してみる

 普通ならここから、内部のメニューをはじめとする使い勝手について言及し、ついでベンチマークを測定ということになるのだが、なにしろ米国製(というか、米国用)の製品なので、日本で試すと電波法に引っかかる(無線LANを使わなくても電波は出るからだ)。

 そこで今回、これらはお休みとさせていただく。日本で正式発売されてから、この辺りを試してみれば済む話だからだ。一応、体感的なものでいえば、メニューはLinksysに共通のもので、割とよくできている。当然、PPPoEなどの対応は甘いが、このまま日本で繋ぐわけではないからこれは問題ないだろう。無線LANに関しても、WEPやMACアドレスによる制限はちゃんと可能で、WPA/WPA2パーソナルへの対応も用意されていたから、出張先で短期間使う、という用途には十分だろう。

 性能面に関しては、WRT54GCを介して繋いだ場合と、介さずに繋いだ場合での違いはほとんど体感できなかった。ちゃんとサーバーを立てて試すとまた違った数字になるのかもしれないが、ホテルから使う分にはまったく支障がなかったという感じだ。

 ただ、これで話が終るとつまらないので、代わりに分解した結果をご紹介したい。ネジは背面の1カ所(写真05で、左下ラバーの下)のみで、あとはすべてはめ込み式である。これを外すと、中央のシャーシ構造が見えるようになる(写真08、09)。


写真08:
穴があるのは放熱対策……というわけではなく、基板に並ぶLEDの光をフロントパネルまで引っ張ってくる樹脂パーツがここに突き刺さる形になるため
写真09:
基板裏面。パーツが一切ないシンプルな構成

 ここからさらにネジを2つ外すと全体が見えるようになるわけだが、基板表面も御覧のように非常にシンプルである(写真10)。IEEE 802.11b/gのモジュールはシールドががっちり固められていて中がうかがえないので、とりあえずそのほかのパーツを見てみよう。

CPU:Marvell Libertas 88W8510(写真11)
6ポートスイッチ:Marvell 88E6060

 なぜか最近、MarvellのサイトにはLibertasシリーズへのリンクがなくなってしまったが、データシートへはまだアクセス可能だ。このPDFを見る限り、シールドの下にあるのは同じくMarvellの88W8000Gではないかと想像される。

 一方、スイッチは6ポートというのが良くわからない。LAN側だけを考えれば良いから、88W8510自身と4ポートのLANということで5ポートで十分なはずだ。ただ、Marvell自体は廉価な5ポートスイッチ製品を持っていないから、あえて6ポートを使ったのだろう。価格を考えればMicrel IncorporatedのKSシリーズや、もっと安いRealTekとかも候補に上がりそうだが、あえてMarvellの製品を使うのは

(1)Libertas Home Gateway Solutionsという形で無線LAN+コントローラと一緒に購入することで、安価に購入できた

(2)Libertas Home Gateway Solutionsのリファレンスデザインをそのまま流用したので、ほかのスイッチを搭載することができなかった

のどちらか(あるいは両方)ではないかと思う。


写真10:
上にかぶさって見えるのはフレーム。繋がっているアンテナ線が取り外せないためにこんな感じになってしまった
写真11:
スイッチにMarvellを使うのはちょっと珍しい

写真12:
こちらは何てことない構成。まぁこの辺りに凝っても仕方がないのだが
SDRAM:Etron Tech EM636165TS-6
Flash:Macronics 29LV800BTTC-70

 SDRAMは1M×16bitの166MHz品×2で、合計4MB。フラッシュメモリは1MB/70nsで、現行製品は29LV800Cになっているから、やや旧製品である。このあたりは別に標準品であって、特にEtronTechだからとか、Macronicsだからという話ではないだろう(写真12)。

 主要なパーツはこれで終わりで、ルータ兼IEEE 802.11b/gのゲートウェイに絞ったシンプルな構成になっていることがわかる。ちなみにトランスフォーマは、なぜかRJ-45コネクタと別体式になっているのが、ちょっと面白い(写真13)。ちなみに内蔵アンテナは基板の角に90度の角度を成すように2本搭載されている(写真14)。


