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NTTのインフラ(2)
MDFの向こう側


 前回は、モジュラージャックを出た電話線が、架空ケーブルや地下ケーブルを経て収容局のMDF(Main Distribution Frame:主配線盤)に接続されるところまでお話しした。加入者宅とMDFは、基本的に(*1)1対のメタルケーブルで直結されており、通話用の電話線が単なるメタルケーブルとしても利用できるというのが、ここでの大きなポイント。そして、用途に応じた局側の設備に配線するのが、このMDFの役割である。では、MDFのさらに向こう側はどうなっているんだろうか。

*1 一部には、途中で光ケーブルに変換している場合があり、このようなケースでは、ADSLのようなメタルケーブルに依存するサービスが受けられない。


電話網/デジタル通信網

 MDFの向こうに電話やISDNの交換機がつながると、電話線はアナログ電話やISDNとして機能するようになる。もともとが音声信号をそのまま通す電話線なので、アナログ電話に関しては特別な機器は不要だが、ISDNの場合には、それに合わせた通信を行なうための「デジタル回線接続装置」あるいは「デジタル回線終端装置」と呼ばれる機器をモジュラージャックに接続する。

 いわゆるDSU(Digital Service Unit)というヤツで、ISDN機器はこのDSUの後にぶらさがる形になる。DSUを内蔵した機器だったら、それが直接モジュラージャックにつながることになる。

 一般に使われているISDNサービスであるINSネット64は、1対のメタルケーブルで、64kbpsのBチャネル2回線と16kbpsのDチャネル1回線分(2B+D)の双方向通信を提供する。ケーブル上を流れる信号は、これら3回線分のデジタル信号と制御信号が時分割処理されたもので、さらに局と加入者宅間では、一定時間ごと(2.5ミリ秒)に伝送方向を切り替え、交互に送受信を行なうことによって双方向通信を実現している(TCM:Time Compression Multiplexing~時分割方向制御伝送方式)。

 DSUは、このように送受信がめまぐるしく切り替わっている回線上の信号を、送受信2対のノーマルなインターフェイスに変換する装置--いうなれば、ISDN回線用のトランシーバのような存在である。DSUに対する局側のトランシーバはISM(I-Interface Subscriber Module~Iインターフェイス加入者収容モジュール)という。ISDN回線の場合には、このISMを経て交換機につながることになる。

 交換機の向こう側に続く電話やISDNのネットワークは、全国自動即時化の際に構築された4階層のアナログ網に始まり、2階層のデジタル網を経て、現在は、NTT地域会社(NTT東日本とNTT西日本)が運営する県内のネットワークが、NTT長距離会社(NTTコミュニケーションズ)が運営する県間のネットワークに接続された構成になっている。


NTT地域会社が運営する県内のネットワークが、NTT長距離会社が運営する県間のネットワークに接続された現在のデジタル網

 「全国自動即時化」というのは、全国どこにでもダイヤル直通で電話できるようにしようという計画。今となっては当たり前のことだが、1979年にようやく、離島を含めた国内すべての自動化が完了。それまでは、交換手につないでもらうケースが少なからずあったのだ(実際筆者が子供の頃の郷里では、市外通話は100番経由の手動接続が常識だった)。ちなみに、大正時代の電話機になるとダイヤルすらなく、さらに古くなると、発電機のハンドルを回して交換手を呼び出す世界に行ってしまう。

 さて、問題の交換網だが、古いアナログ網は加入者線を収容する端局(EO:End Office)、EOをまとめる集中局(TC:Toll Center)、TCをまとめる中心局(DC:District Center)、DCをまとめる総括局(RC:Regional Center)の4階層で構成されていた。EOは、おおむね市内通話と市外通話の分岐点となっていた交換局で、それをまとめるDCを、各都道府県に1~数カ所設置(全国で81局)。最上位のRCが、札幌、仙台、東京、金沢、名古屋、大阪、広島、福岡の8カ所というツリー状になっており、基本的には、RCのレベルで相互に接続される。末端でダイヤルすると、これら各局の交換機が次々に作動して通話相手の回線に導いてくれる仕組みだ。

