ブログの特長であるトラックバックにちなみ、ブログ関連サービスに携わる方を次々に紹介していただき、ブログの世界をつないでいくインタビュー連載です。第10回は、ソーシャルネットワークサービス(SNS)の「GREE」を運営するグリーの田中良和氏です。
田中良和(たなか よしかず) グリー代表取締役社長。楽天在籍時に個人でSNS「GREE」を立ち上げ、10万人以上のユーザーを集める。12月7日付けでGREEを運営する「グリー株式会社」を設立。
□GREE
http://www.gree.jp/
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■ 会社設立3カ月が経過、これから本格的な開発体制に
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GREEに追加された日記機能
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――本日はよろしくお願いします。GREEを運営する株式会社を12月に設立されましたが、個人運営の頃と比べて違いはありますか。
田中氏:サービスの目的などは個人運営の頃から全然変わっていません。株式会社化は、その目的を具体的に実現するための方法ですね。より良いサービスを作りたい、より大きな会社にしていきたい、そのために人を集めたり、会社としてどう運営していけばいいかを学んでいる最中です。
個人運営の頃は、僕1人でサービスを開発していましたが、株式会社化した今はサービスを作る人のための仕組みを作っているところです。どういうサービスを作りたいかというイメージは持っているので、後はスタッフがうまくサービスを開発する体制を整えられれば、良いサービスができると思います。
――日記機能が追加されましたが、この目的は。
田中氏:ユーザーからの要望が多かったというのが理由ですね。今の日記機能はシンプルですが、あるとないとでは大きく違うのでまずは作ろう、と。今のところ、もっと高機能な日記機能が欲しいという要望はあまりないですね。とりあえず日記が使えればいいのかな、と感じているので、むやみに高機能化するよりはちょうどいいレベルだと考えています。
――以前に携帯電話から利用できるモバイル機能を予定しているとのお話がありましたが、具体的な機能拡充の予定はありますか。
田中氏:今は株式会社としてスタートしたばかりで、サービスを変化しているフェーズというよりも、今のサービスを少しずつブラッシュアップしていくフェーズだと考えています。会社化して3カ月が経ち、やっと準備が整ってきたので、これから開発も進めていきたいと思います。
■ SNSとブログは渾然一体となって変化していく
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GREEは知人からの招待メールでのみ登録できる招待制のサービス
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――GREEでは会員以外でも日記やコミュニティなどが閲覧できますが、この方針についてお聞かせください。
田中氏:SNSだから、会員のみの利用や閲覧でなければならない、ということには固執していません。閲覧させたい人もさせたくない人も両方いらっしゃると思いますので、その点は柔軟に考えてきたいと思います。
ただ、GREEというサービスの内容や各機能についての説明が根本的に不足していると認識していますし、それゆえにサービスの内容や各機能について誤解を与えてしまったり、GREEの利用用途や使い方を理解していただけてない場合もあるのではと考えています。本来は会員以外に見せたくない、もしくは見えないと思っていた情報が意図に反した状態になった場合、、そういった説明不足が招いている部分もあると思いますので、その点は改善していきたいと思います。
本質的には、ユーザーごとに見せたい情報や見せたくない情報を選択できる、たとえばリンクした人には見せたいとか友達には見せたい、あるいは誰に見せてもいいといったところを、機能として選択できるようにするのが最終的なゴールだと思います。ただ、それにはサービスの開発なども必要ですから、今すぐできるものではありません。今できることはGREEというサービスをわかりやすく、きちんと説明してあげることだと思っています。
――招待制というシステムについてはどのようにお考えですか。
田中氏:米国や韓国には招待制でないサービスもありますし、招待制でなければ駄目、というものではないと思います。また、米国ではSNSのFriendsterがSix Apartと提携してブログサービスを開始するという話もありましたが、そもそもブログやSNS、会員だけ見られる「中」と会員以外も見られる「外」といった概念は曖昧になっているのではないでしょうか。米国の「Myspace.com」のように、ブログにSNSがついているのか、逆にSNSにブログがついているのかもわからないほど一体化している例もありますし、SNSとブログは次第に渾然一体となって変化していくものだと思います。
――SNSとブログは一緒になっていく流れということでしょうか。
田中氏:基本的にはブログは情報を発信したい人のためのサービスであり、SNSはコミュニケーションしたい人のためのサービスだと思いますが、日記をかけたりメッセージを送れたりといった機能だけを見れば、「SNSとブログで何が違うのか」と言われても何も違いません。違いは機能よりも目的であって、それ以外は些細な違いではないでしょうか。情報を発信しながらもコミュニケーションしたい人もいるでしょうし、そういう人は両方が組み合わさったサービスがいいでしょう。いろいろな形のサービスがあると思いますよ。
■ ブログやSNSで自分自身を表現していく流れが
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GREEでは日記やレビューは会員以外も閲覧できる。ただし、会員のプロフィールやコミュニティなどは会員でないと閲覧できない
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――GREEのように招待制でありながらも会員以外からも閲覧できる仕組みの場合、ユーザーが「会員以外に見えない」と思っていた情報が実は検索サービスなどを使って会員以外でも閲覧できたというのは気になる点だと思います。ユーザーに対して告知や説明を行なっていくとのことですが、具体的な機能面での施策などは考えられていますか。
