ブログの特長であるトラックバックにちなみ、ブログ関連サービスに携わる方を次々に紹介していただき、ブログの世界をつないでいくインタビュー連載です。第12回は、ブログサービス「ドリコムブログ」やブログポータル「Myblog Japan」などを運営するドリコムの内藤裕紀氏です。
内藤裕紀(ないとう ゆうき) ドリコム代表取締役。「ドリコムブログ」、ブログポータル「Myblog Japan」といったブログ関連サービスのほか、ニュースとブログの検索「News&Blog Search」、求人情報検索「ドリコムキャリア」などを手がける。
□Number7110(内藤裕紀氏のブログ)
http://blog.drecom.jp/naito/
|
 |
■ 仕様が共通のブログサービスでは周辺サービスが充実

|
ドリコムブログへリニューアルする前の「MyProflie」
|
――本日はよろしくお願いします。まずはドリコムブログの前身である「MyProfile」の開始についてお聞かせください。
内藤氏:MyProfileを始めた頃は、口コミや「バイラルマーケティング」といった言葉が流行していて、HotmailやICQなどが口コミで会員を獲得していったという事例が話題になっていました。ただ、これらは自社サービスとして展開する話であって、もう少しエンターテインメント性を持ち、自社だけでなく他社も使えるようなマーケティングツールはないものか、との考えから開始したのがMyProfileです。
MyProfileは、自分のプロフィールを他人に紹介することで口コミを広げるというコンセプトのもと、今のブログのように映画のスキンを提供するといったビジネスモデルを考えていました。それが2年半くらい前のことですね。ただ、個人のプロフィールだけでは更新性が弱いので、日々更新してもらうために日記機能を付けたという流れです。
――MyProfileでは、日記サービスとは別のサービスとしてブログも提供されていました。
□関連記事:MyProfile、日記サービスをブログへデータ移行して統合
http://bb.watch.impress.co.jp/cda/news/5843.html
内藤氏:2003年初めには海外の「Blogger」といったブログサービスを我々も認識していましたし、「ブログと日記の違いは何だろう」ということも考えていました。自分たちの中ではその違いを整理してはいたのですが、一般へ説明するにはブログはまだまだなじみのない存在だったので、だったら日記とは別にして両方のサービスを提供しよう、という経緯です。
ブログは共通仕様なので、自分たちで周辺サービスを作らなくても他から周辺サービスが登場するメリットがあります。iPodを見ても、盛り上がっているハードには周辺機器も多く登場して、全体としてサービスが充実します。ブログ全体が盛り上がって欲しいという考えから、ドリコムでも周辺サービスは率先して取り組んできましたね。

|
ドリコムが運営するブログポータル「Myblog Japan」
|
――ドリコムがこれまで手がけた周辺サービスのコンセプトは。
内藤氏:MyblogListは、まだRSSリーダーがそれほど登場していない時期だったこともあり、ブログを簡単にチェックするためのサービスとして開始しました。それまでは更新リストを自分のブログに設置して、他の人のブログの更新状況を見るのに自分のブログへ行くというアクションだったので、それを1画面で簡単に読めるように、という発想ですね。その頃はまだブログを利用する際のハードルが高かったので、ただ読みたいものを選んでリストを作れるようにして、情報発信のハードルを下げながら裾野を広げようという考えがありました。
□関連記事:Myblog Japan、お気に入りBlogの更新状況やRSS情報を確認できるサービス[INTERNET Watch]
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2003/12/04/1368.html
