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封切り前の映画をインターネットで楽しむ


 先週は映画の予告編サイトについて書きましたけど、そのとき亀戸のツタヤに行った話をしましたね。アタシの住んでいる東京台東区というところは、何を隠そう「ツタヤ」が1軒もないんです。ビデオジャンキーなアタシは、これにはかなり参ってます。ツタヤじゃなくても他に行けばいいじゃないかって? それが違うんですよ。ハリウッドの話題作を借りるんなら、個人商店的なレンタル店に行ってもあるんですけど、ちょっとマイナーなタイトルだと置いてないことが多い。小さい店でも、棚のサイズに限りがあるんなら「ウチは○○のジャンルに強い」と個性を出せばよいのにとも思いますが、そうもいかないようです。ちなみに先週紹介した「シベリア超特急」も、蔵前地区のビデオ店には1つもなし。でも亀戸のツタヤにはあったんです。ウチから一番近いツタヤは亀戸店なんですね。

 で、何がいいたいかというと、とにかく亀戸まで行くのがものすごくカッタルイんです。電車で行くにしても1回乗り換えなきゃいけないし、車で行くと渋滞する。しょうがないから、道が空いている夜を見計らって借りに行くことになります。ホント、地元にツタヤがある人がウラヤマシクてしょうがないですね。まあ、ツタヤは1週間借りてもレンタル料はそんなに高くないのでまだ助かっているんですが、とにかく借りに行ったり返しに行ったりする手間が大変なんです。

 でも、よくよく考えてみたら入手する手間が必要なのは、パッケージメディアの宿命なんですね。普段からインターネットという双方向メディアで手軽にコンテンツを入手していると、ビデオという片方向メディアにめんどうクササを感じてしまいがちですが、逆にそこが魅力であるともいえます。だからこそ映画はいまだにメディアの中で大きな位置を占めているんでしょう。


映画オン・デマンド時代が到来?!

 が、ツタヤに行くことがめんどうクサイことに変わりはないので、アタシ的にはレンタルビデオ店に行かなくてもよい時代がくればなあと渇望しています。いつでも好きなビデオが観られる“映画オン・デマンド”、よいじゃないですか。

 実はね、そういうサイトがあるんですよ。「DREAM SCREEN」というサイトがそうです。ドリーム・スクリーン、つまり夢の銀幕。よいネーミングですねえ。Webサイトというのは中身ももちろん大事ですが、タイトル名もそれ以上に大事です。覚えやすく、わかりやすい。そしてコンテンツに対する愛情を感じる。それが理想ですね。もともと、この「DREAM SCREEN」は、先週紹介した「FOREIGN TV」のように、映画の予告編が観られるサイトでした。が、今年9月から、なんと本編の有料配信を始めるというじゃありませんか。ハンペンじゃないですよ、本編。こんなくだらない冗談が飛び出すほど、アタシゃ驚きました。


封切り前の映画が全編ノーカットで視聴できる「DREAM SCREEN」


URL
  DREAM SCREEN
  http://www.dreamscreen.tv/movie/cs.html




封切り前の作品は定時放送

 で、よくよく調べてみると、映画の観覧には2メニューあることがわかりました。1つは「インターネット映画試写会」。これは封切り前の作品が毎月だいたい1本、決まった時間に配信されるというもの。なるほど~。封切り前の作品は決まった時間にしか流れないのは、チト残念ですなあ。時間を決めてしまうと、スカパーの有料放送と同じノリになってしまう。あんまりインターネットならではのよさが出ないなあ、と一瞬思いました。が、これはしょうがないことなんでしょうね。なんてったって封切り前ですから。製作者側からいえば、「映画は映画館で観るもんじゃい!」という思いが当然あるでしょう。

 ただ、ここで1ついっておきたいんですが、最近のホームシアターは、結構侮れないんですよね。DVDの登場と液晶プロジェクターの高性能化によって、家庭でも手軽にクオリティの高い映画ソフトの再生環境が得られるようになりました。アタシも実は液晶プロジェクターを持っているんですけど、これを買ってからちょっと映画に対する考え方が変わったんですね。以前は「映画とビデオは別モノ」なんてことを思ってました。が、液晶プロジェクターを買って、狭いわが家ながらも80インチの大画面で部屋を暗くして観ると、明らかに快適なんですね。

