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スイッチングハブ編
第5回:ファンレス設計と筐体


 かつてのスイッチングハブは消費電力が高く、ファンの搭載が必須とも言えました。しかし、最近は8ポート以下の製品ではファンレス化されたものが多くなっています。


家庭向けではファンレスモデルが主流。筐体は金属やプラスチックなどがある

 第3回の話とも関連しますが、最近ではスイッチングハブのコントローラの消費電力が大幅に低くなってきましたが、かつては8ポートタイプでも10Wを超える製品が存在していました。

 消費電力はそのまま熱となるわけですが、一般論として10Wを超える場合はファンによる冷却を行なわないと、熱によってチップの温度が上昇しすぎてしまい、故障する恐れがあります。従って、図1のようにケース側面に吸気ファン、反対側の側面に排気口を設け、コントローラの熱をヒートシンク経由で冷却する仕組みが多く用いられていました。


図1:ファンを使った本体内の冷却イメージ

 しかしながら、こうした「ファンを設ける」というのは、特に家庭用などには好ましくありません。その理由の主だったものとしては、以下の点が考えられます。

・ファンは回転部品であるため、いわば消耗品。したがって、ファンの寿命が製品の寿命になる
・ファンは多かれ少なかれ騒音が生じてしまう
・家庭内のホコリなどを吸い込みやすい
・ファンが搭載される分、余分なコストが発生してしまう


 また、そうでなくても消費電力が高いのに、さらにファンの分が消費電力に上乗せされるのは喜ばしいこととは言えません。

 そしてその後、コントローラの改良によって消費電力が概ね7W以下に抑えられるようになった頃から、各社からファンを非搭載とした製品が登場するようになりました。現在では、16ポートや24ポートといった大規模製品、オフィス向けのインテリジェントハブと呼ばれる高機能製品を除けば、ほとんどがファンレス構成になっています。

 ただ、7W程度ではファンこそ必要ありませんが、ヒートシンクを使った冷却の必要はあります。この必要もなくなるのは1W未満などになりますが、流石にここまで消費電力が抑えられるのは当分先の話になるでしょう。

 では、ファンレス化された製品の内部はどうなっているのかですが、これを示したのが図2になります。ここでは、側面の吸排気口を通して冷たい外気を取り入れ、かつ熱せられた排気を放出するわけですが、これは内部にある空気の対流で行なわれますので、それほど勢い良く交換されるわけではありません。

 ヒートシンクで熱せられた空気はまずまっすぐ上に上がり、そこでケースの天板にぶつかり、そこから天板に沿って側面に移動し、最後に排出されるといったイメージになります。ここで問題になるのがケースの材質で、鉄やアルミなど比熱の低い材質だと、熱せられた空気から熱を奪い、外部に放出しやすくなります。

 従って、プラスチックなど比熱の高い材質を使ったケースよりも、鉄やアルミの方が内部温度が上昇しにくいという特徴があります。実際、いくつかの製品はメタル製ケースを使っていることをアピールしていますが、それはこうした放熱特性の差があるからです。


図2:ファンを使わない場合の冷却イメージ

 ただ、純粋に比熱で比較すれば、プラスチックが2~3に対して、鉄やアルミは0.4~0.8程度で有利なのですが、実際にはケースが素材そのままではなく、塗装などが行なわれていますのでその分を差し引いて考える必要があります。

 また、ヒートシンクが直接ケースに接してる場合には話が変わりますが、間に空気という比熱の大きいものを媒介にしているので、メタルケースと言っても極端に冷えやすいということは実際にはありません。

 室温状態で利用する場合、恐らくコントローラの温度が数度下がるかどうか、というあたりが一般的でしょう。むしろ、メタルケースを使用した製品では重量がプラスチック製品よりも重くなるケースが多く、価格もいくらか高くなる傾向にあるようです。従って、家庭での利用であればプラスチックケースの製品でも十分と言えるでしょう。


関連情報

URL
  スイッチングハブ編 索引ページ
  http://bb.watch.impress.co.jp/cda/koko_osa/21429.html

2008/04/21 11:08

槻ノ木 隆
 国内某メーカーのネットワーク関係「エンジニア」から「元エンジニア」に限りなく近いところに流れてきてしまった。ここ2年ほどは、企画とか教育、営業に近いことばかりやっており、まもなく肩書きは「退役エンジニア」になると思われる。
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