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急速に展開するIP電話サービスを比較
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2002年末から急速に話題となったIP電話サービス。サービスは徐々に立ち上がりつつあるものの、無料で通話できる相手先やその利便性など、サービスの詳細は実に複雑だ。ここではプロバイダー各社が発表しているIP電話サービスを中心に、料金や利便性などについてまとめてみたい。
IP電話とは、総務省が実施した「IPネットワーク技術に関する研究会」によれば、「ネットワークの一部又は全部においてIPネットワーク技術を利用して提供する音声電話サービス」と定義されている。また、このうち音声データのやり取りをインターネット網で行なうサービスについては「インターネット電話」と定義、この2サービスは明確に区別されている。
現在プロバイダー各社が次々と開始しているサービスは、このうち前者にあたるサービスで、“VoIP基盤ネットワーク”などと呼ばれるIP電話専用のネットワークで音声データをやり取りしている。また、一般電話機から一般電話機へ通話できる「Phone to Phone」型のサービスという点も特徴のひとつだ。IP電話サービスは非常に多彩で、専用アダプタを導入するだけでIP電話が利用できる「IP Talk」などもあるが、本記事ではISPサービスと合わせて提供されるPhone to Phone型のサービスを中心に考察していきたい。
■ IP電話とはどのようなサービスか
IP電話の特徴としては、「無料通話」「ブロードバンドの常時接続サービスが前提」「専用の機器が必要」などが大きく挙げられる。この中で無料通話に関しては、同じVoIP基盤ネットワークを採用したIP電話サービス同士であれば可能となる。詳細は後述するが、現状では先行するYahoo! BBのほか、NTTコミュニケーションズ(NTT Com)、KDDI、TTNet、日本テレコム、ぷらら、NTT-MEなど非常に多くのネットワークが乱立している状態だ。
通話に関しては一般加入電話への通話も格安料金で利用できる点も特徴だ。ただし、通話できるのは一般加入電話および国際電話がほとんどで、110や119といった緊急番号などは一般加入電話から発信することになる。携帯電話・PHSについてはほとんどのサービスが対象外となり、Yahoo! BBの「BBフォン」、有線ブロードネットワークス(USEN)の「GATE CALL」など一部のサービスがIP電話から発信できる。
なお、2002年9月からは、音声品質で一定の基準を満たしたIP電話サービスに対し、総務省がIP電話専用の「050」から始まる番号を交付している。IP電話サービスの提供に必須という訳ではないものの、多くのプロバイダーは050番号を採用したサービスを提供している。
現状では発信のみ利用できるIP電話サービスだが、2003年夏頃にはIP電話での着信も可能になる予定だ。着信を含めてIP電話サービスを利用する場合は、インターネットに常に接続している必要があるほか、音声データやり取りのためにはダイヤルアップ程度の通信速度ではとても利用できない。NTT Com系のIP電話サービスでは、音声データで64kbps程度、そのほかヘッダ情報などを加えて100kbps程度が必要とされているが、個人向けブロードバンド接続サービスはすべてベストエフォート型であることを考えると、実際に音声データをやり取りするにはその数倍程度の通信速度は最低でも必要といえる。
専用の機器に関しては、新規ユーザーを主な対象にADSLモデム、ルータ、IP電話機能を内蔵した一体型のタイプ、すでにブロードバンド接続サービスを利用するユーザー向けに、モデムやメディアコンバータなどに外付けするタイプの2種類が通常用意され、これらの機器は主にプロバイダーからレンタル提供される。なお、3月19日からはNTT東西がフレッツユーザー向けにIP電話対応機器の提供を開始。こちらはすでにルータを利用しているユーザーも導入できるアダプタ型が提供されるほか、一般向けに機器販売も行なわれる。
■ IP電話サービスの利便性
電話サービスとしての利便性は、さほど大きな問題はないといえる。と言うのも、現状のIP電話サービスは、一般電話回線あってのサービスで、いわば付加サービス的な存在だからだ。一般加入電話やIP電話への通話はIP電話で格安に利用でき、IP電話で発着信できない番号などは一般電話回線へ迂回することで、通常の料金が発生するものの通話は可能になる。
ただし、細かなサービス面では課題も多い。FAXの対応についてはNTT Com系では一部の機器を除きIP電話サービスでも利用できるとしているものの、KDDI、TTNetではサポート対象外となる。また、すでに正式サービスを開始しているNTT Com系ではIP電話の通話明細が発行されない点も課題の1つだ(日本テレコムやYahoo! BBなどは通話明細サービスも対応している)。そのほか、キャッチホンについても、発着信側がともにIP電話である場合は対応していない場合もある。
加えて、ユーザーのインターネット環境全体でも利便性がやや損なわれる面がある。IP電話サービス用に提供される機器はルータ機能を搭載しているものの、Universal Plug and Play(UPnP)、VPN、無線LAN機能などをサポートしている機器は現状ではまだ少ない。これらの機能を必要とするユーザーにとってはIP電話の導入がデメリットとなる面もある。NTT東西のIP電話対応機器は、UPnPをサポートするほか、ルータに接続して利用できるアダプタ型のものも提供するため、こういった問題はサービスの普及と対応機器の出揃い方次第で解決できる問題と思われる。
■ 料金面でのメリットは?
