■局舎との間の川に泣く
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ただでさえ遠い局舎との距離をさらに広げた近所の「新川」 |
ADSLという言葉が巷に広まり始めたころ、私はいまだISDN+テレホーダイという環境でインターネットにアクセスしていた。フレッツ・ISDNですら対応地域でない地元では、まだまだブロードバンドなんていう話は先のことだったのである。
私が住んでいる千葉県の某市では、NTTのADSLサービスはもちろん始まっていなかった。Yahoo!BBのサービスが開始された時点でも、まだサービスエリア外。船橋市や千葉市と隣り合ったところで、もうあとちょっとのところまで来てるのになぁって感じで、悔しい思いをしたものである。
私は自分で趣味のホームページを開設しており、そこでチャットルームを設けたりして、夜な夜な仲間とネットで語り合ったりするのが習慣だった。そんな中、気になるのが電話料金。俗にテレホタイムといわれている23時~8時にチャットをするとなると、どうしても寝る時間が削られる。他にも自分の仲間のサイトを回ったり、メールを書いたり、自分のサイトの更新をしたりと色々やってると、テレホタイム以外にもどうしても繋いでしまうのだが、この料金が結構馬鹿にならなかったのである。
だが、待ちに待った甲斐もあり、ついに我が市もフレッツ・ADSLのサービスエリア内となる日がやってきた。すわ申込を! と思いきや、よくよく調べてみると……。まず、自分の家が局舎からかなり遠いことに気が付いたのである。ADSLサービスで十分なスピードが出るのは局舎から2km以内といわれているが、局舎から家までは直線距離でも2km以上ある上に、さらに「川」を越えなければならないのだ。橋まで迂回すると確実に遠回りで、どう考えてもスピードは期待できなさそうだった。さらにはISDN導入の際に変更させられた電話番号がまた変わるとのこと。各種届出や知人・友人への告知をまたやり直さなければならないと思うと頭が痛い……。ということで、やっと常時接続環境が作れる環境になったのに、気持ちが萎えてしまったのである。
■CATVのインターネット接続サービス開始で一気に問題解決
話は変わるが、私は特撮やSFモノの映画の大ファンで、前述の自分のホームページも、その手の話題を中心に扱っている。そんな私が、番組を視聴したくて地元のCATV局「やちよわいわいテレビ」に加入したのはサービス開始と同時。最も早くから加入していたユーザーのひとりだったと思う。だが、先発でしかも第3セクターの運営会社ゆえ、他の自治体にあるCATV会社が続々とインターネット接続サービスを始めている中でも、地元のCATV局はなかなかサービスを開始してくれない。
一方でADSLは先に述べたような理由で導入に踏み切れない。八方ふさがりの中、2000年夏、ついにCATVインターネット接続サービスが開始されることとなったのである。既加入者には初期工事費用の割引もあるし、何といっても月額固定で常時接続ができる。さらには、NTTの回線を使わないので電話番号の変更がないし、CATVなら距離的なデメリットもない。もう近所の新川を恨む必要もないわけだ。
ということで、すぐに申し込んでじっと待つこと2週間。インターネット用の工事が入った。今までの映像信号を送っているケーブルをそのまま利用するのだが、受け側で映像用の信号とインターネット用の信号を分配するための機器、分配器を新たに設置しなければいけないとのことだった。
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外の電線からこのようにケーブルが引き込まれている。左のケーブルが、CATV、右が電話。壁に取り付けた分配器から、映像のケーブルとネット用ケーブルに分配されている |
すぐ目の前の電柱から引かれているケーブルは、家の壁に取り付けられたその分配器の中に。そこからPCがある部屋へはネットのケーブル、そしてテレビのある部屋へは映像用のケーブルが配線される。屋内にはケーブルモデムを設置。このコネクタにケーブルを繋ぐところまでは、工事に来てくれた業者がやってくれる。こちらでやることは、このモデムのLANコネクタにケーブルを差し込むだけだ。これで高速インターネット環境ができあがりなのである。会社を半休して工事に立ち会った私はそこまで確認して出勤したのだが、この後、工事業者がなにやら配線を間違えたらしく、結局映像信号がきていなかったらしい。家人が慌ててCATV会社に電話して、取り付け工事を再度行なってもらい、やっと工事が完了した。
■常時接続チャットで結局寝不足ぎみ
当初は下り2Mbps、上り512kbpsのサービスながら、ISDNとの速度差、そして何といっても常時接続であるという大きなメリットを享受することとなったのだ。とにかく、電話代を気にせずにいつインターネットに繋いでもOKというのは大きなメリットだ。テレホタイム以外でも繋ぎっぱなしにできる開放感は、そりゃあ大きいもの。これがCATVインターネットに乗り換えて感じた最大のメリットかもしれない。インターネットが本当に身近のものになったのだという実感を得ることとなったのだ。
おかげで、テレホタイムを待たずに、夜な夜なチャットやら、掲示板の書き込みやらと、結局寝る時間が少なくなってしまったのも事実である。
■いつの間にやらJ-COMに
