■今は昔
先日、上映期間終了間際になってやっとロード・オブ・ザ・リングを観にいった。長蛇の列に混じるのが嫌なのと、座席の隙間を探していくのが嫌だったから。スカスカの映画館でゆったりした気分でのーんびり観たいのだ。だからネットで映画情報をチェックして、近所で特に空いていそうな映画館を探し、上映時間を調べ、さらにレディースディを狙って出かけた。
帰宅後はオフィシャルサイトにアクセスし、登場人物をおさらい。もう本編を見終わったわけだが、予告編クリップをすべからく再生。きゃーやっぱアラゴルンかっちょええ!! ワイルドでタイプっす!! タイプっす~!! とクリップを眺めながらしばしスクリーンでの彼を思い出しウットリ。ちなみに再生モードは500kbps。庶民としては十分満足できる音と映像で、ステキなあの人をストレスなく堪能。お出かけ前とお出かけ後の情報ををネットでカバー。まさかこんな日が来るとはね。
だってその昔、ISPのバックボーンだって128kbpsとかの時代があったわけで。
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過去にお世話になったパソコン通信時代の2400bpsモデム「AIWA PV-PF24」 |
1995年10月、aiwaの14.4kbpsモデムで初めてインターネットに接続してから早や6年余りが過ぎた。それまでは2.4kbpsモデムでせっせとniftyのパソコン通信を利用していたが、ふとしたことでWebを見せてもらう機会があり、インターネット接続に目覚めたのだ。たしか当時はまだテレホーダイもなく、それでもハマりまくって繋ぎまくって電話代払いまくっていた気がする。
そのうち魔のテレホーダイがスタートし、23時から繋ぎっぱなすという行為が爆発的に広がった。筆者の周りではもはや耳にしなくなった単語「テレホ」と「BUSY」。この時間帯に回線につながることと、そこそこ快適にブラウズできることがISPにとって至上命令だった時代。モデムから聞こえてくるピィ~ヒャ~~ガ~という音そのものがインターネットにつながった証であり、長い夜の始まりと寝不足の日々を約束していた時代。
やがてモデムは28.8K、さらに56Kへと移行し、とうとうISDNでの常時接続の時代を迎える。フレッツISDNの時は割と早い時期から開始したが、ADSLの場合はかなり躊躇していた。ADSLは相当安くなっていたが、つながらないかもとかスピードが全然保証されないとかま~た新たにブロードバンドルータを買わなくちゃいけないとかまだ周囲にADSL接続の実績のある人がほとんどいなかったとか接続業者はどこが一番安心なんだろうかとか今のISDN残したらやっぱり繋がらないのかなとか悩みどころ満載で心配だったのだ。それにとりあえずISDNで常時接続できていたし、仕事の面でも趣味の面でも特に大きな不満はなかったからだ。
それでもやっぱりADSL接続にしてみようと思ったのは「興味」の一言に尽きた。そろそろリスクを承知で体験してみたいブロードバンドライフ!!果たしてうちにも導入できるのか!?というわけで2001年の初夏、勇気を出して初めてのブロードバンド導入を決意。それもISDNからアナログに戻して共用する方向で。
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インターネット接続初期のころの14400bpsモデム「AIWA PV-PFV144」 |
フレッツISDN時代お世話になったTA、NTT-MEの「MN128-SOHO SL11」 |
■ADSLはどこにする?
さてーADSLにするとなると考えることいろいろ。雑誌を買いあさってADSLとはなんぞやからおさらいしたが、最大の問題はどこのサービスを受けるかであった。あれこれ考えたが、ポイントは以下の4つ。
1)ADSLのサービスは価格競争の時代に入っており、不安材料が多かった。仕事で使うことも踏まえ、何が起きても安定したサービスを意地でも提供しそうなところを選びたい。
2)接続に関するユーザーサポートは実績のあるところのほうが安心である。
3)さっさと開通させたい
4)価格は競争が激しくなればどんなところも泣く泣く(?)下げるだろう。
というわけで結論は「寄らば大樹の陰」=も~フレッツでいいや! ってわけでフレッツADSLの共用タイプをセレクト。接続先のISPはそれまでフレッツISDNで使っていたIIJ4UとASAHI-NETでそれぞれオプションを追加することに。これもやはり金と実績がモノを言うのだ。なにせブロードバンドなんですよ! ムービーだの音楽だのなんだのかんだのと大量のデータが流れるわけで、バックボーンは太いに越したことないし、回線の維持にはお金がかかるわけで、リアルな話こういう場合はお金ありそうなとこほど安心なものはないのだ。
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ブロードバンドルータ「プラネックス BRL-04F」。この一帯は裏でありとあらゆる線がこんがらがっているのでこれ以上触りたくない状態に。これを見ると広い部屋に引っ越したくなる
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というわけで申し込みを済ませ、複数台のマシン接続に備えてブロードバンドルータも買って開通の日を待つこととなったのであった。ちなみにブロードバンドルータはプラネックスののRoad Lanner(BRL-04F)。これまたどれにするか悩みの種だったが、HUBが4ポートついていたこと、小型だったこと、当時新宿の某店で人気No.1の機種だったことで購入決定。
ちなみに、値段が一番安かったわけではないのにどうしてNo.1かと思い、人気の秘密はなにかと店員に聞いたところ、スループットだということであった。まぁそんなこといわれてもすべてが未体験ゾーンであり、どれくらいの速度が出るのかすらわからない状態だったのだが。
■なんでつながらないのよッ!!
