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かしめて、ぐっとす! LANケーブルの自作に挑戦!


 パソコンを使う人なら、誰もがお世話になっている「ケーブル」。特に最近はルータの普及、さらにネットワークに対応したデジタル家電やゲーム機の存在もあり、LANケーブルを利用する機会が非常に多くなっている。そこで今回は、取り回しで利便性がある「薄型LANケーブル」の自作、そして壁内に配線した自宅LAN環境の構築にチャレンジした。


今回は薄型ケーブルと宅内配線にチャレンジ


まずは薄型LANケーブルの自作にチャレンジ

 薄型ケーブルの自作にあたって、使用したのはエレコムの「スーパーフラットケーブル(LD-CTFS/BU100、ケーブル長100m)」だ。ちなみに、こうしたLANケーブルの自作用品に関しては、大型量販店や専門店などで入手が可能だ。

 なお、LANケーブル自作経験はまったくないため、かしめ工具に付属していた説明書を参考に、順を追ってじっくりと作業を進めた。


薄型ケーブルの自作で使用したエンハンスドカテゴリー5対応の薄型LANケーブル「LD-CTFS/BU100」(100mタイプ、標準価格17,850円)。コネクタ「LD-FRJ45T10」(10個セット2,100円)、かしめ工具「LD-KKTP」(15,540円)、皮むき工具「LD-KKTFS」(15,540円)(いずれもエレコム製)


ケーブル長の決定と切り出し。そして、皮むき作業

切り出したケーブルの先端を皮むき工具の黒いガイド部分にあてる。今回のケースでは、ケーブルを加工部の一番奥まで差し込む必要があった

ケーブルを差し込んだあとはグリップをしっかり握るだけで、被膜がむける
 まずはケーブル寸法の決定だ。ごく短いケーブルなので、プラスチック定規を使ってザックリと採寸。30cm程度のケーブルができあがれば十分だったが、多少の遊びやケーブル加工の失敗も考えて、40cm分を切り出した。

 切断そのものは非常に簡単で、かしめ工具の根本部分にあるケーブルカッターで切断した。また、ケーブルカッターがない場合は、日曜大工などで使うニッパーを使っても良いだろうし、場合によってはカッターなどでも十分事足りるのではないだろうか。

 次いで、ケーブルの皮むき。これには専用工具の利用が必須となるだろう。今回は特に「スーパーフラットケーブル」という、一般的なケーブルと比較して特殊なケーブルを使用することもあり、専用工具「LD-KKTFS」を利用している。

 利用したLD-KKTFSは、大きめのペンチのような外観。先端部分に切り出したケーブルを差し込み、握ることでケーブルの被膜がスルっと剥ける。LD-KKTFSには「ケーブルガイド」と呼ばれる部品がついているので、それをあらかじめ装着しておけば、ケーブル外皮を剥く位置を簡単に決められる。今回は説明書に従って、20mmに設定した。

 ここでまず第1の失敗を経験。ケーブル内部のより線を傷つけてしまった。ケーブル内部には通常、より線が青・白青・橙・白橙・緑・白緑・茶・白茶で色分けされ、合計で8本あるのだが、その1本を傷つけ、導線をむき出しにさせてしまったのだ。

 この原因は、すぐにハッキリした。皮むき工具の先端部分は非常に奥行きがあり、薄型ケーブルが2本同時に加工できそうなくらい、刃がでている。しかし、実際に薄型ケーブルの皮むき加工ができるのは、その奥半分だけだったからだ。

 これは刃の形を見てわかったことなのだが、どうやら刃の手前半分は皮むきではなく、ケーブル切断のために使うための部分らしい。失敗の原因はケーブルの押し込みが足らず、中途半端な位置で操作をしてしまったためだった。もう1度やり直すことであっさりと成功した。


