ブログ関連サービスに携わる方にお話を伺い、ブログの世界をつないでいくインタビュー連載です。第17回は、SNS写真共有サービス「フォト蔵」を運営するウノウの方々です。
山田進太郎(やまだ しんたろう)
ウノウ代表取締役社長。個人で運営していた映画情報サイト「映画生活」を運営するため、ウノウを有限会社として設立。現在は株式会社化している(写真左)。
尾藤正人(びとう まさと)
ウノウCTO。2003年度未踏ユースプロジェクトに「みかん - サーバ自動選択型FTPサーバの開発」 で採択。フォト蔵の開発を担当する(写真右)。
□フォト蔵開発日誌
http://news.photozou.jp/ |
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■ クローズドな環境で写真を共有して楽しめるサービス
――本日はよろしくお願いします。はじめにフォト蔵開発のきっかけをお聞かせください。
山田:フォト蔵を考えたのは2004年夏頃です。すでに海外ではFlickrという写真共有サービスがありましたが、これはどちらかというとオープンに写真を公開し、タグでつながっていくというサービスです。そうではなく、もう少しクローズドなイメージで、友達の間で共有した写真にコメントをつけて楽しむサービスがあったら面白そうだ、と考えました。
Flickrだけでなく、当時GREEやmixiといったSNSを利用している時にも「ここに写真機能があったらいいんじゃないか」という感想を抱いていました。今はストレージや回線サービスも安価になっていますし、非常にストレージサービスが運営しやすくなっているのに対して、オンラインアルバムのようなサービスは、無料のものは容量があまり大きくないことが多い。日本では携帯電話も普及しているので、携帯電話から画像をアップできる機能を付けていったら人気が出るのではないかと考えました。
もともと個人で始めた「映画生活」というサイトを運営するために有限会社ウノウを設立していたので、フォト蔵の開発を機にウノウを株式会社化しました。映画生活自体はある程度の規模に成長していて収益も見込めていたのに対し、フォト蔵はゼロからスタートした新規事業という位置付けです。
■ オリジナルサイズの画像も対応予定。動画対応も検討
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フォト蔵の画像アップロードソフト「貼る蔵」。デジタルカメラやリムーバブルディスクの画像を自動で認識するほか、画像の回転や色調補正といった編集機能も備える
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――現在のユーザー数は。
山田:ユーザーは5,000人くらいで、全体で約7万枚の画像が登録されています。登録制への移行や、ニュースや雑誌で取り上げられたこともあってユーザーが増え、そのユーザーがまた友達を招待する、という流れで伸びています。母集団が少ないので参考にはならないかもしれませんが、ユーザーの増加率は1日で約1.5%ほど伸びています。今後は新機能も取り入れながら、ユーザー数を倍々に増やしていきたいですね。
――フォト蔵の特徴は。
尾藤:登録できる画像の数が1万枚というのは、インパクトのある数字だと思ってます。また、単に写真をアップロードするだけではなく、SNS的な機能でユーザーのコミュニケーションが図れたり、登録した画像をブログへ投稿できる連携機能なども特徴の1つです。
山田:携帯電話からのメール添付やWindows用ソフトなど、3種類の画像アップロード方法を用意して、できるだけ初心者にも使いやすいサービスを心がけています。Windows用ソフトを使えばデジタルカメラの画像を自動で検索してくれるので、誰でも手軽に画像をアップロードできる。まだまだ使いにくい部分は残っていますが、初心者も含めてできるだけ幅広い年齢層に使ってもらいたいと思います。
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画像は最大450ピクセルに自動でリサイズされる。登録した画像を90度ごと回転することも可能
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――現在は画像が自動的にリサイズされますが、オリジナルサイズの画像をアップロードできるようなサービスは可能でしょうか。
山田:我々としては、画像はプリントアウトするよりも、それを使ってコミュニケーションしたいのではないかという仮説がありました。大きな画像にコメントするのは大変ですし、それよりは自動で画像をリサイズして、代わりに枚数を担保するように考えたのが今のシステムです。
とはいえ、本当に写真が好きな方は、画質や解像度を気にする人も多いですし、そういった要望もユーザーから寄せられています。そのため、将来的にはオリジナルの画像もアップロードできて、それをアルバムごとにダウンロードできるといった、プロサービス的なものも付け加えていく予定です。
――プロサービスは有料になるのでしょうか。
山田:そのあたりは負荷などを踏まえながら考えていきたいですね。料金に関する細かな方針までは、まだ決まっていない状況です。
フォト蔵のサーバーはRAIDも組んでいますし、バックアップも取っているので、アップロードしたデータが失われることはほぼ100%ないでしょう。もしかしたら自分のPCより信頼できるかもしれません。データをアップロードしたら後は自分のPCに保存しなくてもいい、そんなサービスにはしていきたいと思っています。
――オリジナル画像を登録できると、オンラインアルバムのプリントサービスも考えられそうですが。
山田:大手デジカメメーカーなどは画像のアップロードサイトからプリントできるサービスを提供していますが、あまり使われていないのではという印象を持っています。今は自宅のプリンタでプリントアウトできるので、はたしてオンラインでプリント注文したいというニーズがどれだけあるのか。そういったサービスよりは、動画のアップロードといった方向でサービスを拡充していきたいと思います。
■ 機能拡充はあくまでシンプル。初心者に使いやすいサービスを
――今後の機能拡張の予定は。