申し込みから開通予定日までは概ね1カ月足らずであった。何カ月も待たされる可能性も視野に入れていたので割とラッキー感あり。一度開通日を決めたのだが仕事の都合上延期せざるをえなくなり、やや延期。仕事柄ファイル転送を頻繁に行なうので、ピーク時に工事を持ってきてもし繋がらなかったら…と心配したのだ。
さて夢の開通日当日である。スプリッターよ~し! モデムよ~し! マシンよ~し! とりあえずルータなしで接続テスト~! とやってみたら繋がらず……。一発接続の夢破れるの巻。フレッツ接続ツールでテストしても繋がらないのである。こういう場合どこに原因があるのかアタリをつけるのは大変だ。そもそも繋がることが保証されていないのである。コネクタの接触不良? ケーブルの断線? ソフトの不具合? マシンおかしいのかな、いやモデムかスプリッタがぶっ壊れてるのかも、いやもしかして本当に距離が問題だったりして! と半狂乱になりながら、ひとつひとつ再起動したり取り替えたり再インストールしたりと試していった。もう無我夢中! その間、頭の中では快適なブロードバンドライフをエンジョイしている自分のイメージがどんどん壊れていく。
格闘すること数時間。テレビのスイッチをOFFにした瞬間のように、明るいブロードバンドライフの映像がプツリと消えた。なにをどうしても、どーしても繋がらなかったのだ。久しぶりにインターネットに自力でつなぐことが出来ないという事態に直面し、一気に脱力。ああ、あたしんち、ADSLダメでしたとかそんなことなのかも(涙)。本当なら今ごろ知人たちに自慢のメールを送信しまくっているはずだったのに……と半泣き。
ふとモデムを見るとランプが1つ点滅しつづけていた。「LINE LINK」と書いてある。
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レンタルのADSLモデム。リンク確立を示すLINE LINKが点滅状態だった
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気を取り直してマニュアルを引っ張り出し、トラブルシューティングページを開くとADSLのラインとモデムの間でリンクが確立せずだよおまいさん!! というサインらしい。念のため知人に聞いてみたところ、やはり回線そのものが繋がっていないのではないかという答えが返ってきた。ふふーん、これじゃぁ何をどうしたって繋がらないわね。っつーか、もうあたしにできることはサポートに電話することしかないってことだ。
しかしこのランプのサインの意味を早くから知っていれば余計な手間が省けたのにー! と悔しさ200%。マニュアルは使い方を見ておくことも重要だが、先にトラブルシューティングページに目を通しておくべきであった。
そしてサポートに電話しあれこれ状況を説明したところ、確かにADSLが使えない状態を表わしているが調査の結果回線そのものに異常は見られないという答えが返ってきて、事態は再び振り出しに。どうすることもできないので翌日人を派遣してもらって直接調べてもらう約束を取り付けた。そんなわけで夢の開通日は本当に夢で終わってしまったのであった。
■原因はこんなところに
翌日NTT-MEから担当の方が2名(おじさんとお兄さん)来て下さり、1つ1つチェック。部屋の中の機器に異常はなし。でも相変わらずモデムの「LINE LINK」は点滅を続ける。建物のMDF(Main Distribution Frame:主配線盤)を確認してくださった方が1つの発見をした。回線がKDDIのマンションアダプタを通っていたのである。そうだった。この建物にはα-LCRのためにKDDIのマンションアダプタなるものがついており、入居時に加入させられていたのだ。
試しに外してもらったところ、ほんとうにあっさりと嘘のように繋がったのであった。「繋がったんですね!!」共通の敵に立ち向かうチームのごとき連帯感が生まれつつあった3名の表情に安堵感みなぎりまくり!! (ちなみに筆者は見てただけ)
お兄さんの方が自分のノートPCで計測したところ、フレッツ接続ツールを使った接続で700kbpsくらいの速度が出ていた。
「完全に大丈夫そうですね」そう言ったお兄さんがとてもまぶしくステキに見えてしまった筆者は「お嬢さん、敵はやっつけました。もう大丈夫ですよ」と言われてるような気がして危うくホレかけた。まさに「釣り橋効果」といえよう。マンションアダプタの対処をしてくださったのはおじさんのほうだったのだが。
頼れる2人の勇者が去ったあと、イーーーーーーーヤッホゥ! 繋がっちゃったもんねー! とすかさず間にルータをかまし、家庭内LANの設定を完了し、飽きるほどスピードテストを堪能した後、知人たちに自慢のメールを垂れ流した。いよいよ待ちに待ったブロードバンドライフ、スタートである。
■LINE LINK点滅地獄 再び
