■インターネットなら常時接続でしょう!
私とモデムとのつきあいは古い方だろう。電電公社の電話回線にモデムをつないでもいい、となったとたん、今はなきアスキーネットにはまった。最初に買ったのは300bpsのモデムである。さすがに音響カプラには手を出さなかった。その後は28.8kbpsモデム、次はINS64とお定まりのコースだったが、1999年の夏に思い切ってOCNエコノミーを使いはじめた。
ホストコンピュータにアクセスするだけならダイヤルアップ回線でも十分だが、インターネットを使おうと考えると常時接続が欲しくなったし、商売柄自分でいろいろとチェックできるサーバーを作っていじり倒さないことには仕事にならなくなりつつあったのだ。128kbpsながらも、常時接続は快適だった。
ついで、下り1.5MbpsのADSLに移行。OCNエコノミーは当初より安くなってはいたが、それでも月額3万円以上する。サーバーのメンテナンスもそれなりに修行を積んだので、外部に月額1万円でレンタルサーバーを借りて自宅の回線をADSLにしたほうが安上がりと考えたからだ。実質的には下り1.2Mbpsくらい出て、かなり快適な常時接続環境になった。しかし、一番安い契約のADSLではIPアドレスが割と頻繁に変わる。Webと電子メールはレンタルサーバーに任せてあるので問題ないとはいえ、たまには職場から自宅のサーバーにアクセスする必要もある。ところが、そんなときに限ってIPアドレスが変わっていて慌てさせられる。お金を出せばIPアドレスを固定することもできるのだが、「ADSLは電話回線の規格外品質に頼っている」点がちょっと不安でもあった。かといって、我が家がサービスエリアに入っているCATVインターネット接続サービスはコストパフォーマンスが悪いので使う気になれない。そもそもサーバーを構築できないのだから論外である。
そうこうしているうちに、2001年末ころから我が家も光ファイバーによるインターネット接続サービスのサービスエリアに入った。当初Bフレッツを申し込もうと考えたのだが、すぐにでもBROAD GATE-01のサービスがカバーしてくれそうな雰囲気だったのでこちらに申し込んだ。我が家のある荒川区には、「FTTH補助制度」なる補助金の制度がある。個人3万円、事業所5万円を上限に光ファイバーによるインターネット接続の設置に必要な初期費用を区が負担してくれるという制度だ。我が家もこの制度のおかげで初期費用は実質無料になった。ただ、ネットユーザーには大変ありがたいこの補助制度も、ご近所の井戸端会議ではその金を福祉に回せというのが大勢のようで、私もその意見には賛成である。
■ブロードバンドは遅い?
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我が家の周辺。表通りから続く細い道は、調査の結果公道と判明
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我が家は2世帯住宅ながら一戸建て。人様の土地を通らず公道を経由するだけで出入りできる。ケーブルを引っ張ってくるのに障害となる要素はほとんどなさそうである。が、とにかく有線ブロードネットワークスの反応が遅い。手元の覚え書きを見ると、2002年1月24日あたりに予約受付を申し込んでいる。ところが、2月が逃げていき、3月が去ってしまい、4月がやってきても進展がない。後から知ったところによると、この時期は前出の補助金の効果もあって低料金のUSENに申し込みが殺到し、荒川区内の申し込みは同時期の他地域と比べても4倍に達していたらしいのだが、当時は何の説明もなかった。
何度か問い合わせたのだが、スケジュールのめども立たないという状況だった。これでは話にならないのでキャンセルし、Bフレッツを申し込むことにした。有線ブロードネットワークスにキャンセルを伝えたのが2002年4月17日のことである。
別に「Bフレッツにしますから~」と言ったわけではないし、「ふざけんな!」と怒ったわけでもない。しかし4月19日に地区担当の営業マンとおぼしき人物から電話があった。まさにBフレッツを申し込んだ日である(開通は8月上旬だと言われた)。その時の電話では「表通りまではケーブルの敷設が済んでいる。家まで入る私道の所有者確認と、利用許可申請に手間取っている」という。有線といえば有線放送でさんざんケーブルを引いているので、その辺のノウハウはたくさんもっていると思っていたのだが……。私道の件に関してはこちらで調べて折り返し連絡することにした。