より線の整列とコネクタのはめ込み。線にしっかりとクセをつけよう

 皮むきの次は、心線の整列だ。規定される順序によられた心線を並べ替えるのだが、ここで注意がある。ストレートケーブルとクロスケーブルで整列順が違う点だ。ルータやパソコンなどと接続する場合にはストレートケーブルになるが、PCとPCを1対1で接続する場合は、クロスケーブル用に揃える必要がある。

 ここでも説明書に沿って、「茶・白茶・緑・白青・青・白緑・橙・白橙」の順番に揃えた。基本的には、よられている心線をほどいて並び替えていけば良いのだが、緑の心線については、白青と青の心線をまたぐように揃えていく必要がある。このため、根本で何度か折り返し、クセをつけておくのが良いだろう。これを忘れたため後述する作業で若干苦心した。

 整列作業のあとはコネクタの取り付け。こちらも薄型ケーブルの専用コネクタを使う必要があった。使用したのはブーツ付きの「LD-FRJ45T10」だ。この製品では、コネクタ部とブーツ部が1セットになるので、まずブーツ部分だけを、先にケーブルへ通さなければならない。ただし、心線の整列順に影響するので、通す向きには注意する必要がある。ブーツには、心線がはまりこむ溝のような部分がある。そして、その溝の1番左端に白橙がくる向きが正解だ。

 ここからが筆者はもっとも苦戦した部分なのだが、正しく並べた心線の整列順が、ブーツを通した段階で順番が乱れてしまった点だ。おそらく、心線を何度も折り曲げたりといったクセをつける作業をあらかじめ怠っていたのが原因と思われる。順序に注意すると言うよりも、極端なくらいクセづけを意識していた方が良いかもしれない。

 そして今度はコネクタを通す。心線を差し込むギリギリまで指で抑えていられるよう、斜めにコネクタを差し込むと比較的うまくいく。比較的力がいるが、溝の部分に心線が順番どおりにしっかりはまっているのが見えれば、ひとまず成功といって良いだろう。

 ただし、確認作業も必要になる。溝の部分で順番が正しくても、コネクタの端子部分でずれていることがあるからだ。説明書でも目で確認するよう、指示があるが、かなりわかりにくい部分でもある。筆者では部材を無駄にすることを覚悟で次の行程に移ってしまい、結果失敗した。十分注意されたい。


心線を並べ替えてみたところ。今回の配線では緑色の線が青・青白をまたぐ形になる こちらはブーツだけを通した状態

専用工具でかしめ作業。テスターでのチェックも忘れずに

コネクタを被せた後は、かしめ作業に。ここまでの作業をケーブルの両端に行なえばできあがりだ

薄型ケーブル自作に際して、使用したLANテスターの場合では右側の緑ランプが4つ点灯すれば問題ない
 ケーブル自作の締めは、かしめとテストだ。かしめとは、心線とコネクタの端子部分を、専用工具を使って圧接させ、抜けないように固定させること。テストは文字通り、正しく圧接させられているかのテストで、テスターと呼ばれる機器を使って行なう。

 かしめ作業は実に簡単。今回使用したかしめ工具「LD-KKTP」では、組み立てたコネクタ部分を、工具の「8P」と書かれている部分に差し込み、「カチッ」という音がするまで、グリップを押し込むだけだ。ただし、この音によるものは判別がつきにくかったので、むしろ「完全に押し込めなくなるまで」でも問題ないだろう。なお、ケーブルの完成には、当然ながらコネクタ部分の作業を2回分(ケーブル両端)で行なう。これで外見上はできあがりだ。

 最後に行なうテスターによるテストも非常に簡単。基本的にケーブル両端のコネクタをテスター本体と、テスターのリモートユニットに差し込み、ボタンを押すだけ。あとはテスターでのランプが指示通りにて点灯すればOKだ。なお、点灯しない場合には検証の上、コネクタ取り付けなどの作業をやり直す必要がある。

