Broadband Watch logo

NAS編
第7回:RAIDとホットスワップ


 「RAID」は複数のHDDを組み合わせ、1台のHDDが故障した場合にもデータを失わないようにする機能です。また、ホットスワップはRAIDと組み合わせ、電源を落とさずに故障したHDDを交換できる機能になります。


HDD故障時のデータ消失を防止する「RAID」機能

図1:HDDが1台の場合
 NASの中にはHDDが搭載されている、という点はここまで説明してきた通りです。このHDD、永続的に使えるものではなく基本的には「消耗品」と言えます。寿命、これは「平均故障間隔(MTBF:Mean Time Between Failure)」と呼ばれることが多いのですが、HDDのMTBFは平均で数万時間と言われています。

 1年が8,760時間ですから、数年に1度はHDDが故障する計算です。もっとも、だからといって「使用していない場合にNASの電源を落せばいいのか」というと、電源のオンオフ動作を頻繁に行なうことで故障間隔が縮まる可能性もあります。一般的に長持ちさせるためには、常に動かして、かつHDDが高温にならないように冷却に気をつけるしかありません(一般に温度が10度上昇すると寿命が半減すると言われています)。

 それではHDDが故障した場合ですが、修理というのは要するにHDDを交換するしかありません(図1)。当然そうなると、過去にHDDに蓄えたデータは全部消失することになります。HDDレコーダが故障して修理に出したら、録画した番組のデータが全部消えてしまったという話がよくありますが、これと同じことです。もちろん、故障したHDDなどからデータを取り出すサービスもありますが、本格的なサービスになると1MBあたり数千円から1万円かかります。1MBあたり1万円とすると250GBのHDDでは25億円以上(!)も必要な計算になり、現実的ではありません。

 こうしたこともあって、HDDが故障する前にデータのバックアップが必須になるわけですが、「HDDが壊れないようにする」というのは難しく、「壊れても大丈夫」にするアイディアが出てきました。その代表的なものが、「RAID(Redundant Arrays of Inexpensive/Independent Disk)」です。

 具体的にどういうものかと言えば、例えば「RAID 1」と呼ばれる機能では内蔵する2台のHDDに対して、同じデータを書き込んでいきます(図2)。こうすることで、1台のHDDが故障した場合でも、もう一方のHDDが無事であればデータが読み出せるわけです。もちろん、2台同時に故障した場合には意味はありませんが、2台のHDDが連続して故障する可能性が低いため、1台のHDDで運用している場合と比べてデータを消失するリスクが低減できるわけです。

 ただし、故障がどのような要因で発生するかにもよります。例えばNASのファンが故障したり目詰まりしたりで内部が高温になっていたという場合、もう1台のHDDも故障する可能性が高くなります。また、HDDの型番が同じでも購入タイミングによってファームウェアのバージョンが異なる場合もあり、元のHDDとミラーリングできない可能性があります。前述したHDDの寿命の問題もあるため、1台が故障した場合には台数分のHDDを買い直すのが賢明でしょう。


図2:RAID 1

 RAID 1の場合、HDDを2台用意しても仕様可能な容量が1台分となるほか、2台のHDDに同期して書込を行なうため少し速度が遅くなるという短所があります。そこで、これを補うために広く使われているのが「RAID 5」です(図3)。

 理論上は3台以上のHDDがあれば構築可能ですが、多くのケースでは4台のパターンが1番多いようです。RAID 5ではデータに「パリティ」と呼ばれるものを付加し、このデータ+パリティを4台のHDDに分散して格納していきます。

 この場合、トータルの容量はHDD容量×(HDDの台数-1)になります。例えば、500GBのHDD 4台でRAID 5を構成した場合、利用できる容量は1.5GBになる計算です。RAID 5でHDDが1台壊れた場合、残る3台からデータを読み出すことで、元のデータが失われずに済みます(これを可能にするのが、書き込み時に付加したパリティです)。

 また、RAID 1よりも読み書きの性能は概して向上します。欠点は、最低でも3台以上のHDDを用意する必要があるので、初期コストがかかる点でしょう。


図3:RAID 5

 ところでRAID 5でHDDが1台壊れた場合、通常ならバックアップ作業をした後にNASの電源を止め、故障したHDDを交換。そして、NASを再度立ち上げてバックアップからデータを戻すことになりますが、一部にはNASを止めずに電源を入れたままHDDを交換できる「ホットスワップ」機能をサポートする機種もあります。

 この場合、HDD交換後に自動的にデータを復元するので、ユーザーから見れば手間いらずと言えます。ただ、こうした機能は個人向け製品では上位機種などに限られ、多くはSOHOやオフィス向けの製品で提供されています。


関連情報

URL
  NAS編 索引ページ
  http://bb.watch.impress.co.jp/cda/koko_osa/20269.html

2008/01/28 10:55

槻ノ木 隆
 国内某メーカーのネットワーク関係「エンジニア」から「元エンジニア」に限りなく近いところに流れてきてしまった。ここ2年ほどは、企画とか教育、営業に近いことばかりやっており、まもなく肩書きは「退役エンジニア」になると思われる。
Broadband Watch ホームページ
Copyright (c) 2008 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.