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海底ケーブルネットワーク(3)
海底ケーブルを敷こう!


 意外なほど細い海底ケーブルだが、太平洋を越えて米国まで引っ張っていくってのは、やはりただごとじゃない。電柱のない海に、いったいどうやってケーブルを敷設するのだろうか。深まる謎を追いかけて、インフラ探検隊は今日も行く!

 国際間の海底ケーブルを敷くためには、2、3年の期間と1千億円単位のお金がかかる。容量が足りなくなったからといって、すぐに敷設できるわけではないし、××公団のように後先を考えずに敷設することもできないのだ。先週掲載した「主な国際海底ケーブル(http://bb.watch.impress.co.jp/column/infra/2001/10/04/)」の最後に掲載した表にある伝送容量をご覧いただくとわかると思うが、この10年間ほどで光通信技術は飛躍的に向上し、伝送容量は対数的に伸びている。建設費のほうは、それほど変わるものではないので、容量あたりの単価がどんどん安くなっているということだ。

 長い間寝かしておいたのでは、コストに見合わないケーブルになってしまうので、必要なときに必要なものを、最小限のコストで提供できるようにプロジェクトをスタートさせる。敷設プロジェクト以前のこの部分が、最初の難関なのかもしれない。ちなみに、領海内に敷設する場合には、それぞれの国の法律に従わなければならない。国内なら、日本政府の許可が必要だ。一方公海の敷設に関しては、もともと所有者や管理者はいないので、誰の許可も受ける必要はないそうだ。

 さて、2、3年という期間だが、その多くは、海洋調査を行なってケーブルを敷く最適なルートを決めたり、システムの設計や資材の調達、陸揚局の用意といった、ケーブル敷設に必要な準備期間にあてられる。海底ケーブルは、文字どおり海の底に敷く。海の底は、陸上と同じように山あり谷ありの起伏に富んだ地形なのだが、ケーブルは、この起伏に沿って海の底を這わせるように敷いていく。

 したがって、海底がどのようになっているのかが、システムの設計や資材の調達の上で重要な問題なのだ。また、沿岸部では船が錨を下ろすこともあるだろうし、漁場では底引き網などの漁具に引っ掛けられてしまう可能性もある。できるだけ安全な場所にケーブルを敷くことも大切であり、やむを得ない場合には、海底に埋設する必要もある。

 そこで、まずはこういったプランを練るための入念な調査を行ない、地形や土質、水温、気象条件、漁業の操業状況などのさまざまなデータを収集。これをもとに、より安全性の高いルートを選び、必要な資材などを用意する。

KDDI宮崎海底線中継所(宮崎県宮崎郡佐土原町)
 海底ケーブルが収容される陸上の施設「陸揚局」は、地上と海との中継局である。「日本に陸揚されている代表的な国際海底ケーブル(http://www.watch.impress. co.jp/column/infra/2001/ 10/04/zu1.jpg)」を見ると、陸揚げ可能な場所というのがかなり限定されているように感じるのだが、基本的には、海の底を掘り返したり埋め立てたりということさえなければ、とくにこうじゃなくてはいけないという条件はないそうである。ただ、地質(岩盤ばかりの場所や火山性の地域は避けたい)や、地形(すぐに深くなってくれれば埋設の必要が少なくなるのでよいが、断崖絶壁ではちょっと困る)、漁業の種類、地上のネットワークとの絡みといった点で、よりよい場所というのはあるそうで、千倉や二宮などは、かなり優れた場所とおっしゃっていた。結果的に、リソースを有効に利用したり、ハブとして機能させるために、特定の場所に集中してしまったのだろう。

 この陸揚局、数千キロの彼方からやってきたケーブルが、ようやくここで陸に揚がるんだぞ〜ってことで、筆者自身は、かなり感動的な施設であることを密かに期待していたのだが、期待はまたしてもあっさり裏切られてしまった。なにせケーブル自体は、前回ご覧いただいたあの程度のもの。それが海面からびよ〜んと出現しててくれればまだ盛りあがれるのだが、実際には地中を通って直接収容されてしまうので、海底ケーブルらしさというのは微塵もない。巨大なパラボラアンテナが、いかにも〜って感じでそれらしさを演出してくれる衛星通信所と違い、「たしかに海岸に建ってますね」という程度の、およそ観光の名所にはなれそうもないところだったりする。



いざ、海底ケーブル敷設工事へ!