 快適というのにはいろいろあります。まず、大好きなビールを好きなだけ飲みながら観られる。タバコを吸いながら観られる。座高の高い人に前を遮られない。そして、幕が上がってからもペチャクチャお喋りするバカがいない。とまあ、よいことづくめなわけです。あとオーディオ・ビジュアル的な話をすると、映画館ごとに、音響のよし悪しに差があり過ぎるような気がするんですよ。せっかくの5.1ch作品なのに、ドルビーサラウンドの設備しかない映画館にあたったら最悪です。

 それと、映画館によってはスクリーンにピントが全然合っていないところもある。ボケボケの映像を見せられたら、誰だって「金返せ―!」と叫ぶでしょう。たとえ映画とビデオ鑑賞が別のものだとしても、場合によっては家で観たほうがよい場合もあると思うんですよ。


ホームシアターも侮れない!

 だからインターネットで試写が観られるというのは、決まった時間だけとはいえ画期的なことだと思うんです。試写会って、なかなか当たらないもんなんですよね。とくに人気作品は。で、インターネットで観て気に入ったら、今度は友達とか彼女とかを誘って映画館に観に行けばいい。

 もちろん映画館にもよいところはあります。例の「シベリア超特急」も、一人で観るより、大勢の観客と一体になって笑い転げたほうが満足度は高い。「オースティン・パワーズ」みたいなコメディ映画も、大勢で観たほうが楽しいですね。ホームシアターで観たほうがよいのは、一人でじっくり観たい映画ですね。ヨーロッパ系の静かなアート作品とか。ホラー映画も一人で観たほうがいいかもしれません。要は映画館か家庭か、その内容によって使いわけたほうが賢い時代にきてるわけです。

 ただ、インターネット配信の場合、PCの画像をシアタールームのプロジェクターまでいかに配線するかで悩む人もいるかもしれません。アタシん家も、PCとプロジェクターが1階と2階で離れていて、これが意外と不便なんです。せっかくの映画なんだから、PCのモニタに向かってビジネス椅子で観るなんてことは避けたい。こうなったらシアター用にPCを1台増やすかなあ。でもCATVインターネットのIP割り当て数にもう余裕ないしなあ。それじゃあルーター買ってIPマスカレードやるかなあ、といろいろ考えると、結構カネもかかってしまう。便利な時代を迎えるにはけっこう投資が必要なんですねえ。


懐かしい名作も配信

 さて、「DREAM SCREEN」にはもう1つのメニュー「HOLLYWOOD PARTY4~幻の洋画劇場」があります。ここでは月に10本程度、懐かしい1970年以前の名作が観られます。「武器よさらば」とかメジャーなものもあるけど、ポーランド・ドイツ合作の「金星ロケット発進す」なんて結構マニアックなものも観られるそうで、実はアタシ的にはこっちのほうに注目してたりします。

 最初の話に戻りますけど、アタシん家の周りのビデオレンタル屋には、こういう作品はまず置いてない。だから遠くの大型店まで足を伸ばさなきゃいけなくなるわけで、あまり知られてないマイナー作品がネットで観られれば、ホント、大助かりなわけです。ところで気になる画質のほうですが、配信帯域は500Kbps/300Kbpsとのこと。プロジェクターに映しても観られないことはないですが、ちょっとツライかもね。まあ画質についてはまだまだDVD並みとまではいかないけど、ようやく今、映画オン・デマンドは産声を上げたようです。

 こういうのがどんどん増えていって、画質もよくなり、蓄積された動画データも増えれば、いずれはレンタルビデオ店に行く必要もなくなるかもしれないですね。まあ、「ビデオ屋に行くくらい、別にいいよ」って人には関係ない話かもしれませんけど、それすら億劫になるほど、今という時代は疲れる時代だと思うんですよ。仕事や勉強、人間関係に疲れた人に、映画オン・デマンドが一服の清涼剤になることを祈っています。


2001/09/03 11:10

下柳泰三
自称“書き屋”。ジャンルを選ばず心が揺さぶられればパソコン記事でも映画評でも何でも書く、サスライの原稿執筆人。現在某街歩き雑誌(ヒミツ)をメインに活動中。ホコリをかぶったケーブルモデムを横目に今日も書きまくる!
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