田中氏:そういう意味では、そもそもGREEは15万人もいるサービスですし、GREEの中だからとか、インターネットで見えるからといった問題は本質ではないと思います。もちろん具体的な説明ページや注意書きは考えていますが、そもそもインターネットで情報発信することはメリットもデメリットもあるし、場合によっては気を付けなければいけないということはきちんと伝えていきたいと思います。
――GREE上の情報とインターネット上の情報を区分けすることはない、というお考えですか。
田中氏:SNSもユーザーが増えていますし、SNSの中だけにこだわる必要はないでしょう。自分の電話番号を掲載したら電話がかかってくるかもしれないということが問題だとするなら、SNSだけでしか見えなかろうが会員以外でも見えようが、どちらにせよ問題だと思います。
――会員制のサービスとインターネットでは大きさに違いがあるのではないでしょうか。
田中氏:SNSの中の情報をコピー&ペーストで別のところに掲載されたら基本的には同じでしょう。情報を出すということそのものにメリットとデメリットがあるということを説明することが先決であって、それとは別に機能としてわかりにくい、たとえばどこからがログインしていなくても見えるという点は機能的にも改善していきたいと思います。
GREEのユーザーからは、逆にGREE以外にも見せたいという要望もあるんですね。たとえば「プロフィールページをログインしなくても見えるようにして欲しい」というニーズもありますし、コミュニティや日記を見せたい人もいるでしょう。単純にわかりにくさを解消していければいいと思いますし、そういったことをログインしてから設定できればいいですね。米国や韓国を見ていると、自分の情報を見せているケースも多いと思います。
――日本人としては、あまり情報を見せたがらない人々も多いのでは。
田中氏:ブログも2年前は「日本人が名前を出して日記を書くわけがない」と言われていましたが、結果としてブログは普及していますし、名前を出して書く人も結果としていると思います。国民性や地域の違いはあると思いますが、ある一定以上は広まっていくのではないでしょうか。
――ブログやSNSで自分自身を表現していく流れがあるということでしょうか。
田中氏:みんなが良い形で情報発信できるようになるというのがインターネットの根本的な話だと思いますので、情報発信をしていく流れかそうでないのかと言われれば、情報発信の流れだと個人的には思います。ただし、世の中には「この範囲までしか情報を出したくない」といった要望はあると思いますので、そういったユーザーの情報の出し方をGREEがうまく調節してあげたいと思います。
ブログやSNSは、昔に比べて使うのが簡単というのも大きいですね。テキスト情報をHTMLで編集して、というのは昔からできたことですが、それは誰もがやれることではない。「フォームにテキストを入力したらお店が作れる」というくらいツールとして簡単になったことで、今まで情報発信しなかった人がするようになるということが起きやすいと思います。
――ブログやSNSが普及した要因は「簡単さ」が一番ということですね。
田中氏:そうですね、まずは簡単なことが重要だと思います。また、今までのホームページはシンプルな機能で、他のサービスと連動するとか友達に通知がいくといった仕組みはあまり無かったと思いますが、そういうことがSNSやブログで当たり前になっているというのも影響として大きいでしょう。更新通知やトラックバックなど、仕組みとしてコミュニケーションが導入されている点が今までとの違いだと思います。そうでなければ単に情報の言いっぱなしで終わってしまいますし、インターネットならではのインタラクティブな面がSNSやブログで実現できていると思います。
■ GREEはブログとSNSの中間的な存在を活かしたサービスを
――今後実装していきたい機能などはありますか。
田中氏:モバイル対応もそうですし、フォトアルバムもやりたいですね。世の中に広くあるようなサービスは作っていきたい。また、GREEには実名性の高さというか、自分の名前や所属などをきちんと書いている人が多いところに特徴があると思います。就職活動で知り合った人とGREEを使っているという話も聞きますし、単に身近な友達と日記書いて終わりというだけではなく、SNSならではの可能性、インターネットが普及していくとこう変わっていくんだ、というサービスを実現したいですね。
――GREEの実名性の高さには何か原因があるのでしょうか。
田中氏:友達からの紹介文機能などもありますし、プロフィールサービスとして使われているケースが多いのではないでしょうか。僕自身も大学の友達からリンク依頼を受けたりしますが、それは大学や写真を登録していたり、名前を記載しているから起きることでしょう。GREEで昔の友達に再び出会うことが多いとも聞きますし、そういうメリットがあるから情報発信が進んでいると思います。
実名性が高いという空気は偶然かもしれないけれど、運営者がどういうサービスを作りたいと思っているかは自ずから伝わる部分もあると思うんですね。僕にとって、GREEは単純なコミュニティサイトだけではもったいないと強く思っているので、その思いがサービスの細部に結果として表れているのではないかと感じています。
――会員以外も閲覧できるというオープンな部分を活かした機能などは考えていますか。
田中氏:GREEは、インターネット上で公開している部分もあり、会員だけ見られるクローズな部分があるという意味ではブログとSNSの中間的な存在だと思います。そういう意味で、両方のいいとこ取りでおもしろいサービスを作りたいですね。ソーシャルブックマークなんかも興味はあります。
ただ、実際には機能そのものより、サービスがどう使われるかのほうが気になりますね。米国ではブログが選挙に使われて大きな影響があったという話がありますが、結果として世間にいい形で使われたり、何かしらのインパクトを残せたらと思います。
――収益面はいかがでしょうか。
田中氏:もともと個人で運営できるぐらいの低コストで運営でしていたこともあり、現段階でも、将来への投資の部分を除けば黒字化できています。今はバナー広告とアフィリエイト、Google AdSenseの3つで売上を上げていますね。これからもサービスの利便性の向上のため、利益を再投資して、よいサービスにしていきたいと思います。
――本日はありがとうございました。
■ URL
グリー
http://www.gree.co.jp/
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(甲斐祐樹)
2005/04/28 11:09
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