イー・アクセスの役割は、ユーザーとISPを結ぶ通信回線の提供にある。すなわち、ユーザーのADSL回線を、そのユーザーが加入しているISPのネットワークに透過的に接続してあげるというのが、イー・アクセスのネットワークの使命なのである。今週のインフラ探険隊は、そのためのとっておきの仕掛け、交通整理の仕組みを覗いてみたい。
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ADSL事業者のネットワークを介してISPへつなぐ仕組み
ユーザー宅のADSL回線は、NTTの収容局に設置されたDSLAM(DSL Access Multiplexer)とATM(Asynchronous Transfer Mode)の伝送装置を経て、2.4Gbpsの小さなSONET(Synchronous Optical Network)リングに接続する。この小さなSONETリングで近隣10局程度の局をまとめ、これを10Gbpsの大きなSONETリングに接続。大きなSONETリングで都府県単位規模にまとめられたアクセス回線が、最終的に東京都と大阪に集約される。というのが前回のあらすじである。
この東京と大阪の拠点には、ユーザーのアクセス回線が集められると同時に、もう一方からは、ユーザーにサービスを提供するためのISP各社の回線もやって来る。大手になると、ギガビットの太い回線で乗り入れているそうだが、それでも、ピークには既に半分以上を消費してしまう勢いとか。トラフィックが集約される一番辛い部分であることはいうまでもないが、それにしても恐るべしADSL軍団である。
さて、ISPなどのサービスを提供する側は、その機能からNSP(Network Service Provider)と呼ばれ、イー・アクセスには、既に30社を越えるISPが乗り入れているという。一方のアクセスを集約する側はNAP(Network Access Provider)といい、こちらは100万単位のユーザーを相手にする前提でネットワークを構築しなければいけない。この間、すなわちユーザーの回線とISPの回線を、ひとつひとつ物理的に接続していくなんてことは、間違っても想像したくない規模である。ではどうするのかというと、2つのネットワーク間で論理的な接続を作り、あたかも直結しているようなセキュアな通信環境を提供する。そのために使われている仕組みが、L2TP(Layer 2 Tunneling Protocol)とPPPoA(Point to Point Protocol over ATM)やPPPoE(Point to Point Protocol over Ethernet)と呼ばれるプロトコルたちだ。
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PPPoA/PPPoEの役割
ダイヤルアップ接続では、PPP(Point-to-Point Protocol)と呼ばれるプロトコルが使われている。これは、2点間でさまざまなネットワークプロトコル(インターネットの場合はTCP/IP)を使い、コミュニケーションを行える様にするためのもので、接続に必要なコンフィギュレーションやユーザー認証なども、このPPPの接続プロセスの中で行なえるようになっている。接続から切断までの面倒を見て、TCP/IPなどの通信を乗せてくれるベースとなるプロトコルなので、たいていはユーザー名とパスワードをセットするだけ。後は自動的にネットワークのリンクが構成され、LANケーブルで直結したのと同じような環境になる。
ADSLもまた、このダイヤルアップと同様のPPP(Point-to-Point Protocol)を使って接続しており、PPPをATM上で行なう(ATM上にPPPを通す)タイプPPPoAが、Ethernet上で行なうタイプがPPPoEである。常時接続とはいっても、接続/切断のプロセスがちゃんとあり、ユーザー認証も行なっている。そしてこのプロセスが、ユーザーの回線とISPの回線を自動的に接続するための手段でもある。
L2TPは、ネットワーク上でセキュアな通信を行うためのプロトコルである。いわゆるVPN(Virtual Private Network)用のプロトコルのひとつで、L2TPはこのPPPを使って認証されたユーザーとプロバイダ間にトンネル(論理的な専用の通信経路)を張り、専用線で接続したのと同じ様な閉じた環境を作る。
ユーザー側すなわちNAPに設置する装置をLAC(L2TP Access Concentrator)といい、このLACがユーザーが接続したいISPを選択する役目を担っている。ISP側のNSPに設置する装置はLNS(L2TP Network Server)とよばれ、このLNSがISPへの接続機能を提供。LAC-LNS間のトンネルを使って、ユーザーとISPがPPPで透過的に接続されるという仕組みで、集約されたアクセス回線とISPの回線間のつなぎ換え(もちろん物理的なつなぎ換えではなくネットワーク的なつなぎ換え)を自動的に行なっているのである。
□イー・アクセス
http://www.eaccess.net/
(2002/05/15)
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