――MyClipのような情報のクリッピングサービスは、「ソーシャルブックマーク」といった形でまた盛り上がっていますね。
内藤氏:ソーシャルブックマークが流行しているからやってみるというよりも、自分たちで面白いと思った周辺サービスやインターネットのサービスに力を入れていきたいですね。MyClipはYahoo! Japanのトップページに表示されるようなニュースを、個人ユーザーの力を使って何かできないかな、と思って作った面が強いので、ブログ検索「News&BlogSearch」などと融合しながら、新しいサービスに変えていきたいと思っています。
News&BlogSearchでは著作権の問題から、一部のニュースサイトの記事に関しては表示しないようにといった要求がありましたが、MyClipのようにユーザーが自分で収集するようなサービスについては何も言われていません。MyRSS.jpも、ユーザーが選択したサイトのRSSを抽出するといったインフラを提供するスタンスですよね。我々も発想を転換して、新しいサービスを作っていきたいと思います。
□関連記事:気になる記事を手軽にブログに追加、ドリコム「Myclip」サービス開始
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2004/03/17/2472.html
□関連記事:Myblog Japan、リアルタイム性を高めたニュースとブログの検索サービス
http://bb.watch.impress.co.jp/cda/news/5678.html
MyRSS.jp:RSSに対応していないホームページやWebサイトからRSSで新着情報を配信するサービス。メールアドレスの登録のみで無料で利用できる。
□MyRSS.jp http://myrss.jp/ |
■ サービスの統合やサーバー強化を予定

|
MyProfileからリニューアルした「ドリコムブログ」
|
――ドリコムブログのユーザー数やユーザー層は。
内藤氏:MyProfile時代からの会員もいるので区別が難しいですが、会員登録は約17万人程度ですね。ユーザー層は、サービス当初のマーケティングツール的なビジネスを考えたときにF1と呼ばれる20代女性を想定していました。そのため、世代的には10代後半から20代後半の女性ばかりが集まりましたね。
それに対して、MyblogListやMyClipといった周辺サービスはブログユーザー向けで、その当時は男性のブログユーザーが多かったので、男性も増えてきました。男女比はMyProflieの頃は女性が8割くらいでしたが、今は女性が6~7割くらいですね。ただ、全体的には、いかにサービスを簡単に使ってもらえるかというところに視点を置いているので、男女に限らず、初心者でも使えるというところが魅力だと思っています。
――個人向けサービスの今後の予定は。
内藤氏:ドリコムのサービス全体を統合していく中で、結果として今までと違うサービスに変化していく、といったものが多いですね。例えばNews&BlogSearchとMyClipの統合だったり、MyblogListのRSSリーダー機能の向上など、6月から8月にかけてサービスの見直しを予定しています。
それに合わせて、サーバーの強化も考えています。現在使っているサーバー予算の5倍くらいの金額を投入して今後サーバーを強化していく予定です。その作業を進めている最中に、ゴールデンウィークのような障害が発生してしまったのですが。
――ゴールデンウィークに起きた障害の原因は。
内藤氏:他の会社が休みだったためにサーバー機材が調達できなかったのが大きな理由です。ひとまずはあるもので対応していたのですが、やはりそれだけでは無理でした。ハードウェア故障だっただけに、機材が調達できなくて対応が遅れざるを得なかったという面があります。このような自体に備えて、今後は予備の機械なども用意して、万全の体制を構築していきます。
■ ブログはコミュニケーションとパブリケーションが魅力
――ドリコムではビジネス向けのブログも積極的に展開していますが、イントラブログの魅力とは?