結局、我が家に入ってくる道は私道ではなく、公道だった。この辺のやりとりをしているうちにゴールデンウィークに突入してしまい、工事日がまた遅くなった。しかし、ちゃんと進捗状況がわかりさえすれば我慢できるというものだ。結局、工事日は2002年5月18日となり、Bフレッツはキャンセルした。ダイヤルアップの時も、OCNエコノミーの時も、それほど待たされた記憶はない。しかしADSLを申し込んだときは3カ月くらい待たされた。通信回線の速度と、開通するまでの早さは反比例するようだ。
■現場の人は大変だ
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コンセント上方から下に向かって延びているのが光ファイバー。電話線用の配管を通している
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5月18日の工事は、予定では13:00からだったのだが、実際には14:20からとなった。前の工事が長引いたようである。作業としては、まず表通りの電柱から我が家まで光ファイバーをもってくる。ついで、我が家の電話線用配管を利用してケーブルを屋内に引き込んだ。引き込んだケーブルを、メディアコンバータ(ネットワークの世界ではブリッジというのではなかろうか)に接続する。最後に、工事の人が持ってきたノートPCをつなげて確認するといった案配。これで3時間ほどかかった。作業終了後「お茶でもいかがですか」と声をかけたのだが、「この後も工事が入っていますので」と、お茶も飲まずに引き上げていった。想像だが、やはり工事は土日に集中するのだろう。現場の人は大変である。
大変ついでに、工事が完了したときに2、3質問した。
「メディアコンバータとPCはクロスのUTP(Unshielded Twist Pair)ケーブルでつなげるのですか?」
「IPアドレスは、明示的にユーザーが設定するのですか?」
答えはいずれも是、であった。しかし、実際にはどちらも否、である。
ケーブルは一般的なストレート配線のものでOKだし、IPアドレスなどは有線ブロードネットワークスが用意しているDHCPサーバーから取得できる。要するに、普通にWindowsマシンやMacマシンをつなげるとそのまま使えるようになっているのである。ちなみに、マニュアルには、このあたりのことも正しく記載されていた。
■さすがに速い光ファイバ
さて、せっかくの100Mbpsである。実際の速度はどのくらいなのだろうか? あちこちの速度計測サイトを使って調べてみると、30Mbpsくらいは出ているようだ。サーバーによっては、70Mbpsくらいで転送できるところもある。いまのところ、我が家に来ている100Mbosの回線ではなく、インターネット上の別の部分がボトルネックになっているようだ。
そもそも私のPCは安物のハードディスクを使っているので、こいつが問題だったりする。ローカルの100BASE-TXネットワーク上でも、80Mbpsくらいが限界なのだ。ネットワークプロトコルのオーバーヘッドを考えても、もっと早いハードディスクにするなり、ストライプを組むなりしないと100Mbpsを使い切れない、というのが本当のところだろう。それにしてもFreeBSD 4.6.2というOSのインストール用CD-ROMイメージが600MBくらいあるのだが、これを取得するのに20分ほどで済んでしまったのには驚いた。
■ネットワーク構成
申し込むときには全然気にしていなかったのだが、固定IPアドレスを5個割り振ってくれる。IPネットワーク的に言うと、/29のブロックを割り振る、といったところだろうか。これだと8個のIPアドレスを使えるのだが、最初はネットワーク全体を表すアドレスで、次が有線ブロードネットワークス側のルータに割り当てられ、最後をブロードキャストアドレスに使う。なので、結局我が家で使えるのは5個ということになる。普通はこれで十分足りるのだが、我が家では常時稼働しているPCが2ないし3台。それ以外に子供の使うPCが1台、ノートPCが2台ある。つまり、IPが5個では同時に全部接続することはできないのだ。
インターネットの基本思想は「すべてのホストにグローバルIPアドレスを割り当て、End to Endの通信を行なう。ネットワークはdumbで(何もできなくても)いい」だと思う。しかし現実問題として、IPv4のアドレスは足りない。おまけに、私以外の家族はWebが見られてメールが読み書きできればとりあえず問題ないのである。というわけで、我が家ではNAPT(Network Address Port Translation)機能を備えたいわゆるブロードバンドルータではなく、アプリケーションゲートウェイが動いている。