尾藤:まずは日記機能ですね。それから現在1台で運営しているサーバーの増設です。日記機能を実装した段階で、友達がアップロードした写真や最新のニュースをメールで通知するお知らせ機能も付ける予定です。
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フォト蔵の日記機能。アップロードした画像も利用できる
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尾藤:機能の要望はたくさん来ているのですが、まずはその要望に優先順位を付けて、片っ端から片づけているところです。フォト蔵にアップロードした画像を友達に見せたいけれど、友達が携帯電話しか持っていないので携帯電話用のURLを教えたい、という要望もありますので、これも日記機能やサーバー増設の後に対応していきたいと思います。
山田:オリジナル画像を登録したいという要望はやはり多いですね。ヘビーユーザーの中には「1万枚でも足りない」という人もいるので、カメラ好きな人の多さを実感させられます。
尾藤:個人的に考えているのは、著作権の対応です。FlickrでもCreative Commonsのライセンスを使っていますが、写真が好きな人の場合、自分が撮影した写真を他の人にも使って欲しいという気持ちがあるので、アップロードした写真に利用条件を踏まえたライセンスを選択して、他の人が画像を使えるようにしたい。あとは写真と位置情報を関連付けで、Google Mapsと連動した機能なんかも作ってみたいと思っています。
山田:気を付けているのは余分な機能を付けすぎないことです。今までの機能をブラッシュアップしていく方向で進めています。
尾藤:できるだけ操作はシンプルなままにしたい。そうでないと初心者ユーザーが使いづらくなってしまうので。機能拡張の要望も、複雑なものはちょっと対応が難しいです。
山田:ただ、寄せられた要望を別の方法で解決することもあります。例えば、友達をグループ分けしたいという要望がありますが、その背景にあるのは「ある飲み会に参加したメンバーだけ写真を共有したい」といったことでしょう。その場合は友達をグループ分けする機能を追加するのではなく、今あるアルバム機能を使って、複数人で共有できるアルバム機能を作ればその要望は実現できる。コミュニティに近い機能になると思いますが、そういう実現であれば可能だと思います。
尾藤:画像の自動リサイズも初心者ユーザーを考えてのことです。他のサービスでは、大きな容量の画像ファイルをあらかじめ縮小しておく必要がある場合がありますが、普通の人は「画像を縮小してからアップロード」といわれてもよくわからない。フォト蔵は転送量を大きく取っておいて、そのまま送ってもらったオリジナル画像をこちらでリサイズすることで使いやすさを重視しています。
――日記機能が搭載されると、mixiやGREEといったSNSと機能面で近づいてきますが、そうしたSNSとの棲み分けやフォト蔵の方向性は。
山田:基本的にはポータルに付属している無料フォトアルバムのような、写真保存サービスの置き換えだと考えています。写真が好きなユーザーにはまだまだリーチできていないと思うので、そのあたりがターゲット層です。
写真好きな人が友達を招待して小さなコミュニティを作り、その中で日記を書き合ってもらえればいい。ただ、よっぽど写真が好きな人でないと毎日はアップロードしないでしょうし、日記のほうが日常的に更新されるでしょう。日記機能はそういったコミュニティ促進のために実装しますがが、フォト蔵はあくまで写真中心のサービスとして展開していきます。
■ 年内にも海外へ展開。日本発の世界的なサービスを
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フォト蔵のロゴマーク。「日本発のサービス」との思いから名称に漢字が使われている
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――フォト蔵の今後の展開は。
山田:年内にも海外への展開を考えています。元々フォト蔵を立ち上げた時も、自分たちが作ったサービスを世界に向けて発信していきたいという思いがありましたし、クローズドな写真サービスとして海外で伸びる余地が十分あるだろうという点がフォト蔵の魅力でした。最初から英語で立ち上げてもよかったのですが、ネットワークもあって勝手もわかっている日本で立ち上げるほうが良いのではと考え、まずは日本でサービスを始めました。
海外展開も踏まえて、ドメインも「.jp」「.com」の両方が使えるものを探しました。「.com」のアドレスが使えなかったために泣く泣くあきらめたサービス名の案もあります。
尾藤:サービスの名前に漢字を入れたいというこだわりもありました。世界的に普及している日本発のサービスは少ないので、名前にも日本らしさを取り入れたかったのです。
山田:日本には優れたサービスがたくさんあるのに、日本語というだけで世界的に広がっていない。フォト蔵は最初から日本語の部分を切り離して開発しているので、英語版にも対応できます。日本初のサービスを英語で提供したらどうなるのか、とてもやりがいがありますね。
――国内の収益は。
山田:ページビューがあるものを作れば収益が生まれる、という自信はあります。広告ももちろんですし、プロ向けのサービスもあるでしょう。ただ、それだけではなくて、最終的にはアバターサービスをやりたいと考えています。自分の部屋にいろんな人がコメントしてくれたり、背景を選んで購入したりといった一大コミュニティにしていきたい。韓国のサイワールドを見ていると収益性も高いですし、独自のポイント制度が一種の通貨として機能している。まずは写真サービスで誰もが使ってくれるNo.1を目指しますが、やりたいことはまだまだいっぱいあります。
――本日はありがとうございました。
■ URL
ウノウ
http://www.unoh.net/
フォト蔵
http://photozou.jp/
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(甲斐祐樹)
2005/10/28 11:10
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