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モバイルデータ通信編
第2回:MVNO


 「MVNO(Mobile Virtual Network Operator)」は、携帯電話事業者から回線を借りて、自前のサービスを提供する事業者を指します。日本語では「仮想移動体通信事業者」と言われます。


キャリアから回線提供を受けて独自にサービス展開するMVNO

 最近利用者が増えつつあるのが、MVNOを使ったモバイルブロードバンド接続です。このMVNOに関して簡単にまとめたのが図1になります。

 例えば、携帯電話などを使って通信する場合、まず基地局と接続し、そこから先は契約する携帯電話事業者(キャリア)のネットワークに繋がります。通常は、各キャリアのネットワークからインターネット網などに接続できるわけですが、MVNOを使用する場合、キャリアとMVNOが相互接続し、MVNOのネットワークからインターネット網や公衆回線網などに接続する仕組みです。


図1:MVNOでの接続イメージ

図2:ADSLでの接続イメージ
 「どうしてそんな複雑なことを?」と感じる方もいるかもしれませんが、固定電話網では以前から行われています。ADSLを例に挙げると、まず最初にNTTなどの回線プロバイダーと契約し、そしてOCNや@niftyなどのインターネットサービスプロバイダー(ISP)と契約することで、インターネット接続が可能になります。もちろん、ADSLやFTTHサービスの中には回線とISPをセットで提供する事業者も存在します。

 もう少し昔にさかのぼると、回線プロバイダーに相当する電話回線やISDN回線はNTTがほぼ独占で提供していました。従って、「プロバイダー」=「ISP」となり、モデム経由でプロバイダーと契約し、そこからインターネット接続する形でした、つまり、回線自体と回線上で利用できるサービス(インターネット接続サービスもその一例)は異なる事業者が提供していたわけです。

 一方、携帯電話やPHSでは、ウィルコム網を使った日本通信などのサービスを除けば、キャリアが回線プロバイダーとISPの両方を兼ねるケースが大半でした。総務省はこうした状況を良しとせず、通信事業者以外のISPが携帯電話における回線プロバイダーと接続できるためのガイドライン案を2006年12月に発表し、翌2007年2月に関連法案を改正しました。これにより、日本でもMVNOによるサービスが本格的に始まりました。

 例えば、日本における最初のMVNOである日本通信の場合、当初はウィルコムのPHS回線を利用した、データ通信サービスを提供していました。また、最近ではNTTドコモのFOMA回線を利用したプリペイド型のデータ通信サービスを開始しており、これまでキャリアが提供していなかったサービス形態も登場しています。

 日本通信以外にも、IIJやOCN、So-netをはじめとしたISPがキャリアから回線を借りて、MVNOによるモバイルデータ通信サービスを提供するケースが増えています。これらはすでに提供している固定回線契約のオプションとして会員向けに割り引かれるケースも多く、従来と比べて安価にモバイル接続が可能になります。

 また、データ通信サービス以外にも音声サービスが提供される場合もあります。最近では3月にソフトバンクモバイルと提携してサービスを開始した「ディズニー・モバイル」が該当します。それ以外にも法人用途向けなどでもMVNOで音声サービスを提供するプロバイダーもあります。

 こうしたMVNOによるサービスの登場によって、利用者側は従来よりも幅広い選択肢が得られるようになった点が魅力と言えるでしょう。


関連情報

URL
  モバイルデータ通信編 索引ページ
  http://bb.watch.impress.co.jp/cda/koko_osa/23612.html

2008/10/27 11:13

槻ノ木 隆
 国内某メーカーのネットワーク関係「エンジニア」から「元エンジニア」に限りなく近いところに流れてきてしまった。ここ2年ほどは、企画とか教育、営業に近いことばかりやっており、まもなく肩書きは「退役エンジニア」になると思われる。
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