まだワープロ全盛期だった15年前、母親が東芝Rupo用のモデムを買ってきたところからわが家の通信環境は始まった。たしか速度は1.2kbps(1200bps)くらい。ログを落としながら画面で全部読める(ほど遅い)時代だったが、それでもデータが通信で送れるということに衝撃を受けた。それから十数年、コンスタントに通信を使い続けてきたものの、実は常時接続にしたのはつい最近、2001年4月のこと。
常時接続にしなかった理由は簡単で、「ダイヤルアップで十分」だったから。通信で送っていたのはおもにWordのファイルでめったに1MBを超えることはなく、28.8kbpsのモデムを導入したあたりで十分だと思うようになっていたのだ。
当時仕事では毎日インターネットを使っていたものの、会社の通信環境が完璧だったのでそれに頼りきり。また個人的にはPDAやケータイに夢中だったため、PHSの64kbpsのほうが魅力的に見え、ISDNには完全に乗り遅れる結果となった。
■回線は信頼性でフレッツ・ADSLに
ところが2001年に会社を辞めると同時に、会社の通信環境に頼りきっていたインターネット環境を当然のことながら見直す必要に迫られた。何年間もほったらかしにしていた自宅の通信環境の再構築はエラく大変で、回線の選択、プロバイダー選び、メールアドレスの整理と検討する項目が多くてまるでパズル。
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NTT東日本からレンタルしている「ADSLモデム-MN」と知人から買った4ポートのブロードバンドルータ「LINKSYS BEFSR41」。知人からは設定サービス付きの約束で買ったけれど、簡単だったので自分でできた |
「とりあえずは回線を決めなければ……」と以前から検討していた地元のCATVをチェックしてみると、エリア内ではあるものの初期投資が6万円近く必要で却下。どうせ初期投資が必要なら、とNTT東日本のBフレッツやUSENを検討するも残念ながらエリア外。無線インターネットも同じくエリア外。アッカとイー・アクセスは周りの人に聞いた限りでは、聞いた人たちがたまたまそうだったということかもしれないが(なにしろ環境による個人差が大きいので)、安定性がいまひとつだという……。ということで、少々割高ではあったものの結局はNTT東日本の「フレッツ・ADSL 1.5Mプラン」に決定。
ブロードバンドルータやLANカードは無線LANでまとめたいところだが、セットで揃えるとなると当時は5万以上必要で高くて手が出ない。最終的にはADSLモデムはレンタルし、知り合いが「回線業者が対応していなかった」ために余らせていたブロードバンドルータを安く譲ってもらうことにした。
筆者がADSLを申し込んだ2001年4月末は、2000年末から始まったフレッツ・ADSLの申し込みがひと段落しつつ、横浜など一部の地域ではADSLモデムが足らずに順番待ちしている人も多かった時期。しかし地元の局は混雑もなく、2001年4月末に申し込んで5月中旬には工事というスピード開通。皮肉にもISDNに乗り遅れたおかげで電話番号の変更などの面倒もなしという結果に。実測値も1.1Mbpsほど出て、「400kbpsしか出ない」という知り合いに比べればスピードも申し分なく、自宅の常時接続化は大成功といえた。
■上りの速度に耐えられず8Mbps化
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作業データの置き場所として使っている、sony styleのディスクストレージサービス「Webpocket」。デジカメ写真の場合サムネイルも表示できて一覧性も高い |
2002年に入ってから自宅と仕事先の事務所を行き来する生活を始め、しばらくはCD-Rに必要なデータだけを焼いていたが、これが思ったより苦痛。どこからでもアクセスできるネット上のストレージにバックアップできないかと探したところ、WebPocket(http://www.webpocket.net/)を発見。月1000円で15GBまで自由に使えるサービスで、これを使い出してからデータ共有も一気に楽になった。
データ共有が楽になるのと反比例するように気になりだしたのが、上りの転送速度。なにしろネットストレージは15GBもあるし、数十MBのファイルをばんばんアップロードするようになったのだが、ダイヤルアップと違って転送速度が“上下非対称”であることを「アップロードの遅さ」で実感するようになったのだ。
そこで、月額200円の差ならせめて上りを1Mbpsにしたいと思って「フレッツ・ADSL 8Mプラン」にアップグレード。2002年の3月上旬に申し込み、約1カ月後に工事完了。またもやあっさりと工事は終わり、実測値は下りで2.7Mbps、上りもコンスタントに800kbps以上出るようになった。
