いよいよ総加入者数300万人台に突入しようとするADSL。年内には500万という声も聞かれるが、果たして肝心のバックボーンは、急増し続けるインターネットアクセスを支えきれるのだろうか。
アクセスが集中するとレスポンスが著しく低下する。特定の接続先にアクセスが殺到し、サーバーの処理が追いつかなくなってしまう場合もあるが、そこに至るまでの経路のどこかで渋滞が起こってしまうと、事態はかなり深刻。それがユーザーの直上の回線であれば、恒常的なレスポンスの低下を招くし、なんらかの障害で止まってしまえば、ユーザーはインターネットに出る事すらできなくなってしまう。
ダイヤルアップ接続では、直接接続するプロバイダー(以下ISP)のLANや、そのISPの上流回線が最初のハードルになるが、ADSL接続の場合にはその前に、ISPに至るまでの経路という新たな要素が加わる。ここでレスポンスが低下したり、止まってしまったりすると、その先でいくら頑張っても挽回のしようがない。イー・アクセスが提供するのは、ユーザーに直結するこの部分であり、提供する回線がアクセスの足を引っ張るようなことになれば、それこそ面目丸潰れである。結論から先に申し上げると、すでにネットワークの規模、安定性ともに全く問題のないレベルであり、この先も、ステップアップのタイミングさえ間違えなければ、心配は不要とのことである。
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増えるトラフィック、増強するネットワーク
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ADSLの普及は急速に進んでいる
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トラフィックは確かに増加の一途をたどっているという。ダイヤルアップ接続では、アクセス回線そのものが細く、基本的に個人ユースであることもあって、1コネクションのトラフィックはせいぜい5k~10kbps程度。これが、ファミリーユースで回線も太くなったADSLでは1桁跳ね上がり、個々のコネクションを見るとさらに増加の傾向にあるそうだ。となると、全体のトラフィックは級数的に増えて行きそうな気がするが、実は、新規加入者のトラフィックは非常に少ないため、全体的に見ると、まだ加入者数並みの増加に留まっているという。「この状態がもう暫く続いて、新規加入がそろそろ止まり始める再来年くらいから、今度は総容量がぐわっと延び始めるんでしょうね」あっさりと言い切るCTOの小畑氏からは、備えは万全という絶対的な自信が伺える。
イー・アクセスのネットワークは、ユーザー側のネットワークとISP側のネットワークの2層構造になっているが、最初に辛くなる部分は、全てのトラフィックが集中するISP側の回線である。この部分は、個々のISPによって規模もスケジュールも異なるが、メガからギガへ、さらに10Gbpsへと順次増強して行くことになる。現状では、規模の大きなところがGigabit Ethernet(GbE)化していたり、そろそろ入れようかとしているところ。最大手になると、既にトラフィックはGbEの半分を越えているという。
一方のユーザー側のネットワークは、末端の収容局を2.4Gbpsで、基幹を10Gbpsでつないでいるが、次のステップでは、2.4Gbpsを10Gbpsへ、10GbpsをWDMへと移行する準備が、現在着々と進められている。この部分には、一部にMegaLink(NTTのATM専用線サービスで、純粋な専用回線よりもビット単価の割安なタイプ)を使用しているそうだが、先ずはこれを全てダークファイバ(通信サービス抜きの、純粋な光ファイバケーブルそのものの貸し出し)に置き換え、フル伝送路化するのが今夏。秋には、ユーザーの増大に備えてラックの分散化を開始し、冬には基幹のWDM(Wavelength Division Multiplexing~波長多重)化を予定しているという。
ちなみに、10G化に際しては、現行のATM伝送経路をEthernetに切り換えることも検討しているそうだ(筆者注)。全然問題ないと仰るので、筆者は一瞬、現状のまま1~2年は行けちゃうのかと思ったが、さすがに世の中そこまでは甘くない。あくまで、今後も充分対応して行けますよという意味であり、足回りを支えるネットワークのコア技術も、急激なアクセスの増加に充分対応できるだけのスピードで、今もなお進歩を続けているとのことである。
ADSLの足回りは当面大丈夫というところで、今週のインフラ探険隊は任務完了。次回は、イー・アクセスのちょっと気になるサービス「インターネット電話サービス」をチェックしてみたい。なお、「イー・アクセスのネットワーク」の巻も、そしてこのインフラ探険隊の連載も、次週でひとまず最終回である。
□イー・アクセス
http://www.eaccess.net/
(2002/05/31)
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