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無線LANルータ編
第19回:UPnP


 UPnPは、ネットワーク機器の自動認識や自動設定を行なうための仕組みです。Windowsの世界で主に利用されていますが、現在ではUPnPの存在を意識する必要がないほど普及が進んでいます。


ネットワーク対応機器同士が繋ぐだけで相互利用できるようになる「UPnP」

 UPnPは「Universal Plug & Play」の略で、日本語に直すのであれば「汎用の、挿した(Plug)だけで使える(Play)仕組み」と言ったところでしょうか。この規格は、UPnP FORUMという団体が策定しており、参加社は800以上にのぼります。

 UPnPが目的とするのは、「繋ぐだけで使える世界」です。例えば、USB接続のマウスを買ってきてPCに接続した場合を考えると、接続して少し待てば自動的に認識され、問題なく使用できるようになると思います。

 これは、USB機器のすべてが「PnP(Plug and Play)」で動作することが前提になっており、よく使われる機器用(マウスなどその最たるものです)のソフトウェアがあらかじめ用意されているからこそ実現できるというわけです。そして、同じことをより幅広い世界でも実現しようというのがUPnPの目標です。

 UPnPでは、ネットワークに繋がる機器同士が相互に通信を行ない、すぐに利用できるようになることが目標です。ここで言うネットワーク機器とは、「TCP/IPが利用できるもの」と言い換えても間違いではないでしょう。有線LANのみならず、無線LANやIEEE 1394、Bluetooth、今後はWiMAXなどもカバーされる予定になっています。


図1:ルータとクライアントが有線/無線LAN接続されている環境

 とは言え、一般的な利用環境は図1に示したルータとクライアントが有線LANもしくは無線LANで接続されたケースではないかと思います。このケースでは、ルータは「IGD(Internet Gateway Device)」として働きます。そして、新たにクライアント2を接続した場合、ルータ(IGD)とクライアントはお互いの情報を相互に交換します。これによって、以下のような作業が行なわれ、クライアントからインターネットが利用できるようになるわけです。

・ルータ(IGD)はLANに新たなクライアントが追加されたことを認識する
・クライアントはルータ(IGD)の存在を認識するとともに、自分のIPアドレスをはじめとしたインターネット接続に必要な情報をルータ(IGD)から取得する

 ここで「DHCPと何が違うの?」と見抜いた人は鋭いです。DHCPは第6回(記事URL)で説明しましたが、ここまでの話に限ればDHCPと機能的な差はほとんどありません。

 ただし、まだ説明していない機能もあります。第16回のDMZ(記事URL)で、オンラインゲームなどではDMZを使わないと接続がうまくいかないケースがあることを説明しました。しかし、UPnPで提供している「NAT Traversal」と呼ばれる機能を使うと、DMZのように全ポート転送などをしなくても必要なポートだけを転送させることが可能になり、安全性が増します。ただ、現状ではこれに対応するアプリケーションが少ないのが残念ではあります。

 UPnPは、ルータ以外のネットワーク接続に対応したプリンタやスキャナ、メディアサーバーなどの接続用途でメリットが大きいでしょう。というのも、従来のDHCPではこれらネットワーク機器の接続をサポートしていなかったからです。

 Windows以外のOSでは対応していないケースがある点は今一歩な部分ではありますが、UPnPを使用することによるデメリットはありません。従って、UPnPの設定は有効にして使用できる状態にしておくのが良いでしょう。


関連情報

URL
  無線LANルータ編 索引ページ
  http://bb.watch.impress.co.jp/cda/koko_osa/17754.html

2007/09/10 11:05

槻ノ木 隆
 国内某メーカーのネットワーク関係「エンジニア」から「元エンジニア」に限りなく近いところに流れてきてしまった。ここ2年ほどは、企画とか教育、営業に近いことばかりやっており、まもなく肩書きは「退役エンジニア」になると思われる。
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