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NTT東日本・西日本で違いが出始めた8Mタイプのフレッツ・ADSL

 NTT東日本と西日本がフレッツ・ADSLで使用できるADSLモデムとADSLモデム内蔵ルータを発表した。フレッツ・ADSLではこれまで足並みを揃えてきた両社だが、8Mタイプの開始にあたり、ADSLモデムの提供方法や販売価格などで違いが目に付くようになってきた。

 NTT東日本が最大下り8Mbps、上り1Mbpsのフレッツ・ADSL8Mタイプを発表したのは10月25日。これまで足並みを揃えてサービスを発表してきたNTT東西だが、この日、ついにNTT西日本から発表は行なわれなかった。

 結局、NTT西日本が8Mタイプを発表したのは11月7日。NTT東日本から遅れること13日が経過してからだ。サービス開始日こそ12月25日と同日に設定されたものの、その後に行なわれたサービス提供計画などでも発表日の微妙なズレは続いた。

ADSLモデムのレンタルプランを用意しなかったNTT西日本

 ユーザーにとってはっきりとわかるサービスの違いが明らかになったのはADSLモデムの提供方法である。NTT東日本が当たり前のようにレンタルプランを用意したのに対し、NTT西日本は買い取りオンリーであることがわかったのだ。

 ADSLモデムが現在買いどきかと問われれば、ほとんどの人が「ノー」と答えるだろう。価格は1万円台後半と、まだこなれてきたとはいえない水準にある。そして、何より相互接続性が十分に整っているとはいえない状況なのだ。

 ADSLモデムで使用されているチップセットには、国内で主に使われているものとしてグローブスパンとセンティリアム製のものがある。収容局側の設備にも両社のチップセットが使われており、局側とモデム側でチップセットメーカーが異なった場合、少なくとも現時点で相互接続性は高いとはいえない。

 この点は1.5Mタイプでは大きな問題とはならないものの、より広い周波数帯を使用する8Mタイプでは顕著に表われる。このためキャリアは、局側とユーザー宅側で同じチップセットメーカーの製品を採用しているのだ。

 8MタイプのADSLサービスではアッカ・ネットワークスがグローブスパン製、NTT東西とイー・アクセスがセンティリアム製を使用しているといわれており、たとえばアッカ・ネットワークスが提供するADSLモデムをNTT東西やイー・アクセスの8Mサービスで使用した場合、速度が出ない、もしくは接続すらできないといった状況にもなりかねない。

 またシビアな通信が行なわれる8Mサービスでは、同じチップセットでもモデムメーカーのチューニングにより微妙な相性が表われやすい。つまり、ADSLの8Mサービスでのモデムは、現状ではキャリアの通信サービスとセットで選択したほうが無難なデバイスだといえる。モデム買い取りにメリットが出るのは、モデムの相互接続性が整い、価格もこなれてから。これは早くても2002年春以降だ。

 また、フレッツ・ADSL8Mタイプの開始にともない、1.5Mからの切り替えを希望するユーザーも多いだろう。しかし、NTT東日本では移行費用がわずか2800円であるのに対し、NTT西日本では移行費用に加え別途モデムを購入しなければならない。これはもっとも安い製品でも1万8000円かかる。

 1.5Mから8Mへの切り替えによって得られる速度向上は、収容局からの距離といった回線環境により大きな影響を受ける。端的にいってしまえば、ほとんど効果がない場合もあり得るわけだ。どの程度のメリットがあるのかわからないまま、ユーザーはモデム購入というリスクを負わなければならないのである。

サービス向上で先行し始めたNTT東日本

 市販のADSLモデム市場を活性化させるための対策もNTT東日本のほうが早かった。モデムメーカーがフレッツ・ADSLで使用できるモデムの試験環境を提供すると発表したのだ。NTT東日本の計画によれば、2002年2月に合否判定を通知、春頃から「フレッツ・ADSL対応」と表示されたモデムが量販店で販売できるようになる。しかし、NTT西日本は、いまだに同様の対応を行なうかすら明らかにしていない。

