■待ちに待ったADSLサービスの開始
筆者がADSLを導入したのは、いまから1年ほど前となる2001年の3月。当時、すでにさまざまな事業者がADSLサービスを開始し始め、身の回りでも導入したユーザーが多くいたが、筆者はすぐには導入せず、少し間をあけて導入したことになる。
と言っても、導入が遅れたのは、ADSLサービスの様子を見ていたからではない。単に筆者の自宅がサービスエリアに含まれるまで時間がかったからだ。現状でもADSLは、日本全国、どこでも使えるサービスとはなっていないが、このような状況がサービス開始直後はさらに顕著で、東京では23区でしかサービスを受けることができなかった。このため、東京市部に住んでいる筆者の場合、サービス開始まで時間がかかったわけだ。
2001年の年明けに、筆者の住んでいる地域がようやくADSLのサービスエリアに含まれたとき、サービスを提供する事業者はNTT東日本のフレッツ・ADSLとイー・アクセスの2社が存在した。当時、どちらのサービスを申し込むか非常に悩んだが、結局、イー・アクセスのサービスに申し込むことにした。
この決め手となったのは、サービスの開始時期だ。当時、両方のサービスを比較したところ、開通予定日がイー・アクセスの方が1カ月ほど早かった。要するに、少しでも早くADSLを体験したかったというのが本音だ。また、今でこそADSL事業者として知名度のあるイー・アクセスだが、当時はあまり知るユーザーも少なく、どのようなサービスをするのかに非常に興味があったため、導入に踏み切ったという理由もある。
■タイプ2での申し込み
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通信系の機器は仕事部屋のラックにまとめて設置してある。配線が乱雑だが、さまざまな機器を接続するテストを繰り返していくうちに、手の付けられない状態になってしまった |
ADSLの導入前まで、筆者はインターネットへの接続にOCNエコノミーを、音声通話およびFAXにはISDNを利用していた。ADSLの導入を期に、これらの回線の統廃合も考えたが、結局、以前の回線はすべて残したままADSLを導入した。つまり、タイプ2で契約し、新たにADSL専用の回線を引き込んだわけだ。
もちろん、普通のユーザーであれば、OCNエコノミーを廃止し、ISDNからアナログ回線に変更してADSLを導入するのが一般的だ。しかし、これをしなかったのには理由がある。ひとつは、ADSLで安定したサービスが受けられるかわからなかったため、バックアップ回線としてOCNエコノミーを残しておきたかったこと。もうひとつは、音声通話サービスとして考えた場合、品質、サービス内容ともにあきらかにISDNに分があったため、アナログ回線に変更する気になれなかったことだ。
これは、今から考えれば正解だった。案の定、筆者宅のADSLはトラブルを抱えることとなり、OCNエコノミーに助けらたことが多々あった。さすがにコストがかかるため、ADSLが安定して使えるようになった時点で即座に解約したが、それまでは本当に重宝した。SOHOなどの環境では、即座に回線環境を入れ替えることはせず、一定期間、両者を共存させることをおすすめしたい。こうすれば、万が一、トラブルが発生したときなどでも傷を少なくすることができる。
■トラブルは突然やってくる
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右端がフレッツ・ADSL 8Mタイプ用モデムで、その隣がイー・アクセスのモデムとなる。本来ならモジュラージャック付近に敷設すべきだが、仕事部屋まで回線を引き込んでも速度は変化しなかったため、現在の設置場所になっている |
ADSLが開通してから、3カ月ほどの間は、まさに回線は絶好調だった。筆者宅はNTT局から線路長で2.7kmほどあるが、リンクアップ速度で1.2Mbps程度、FTPなどによる実測でも900Kbps~1Mbps程度のスピードが出ており、回線が切断されるようなこともなく安定していた。これまで、インターネット接続にはOCNエコノミーを利用していたが、これとは比べものにならないほど快適だった。今ではすっかりスピードに慣れてしまったが、当時は本当に感動した。
しかし、トラブルは突然やってきた。安定して使えていた回線が頻繁に切断されるようになり、ひどいときは数分おきの切断が何日も続くようになったのだ。これには正直参った。幸い、前述したようにOCNエコノミーを解約せずに残しておいたため、仕事にこそ支障はなかったが、速度低下に予想以上のストレスを感じた。慣れとは恐ろしいもので、一度でも高速なインターネット接続を味わってしまうと、元に戻ることはできないのだ。
トラブルが発生してから、イー・アクセスのサポート担当者と連絡を取り合い、回線調整など、さまざまな対策をしてもらったが、結局、原因を突き止めることはできなかった。屋内配線、一つ飛びカッドに存在するISDNの干渉、ちょうど同じ時期に筆者の自宅に隣接する土地でビルの工事の影響など、あらゆる点を疑ったが、はっきりとした原因はわからなかった。
しかし、そんなトラブルの中、幸いだったのは、サポート対応の良さだった。イー・アクセスのサポート担当者の方からは、頻繁に連絡をいただいて、夜間の作業なども実施してもらい、今でも本当に感謝している。ホールセールの事業者の場合、今となってはサポート窓口はプロバイダーに統一されているため、事業者とユーザーが直接連絡を取り合うことはなくなったが、当時はこのあたりの体制があいまいで、結果的に事業者からサポートを受けることができたのだ。
筆者にとっては、これが幸いだった。ただし、インターネット上の掲示板などを眺めていると、事業者のサポート体制に対して疑問を持っているユーザーも多いのも事実だ。このあたりは、事業者、プロバイダーともに真摯に受け止めていくべきだろう。
■依然としてトラブルと格闘中
なお、この回線は現在も不調なままで、昨年の秋に8Mbpsのサービスに移行してからも回線の頻繁な切断は続いている。まれに2Mbps程度でリンクアップすることもあるが、ひどいときには128kbps、64kbpsでリンクアップすることもあるという状況だ。しかも、回線状況が日によって頻繁に変化し、正常に接続される日もあれば、まったく接続できない日もあるという謎な状態となっている。
もはや、この状況を改善するには収容替えしかないと考えているのだが、過去、収容替えを依頼したときにNTTから回線の空きがないと断られた経緯もあり、現在は八方ふさがりな状況となっている。もちろん、このままあきらめるのは癪なので、折りを見て収容替えに挑戦するつもりだ。この結果は、またこの場でレポートしていきたいと思う。
■参考データ
居住地区 | 東京都小金井市 |
線路距離長 | 2740m |
伝送損失 | 39dB |
ADSL事業者 | イー・アクセス 1.5Mbps→8Mbps |
プロバイダ | DTI |
スループット | 約64kbps~1.7Mbps(頻繁な切断あり) |
(2002/05/30)
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