■通信サービスは信頼性や品質が重要
気がつけば、パソコン通信の時代から数えて十数年。なぜか通信やコミュニケーションに関連する記事ばかりを書いてきた筆者。もちろん、インターネット接続環境も早い時期から「常時接続」と「高速化」を狙っていた。
インターネットの常時接続環境が整ったのは1998年はじめだ。それまでISDNルーターでインターネットに接続していたが、その快適さが災いし、月々の通信費が軽く2万円を超えるようになってしまった。そこで、当時、月額約4万円で128kbpsの常時接続を提供していたNTTの「OCNエコノミー」(現在はNTTコミュニケーションズが提供)を思い切って契約することにした。月額約4万円は決して安い金額ではなかったが、時間を気にしながら接続するよりも「つなぎっぱなし」にした方が得られるものも大きいと考えたからだ。
その後、数年はOCNエコノミーを使い続けていたが、トラブルにもきちんと対処してもらうことができ、非常に快適に利用することができた。1999年10月にはOCNエコノミーも値下げされ、年間契約にすれば、月額3万円を切るところまで来たが、年間契約には踏み切らなかった。なぜなら、いくつかの事業者がADSLサービスの提供を開始し、その動向が気になっていたからだ。
ADSLについては比較的早い時期に米国で取材をしたり、国内ベンダーから話を聞くことができたため、非常に興味を持っていた。ただ、ある程度の信頼性が確保できなければ、インターネット常時接続環境をOCNエコノミーから乗り換えることは難しいだろうとも考えていた。過去の経験から、『通信サービスは信頼性や品質が重要』と考えていたからだ。
また、筆者宅は一般家庭に比べ、回線がやや特殊な環境にある。筆者が通信機器のテストをすることが多い上、家族も宅内で仕事をしているため、OCNエコノミーの他に、ISDNを3回線も宅内に引き込むという環境になっていた。
■ADSL化に立ち塞がる『光収容』のカベ
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フレッツ・ADSL 1.5Mタイプの開通後、さらにもう1回線、イー・アクセスのADSLを追加し、現在は2回線体制。フレッツ・ADSLも8Mタイプに移行した |
2000年末頃になると、筆者宅もいくつかのADSL接続サービスの対象エリアに含まれるようになってきた。そこで、2001年2月に受付を開始する予定のNTT東日本の「フレッツ・ADSL 1.5Mプラン」に申し込むことにした。乗り換えるための回線は今までFAXの送受信と通信機器のテストに利用してきたISDN回線だ。
それまでOCNエコノミーを契約していたこともあり、筆者宅の地域を担当するNTT東日本の営業と直接、話をすることができ、申し込みの書類も早い段階で提出することができた。「書類も早く出したし、営業担当からもプッシュしてもらえるから、早く開通するだろう」と考えていたのだが、これが一向に連絡がない。あまりの反応の悪さにしびれを切らし、再び営業担当から地域の担当部署に問い合わせてもらうと、そこで返ってきたのが「お客さまの回線は光収容です」という答え。
ご存知のように、回線が光収容の場合、ADSL接続サービスは利用することができない。しかも聞くところに寄れば、筆者宅付近には学校やスタジオ、研究所などがあるため、他の地域よりも光ファイバの敷設率が高く、メタル回線にもほとんど空きがないらしい。「メタル回線に空きが出て、収容替えができるようになったら、連絡しますから」と営業担当に諭され、とりあえずは様子を見ることにした。それから数カ月間は、エリア内なのに、光収容のおかげでADSL化できないフラストレーションがたまる一方。何とかADSL化できないかと、NTT以外のADSL事業者にも申し込んでみたが、答えは同じだった。
そして、2001年も夏が近づいてきた頃、再びNTTの営業経由で調査してもらったところ、何とか回線を1本確保できるという。ただ、ここで第2の問題が発生。実は、筆者がADSL化したい回線の電話番号は、ISDNしか利用できない交換機に割り当てられているため、同番移行ができないという。同番移行ができるのは音声通話などをメインで使っている配線で、しかも「i・ナンバー」で複数の電話番号を割り当てているため、変更を加えると仕事や生活に支障を来たしてしまう。
しかし、我が家には複数の回線があるので、それらの回線をやり繰りして、何とか同番移行ができないかを模索してみることにした。その結果、以下のように複雑なやり繰りプランができあがった。
配線A | ― | 回線番号1,2(音声) | → | タイプ2でADSL化 |
配線B | ― | OCNエコノミー | → | 回線番号4 |
配線C | ― | 回線番号3(FAX) | → | 移行なし |
配線D | ― | 回線番号4(業務用) | → | 回線番号1,2 |
このプランを提示し、いったんは現場担当者も工事を了承したのだが、結局、直前になって、NTT側から「OCNエコノミーに使っている回線(配線)をそのまま、フレッツ・ADSLに移行でいけます」という申し出があり、複雑な回線のやり繰りに伴う工事は避けることができた。筆者の勝手な予想だが、おそらくあまりにも面倒な工事なので、局内工事だけで何とか吸収しようとしたのではないだろうか。
