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スイッチングハブ編
第8回:オートネゴシエーションなどその他の機能


 今回取り上げるのは、「オートネゴシエーション」と「Full&Half Duplex」、「AutoMDI/MDI-X」の3機能。いずれもLANケーブルを機器に接続する際の機能になります。


機器同士の通信速度を自動認識する「オートネゴシエーション」

図1:規格ごとにポートが異なる場合のイメージ
 LANには10BASE-T/100BASE-TX/1000BASE-Tの3種類があることを前回ご紹介しました(記事URL)。それぞれプロトコル的に互換性はありますが、信号レベルではまったく異なります。このため、100BASE-TX対応製品が出はじめた極めて初期には、10BASE-T用と100BASE-TX用でポートが異なっているスイッチングハブもありました。

 当然ながら、これは使う側から見れば非常に面倒です。例えば、現在では10/100/1000BASE-Tのトリプルスピードに対応した製品が多いですが、かといって図1のようなスイッチングハブは誰も使いたくないでしょう。

 そこで、比較的初期から考慮されていたのが「オートネゴシエーション」という機能です(図2)。これは機器を接続した際に、まずお互いが自分の機器がサポートしている速度情報を「FLP(Fast Link Pulse)」と呼ばれるパケットで送り出します。これによって、お互いでサポートしている回線速度を判別できるため、サポート速度の違いをユーザーが意識しなくても自動的に調整してくれるというわけです。このオートネゴシエーション機能ですが、大昔の製品はともかく、現在販売されている製品ではまず間違いなくサポートしていると言って良いでしょう。


図2:オートネゴシエーション

双方向、片方向による通信を設定する「Full&Half Duplex」

 また、速度に関連した機能としては「Full&Half Duplex」と呼ばれるものもあります。日本語では「全二重/半二重」と呼ばれますが、これは送受信を同時に行なうことが可能か(全二重)、交互に行なうか(半二重)という違いです。

 これに関しては、片側1車線の道路を想像していただくと理解しやすいでしょう。例えば、片側1車線の道路なら、通常は対面通行ができます(図3)。ところが、工事などで片方の車線が利用できない状況もあり(図4)、こうした場合には該当区間に関しては交互に交通することになります。

 こうした状況はLANでも発生します。そもそもイーサネットは1本のケーブルで通信していたので、通信は必然的に半二重でした。その後、10BASE-Tの登場によって送受信が同時にできるだけのキャパシティが生まれたため、ここで全二重による通信が新たに追加されました。


図3:全二重のイメージ 図4:半二重のイメージ

 これは100BASE-TXにも引き継がれており、実は1000BASE-Tでも半二重の選択が可能です。ただ、先の図3、4でもおわかりの通り、道路がないならばともかく、2車線あるのにわざわざ交互通行するメリットはないわけで、通常は全二重を選択するのが良いでしょう。

 もちろん、この設定を行なう際には機器とハブの双方で同じ設定にする必要があります。一方が半二重なのに、もう一方が全二重でやり取りをしても、送受信が上手くいかなくなってしまいます。これを避けるため、最初に紹介したオートネゴシエーションの中で、全二重/半二重に関しても速度と同時に設定されるようになっています。


ケーブル種別を問わず通信を可能とする「AutoMDI/MDI-X」

 最後に「AutoMDI/MDI-X」について説明します。図5は100BASE-TXにおける送受信の接続をイメージしたものです。Txは送信オンリー、Rxは受信オンリー、Biは双方向(Bi-Directional)を意味しており、送信と受信はペアに、双方向同士もやはりペアになって繋がっているのがわかるかと思います。

 図5は一方がPCなどの機器、もう一方がハブと想定した場合で、この場合に使用されるのはLANケーブルのうち「ストレートケーブル」と呼ばれるものです。一方、問題になるのがPC同士やハブ同士を接続した場合です。この際にストレートケーブルを使用すると、送信と送信、受信と受信が繋がる形になり、このままでは通信ができません。


図5:ストレートケーブル 図6:クロスケーブル

 これを解決するために、内部の配線を入れ替えたクロスケーブルと呼ばれるものが用意されています(図6)。そして、どの機器同士を接続するかによって、ストレートケーブルとクロスケーブルを使い分ける必要があります。

 こうした使い分けは、数年前まで実際に行なわれていました。しかし、これではあまりに使い勝手が悪く、「接続先がPCなのか、ハブなのかを自動判別して、内部で配線をつなぎかえる」というメカニズムが登場しました。

 これがAutoMDI/MDI-Xと呼ばれるもので、これによってストレートケーブル、クロスケーブルの関係なく、利用できるようになりました。現在でもLANケーブル自体は「クロスケーブル」と「ストレートケーブル」の2種類がありますが、AUTO-MDIXを搭載した機器の場合は意識することなく通信ができるようになります。


関連情報

URL
  スイッチングハブ編 索引ページ
  http://bb.watch.impress.co.jp/cda/koko_osa/21429.html

2008/05/26 11:06

槻ノ木 隆
 国内某メーカーのネットワーク関係「エンジニア」から「元エンジニア」に限りなく近いところに流れてきてしまった。ここ2年ほどは、企画とか教育、営業に近いことばかりやっており、まもなく肩書きは「退役エンジニア」になると思われる。
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