 デジタル網では、加入者線の交換と中継線の交換という2段構成に変更された。中継回線は、おもに光ファイバーを使って全国47都道府県間を接続するためのネットワークである。各都道府県下の回線を集束し、県外との中継を行なう局を中継局(ZC:Zone Center[*2])といい、この中継局を7つの特定中継局(SZC:Special Zone Center[*3])が管理する区域(SZA:Special Zone Center Area)に分けて相互に接続する。加入者線を収納する局は群局(GC:Group Unit Center)といい、GCが加入者線の交換と上位のZCへの中継を行なう。

*2 中継局は全国47都道府県にあり、北海道には5カ所、東京、静岡、福岡には2カ所ずつの計54局で構成される。
*3 特定中継局は、札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、広島、福岡の7カ所。


 NTTの再編成に伴ない、各都道府県の上位局だったZCが区域内中継局(IC:Intermediate Center)と呼ばれるようになり、東西NTTは、このIC以下の交換業務を受け持つことになった。県をまたぐ通信(一部行政区域と一致しないところもあるが)は禁じられており、こちらはNTTコミュニケーションズが持つSZCに接続し、ほかの都道府県のICに中継してもらう。

 各交換局には、ほかのキャリヤが乗り入れられるように、相互接続用の設備も用意されており、これら交換業務を行なうキャリアをユーザーが自由に選択することができる。以前は、識別番号をダイヤルすることによってキャリアを選択していたが、マイライン以降は、デフォルトで選択したキャリアにつながるようになっているので、識別番号をダイヤルする必要もない(登録しないとデフォルトはNTTのままだが)。

ISDN回線を収容するISM

同番移行の秘密

 アナログ電話からISDNに移行する際、以前は電話番号が変わってしまうというのが一般的だった。局側の設備が変わるんだから仕方ないか……と納得していた方がどれくらいいたかは知らないが、大方は「何でだよぉ!」だったのではないだろうか。そうこうしているうちに、アナログと同じ電話番号のままISDNに移行できるようになり、「やればできるジャン」で軽く片付けてしまったあなたや私。今再び、ADSLのためにアナログに切り換えるという段になって、「何で電話番号が変わっちまうんだよぉ!!」と叫んではいまいか。

 電話交換をスムーズに行なうためには、各交換機に規則正しい電話番号を持たせ、番号だけで振り分けられるようにしておかなくてはいけない。ランダムな番号では、交換機が神経衰弱の世界になってしまうからだ。したがって、電話番号は収納される交換機で決まり、アナログ用の交換機からデジタル用の交換機に移れば、当然電話番号も変わってしまう。これが、電話番号が変わる理由である。

 が、さすがにこれでは不便であり、ISDN普及の足かせにならないとも限らない。そこで、アナログ交換機時代の番号がデジタル交換機側に向くように変換する機能をネットワーク側に順次追加し、同じ番号のままISDNに移行できる体制を整えてきた。同番移行といっても本当は電話番号は変わっており、それをソフトウェア的につながるようにしていたのである。

 この機能は、アナログからデジタルへの移行を想定したものであり、逆の変換もできるようにはなっていない。実際そういうニーズはこれまでなかったわけで(ISDNの伸びとは裏腹に、アナログ電話の加入者数はすでにピークを過ぎて減少している)、そこに倍のコストをかけて機能を組み込んでおくというのは、妥当な選択ではない。このため、アナログへの移行では、ISDNのような同番号移行ができないわけだ。

 ただし、アナログから同番移行したISDNユーザーが再びアナログ回線に戻る分には、元の状態に戻すだけなので、同じ番号のまま移行することができる(ISDNに同番移行後に引っ越してしまうと、最初からISDNなのと同じなのでダメ)。

 仕掛けが分かると「なぁ~んだ」かもしれないが、それでもやっぱり、電話番号は変わってほしくないよなぁ。


□NTT東日本
http://www.ntt-east.co.jp/

鈴木直美
幅広い技術的知識と深い洞察力をベースとした読み応えのある記事には定評がある。現在、PC Watchで「PC Watch先週のキーワード」を連載中。
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