もうちょっと具体的に言うと、まず2枚のLANカードを装着したサーバーマシンを用意する。といっても、もう使わなくなったPCにFreeBSDをインストールしているため、必要なのは手間だけで実質タダである。このマシンでsquidというWebのproxyサーバーと、qmailというMTA(Mail Transfer Agent)、そしてimapサーバー(MDA。Mail Delivery Agent)を動かしているのだ。
imapを使うと、メールはサーバー側で一元管理できる。最近はハードディスクが安いので、家族数人のメールだったら問題なくサーバーに保存しておける。おかげでWindowsマシンがクラッシュしても、Windowsを再インストールするハメに陥ったとしても、メールがなくなったりしないのだ。
ほかにも家族用マシンのネットワーク設定を自動化するためにDHCPサーバーを動かしたり、ファイル共有のためにsambaを動かしたりしている。もちろん、テスト用にWebサーバーなんかも仕込んでいる。
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上段の青いハブがグローバル用で、一番右側にメディアコンバータからのUTPケーブルを接続してある。一番左側はサーバーへのUTPケーブル。下段の白いハブがローカル用で、家族のPCもあるので既に6個のポートがふさがっている。白いハブの右側にあるのがメディアコンバータ
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普段の作業に使っているWindows 2000マシン。本体は足下にある。奥にちらりと後ろ姿を見せているのは子供用のWindows XPマシン。いずれも2CPUのSMPマシンだ
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屋内接続図
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さて、サーバーにある1枚のLANカードには有線ブロードネットワークスから割り振られたグローバルIPアドレスを割り当てている。外部から直接アクセスできるのは、このアドレスだ。もう1枚のNICには、192.168.2.0/24というプライベートIPアドレス空間を割り当ててある。家族用のマシンや、普段私が作業するマシンも、こちらのアドレス空間を使う。たとえば192.168.2.5とかだ。IPネットワークに関する設定は、前述のようにDHCPで自動化してある。あとは、Webブラウザでproxyサーバーを設定し、メールソフトのサーバーを設定すればほぼ問題ない。
問題があるとすれば、Real AudioやReal Video系のストリーミングデータを見られないこと、ネットワーク対戦ゲームをやるときくらいだろう。個人的にも、家族からも要求がないので、そのままにしている。
なお、グローバルIPアドレス空間とプライベートIPアドレス空間は、それぞれに専用の8ポートスイッチングハブを用意している。光ファイバはメディアコンバータを経由してグローバル用のスイッチングハブに接続され、同じハブにサーバーのグローバル用LANカードがつながっている。で、もう1枚のローカル用LANカードがローカル用ハブにつながり、家族用のPCもローカル用のハブにつながっている。対戦ゲームをやるのは弟なので、必要に応じてPCからのUTPケーブルをグローバル用のハブにつなげかえて遊んでいる。
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サーバーは目の前に配置してある。OSはFreeBSDで、これまた2CPUのSMPマシン。NIC2枚に加えて、無線LANアダプタをつけてアクセスポイントにしたいのだがうまくいかない
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稼働中のメディアコンバータを引っ張り出したので、コネクタ部分は見えない。光ファイバーはコネクタではなく、メディアコンバータ内部に引き込まれている。イーサネットは100BASE-TXなので、10BASE-Tの機材は接続できない
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■外からアクセスするには(DNS)