内藤氏:社内向けブログに関してはいろいろな考えがあると思いますが、情報の発信とアーカイブという面が今までのコミュニケーションツールと違うと思っています。我々は京都と東京の間を飛び回っているので、メーリングリストでの情報発信や情報の共有は業務報告の面が強くて、仕事のアイディアなどが伝えにくいという事情がありました。
今までのようなメールによる情報共有では、一度発信した情報を修正するとほぼ同じものが再度流れていましたが、ブログは情報をアーカイブできる。今発信している情報はもちろん、過去の情報も重要であって、ブログはそういったアーカイブされることの魅力が大きいのではと思います。
――ブログはシステムというよりコミュニケーションツールということですね。
内藤氏:ドリコムでは、営業と開発の意見のやり取りなどが社内ブログの中で日常的に行なわれていますね。ドリコムには社内向けのMyClipサービスがあるのですが、そこは非常に活性化していて、新しいサービスやドリコムに関係するニュースはそこを見れば手に入るようにもなっています。
――企業向けブログとCMS(コンテンツ管理システム)の違いとは。
内藤氏:我々の考えているCMSは、社内のコンテンツマネジメントよりも、社外に出すコンテンツをいかにマネジメントするかという点に魅力を捉えています。社内向けはイントラブログ、社外向けはCMSと位置付けていて、機能もそれに合わせて強化しています。
ブログの魅力は何か、というときに、情報のパブリケーションとコミュニケーションのしやすさが1つで、もう1つが周辺サービスの集まりやすさだと思いますが、情報の面でコミュニケーションを強化していったのがイントラブログ、パブリケーションを強化していったのがCMS、という棲み分けですね。
■ 無料サービスでトラフィックを誘導、収益につなげる

|
求人情報に特化した検索サービス「ドリコムキャリア」
|
――ドリコムの収益は。
内藤氏:製品化と販売の時期が最も早かったのがブログシステムで、次がドリコムオフィス、その次がCMSなので、収益もこの順番ですね。ブログはビジネスモデルが構築されてきており、1カ月で100社以上の問い合わせがあるので、これに対応しているだけで現状は十分といったところです。ドリコムオフィスはASP化して安価に使えるようなサービスを予定していて、次はCMSをASP化していく、という流れですね。CMSもレンタルサーバー事業者と提携して、中小企業のCMSのスタンダードになれるよう展開していきたいですね。
現状はブログ周辺ビジネスの売上が全体として大きく、検索サービスはフェーズ的にやっとビジネスモデルができてきた、という段階です。また、2004年はBtoB向けの製品を作る時期として考えていて、会社としてもその時期にBtoB製品を作らなければ成長性も見込めなかったため、BtoCの部分ではあまりリソースを割けない状況にありました。今年はトラフィック誘導という観点からも、BtoCへもリソースを割いていきますし、新サービスなども手がけていきたいと思います。
ブログポータルの「Myblog Japan」は、ブログのポータルという面では必要性も薄れてきていると思いますが、これはNews&BlogSearchと統合するなど、検索サービスの方向で強化していく方針です。トラフィックの誘導という面では無料サービスにも意味がありますし、無料サービス単独で収益を上げる必要もないと考えています。ドリコム内のサイトの統合を進め、無料サービスでトラフィックを集める。そのトラフィックを明確なビジネスモデルのあるところに誘導していき、収益を生み出す、という流れですね。
――ブログの魅力とは。
内藤氏:一般向けサービスで言うと、昔だと1つのサービスのオプションでしかなかった周辺サービスが、ブログであれば誰でも使ってもらえるという点では、新しいサービスの生み出し甲斐がある環境ですね。
ビジネスでいうとブログは流行のタイミングにありますが、流行があればすたりもある。けれど、CMSや社内向けの情報共有といった点は実際に流行が終わっても残っていくサービスですので、その点はビジネスとして魅力ですね。
コミュニティサービスやチャットサービスが流行した時代がありましたが、それがビジネスとして残るような部分があったかというと、あまりなかっただろうなと思います。この違いはビジネスの面では大きいですね。
――ブログの流行は今後どうなるでしょうか。
内藤氏:すたりの時期は来るでしょう。自分の知らない人にも面白い情報を発信していける人の割合は、それほど多くないとは思います。逆にそれだけの情報発信力を持っている人たちにとっては、よい情報発信の場所にはなると思いますね。
今は情報発信力のある人と普通の人が一緒になっていて、普通の人も一生懸命背伸びして有益な情報を発信しようとしていますが、それは結局背伸びだと思います。今後はブログを日記的に使う人やmixiのようにSNS的に使う流れと、単にパブリケーションツールといて効率がよいから使う、という流れに分かれていくように思いますね。
――本日はありがとうございました。
次回は、新着情報をRSSへ変換するサービス「MyRSS.jp」を運営するGombeiさんにお話をお伺いします。
□MyRSS.jp http://myrss.jp/ |  |
■ URL
ドリコム
http://www.drecom.co.jp/
■ 関連記事
・ コピー&ペーストのサイト移転も可能なブログベースの「ドリコムCMS」
・ ドリコム、求人情報に特化した検索サービス「ドリコムキャリア」
(甲斐祐樹)
2005/06/10 11:15
|