 筆者の場合、1回目のテストでは4つのうち1つしか点灯しなかった。特に1個目のコネクタ部分の作業に手間取り、何度もコネクタの抜き差しを行なったため、断線している可能性があったし、何よりも先に述べたとおり、コネクタの端子部分に正しく心線が届いていなかったと見られる。そこでケーブルが短くなるのを覚悟で、失敗したコネクタ部分を切断。もう1度加工したところ、2回目のテストでは正しい結線が確認できた。

 なお、かしめ作業を行なったあとはコネクタ部分の再利用は難しいので、使用する数よりも多めに用意しておいたほうが良いだろう。

 こうして完成したケーブルだが、接続後数時間の検証であるものの、特に支障を与えている様子もなく、順調に動作している。完成までに使った部材は、皮むきに失敗してケーブルを切り直したため、ケーブルが約2倍の80cm分。コネクタが3個で、時間にして約1時間30分といったところだった。コストパフォーマンスはあまり良くなかったが、慣れるにつれてこれは当然解消できるだろう。苦労してできたジャストサイズのケーブルの良さは、格別のものだ。

 さて、薄型ケーブルの特性を活かせるのは自宅内のすき間を利用した配線処理の容易さだろう。そこでパソコン回りのケーブルを作成した後、各部屋間へのケーブルも薄型ケーブルへと差し替えたので、以下に画像で紹介する。


引き戸と柱の間にあるすき間を利用して薄型ケーブルの配線に挑戦。ケーブルを通したあとは、市販の留め具などを利用してケーブルを固定した。引き戸以外にも、ドアと床の間にあるすき間などでも上手く配線が可能かもしれない


(森田秀一)





カテゴリー6対応ケーブルを使って宅内LAN環境をギガビット化

 ここからは、壁内などに設置した配管を利用したLANケーブルの敷設を紹介していく。なお、ケーブルコネクタ部の作成は上述の薄型ケーブルとほぼ同等なので省略するが、使用したカテゴリー6ケーブルには内部に十字介在があるので、作業の際にはご承知おきいただきたい。


カテゴリー6のケーブルには内部に十字介在がある。ただし、一部メーカーの製品では十字介在をなくしたタイプも販売されている ケーブルは秋葉原にある愛三電機で購入(「AFC6-0508」200mタイプ、10,920円)。外皮には“TOKYO AISAN AKIBA”と記されている。ちなみに、たまたま居合わせた妹氏に宅内にAKIBAがこれでもかと引き回される件について得々と語っていたら、「あぁそうですか」という顔をされてしまった

 今回のケースでは、宅内向けのLAN配線パネルを利用せずに、スイッチングハブを介したLAN環境を構築する必要があったほか、屋外から導入する光ファイバは浴室上にある点検口内に設置する形をとった。ただ、さすがに無線LANルータなどを点検口に置いてしまうと、本体背面のリセットボタンを押すにも点検口を除く必要が発生するなど、ちょっとしたことでも大事になってしまうので、変則的に1部屋(筆者自室)にLANケーブルを2本引き、自室から戻り用に配線した片方のLANケーブルにスイッチングハブを接続して、他の部屋へと配線する形を取った。

 また、配管部分に関してはケーブルを引き込めるようワイヤー処理を施してもらったが、さすがに見えない部分を素人がやるのは不安がある。そこで、業者にケーブルの引き回し作業は依頼した。後日、NTT担当者が電話回線工事で同様に引き込み作業をする場面を見学していたが、ワイヤーへのケーブル巻き付け作業を見ただけで、「自分でやっていたら、まず失敗していただろうな……」と感じた。

 さて、ケーブルの配管が済んでしまえば、あとの作業は点検口内と各部屋でのLANコネクタ取り付け作業だ。点検口内ではスイッチングハブに接続するため、通常のコネクタを取り付けたが、部屋でも同様に加工をしてしまうと見栄えが悪くなってしまう。そこで、松下電工の「ぐっとす(NR3170、1,638円)」というプレート埋め込み型の製品を利用することにした。



