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ネットワーク対応プリンタ&複合機編
第7回:IPP


 「IPP(Internet Printing Protocol)」は、TCP/IPに対応した印刷のためのプロトコルです。HTTPプロトコルを使用した印刷が可能で、必要に応じてユーザー認証なども行えます。


LAN環境を超えた印刷にも考慮する「IPP」

図1:異なるプロトコルを認識
 通信プロトコルに関して前回説明しました。今回説明するIPPは、プロトコルの中でアプリケーションプロトコルに位置するものになります。

 また、第2回でプリントサーバーを取り上げました。このプリントサーバーとPCが通信する場合ですが、以下のようなプロトコルを使うのが一般的です。

・Windows
 WindowsのNetBIOSが提供する「プリンタ共有」プロトコル
・UNIX/Linux
 lpdプロトコル
・Macintosh
 AppleTalkやEtherTalk、Bonjour

 そして、これらのプロトコルが混在した環境を示したのが図1になります。ここでは、プリントサーバー側で全プロトコルを認識することで、相互接続性が保たれるというわけです。この場合、プリントサーバー側の対応により接続が実現できていますが、他の方法がないかという思いも出てきます。つまり、ネットワークの先のプリンタを接続する際の標準的なプロトコルがあれば良いということです。

 今でこそWindows/Linux/MacintoshともにTCP/IP上で通信を行いますが、かつてはWindowsはNETBEUI、MacintoshはAppleTalkというように非TCP/IPのプロトコルで通信をしてしました。このため、LAN内はともかく、LANをまたいだネットワーク経由の印刷に対応していませんでした。

 このようなこともあり、インターネット上で標準的に使用できるネットワークプロトコルとして、IPPがHTTPプロトコル上に実装される形になりました。つまり、原理的にはHTTPリクエストの送受信が可能であればプリンタが利用可能になるわけです。また、最近のWindowsやMacintosh、UNIX/LinuxではIPPをいずれもサポートしているほか、プリントサーバーやネットワーク対応プリンタにも対応製品が増えてきました(図2)。


図2:IPPを利用した接続

 それではなぜ、IPPに全面的に切り替わっていないかと言うと、「あまりメリットがないから」に尽きるでしょう。もちろん、IPPしか対応していないプリンタ機器を接続する場合には図2の方法が便利ですが、通常の製品でればマルチプロトコルに対応しており、図1のような環境が構築できます。また、ユーザーから見れば、印刷したものが正しく出力されることが重要であって、途中のプロトコルは何であれ問題ないと言えます。

 加えて、Windows/Macintosh/UNIX/Linuxといった環境では、IPPは必ずしも標準的なプロトコルとしては扱われていません。従って、いずれの環境においてもIPPを利用する際には、それを明示的に指示する必要があります。マルチプロトコル対応の場合、IPP以外の接続が標準的に利用できるため、あえてIPPを選ぶべき強い理由はない点も挙げられるでしょう。

 なお、IPP自体は本来、LAN環境を越えた使い方が考慮されています。例えば、大学のプリンタに対して、自宅からインターネット経由で出力指示することもできます。しかしながら、誰でも利用可能な状態にしてしまうと、イタズラの対象になる可能性もあります。このため、IPPではユーザー認証機能も用意されていますが、LAN内で使用する際には認証作業に手間と感じる場合もあり、こうした点もIPPが普及していない理由の1つかもしれません。

 とはいえ、環境によってはIPPではないと接続できない場合もありますので、選択肢の1つとして「IPPがある」という点を覚えておいても損はないでしょう。


関連情報

URL
  ネットワーク対応プリンタ&複合機編 索引ページ
  http://bb.watch.impress.co.jp/cda/koko_osa/22819.html

2008/09/29 11:08

槻ノ木 隆
 国内某メーカーのネットワーク関係「エンジニア」から「元エンジニア」に限りなく近いところに流れてきてしまった。ここ2年ほどは、企画とか教育、営業に近いことばかりやっており、まもなく肩書きは「退役エンジニア」になると思われる。
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