 本日、12月4日に発表された8Mタイプのフレッツ・ADSLで使用できるADSLモデムへの対応にも違いが見られる。NTT東日本が、ブリッジタイプとルータタイプを計2製品を発表したのに対し、NTT西日本はブリッジタイプで2製品、ルータタイプで2製品の計4製品だったのだ。

 これはNTT西日本が製品ラインナップを豊富にしたわけではない。NTT東西は、収容局側のADSL設備としてNECと住友電工製の製品(DSLAM)を使用している。NTT西日本は、ユーザー宅に設置するADSLモデムも、収容局側と同じメーカーに揃えることにしたのである。たとえば、収容局側でNEC製のDSLAMを使っているエリアに住んでいるユーザーに対しては、同じNEC製のADSLモデム「ADSLモデム-MN」を販売するといった具合だ。

 NTT西日本によれば、すでに1.5Mタイプについてはメーカーが異なっても相互接続が問題なく行なえることを確認した。8Mタイプについては確認中で、今後、この問題は解決すると思われるが、現時点では2メーカーの製品をそれぞれ販売することにしたという。

 この点に関してはNTT東日本も状況は同じだ。もっとも8Mタイプでは、DSLAMとしてNEC製のものしか使用しておらず、ユーザー宅のADSLモデムは住友電工製をあえて用意する必要はなかった。相互接続検証が完了するまで機器メーカーを1社に絞ったのは、ユーザーの便宜を考えると賢明な措置といえるだろう。

 販売価格にも差が出た。ルータタイプのADSLモデムは、NTT東日本が2万4000円で販売するのに対し、NTT西日本は2万8000円。この差は「価格戦略や販売チャネルが違うため」(NTT西日本)と説明する。まったく同じ製品だが、住んでいるエリアが違うというだけで価格差がついたわけだ。

 ADSL加入者は急激な伸びを示しており、すでに総数は100万人を超えていると思われる。もっとも、通信事業者間の競争は激化しておりNTTといっても安泰なポジションにいられるわけではない。すでにYahoo! BBは開通者数で23万人を超えているともいわれ、全国エリアでサービス展開ができないというハンデがあるもののNTT西日本を上回っている可能性が高い。より一層のサービス向上と、ユーザーにとってわかりやすい説明が求められているのではないだろうか。

ADSLモデム-MS。住友電工製と思われる
Web Caster 600MS。左のADSLモデムとともにこの2製品はNTT西日本でしか販売されない


□ニュースリリース
http://www.ntt-east.co.jp/release/0112/011204b.html(NTT東日本)
http://www.ntt-west.co.jp/news/0112/011204.html(NTT西日本)
□関連記事「NTT東日本、1.5Mと8M兼用のADSLモデムおよびモデム内蔵ルータ」
http://bb.watch.impress.co.jp/news/2001/12/04/ntt1.htm
□関連記事「NTT東日本、フレッツ・ADSL用のADSLモデムを自由化」
http://bb.watch.impress.co.jp/news/2001/11/30/ntt1.htm
□関連記事「NTT東日本、フレッツ・ADSL8Mタイプの申込受付を11月30日より開始」
http://bb.watch.impress.co.jp/news/2001/11/28/ntt1.htm
□関連記事「NTT西日本、フレッツ・ADSL8Mタイプの提供スケジュールを発表」
http://bb.watch.impress.co.jp/news/2001/11/29/ntt1.htm
□関連記事「NTT東日本、フレッツ・ADSLで8Mサービスを正式発表、1.5Mの値下げも」
http://bb.watch.impress.co.jp/news/2001/10/25/ntt1.htm
□関連記事「NTT西日本、フレッツ・ADSLの8Mサービスを正式発表」
http://bb.watch.impress.co.jp/news/2001/11/07/ntt1.htm

笠井 康伸
2001/12/04 18:31

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