実際の工事はいたって簡単だったが、開通時にちょっとしたトラブルがあった。開通の連絡があり、ADSLモデムを接続したのだが、まったくリンクアップをしないという事態に見舞われた。結局、NTT東日本の営業経由で現場に連絡したところ、局内の工事ミスということがわかり、解決することができたが、できれば、開通の連絡時にリンクアップを確認してから電話を切るか、あらかじめNTT東日本の工事担当の連絡先を聞いておいた方がベターだったと後悔している。
こうして開通した「フレッツ・ADSL1.5Mプラン」は、幸い1.2Mbps程度のパフォーマンスが得られた。最初に用意したブロードバンドルータはヤマハ「NetVolante RTA54i」で、万が一、ADSLが利用できないときのために、いつでもフレッツ・ISDNに切り替えられるように体制を整えておいた。また、プロバイダについては以前から利用していた「IIJ4U」のオプション契約を追加したが、バックアップとしてBIGLOBEも利用できるようにしておいた。ちなみに、BIGLOBEは「使いほーだいコース」を契約すると、追加料金なしで「フレッツ・ADSL」や「フレッツ・ISDN」を利用することができる(申し込みは必要)。
■インターネットラジオ専用PCを設置
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DELL Latitude Cptを利用したインターネットラジオ専用PC。着脱式内蔵ドライブはDVD-ROMに変更し、DVDの再生も可能。Celeron500MHzなので、もう少し早いCPUが欲しいところ |
ADSL化に伴い、まず最初に試してみたのがストリーミング再生だ。映画の好きな筆者としては、高画質の予告編(Movie Trailer)を楽しんでみたかった。実際の再生は非常にスムーズなもので、1.2Mbps程度のスループットでもまったく不満を感じることはなかった。
次に目を向けたのが「インターネットラジオ」だ。開通した当時に、ちょうどWindows XPのβ版が配布されていたこともあり、Windows Media Playerでいくつかのインターネットラジオを聴いてみたが、これがなかなか楽しい。原稿を書くときのBGMとして、普段はミニコンポでCDを再生しているが、インターネットラジオがこれだけ充実しているのなら、インターネットラジオ専用マシンを用意するのも悪くないと考えた。そこで、インターネットラジオ専用のマシンとして、少し古めのDELLのノートPC(Latitude CPt S500)を調達し、USB接続の外付けアンプ「ヤマハ RP-U200」とスピーカーを組み合わせた環境を構築してみた。
余談だが、ノートPCを選ぶ上で重視したのは価格やパフォーマンスよりも「CD-ROMドライブが手前方向に開く」という点だ。横開きのCD-ROMドライブではミニコンポよりも場所を取ってしまう上、CDの出し入れが面倒だが、手前方向に開けば、本棚に収納されているミニコンポと入れ替えて設置しても違和感なく使えると考えたからだ。
■光収容だからって諦めるな
その後の筆者のブロードバンド環境は、さらにいろいろな変更が加えられることになるのだが、その話は別の機会に譲るとして、これからADSL化を目指す人たちに知っておいてもらいたいのは「光収容だからって諦めるな」ということだ。マンションなどで、建物ごと光ファイバ化されている環境は難しいが、収容局までの経路の一部が光ファイバ化されているような場合はNTT地域会社に収容替えを依頼し、ADSL化することができる。一律的にどの環境でも可能とは言い切れないが、現在、光収容でメタル配線に空きがない状態でもNTT地域会社の担当者と緊密に連絡を取っておけば、体制が整った段階で収容替えを実現することは十分可能ということだ。
また、多くのマンションは複数の回線を引き込めるようになっているため、新たに配線を敷設して、「タイプ2」契約で申し込むのも手だ。確かに、月々のコストは割高になるが、常時接続環境があるのとないのとでは大きな違いがある。いろいろなカベはあるかもしれないが、めげずにいろいろな工夫を凝らして、NTT地域会社やADSL事業者と交渉していただきたい。もちろん、そんな工夫や交渉もなく、移行できる方がベターなのだが……。
■参考データ
居住地区 | 東京都世田谷区 |
線路距離長 | 1810m |
伝送損失 | 30dB |
ADSL事業者 | NTT東日本「フレッツ・ADSL 1.5M」 |
プロバイダ | IIJ4U、BIGLOBE |
スループット | 約1.2Mbps |
(2002/05/17)
□NTT東日本 電話回線の線路情報
http://www.ntt-east.co.jp/line-info/
□NTT西日本 線路情報開示システム
http://www.ntt-west.co.jp/open/senro/senro_user_index.html
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