写真13:
Bothhand Enterprise Inc.は、RJ-45コネクタとトランスフォーマが一体になったLAN-MATEシリーズを出しているのに、あえてこれを使わない理由がどの辺にあるのか、機会があれば設計者に聞いてみたいものだ
写真14:
で、この2本でダイバージェンスアンテナを構成する

 もう1つ面白いのが、外部アンテナのコネクタ部。コネクタ部を格納している状態(写真15)では脇にあるマイクロスイッチがオンに、引っ張り出した状態(写真16)だとオフになる構造だ。このスイッチは最終的にアンテナ近くにあるRFスイッチに繋がっているようで、これによりコネクタを引っ張り出そうとすると内蔵アンテナの片方がオフになるという仕組みだろう。ちょっとしたギミックではあるが、よくできていると感心した部分だ。


写真15:
この回転部がまた、外側パネルでうまくとめられる構造になっており、またガイド部の助けもあってわりとスムーズに操作できるようになっているのは好ましい
写真16:
PCやネットワーク関係「以外」(例えば白色家電系)ではこうした工夫は普通に見かけるが、コストダウン最優先のこの手の商品にしては作りこみがしっかりしていると感じる。製造工程はちょっと面倒になっていると思うのだが




ということで

写真18:
証拠の1枚。ちなみにFry'sではこれに79.99ドルの札を掲げており、実際並んでいるパッケージのほとんどには79.99ドルの値札がついているのだが、ときおりポツポツともう少し安い値段が付いているパッケージがある。今回の75.99ドルはそういうもので、中身は完全に一緒である。一応Fry'sなりの伝統的な販促方法らしいのだが、正直なにを考えているのかはよくわからない
 今回はあくまでプレビューなので、実際の使い勝手などは国内向け製品が出てからということになる。ただ、国内の製品を見ると、これと似たものはほとんど見かけない。理由は簡単で、国内の場合PPPoEのサポートを十分に行なわないと不便なケースが多く、そうなると逆に可搬性にあまりこだわる必要がないということになる。

 そんなわけで、国内向けにPPPoEの設定をいろいろ強化してバランスをかえって崩すよりは、いっそPPPoEをサポートしなくても良いから可搬性を台無しにしないようにして欲しいものだと思う(*1)。LAN環境専用のルータなんていうものも1機種くらいあって良いと思うし、筆者としてはそういう使い方をするつもりだ。あとは、Fry'sで75.99ドルで売ってた製品が、あんまり高くならないと良いなぁというのが個人的な希望である(写真17)。

*1:誤解のないように書いておけば、WRT54GC自体はPPPoEをサポートしている。ただ当然検証は米国だけだろうから、日本に持ってきてそのまま使えるとは限らない。実際、米国からルータを持ってくると、例えばNTT東日本は繋がったけど西日本は繋がらないとか、アクセス回線には繋がってもその先のプロバイダーへの接続でミスするとか、そういうケースがいまだにあるので、WRT54GCをそのまま繋げた場合、問題が出る可能性はあるだろう。




■注意
・分解を行なった場合、メーカーの保証対象外になります。また、法的に継続使用が不可能となる場合があります。
・この記事の情報は編集部が購入した個体のものであり、すべての製品に共通するものではありません。
・この記事を読んで行なった行為によって、生じた損害はBroadband Watch編集部および、メーカー、購入したショップもその責を負いません。
・Broadband Watch編集部では、この記事についての個別のご質問・お問い合わせにお答えすることはできません。


関連情報

URL
  製品情報
  http://www.linksys.com/products/product.asp?grid=33&scid=35&prid=679
  Linksys
  http://www.linksys.com/

2005/06/22 11:03

槻ノ木 隆
 国内某メーカーのネットワーク関係「エンジニア」から「元エンジニア」に限りなく近いところに流れてきてしまった。ここ2年ほどは、企画とか教育、営業に近いことばかりやっており、まもなく肩書きは「退役エンジニア」になると思われる。
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