出先から自宅のサーバーにアクセスするには、とりあえずインターネットに接続できる環境があって、自宅サーバーのIPアドレスがわかればいい。Webブラウザだったら、たとえば http://192.168.2.2/ にアクセスするよう指定すればOKだ。sshでログインして仕事をするときも、直接IPアドレスを指定すれば問題ない。
ただし、IPアドレスがダイナミックに変わったり、MTAを置こうと思うとこうはいかない。MTAはメールの配送先を決めるときにDNSサーバーを参照する。ここに登録されていないとまずいのだ。残念ながら、shirou@192.168.2.2 では届かない。
とりあえずの解説策として、ダイナミックDNSサーバーを利用する方法がある。ADSLの時代に私が利用したのは、Dynamic DO!.jpだ。詳しい使い方はWebを見ていただきたい。ケースバイケースだとは思うが、経験上はIPアドレスが変わっても2時間くらいで再びアクセスできるようになった。
今の有線ブロードネットワークスは固定IPアドレスを割り振ってくれる。Windows 2000やUnixのnslookupコマンドで調べれば、そのIPアドレスに対応するホスト名もわかる。ただ当然のことながら、自分の好きな名前を選べるわけではない。実例を上げれば我が家のサーバーにつけられたホスト名は usen-xxx.ap-USEN.usen.ad.jp(xxxにはIPアドレスから機械的に生成した文字列が入る)で、これではIPアドレスを直接タイプするのと大差ない。こんな場合にも、ダイナミックDNSサーバーを使ってわかりやすいホスト名をつけた方が便利だろう。
私の場合は自宅内にサーバーがあり、外部にも丸ごと1台のレンタルサーバーを借りている。このため自由にDNSサーバーを設定できるので、取得済みの独自ドメインを使ってわかりやすいホスト名をつけてある。厳密に言うと有線ブロードネットワークスの設定とちょっと食い違っているのだが、とりあえず問題なくメールは届いているようだ。
■メール処理の変遷
蛇足ながら、メールの扱いがどう変わっていったのかも書いておこう。
まずOCNエコノミーを導入した時に、自宅に必要なサーバーを構築した。DNSとWebとメールである。で、メールは直接このサーバーに届くようになっていた。
ADSLに切り替えたとき、DNSとWebとメールは外部のレンタルサーバーに切り替えた。この辺はDNSに登録するデータを書き換えればなんとでもなる。こうなると、メールはまず外部のレンタルサーバに届くようになる。この時点でも自宅側にサーバーを作っていたので、この自宅サーバーがレンタルサーバーに対して定期的にメールを取りに行くようになっていた。家族のPCは、自宅にあるサーバーを使ってメールを読み書きするのである。
で、つい先日、グローバルIPアドレスを割り当てた自宅サーバーに、直接メールが届くようにDNSの設定を変更したところである。MTAの設定をしくじっていたことが判明したが、それはすぐに修正できた。レンタルサーバーは、外部向けのDNS/Webサーバー兼バックアップのメールサーバーとして動いている。まだ当分は借りたままになりそうである。
■今後の展望
はっきりいって、ひとりでは100Mbpsは使い切れない。家族全員で使っても、まあ使い切ることはないだろう。DVDビデオだって、せいぜい8Mbpsくらいしか使わないのだ。というわけで、しばらくは外部への接続方法を変える必要はないと考えている。
今後の目標としては、ありあまる帯域幅を活かしてNetNews(NNTP/Network News Transfer Protocolを使った、インターネット黎明期から存在するバケツリレー式伝言板)サーバーとして使いたい。といっても、このサーバーは今まで使っていなかったので、また一から勉強である。世に勉強の種は尽きまじ、のようだ。
■参考データ
居住地区 | 東京都荒川区 |
線路距離長 | 不明 |
伝送損失 | 不明 |
接続事業者 | 有線ブロードネットワークス |
プロバイダー | 有線ブロードネットワークス |
スループット | 約70Mbps(最高)/約20Mbps(典型例)/約1.5Mbps(最低) |
(2002/09/26)
□有線ブロードネットワークス
http://ftth.gate01.com/
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