開通後数カ月は何事もなく使えていたのだが、あるときからまた「LINE LINK点滅地獄」を味わうことになった。開通時には最初から点滅しつづけて全く接続できなかったのだが、今回のトラブルは違っていた。1日に4~5回、突然点滅を始め切断されるのだ。一度点滅を始めると小一時間くらいはまるで使い物にならなくなった。一瞬接続が確立することもあるのだが、すぐまた切断されてしまう。断続的に2時間くらい不安定な時間ができたかと思えば復活する……そんな日が数日続いたかと思えば、しばらく問題なく使えるようになる。そんなことを繰り返すようになった。
んん? メールが送信できない? と思ってモデムを見ると点滅しやがっているのだ。ファイル転送中に切断されることもあるからたまらない!! 点滅を見ない日はなくなり、仕事に支障を来たすようになった。きっとこれは近所の人が最近ISDNにしたせいで激しく激しくノイズの影響を受け始めたに違いない!! コノヤロー! と勝手な妄想で怒っていた。ノイズが原因ならノイズ対策じゃ! とフェライトコアをつけてみたり、ノイズフィルタを入れてみたりしたが改善せず。気がつけば速度まで低下するありさま。ひどいときは200kbps以下まで低下したこともあった。どこか混んでいるのか、何かが悪いのか。あれこれ検索して知ったMTUとRWINという2つのキーワードでPC設定チューニングまでチャレンジしたが改善せず。
さらに困ったのは通話中のノイズが激しくなったことだ。それまでも通話中の多少のノイズは気になってはいたが許容範囲であった。しかしそのときは違った。ズズズズザザザーガガガガガーという激しい雑音で相手の話が聞こえなくなることすらあったのだ。ADSLが使えないだけでなく、通話回線としても機能しなくなってきたのだからたまらない。
■やっぱりソレか…
わーん! 誰かなんとかしてくれよーと再び故障係に泣きを入れた。通話中のノイズに関しては窓口の方でも明らかにわかるほどひどかったため、すぐ担当者を派遣してくださった。今度はおじさまが2人きてくださって、端から考えられる点をチェック。そして最後に例のMDFを開いたおじさんが教えてくれた。「アダプタ通ってましたよ」
ああー思い出した。最初に来てもらったときは試験的に回線を外してもらっただけなので、マンションアダプタに関する契約についてはこちらで正式に対処したほうがよいとアドバイスをいただいていたのだ。でも開通したうれしさで驚喜しているうちその重要なアドバイスはすっかり頭の中から消えていたのだ。おまけにその後マイラインの契約だなんだで解約せずほっといても回線の選択はマイラインのほうになるだろうから大丈夫だと勝手に信じ込んでいたのだ。だからウカウカしているうちに元に戻されたに違いない。さらに新たな事実発覚! その建物の中でアダプタを使っているのはうちの回線のほかに1本だけだというのだ。てっきりその建物の住人は全員参加だと思っていたのでかなりショックであった。
再びアダプタから取り外してもらったら案の定すっかりさっぱりトラブル解決!! 今回はショックが重なったせいで助けてくれたおじさまにホレかけることなく別れを告げた。直後、すかさずKDDIに電話してα-LCRのサービスの解約を申し出たことはいうまでもない。それ以後LINE LINKが点滅することはなくなった。帰り際におじさまの1人はおっしゃった。「フレッツADSLの場合はサービスのすべてがNTTで統一されていないとつながりませんねー」
決して某社サービスを否定しているわけではないが、致し方ないのだ。ノイズで通話もできなくなっちゃったんだもん。これからフレッツADSLを導入しようとしている方がいらしたら肝に銘じていただいたほうがいいかもしれない。
■今はケッコー幸せ。
かくして2度の大騒ぎの末にようやく安定した我が家のADSLは、もうすぐ丸1年を迎えようとしている。新聞記事を読み、テレビの時間を確認し、音楽を聴き、映像を楽しみ、買い物をし、オークションに参加したり、メールでコミュニケーションをはかったり……、趣味に仕事にと休むことなく大活躍で、筆者にとってのライフラインといっても過言ではない。もっと速くなるのならチャレンジしてみたい気もする。でも線路距離長が3kmを超えているので、これから8Mにトライする勇気はさすがにないかも。
■参考データ
居住地区 | 東京都渋谷区 |
線路距離長 | 3480m |
伝送損失 | 48dB |
ADSL事業者 | NTT東日本「フレッツ・ADSL 1.5M」 |
プロバイダ | IIJ4U、ASAHI-NET |
スループット | 680kbps |
(2002/06/6)
□フレッツ・ADSLサービス情報(NTT東日本)
http://www.ntt-east.co.jp/flets/
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