■ケーブルから光ファイバへ
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従来のシステム。ドメインは取っているが、イッツコムの安いコースではIPアドレスが取れないため、サーバーを外部に置いていた。これが遅い |
前回、ブロードバンド百景に書かせていただいたのは昨年の9月、第十五景。当時事務所で使っていたCATV回線「イッツコム」のアップロードの遅さに困り果てていた。ダウンロードは2~3Mbpsとそこそこだが、アップロードが200kbpsではとても仕事に使えない。
ちなみに、私が仕事をしているのは小さな編集プロダクション。雑誌屋である。原稿やらデザインやら画像データやら、本を1冊作るとなるとけっこうなデータのやりとりになるのだ。
それともうひとつ、手元にサーバーを置きたいという希望もあった。当時は知り合いのネットワークエンジニア宅にサーバーを置かせてもらっていたが、そこに入っている回線は128kbpsの専用線。メールを落とすのにも待たされるという状況で、データのアップロードは最初からあきらめていた。
事務所のスタッフは全部で4名。吹けば飛ぶような弱小事務所だが、会社は会社である。スタッフに取りあえず聞いてみた。「回線、どうしたらいい?」「そりゃ有線でしょう」。結論は2秒で出た。
■意外と早かった開通
有線ブロードネットワークスに申し込んだのは2002年の8月末日。8月いっぱいに申し込むと基本工事費15,000円が無料になるという特典があったからだ。
申し込んだのは個人向けの「BROAD-GATE 01」。法人向けの「BROAD-GATE 02」は高いのだ。当時はGATE 01が月額合計で6,200円、GATE 02は3万円くらいだったと思う。とても4人で使って割りのあう値段ではない。GATE 01でもIPアドレスは8個使えるし(ユーザーが使えるのは5個)、法人であっても代表者などの個人なら01が申し込めるという。速度はどちらも光ファイバーで100Mbps。GATE 01は通信販売などの商用利用ができないが、ウチは取りあえずその予定はないのでGATE 02にする理由はひとつもない。
気になる開通までの期間は、「2カ月がめど」とのこと。当時、有線は積極的にサービスエリアを拡大していて、それに伴ない申し込みから開通まで数カ月から半年は待たされるというウワサが流れていた。ある程度は覚悟していたが、連絡があったのは9月末。最短で10月3日から開通できるという。「いつ開線しますか?」と聞かれたが、当然10月3日を指定した。申し込みから1カ月強。当時としてはずいぶん早い開通だったと思う。事務所が比較的太い道路に面していることや、マンションやアパートでもない、ほぼ一軒家に近い(離れを借りているような感じ)というのも開通が早かった理由かもしれない。
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予定時間より早くやってきた作業車。気がつくと屋外の工事は終わっていた |
引き込み用の光ファイバーケーブル。ケーブルテレビのラインに比べるとびっくりするほど細い。さすが光 |
■ファイバーは素人では扱えない
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クーラーのダクトを利用して光ファイバを室内に引き込む。壁に穴を開けなくてもOK |
工事は13:00からということで、ウキウキと待っていた。工事風景を撮影しようとデジカメも充電しておく。と、12時半ごろ、なにやら外が騒がしくなった。何だろう? と外に出てみると、おいおい、すでに工事が始まってるじゃないか! 工事開始の写真を撮り逃がした!
「断りもなしに始めるか?」とも思ったが、後で聞くと、引き込みから外の部分はあらかじめ工事を済ませておくそうだ。まあ、普通の人は写真なんか撮らないだろうし。
事務所内にもあっという間に線が引かれて、あとはメディアコンバータのみ。これがパッと見はつまんない機械に見えるが、実はとてもセンシティブなモノで、セットをいいかげんに行なうと速度が出なかったりするそうな。恐ろしく細い光ファイバを引き出して、クルクルとまとめたかと思うと、コンバーターにセット。肉眼でも見づらいような線をきれいにまとめるもんだと感心して眺めてるうちに作業は終了。外に飛び出してからは1時間も経っていないのではないだろうか。
工事担当者がノートPCで接続テストをする。BROAD-GATEサーバーとの接続だと70Mbpsほど出ているという。恐ろしく速い。「一般のインターネット接続ではここまで出ないでしょう」とのことだが、十分である。思わずお茶を出してしまった。
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メディアコンバーターの内部。サイズは約10×12cmでとてもコンパクト。ピレリ製というのもなんだか速そう(笑) |
神業のような手さばき! というと言いすぎだが、それにしても器用にファイバをセットしていく |
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速度チェック。有線のサイトにアクセスすると70Mbpsほどの速度。ストリームデータがまるでローカルに置いてあるかのようだ |
メディアコンバータを壁にセットして完了。ここまで1時間もかからない |
■なんだかんだと物入り物入り
取りあえずLANもつながず、直結でテストをしてみた。そのときのデータを見てみると、RBB TODAYのテストでダウンロード38.13Mbps/アップロード41.88Mbpsとなっている。イッツコムがダウンロード1.49Mbps/アップロード215.4kbpsだったから、まさにけた違いの速さ。アップロードに至っては、単位まで違ってる。ダウンよりアップのほうが速いというのもなんだかおかしかった。
と、遊んでばかりいても仕方がないので、環境を整えることにいそしんだ。
まず必要になったのはルータだ。それまで使っていたのは10Mbpsのもので、これでは全然光ファイバのメリットが出ない。知り合いのネットワークエンジニア(彼がウチのネットワーク管理者でもある)に聞くと「NetGenesis SuperOPT90」がいいという。出たばかりの最新モデルだ。すぐにスタッフのひとりが秋葉原に赴き入手……とは簡単にいかなかった。価格.comの最廉価店を電話で伝えたものの、そこでは品切れ。事務所でWebを調べながら携帯電話で次々に安い店を指示。数店目でやっと手に入れることができた。
