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無線LANルータ編
第15回:WDS


 「WDS(Wireless Distribution System)」は、無線を中継する機能です。WDSに対応した無線LANルータやアクセスポイントを組み合わせることで、より広い範囲で無線LANが利用できるようになります。


より広い範囲で無線LAN通信を利用できるようにする「WDS」

図1:単独のアクセスポイントだと電波が届かない
 自宅などではあまりないかもしれませんが、オフィスなどの広いエリアで無線LANを利用したい場合、鉄筋などの関係でうまく電波が回り込めない場合があります。こうした際に使われるのがリピータという信号を中継する装置です。

 例えば、図1のようにアクセスポイントにクライアントA/B/Cが接続したい場合を考えます。こうした場合、アクセスポイントに近いクライアントAで問題なくアクセスポイントからの電波が拾えても、少し離れたクライアントBは実用限度ぎりぎり、距離のあるクライアントCでは実用範囲を下回ってしまう可能性もあります。

 こうした場合に1つの解決策として考えられるのが、リピータの利用です。この場合、リピータは無線LANアクセスポイントからの電波を受信し、それを別のチャネルで再び送り出す装置を指します(図2)。これによって、クライアントBやCは、リピータから再送信された電波を受け取って、十分強い電界を確保できるというわけです。

 ちなみに、図1と図2ではアクセスポイント→クライアント方向のみを記していますが、実際にはクライアント→アクセスポイント方向の通信もあります。従って、リピータはクライアントからの電波をアクセスポイントに再び送り返すという仕事もしています。


図2:リピータを入れることで解決

 このリピータですが、実際の回路としてはアクセスポイントと大きく変わりはありません。もっと言ってしまえば、アクセスポイントのハードウェアをそのまま使い、ソフトウェア部分を変更して使っているというケースも少なくありません。

 しかしながら、アクセスポイントと比べると需要が多くないため、結果として価格がアクセスポイントよりも高くなる状況になっています。「それならば、アクセスポイントにリピータ機能を追加すれば解決するんじゃないか」という考えが出てくるのは自然な流れで、アクセスポイントにリピータ機能を搭載させ、その機能のことをWDS(Wireless Distribution System)と呼ぶようになりました。

 そのWDSですが、リピータにはない機能も追加されています。図2にあるように、リピータはあくまで無線LAN機器の中継を行なうだけのものです。しかし、アクセスポイントの中には有線LANのクライアントを接続できるタイプもあります。そこで、WDSでは図3のような構成もサポートされることになりました。

 つまり、無線LANで繋がるクライアントA~Cに電波を中継するだけでなく、有線LANで繋がるクライアント1/2/3やクライアント4/5/6も、大元のアクセスポイントに接続できるというわけです。なお、WDS機能を利用するにはアクセスポイントとWDSによる通信が可能な製品を別途用意する必要があります。


図3:WDSの機能

画面1:設定画面からWDS機能を有効にできる
 最近の無線LANルータでは、WDS機能を装備するものが非常に増えています。画面1はバッファロー製品(WHR-AM54G54)の例ですが、「無線設定」の中にある「リピータ機能」でWDS機能を有効にできます。上述のように、一般家庭ではあまり縁がない機能とも言えますが、自宅の環境やオフィスなどでリピータを導入する必要がある場合、WDSに対応した無線LANルータを選ぶのが賢明と言えるでしょう。


関連情報

URL
  無線LANルータ編 索引ページ
  http://bb.watch.impress.co.jp/cda/koko_osa/17754.html

2007/08/06 10:59

槻ノ木 隆
 国内某メーカーのネットワーク関係「エンジニア」から「元エンジニア」に限りなく近いところに流れてきてしまった。ここ2年ほどは、企画とか教育、営業に近いことばかりやっており、まもなく肩書きは「退役エンジニア」になると思われる。
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