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高速PLC&同軸アダプタ編
第2回:HomePlug


 HomePlugは、高速PLC規格の1つ。HD-PLCとは異なる規格で、日本ではシャープなどが対応製品を発売するほか、KDDIの「ひかりone」ではレンタル提供されています。


高速PLC規格の1つ「HomePlug」。日本での製品はHomePlug AV対応が多い

図1:PLCの利用イメージ。コンセントへの接続自体は他の高速PLC規格と同様
 高速PLCに関する規格は、前回紹介したHD-PLCだけではありません。今回紹介するHomePlugも規格の1つで、家庭内にあるコンセントを使ってLAN環境が構築できます。なお、HD-PLCもそうですが、他の高速PLC規格との互換性は持っていません。

 HomePlugは、米国にある「HomePlug Powerline Alliance(Webサイト)」という団体が標準化や普及推進を行っている高速PLC規格です。主な規格には以下のようなものがあります(いずれも速度は理論値)。

・HomePlug 1.0:14Mbpsで接続する規格
・HomePlug 1.0 with Turbo:85Mbpsで接続する規格。ただし、同規格はメンバー企業の1つであるIntellonが独自開発したもので正式な規格ではない。
・HomePlug AV:200Mbpsで接続する規格。

 また、以下の2つの規格も開発が進められています。

・HomePlug Access BPL:屋外の電力線を使って通信する規格。例えば、ISPの基地局と各家庭の間を接続するといった用途を想定している。
・HomePlug Command&Control:家庭内の空調や照明など、ホームオートメーション向けで、低速だが低価格な規格。

 日本国内ではHomePlug 1.0や1.0 Turboの製品はほとんど見ることはできず、シャープやKDDI製品が対応しているHomePlug AVが主要な規格となっています。


シャープの「HN-VA40S」
 このHomePlug AVですが、理論値が200Mbpsで、実際のデータ転送レートは最大150Mbps程度になります。もっとも150Mbpsであれば、通常使用する分には困らないと言えます。

 また、名称からおわかりの通り、HomePlug AVは高速PLCアダプタにAV機器などを接続してデジタルテレビやIP電話などのコンテンツを流すことも考量されています。実際、同規格に対応した製品を見ると、イーサネットアダプタ以外にもオーディオシステムやUSBアダプタなどの製品もあります。

 HomePlug Powerline Allianceに加盟する企業は現時点で70を超えており、対応製品も次第に増えつつあります。アライアンスではまた、相互接続性の認証も行っており、認証済の製品も70以上にのぼります。ただし、多くの製品は日本で利用するための認定を取得していないため、日本国内では利用できません。

 現時点では、シャープのPLCモジュール(関連記事)や、PLCアダプタ(関連記事)がある程度です。また、アライアンスメンバー企業を見ると、スポンサー(取締役会に役員を送り込める)に名前を連ねている日本企業はシャープのみで、それ以外は一般会員としてKDDIと沖電気、富士通シーメンスが加わっている程度になります。従って、日本国内で急速に製品数が広がるかどうかは少し期待薄です。

 なお、冒頭で述べたように、HD-PLCとHomePlugは異なる高速PLC規格となるため、相互接続性はありません。ただし、HomePlug Powerline Allianceは現在のPLCの標準規格であるIEEE P1901を策定しており、この策定には松下電器産業やソニー、三菱電機が米国で設立した「CEPCA(CE-Powerline Communication Alliance)」も協力しています。

 将来的にはHomePlug AVとHD-PLCを合わせた新しい標準規格が登場する可能性もあるかもしれません(関連記事)が、その際に現行の製品が利用できるかどうかは不透明です。

 なお、HD-PLCと同様にコンセントを利用するPLCの特性上、テーブルタップやたこ足配線のコンセントに接続すると、通信速度の低下や通信ができない場合がある点は注意が必要でしょう。


関連情報

URL
  高速PLC&同軸アダプタ編 索引ページ
  http://bb.watch.impress.co.jp/cda/koko_osa/22457.html

2008/07/14 10:56

槻ノ木 隆
 国内某メーカーのネットワーク関係「エンジニア」から「元エンジニア」に限りなく近いところに流れてきてしまった。ここ2年ほどは、企画とか教育、営業に近いことばかりやっており、まもなく肩書きは「退役エンジニア」になると思われる。
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