Web(FTP)サーバーはそのエンジニア宅に置いてあったマシンを事務所に移設してもよかったが、マシン自体があまりに旧式であるのと、移設に伴なう設定変更を一気に終わらせないといけないので、結局Dellの安いサーバー(Celeron 1.2GHz/HDD 80GB)を購入し、徐々に環境を移行させた。ちなみにOSは、管理者が得意としているFreeBSDである。
このサーバーを入れたことで、事務所の最速マシンがWebサーバーという妙な状態になってしまった。特にサイトを公開しているというわけでもないので、Webサーバーにはそれほどのパフォーマンスが必要ないというのに。古いマシンをWebサーバーに仕立てて、速いサーバーマシンは作業用にしようかとも思ったが、設定をやり直さなければならないし、サーバーマシンにはAGPバスがないことなどであきらめた。だけどこれが今になって生きている。FTPなどがものすごく快適なのである。デザイナーや出版社とデータの受け渡しをするのにウチのサーバーを使うことも多いのだが、おおむね好評のようだ。よい買い物をした。
そしてUPS(無停電装置)。これはYahoo!オークションで手に入れた。バッテリーが新品なのはよかったが、シャットダウンに必要なケーブルとソフトがついてない。後で知ったのだ、それが必要だということを。後日秋葉原で新品ケーブルとソフトを購入。1万円近くした。UPS本体だってそのくらいの値段しかしなかったのに……。
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秋葉原を走り回って手に入れた「SuperOPT90」。設定はネットワーク管理をお願いしている知り合いにオマカセ |
ファイルサーバーとWeb・メールサーバーが並ぶ。結果的にDellのマシンが2台並んだ。その左はUPS |
■回線は速いがプロバイダーとしてはイマイチ?
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郵送されてきた約款。文字の大きさを100円玉と比べてほしい。約款なんてどこもこんなものなのかもしれないが、だったら余計にWebサイトなどでちゃんとした説明を掲載してほしい |
回線は大きな問題もなくあっさりと開通した。速さも十分だし、ダウンするようなこともいまのところない。が、有線の対応はいまひとつだった。
開通した夜、取りあえず……と思い、有線の会員登録を行なった。住所などを登録し、好きなメールアドレスをひとつ決める(当時は無料オプションだった)。そしてすぐ下のGATE DISKの容量指定。ほとんど使う予定もないので、最低の容量を指定。なんと、これが有料だった。そのページには有料/無料の指示も料金も何も書いてないのに!
後で気付いたので訂正しようとしたが、修整できず。仕方がないので翌日電話をした。「まだ1バイトも使っていない、すぐに解除してくれ」というと、「それはできない。最低1カ月の料金がかかる」という。ぐっとこらえて、「申し込みのページには有料である旨が何も書かれていないじゃないか!」というと、「約款に書いてありますから」。これには怒った。怒っちまった。約款を盾にするような商売はサービス業じゃない。怒ったいきおいで言う。「どのプロバイダーを見てもらってもかまわない、申し込みページには有料/無料がちゃんと書いてあるじゃないか」と。担当氏は「では上司と相談して連絡しますから」。それから半年。まだ連絡はない。
この約款、いまでこそ料金ページからダウンロードできるが、当時は申し込みページの中にしかなかった。つまり、後で見ようとしても見られないのだ。少なくとも私には見つけられなかった。申し込み後に届く、印刷された約款もあるが、それはもう肉眼では判別できないほど字が小さく、色が薄い。
例えばWebにはどこにも記載されていないようだが、「BROAD-GATE 01」には総容量制限がある。月間100GBが上限なのだ。これも約款に小さく載っているだけ。ウチのような事務所で100GBを超えることはないだろうし、超えたからといってすぐに止められるわけではないようだが、やっぱり気になるもの。
同じような姿勢が当時のコンテンツサイトでも見られた。会員は無料でコンテンツが見られるのだけど、無料コンテンツに交じって有料コンテンツがまるで落とし穴のように並べられていた。回線が速くなったと喜んでコンテンツを利用していると、請求額に驚くはず。もちろんウチのスタッフにも出入りを禁止した。
そんなわけで、GATE DISK代は1カ月分払ったが、もう怒ってはいない。勉強代だと思えば安いもの。同じ失敗をしないようにこっちが注意すればいいだけのことだ。
■そしてこれから
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実際の接続はもうちょっと複雑だが、こんな感じの現在のシステム。とても快適だ |
その後、回線は快調である。今日、この原稿を書くにあたってスピードテストをしてみたら、80Mbpsも出て驚いた。この速さで月額利用料5,700円なのだから、十分だと思う。現在のシステムは図に挙げたとおり。サーバーが近いこともあり、巨大メール、FTPも実に快適である。例えばデータのバックアップ。個人のマシンの作業データをすべてFTPサーバーにアップしておく。出版社や別の編集部におもむいて作業することも多いが、そこで必要なデータを落として作業できるので、とても便利なのだ。わざわざデータを持ち運ぶ必要がない。もちろん純粋なバックアップとしても有効である。
取りあえず接続環境はグレードアップしたので、今後は強化するとしたらネットワーク環境。VPN(仮想プライベートネットワーク)なんか魅力かも。あっ、ハードディスクが足りてないか。取りあえずそれかな。
(2003/04/17)
■参考データ
居住地区 | 東京都世田谷区 |
接続事業者 | 有線ブロードネットワークス |
回線の種類 | FTTH |
プロバイダー | 有線ブロードネットワークス |
スループット | 40Mbps~70Mbps程度 |
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