続いてユーザーが最も重要視すると思われる料金はどうだろうか。これについては大手プロバイダーのサービスを中心に料金比較を行なってみた。
IP電話サービスの料金比較
[注]BB.exciteフォンを追加、KDDI-IP電話サービスを正式サービスに更新しました
※1 IP電話サービスを申し込むことで、インターネット接続サービスからIP電話の月額料金相当額が割り引かれる
※2 IP電話を申し込むと「でんわdeODN割引」適用対象となり、インターネット接続料金が200円または400円割り引かれる
※3 Yahoo! BBを同時に利用する場合は、Yahoo! BB標準サービスのため必要ない
※4 セットプランの場合、初期費用はADSLプランに含まれ、月額費用は現在のところ追加90円
国内の通話料金については、Yahoo! BB、ぷらら系のReSET.JPが3分7.5円、同じくぷらら系のlivedoorが3分7.4円となるほかは、ほとんどが3分8円に設定されている。ただし、国際通話に関してはNTT Com系を中心に米国1分9円としている一方で、ぷらら系のサービスは米国1分2.5円と大きな差が開いている。なお、ぷらら系とNTT Com系の両方に対応したASAHIネットでは、米国への通話料金を同額に設定している。
livedoorの0.1円刻みの料金設定は、ともすればマイライン導入時の電話会社による値下げ競争を思わせるが、IP電話サービスは月額料金や回線品質、インターネット接続サービスなども含めたサービスである点に加え、IP電話サービスが正式サービスとして出揃っていない現状を考えると、すぐさま値下げ競争が勃発することは考えにくい。
月額の基本料金は多くのサービスが400~280円程度を徴収する中で、ぷらら系サービスの一部はインターネット接続料金を割り引くことで月額料金が実質無料となるほか、初期費用も無料となっている。Yahoo! BBではBBフォンが標準サービスとして提供されているため、Yahoo! BBと合わせて利用すればBBフォンの初期費用、月額費用などは必要ない。
そのほかIP電話対応機器のレンタル料金も月額費用として必要になる。ADSLモデムを内蔵しているタイプでは、従来のADSLモデムレンタル料金との差額として190~280円程度が必要になる。すでにADSLモデムを利用しているユーザー、FTTHユーザーは外付け型を利用することになり、こちらはモデム内蔵型よりも100円程度高めに料金が設定されている。NTT東西の端末も、ADSLモデム内蔵型が750円(スプリッタレンタル料除く)、外付け型が380円と料金設定はほぼ同一だ。
NTT東西の一般加入電話の通話料金と比較してみよう。深夜の時間帯での市内通話料金では、実際は一般電話のほうが割安となる。ただし、市外通話や60kmを超えた場合など、多くの場面ではIP電話サービスのほうが安くなる。
固定電話の3分ごと通話料金(NTT東西)
固定電話間の通話料金(単位:3分) |
時間帯 |
市内 |
同一県内 |
20kmまで |
60kmまで |
60km超 |
昼間(8:00~19:00) |
8.5円 |
20円 |
30円 |
40円 |
夜間(19:00~23:00) |
30円 |
深夜(23:00~8:00) |
8.5円/4分 |
20円 |
ただし、問題となるのは月額料金やIP電話機器のレンタル料だ。ほとんどのプロバイダーは機器レンタル費用や通常タイプとの差額、月額料金の合計が500円を超え、月額費用が実質無料となるぷららフォン for フレッツ、BIGLOBEフォン(PN)でも機器レンタルの追加料金として280~380円が必要になる。また、BBフォンは基本料金こそ必要ないものの、12Mタイプ ADSLとBBフォンに対応したモデムのレンタル料金は890円と他のADSLサービスと比較して最も高い。
NTT東西の固定電話を例にとれば、数々の割引サービスが用意されている。隣接20kmまでの通話が3分8.5円となる「エリアプラス」、同一県内の市外通話を最大35%割り引く「スーパーケンタくん」、市内通話が5分8.5円になる「タイムプラス」などはそれぞれ200円で利用できるサービスだ。また、マイラインプラスの登録次第ではこれらのサービスが無料または割り引きになるほか、フレッツ・ADSLが割り引きになる特典も用意されている。ユーザーの利用形態によっては、IP電話を利用するよりもこれらのサービスを多用したほうがメリットが大きい可能性もある。
さらには、フュージョンやJENS ipPhone、ぷららフォンといった電話サービスを利用するという手もある。フュージョンとぷららフォンは3分20円、JENS ipPhoneは3分18円と、いずれも上記のIP電話よりは高めの通話料金だが、機器が一切不要で月額基本料金の必要がないため、電話の利用頻度次第ではこちらのサービスのほうが有益な場合もある。ぷららフォンはぷららの会員である必要があり、JENS ipPhoneは特定の番号にダイヤルしてからの通話となるため、利便性はいくぶん損なわれるが、フュージョンはマイライン登録すれば相手先の番号をダイヤルするだけで通話できるため、利便性はIP電話サービスと比べても遜色ないといえる。