KDDオーシャンリンク
全長:133.5m、幅:19.6m、総トン数:9510トン、 航海速力:15ノット(27.8km/h)、航海距離:約1万海里(1万8520km)
 陸揚局もルートが決まり、資材も集まったということにして、話は一気に陸揚局間の敷設工事へと進めよう。あたりまえのことだが、海底ケーブルは船で敷設する。右の写真は、92年に竣工した海底ケーブルの敷設や保守を行なう専用船「KDDオーシャンリンク」である。写真ではよくわからないが、ケーブル船の船首や船尾には、シーブ(sheave)と呼ばれる滑車が付いているのが特徴だ。ちなみに、前に付いているものをバウシール(bow sheave〜バウは船の前方)、後に付いているものをスタンシーブ(stern seave〜スタンは船の後方)という。船のお腹の中には、ケーブルタンクと呼ばれるケーブルを格納しておくスペースがあり、船上にはケーブルを繰出すためのケーブルエンジンが積まれている。先ほどのシーブにケーブルを架け、ケーブルエンジンで少しずつ繰り出しながら海の中に沈めていくわけだ。

 ケーブル船には、ケーブル本体のほかに中継器も積み込まれる。いくら伝送損失が少ない光ファイバといえ、太平洋を無中継で通信するなんてことはとてもできないので、ケーブルの途中に中継器を入れ、何度も増幅しながら伝送する(中継器の中身のお話はまた次回)。中継器本体は左下の写真のようなもので、これを耐水圧の筐体にいくつか入れて保護用のゴムブーツを付けるとかなり大きなものになる。ちなみにこれも海底ケーブルと同様、8000m級の深海で25年間耐えられる設計になっている。中継器の間隔は、初期のもので33km。現在は45〜60km程度と間隔は意外に短い。実際光信号自体は、もっと遠くまで伝送可能だが、めちゃめちゃ弱った信号を一気に増幅するよりも、あまり弱くならないうちにこまめに増幅したほうが、S/N比を稼げるからなのだそうだ。

 工場から運ばれてくるケーブルは、だいたいこの中継器間隔くらいの長さになっており、これを船の中で次々に接続して1本の海底ケーブルにし、ケーブルタンク内に巻いておく。オーシャンリンクの場合には、主タンクが3つあり(計2300立方メール)、一度に4〜5000kmくらいのケーブルを積載することができる。読者から「太平洋の海底光ファイバは、陸揚局から陸揚局までノンストップですか」というご質問をいただいたが、太平洋の半分までなら、1隻だけで一気にいけちゃうことになる。残り半分はどうするかというと、もう一方の陸揚局から同じように敷いてくる。埋設が必要な沿岸部などの浅海域を除くと、時速4ノット(7.408km/h)くらいで敷設できるそうなので、1カ月もあれば太平洋の真ん中でご対面。双方をつないでめでたく開通ということになる。ケーブル船が走り出せば、あとは24時間、決められたルートをただひたすらまっしぐら(実際には海底の起伏に沿って敷設するためにいろいろと大変なんでしょうが)なので、こんなものかもしれないが、それにしても意外と早く敷けてしまうものだ。

TPC-3に使われた海底線中継器
ケーブルに取り付けられた中継器


ケーブルの陸揚と埋設

MARCAS-II
長さ:2.9m、幅:2.3m、高さ:3.2m、空中重量:8000kg
 深海域の海底ケーブルは、海底の地形に沿わせながら垂れ流すだけだが、沿岸部や漁場などでは、ケーブルを守るために海底に埋設する。深さはケースバイケースだが、だいたい1〜3m程度だ。

 最初にお話したように、陸揚局の地下には通常、海に向かって土管が掘られている。陸揚局のケーブルは、この土管を通って海に出て、沖合いに停泊しているケーブル船のところまで引っ張っていき、ケーブル船のケーブルに接続する(あるいは沖合いからケーブルを引いてきて、陸揚局に収容する)。ケーブルは、その後海に沈められるわけだが、この海岸にいちばん近い部分、水深30mくらいまではダイバーが潜って埋設作業を行なう。そこから先、水深500〜1000mくらいのところまでは、遠隔操作で動く埋設用のロボットが活躍する。写真の「MARCAS-II」は、オーシャンリンクに搭載されている、ケーブルの敷設と保守を行なう万能タイプ。高圧のジェット水流を使って海底を掘削しながらケーブルを埋設するほか、ケーブルを探して掘り出したり、切断したりといった作業を一通りこなすことができる。このほかにも、耕作用の鋤(すき)のような埋設専用機も使われている。

 さて次回は、この10年で飛躍的な進歩を遂げ、通信コストを劇的に下げる要因となった光通信技術についてお話したい。

(2001/10/17)


□KDDI
http://www.kddi.com/

鈴木直美
幅広い技術的知識と深い洞察力をベースとした読み応えのある記事には定評がある。現在、PC Watchで「PC Watch先週のキーワード」を連載中。
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