ケーブル配線前後(上下)の部屋部分(左)と点検口内(右)の模様。写真左下にあるように、配線する部屋のうち1室にはLANケーブルを2本引き込んでいる


部屋部分はぐっとすを使って、LANコネクタを作成

配線指示に沿って心線を通した後、工具を兼ねるキャップでぐっと押し込む。ちなみに写真のぐっとすは、手元に残っていたエンハンスドカテゴリー5対応モデル(NR3160、1,407円)
 ぐっとすは、ケーブル心線のよりを戻すことなく加工が可能な製品。その名称は結線作業時に工具を兼ねるキャップを利用して、カチッと音がなるまで“ぐっと差し込む”ところから来ているのではないかと思われる。ちなみに差し込み作業は別途専用工具も用意されている。

 上述のようなLANコネクタの取り付け作業と比較すると、心線のよりを戻す必要がないほか、さらに規格に沿って心線を整列作業を行なう必要は発生しないため、非常にスムーズに作業を進めることができた。また、製品自体にも通すべき心線が色分け表示されているため、「通したものの、この色はここであっているのだろうか」という不安が生じることはなかった。

 両端にコネクタの取り付け作業が完了した後は、LANテスターによる結線状況の確認だ。このケースでは一方のLANコネクタを接続する部分を取り外せる分離型を利用したが、使用した製品の場合は分離した部分に結線状況を確認できるLEDなどは備わっていないため、点検口と各部屋を何往復もする必要があった。こうした部分は、グレードの高いLANテスターであれば両端にLEDなどが備わっているだろうが、個人利用でのコストを考えると多少の不便は、“家の中を動き回って結線状況を確認するという運動”でコストを抑えた方が得策かもしれない。

 結線状況の確認が済んだら、点検口内では各ケーブルをスイッチングハブに接続。部屋では、ぐっとすをプレート内におさめる作業を進める。後者に関しては、電源コンセントなどと同様の規格に沿っているため、それらに合う製品を入手するか、業者にその旨を伝えて作業をお願いするのも手だろう。なお、プレートの取り付け自体はドライバーを利用するのみで、大きな作業ではない。


配線作業が完了した部屋部分と点検口内。ちなみにスイッチングハブ上にあるのは、後日NTTが設置したBフレッツのONU


(村松健至)





コストやマニュアル面でのハードルはあるが、機会があればぜひチャレンジを

余談だが、作業時にはコネクタパーツを収納するケースと、切断した心線や十字介在などのゴミを入れるケースがあった方が良いかもしれない。特に心線カット時には思わぬ方向に飛んでいったりした
 LANケーブルの自作自体は電気工事などと異なり免許などを要さないため、その気になれば誰でもできる作業だ。その一方で、実際に行動にうつすにあたっては、労力以上にコスト面での判断だ。特に加工に使用する工具は製品によっては、価格が高くつくため、何本かLANケーブルを使用する程度であれば市販の加工済み製品を購入する方が安く収まるだろう。

 また、それぞれの製品にはマニュアルは付属しているのだが、必ずしも一般のユーザーを対象にしているものではないので、実際に作業をしながら肌で覚えていく必要があると感じた。なお、メーカーによっては自作方法の解説などをWebサイト上でも行なっているが、初心者にとっては配線時の規格や被膜をむく量など作業上、知りたい情報が少なくないはずなので、より詳しい情報の提供をメーカーには期待したい。

 しかし、自分で作成したLANケーブルを使ってインターネットを楽しめるというのは感動もの。作業時にあたっても、特にコネクタ取り付け作業時にかしめが上手くいった際には喜びもひとしおだった。パソコンの自作と比べるとなかなかレアケースではあるが、機会があれば是非1度チャレンジしてみて欲しい。



(村松健至, 森田秀一)
2006/02/22 11:03
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