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CATVはISDN回線とは完全に独立している。CATV回線を使った格安電話の「J-COM Phone」を使う手もあるが、ダイヤルインでFAXと番号をわけているし、あまり一般電話自体使わないのでしばらくはこのまま使う予定 |
と、そんな折、第3セクターのCATV会社がなぜかJ-COMの傘下に入ることとなってしまった。経営上の問題なのか、詳しいことはわからない。とにかくそれに伴って、CATVサービスも含めたサービス内容および料金がJ-COMのものに合わせる形となった。よって速度が下り8Mbps、上り2Mbpsとさらに快適な環境になったのである。とはいえ、若干料金が高くなったのは残念なことだが……。
さて、さすがに8Mbpsとなると、ダウンロードも以前より当然快適である。最近はソフトのバージョンアッププログラムも大きくなっているが、気にならないほど短時間で落とせる。ダウンロード状況を示すグラフが、右側にすーっと伸びていくのを見るのは気持ちよいものだ。
また、上りが2Mbpsになったのも、私のようにホームページを開設しているものにとってはうれしい。たくさんのHTMLや画像などをアップするのに、やはりこれまでとは違う快適さなのだ。普通にネットサーフィンや掲示板への書き込み程度では、上りのスピードについてはあまり気にならないかもしれないが、やはり頻繁にアップロードするよなケースでは大きな違いを感じるモノである。
以下、測定サイトでの結果である。ベストエフォートで8Mbpsのサービスなので、なかなかのスピードが出ていると思う。
【参考:BNRスピードテスト】
ダウンロード速度 |
WebARENA | 4285.731kbps(4.285Mbps) 547.37KB/sec |
PLALA | 4249.482kbps(4.249Mbps) 544.16KB/sec |
3.ASAHI-Net | 4493.766kbps(4.493Mbps) 575.1KB/sec |
推定転送速度 | 4493.766kbps(4.493Mbps) 575.1KB/sec |
アップロード速度 |
データ転送速度 | 1.64Mbps (205.05KB/sec) |
転送データ容量 | 600KB |
転送時間 | 2.926秒 |
測定サイト:BNRスピードテスト 回線速度計測ページ
URL: http://www.musen-lan.com/speed/
■ルーター接続で家庭内LANからのアクセス
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ケーブルモデムは、東芝のPCX1100という機種。隣はルーター。上には馬鹿ハブがあって、ここからノートPCに繋ぐこともある |
我が家では自分のメインPCのほかに、妻のPC、それとメインPCで重たい処理などをさせている時に使用するサブPCがある。これら全てのPCからネットに接続するには、もちろんLANということになる。ISDN時代はダイアルアップルーターの定番、MN128 SOHOシリーズを利用していた。しかし、CATVでLAN接続となると、当然ルーターが必要となる。で、私は、これまた定番ブロードバンド対応ルーターであるLYNKSYSのBEFSR41を利用している。4ポートハブでもあるので、全てのPCをぶら下げることができるし、何よりセキュリティ的にも安心である。
よくCATVインターネットは外部からの侵入を受けやすいと、セキュリティ面での問題が指摘される。事実、そういうことが良くあるようだし、ケーブルモデムの下に直接PCをぶら下げるというのは、どうもパンツをはかないで窓を開けてるみたいで精神衛生上気持ちが悪い。
しかしながら、ルーターを間にかませることによって外部からの侵入を阻止し、LAN環境でブロードバンドインターネットが自由に使えるようになるという、まさにブロードバンド時代の必需品である。
実際の設定も、非常に簡単だった。特にこれといって、難しい設定をしたわけでなく、ほとんどデフォルトでOKだった。注意しなければならないのは、CATV会社によっては、複数のPCからのアクセスについては別料金が発生したり、ルーターの接続を認めていないところもあるという点。このあたりはきちんとクリアした上で、ルーターを使用しなければならない。私が加入しているJ-COMでは、使用届け出をして設定を行なえば、ルーターが利用できる。
■やっぱいいっす
音楽や映画も楽しみたい、インターネットも快適に、というニーズに応えてくれるのは、やはりCATVということになるだろうか。ブロードバンド動画有料コンテンツの配信も始まっているが、今のところまだ欲しいコンテンツはない。しかし、今後は東映が特撮ものの配信をやるそうなので、買ってしまうかもしれない。
ADSLサービスエリア内だが局舎からの距離が遠いというケースでも、私のようにCATVなら使えることもあるだろう。料金面では、安価なADSLサービスに負けるが、安定性などを考えると、やはりCATVはオススメである。
■参考データ
居住地区 | 千葉県八千代市 |
線路距離長 | 非公開 |
伝送損失 | 非公開 |
接続事業者 | J-COM Broadband YY八千代 |
プロバイダ | J-COM Broadband YY八千代 |
スループット | 最大4.5Mbps |
(2002/07/11)
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