通話できる相手先についても、携帯電話やPHSに対応しているIP電話サービスは現状では少ない。IP電話の安さが活かせるのも、現在のところ一般加入電話または同じネットワークのIP電話サービスへの通話する場合がほとんどだ。もちろん余計な付加サービスに頭を悩ますことなく、一般電話と同じ感覚で利用できる点についてはIP電話サービスが優れているが、一般加入電話の利用頻度がそれほど高くないユーザー、利用のほとんどが市内通話となるユーザーにとってはそれほどメリットが大きくない可能性もある。
■ 「無料通話」の勢力図
では、IP電話最大の武器と言える「無料通話」について考えてみよう。ここでは大手プロバイダーを中心とした関係図を用意した。
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IP電話サービスの比較図
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図中で、同一のVoIP基盤ネットワークを利用するプロバイダー間は無料で通話できる。NTT-MEとぷららについては、ネットワークは別であるが、「ぷららフォン for フレッツ」「WAKWAKフォン」相互の通話は無料と発表されているため、2つのネットワーク間の無料通話は可能になると考えられる。また、日本テレコム、KDDI、TTNetのVoIP基盤ネットワークは、4~5月頃に相互接続が実施され、無料通話が可能になる見込みだ。
図を見れば一目瞭然だと思われるが、無料通話の相手先は実に複雑だ。BIGLOBEやASAHIネットなどはサービスメニューによって異なるVoIP基盤ネットワークを採用しているため、同じプロバイダーであっても無料どころかIP電話同士の通話が現状では利用できない。ぷらら、BIGLOBEのBIGLOBEフォン(PN)、livedoorなどは国内通話料が比較的安価だが、大手プロバイダーの多くがNTT Com、または独自のVoIP基盤ネットワークを採用しているため、無料通話の相手数では僅かに劣る可能性もある。その点では、すでに200万人会員を集め、標準サービスとして利用できるBBフォンが無料通話の相手先、月額費用、国内通話料金から考えるとメリットが高い。ただし、無料通話の相手先に関しては、VoIP基盤ネットワークの相互接続など、プロバイダー各社の動向次第で今後は変化が起きることが予想される。
■ 現状はまだ発進段階、今後の展開に期待
以上の点を踏まえてIP電話サービスを総括してみたい。国内・国際通話料金の安さという点でメリットが大きいのは、一般加入電話、それも長距離通話が多いユーザーだ。ほとんどのIP電話サービスでは月額費用が必要になるが、県外より遠距離の通話料金ではIP電話が明らかに安価なため、導入のメリットを享受しやすい。また、通話頻度の高い相手先がIP電話を導入、無料通話に対応している場合はかけ放題となるため、こちらもサービス導入の価値は十分にあるといえる。
逆に固定電話をあまり利用しないというユーザーは、月額費用の面から大きなメリットを得にくい可能性がある。携帯電話・PHSへの通話が多いというユーザーも、携帯電話・PHS未対応のサービスの場合ではさほど意味がないだろう。固定電話よりも携帯電話・PHSの利用率が高まっている現状では、メリットを享受できる場面は少ないかもしれない。
現状ではまだまだIP電話ならではのメリットは見出しにくいものの、これは当然の話と言える。Yahoo! BBのBBフォンなど一部のサービスを除けば、多くのIP電話サービスは2002年12月から試験サービスが始まったばかり。この中でもっとも早く正式サービスへ移行したNTT Com系でも今月初めからの開始で、ほとんどのプロバイダーは、まだ試験サービスか、サービス検討中の段階だ。IP電話専用の050から始まる番号に関しても、着信が可能になるのは2003年夏頃の予定で、現状はまだまだサービスを暗中模索であるというのが実際だ。
今は固定電話以上の普及数となった携帯電話も、サービス開始当初は非常に高く、そして端末も大きいものだった。また、PHSと携帯電話では相互に通話ができない時代もあった。携帯電話やPHSがEメールを標準で装備、インターネット閲覧すらできることが当然な環境はまだごく最近のことなのだ。
IP電話は、料金面では誰もがメリットを享受できるとは言いにくいが、県外通話や国際電話が多いユーザーには非常にコストパフォーマンスが高い。また、サービス利用面でのデメリットという点も大きくないため、簡単に導入できる点もポイントだ。サービス展開や対応サービスの出揃い方は、携帯電話やPHSでも追いつかない早さだろう。
一般の電話とは違った新たな電話の利用方法も、様々な形態が予定されている。中部電力やNCVは、IP電話専用番号を使ったテレビ電話サービスなどを検討。また、NTT-MEはモバイル環境で通話できるIP電話サービスのトライアル実験をすでに行なっているほか、アイピートークも無線LANを利用したモバイルIP電話端末を開発している。異なるVoIP基盤ネットワークの相互接続についても、現状は自身のサービス展開が急務であるものの、どの事業者も必須の課題として認識している。現状でIP電話のすべてを評価するのではなく、むしろ今後の展開に大きく期待したいところだ。
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(甲斐祐樹)
2003/03/19 15:14
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