■家族で使うならブロードバンドルータのポート数に注意
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ポートが足りなくなって買い足したcorega HUB5PM。実質4ポート追加されて空きポートもできたので、しばらくは安心 |
回線がある程度落ち着くと、今度はブロードバンドルータのポート不足が問題に。入手した当初は4ポートで十分だと思ったのに、これが大間違い。最初は自分のPCとMacintoshだけだったのが、両親のPCがつながり、PlayStation 2がつながり、最後にはとうとうおじいちゃんまでがパソコンを始めたいと言い出し、あっという間にポートが足りない状態に。
結局、5ポートのHUBを買い足し、合計8ポートで使用している。買い足した額がもったいないというより、家族がインターネットを始めるのを予測して、最初から8ポートあるルータを購入しておくべきだったと自分の先見性のなさに少々ヘコんでしまった。
■プロバイダーの乗り換えは回線以上に困難
話は戻るが、実は回線の選択以上に悩んだのがプロバイダーだ。ほかのプロバイダーと比較するためにカード引き落としの明細を見直してびっくり。月々1000円程度のコースのはずなのに、3000円近くの請求が。そんなに使っているはずがないのになぜ? と思って調べてみると、なんと母親がバリバリインターネットを使っていた……。
知らないうちに母親は筆者の回線を使ってインターネット使いになっており、ワープロしか使っていなかった母親の短期間での進歩には感心したものの、数カ月間高いプロバイダ代を払っていたとはかなり不覚。痛い勉強代となった。
安いプロバイダーに乗り換えてフレッツ・ADSLに組み合わせる予定であることを説明したところ、母親がすでに@niftyにホームページを作って仕事でも使っているとのこと。ポストペットで@niftyのアドレスも使っていて「もうモモのアドレス入りスタンプも作ったので変更したくない」と言われてがっくり。スタンプまで作ったんじゃ仕方あるまい! と、あきらめて@niftyをADSL接続対応の「無制限コース」に変更することに。@niftyのオプションでもうひとつアドレスを取る方法もあったのだけれど、一応複数の接続環境を残して置いた方が良かろうということもあり、私のメールアドレスは以前から使っていたOCNのものを残すことにした。
■今後の課題はサポートフリーとコストダウン
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設置したときに一度やってからは、すっかり忘れていたファームウェアのアップグレード。最近よくインターネットにつながらなくなって、やっと思い出した。アップデートをかけてからは安定している
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前述のとおり、ADSL化してからダウンロードの速度に不満を持ったことはほとんどない。メールやWebブラウズがメインという自分の使い方がそれほど速さを必要としていない事もあるが、1.5Mbpsのまま変更せずに使い続けてもダウンロードだけならストレスは感じなかったのではないかと思う。
それよりも、月に何度かインターネットに接続できなくなる現象のほうが問題だ。ブロードバンドルータやADSLモデムをリセットすればたいてい正常に戻るのだが、筆者が外出中だったりすると「インターネットが使えないんだけど!」と家族からクレームの電話がかかってきて、リセット方法を伝えるだけで一苦労。ブロードバンドルータのファームウェアをアップデートしたあとは落ち着いたものの、やはり何の知識もない利用者がトラブルなく使いこなすのはまだまだ難しいと、痛感させられている。
そんなわけで目下の悩みは、ADSL回線は筆者の持つ回線でありこれを一家で共用しているため、今後自分が実家を出るとき、メンテナンスのために実家に呼び戻されない安定した環境をいかにコストをかけずに作れるかということ。PCと違って、自分の都合だけで決められない回線環境は、想像もしてなかった理由で決定が覆ったりするもの。しばらくは、家族にリサーチを続けつつ、ぴったりなサービスが出てくるのを待ちたいと思っている。
■参考データ
居住地区 | 東京都大田区 |
線路距離長 | 1880m |
伝送損失 | 26dB |
ADSL事業者 | NTT東日本「フレッツ・ADSL 8M」 |
プロバイダ | @nifty、OCN |
スループット | 約2.7Mbps |
(2002/06/13)
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