■月額6万円近くの専用線を導入
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専用線導入当初から使用しているYAMAHA RTA50i。ハードウエアトラブルは一度もなく、使いやすいISDNルータだ |
システムエンジニアを生業にしようと思い立ってはや16年。当時福島の片田舎の工業高校生だった筆者がいじっていたのは、紙テープや紙カードによるプログラムで動作する大型汎用コンピュータだった。「最先端をもっと知りたい!」と思い立って上京し、某専門学校で知ったのがUNIXとTCP/IPネットワークだったのだ。
時は流れ、当初志したSEではなく、どこかで間違えてフリーで動く何でも屋になった筆者の自宅には、早い時期から専用線を導入していた。
今から4年ほど前、知り合いの某編プロで使用していた専用線を譲り受けるチャンスを得た。当時月額4万円ほどだった128kbpsの専用線だ。その編プロ社長によると、月2万円の請求が来てイヤになり導入したが、やはりインフラへ4万円もの投資をした場合、投資を回収するだけのメリットが得られないと判断し、ダイヤルアップ環境に戻すと言う。
譲り受ける専用線の月額約4万円という値段は決して安くはなかったが、グローバルIPがついて常時接続なら! と移行手続きを進めた。しかし、なんと筆者が住んでいるマンションがサービスエリア外だったため、結局月額6万円近く払うことになってしまった。当時個人が払うインフラ代としてはきわめて高いものであった。しかし、世の中がISDNテレホーダイで64kbpsつなぎ放題というトレンドの中で、時間を気にせず、ISDNダイヤルアップの約2倍の帯域でのスピードと優越感を得るためと割り切って利用していた。
■価格は1/10、スピードは10倍以上のADSLが普及
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知り合いにサーバーサービスを提供しているマシン達。この他にも4台ほどあり、これだけの台数を動かしていると夏場はクーラーかけっぱなし。電気代が…… |
専用線の魅力はグローバルIPが使えることと常時接続である点で、これにより実験的なドメイン運用も自由にできる。このNOC(Network Operations Center)の機能が手元にあるのとないのとでは、職業上結構利便性が変わってくるのだ。
導入後はこのグローバルIPを活かして、自宅でインターネットサーバー運用をはじめた。基本的に知り合いにのみ安価なサーバーサービスを提供しており、「落ちたらごめんね」レベルの運用しかしていないが、大きなトラブルは、今のところマンションと局の間の回線不良により通信不能になった1回のみ。トラブルもなく快適ではあった。
しかし、いつの間にか世の中にはADSLが普及し、当初からは多少下がったものの、いまだ月額5万5千円という自分が払っている回線代の1/10で10倍以上の帯域が使えるようになっていた。
ちょっと前までは、ネットワークエンジニアにとって、「いつかはT1(1.5M)回線を!」と言うのが夢だったのに、いまやみんなパソコンを買えばいきなり1.5Mの帯域でネットに接続できるなんでうらやましい話だなぁ。と思いつつ、さてうちはどのくらいのスピードが出てるのかな? とチェックしてみた。
【参考:BNRスピードテスト】
ダウンロード速度 |
WebARENA | 117.181kbps(0.117Mbps) 14.99KB/sec |
PLALA | 116.316kbps(0.116Mbps) 14.88KB/sec |
3.ASAHI-Net | 114.223kbps(0.114Mbps) 14.67KB/sec |
推定転送速度 | 117.181kbps(0.117Mbps) 14.99KB/sec |
アップロード速度 |
データ転送速度 | 121.35kbps (15.16KB/sec) |
転送データ容量 | 200KB |
転送時間 | 13.184秒 |
測定サイト:BNRスピードテスト 回線速度計測ページ
URL: http://www.musen-lan.com/speed/
おぉ、すごい! 128kを使い切っている。さすがADSLと違うデジタル回線だ!……って、ADSLに比べたら全くお話になりません……。この計測結果だって、サービスしているサーバーへのアクセスがないことを見計らってから計測したものだから、うちにあるいずれかのサーバーにアクセスが集中してたらこんな数字全く出ません。そんなわけで、そろそろ自分が世の中の動きに取り残されたことを実感。回線の帯域を増やす検討を始めた。
■「住宅供給公社」の壁にぶつかる
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筆者の住む賃貸マンション。きれいで住みやすいマンションなのだが、穴開けなどの工事が必要な光ケーブルを引き込もうとすると手間がかかる |
回線は、まがりなりにもサーバーサービスを提供している都合上、不安定な回線は避けたかったのと、移行には手間がかかることを考え、この先頻繁に回線の移行を行なわなくてもよいように、一気に光を入れることに決定した。Bフレッツのサービスで言うところの「ベーシックタイプ」だ。ISPは付き合いも長く、回線品質的にも不満のないKDDIをそのまま利用し、「イーサエコノミー」というサービスに決めた。これなら、現在支払っている回線代とほぼ変わらない上、ベストエフォートとはいえ100Mの回線が手に入る。まずはBフレッツを開通させなければならないので、早速NTT東日本のホームページから申し込みを行なった。
さぁこれから光が来るんだなという期待に胸を膨らませていたところ、いきなり壁にぶつかった。申し込んでから3日後、NTTから申込み確認電話が入り、「現地調査のため、お客様のマンションの管理会社に立ち会いを依頼してください」と指示を受けた。
筆者が住んでいるのは、都民住宅のマンションで、いわゆる公営住宅。建物自体は住宅供給公社が民間のオーナーから借り受けて提供しており、管理会社は住宅供給公社となる。と、いうことで早速管理会社に電話した。
「NTTが提供しているBフレッツというインターネット接続サービスに申し込んだところ、現地調査に管理会社の立ち会いを求められましたので、協力していただきたいのですが」
「ではですね、オーナーさんの許可がいりますので、オーナーさんに許可を取ってもらえますか?」
「えっとですね、建物にどんな変更を加えなくちゃならないのかの調査ですから、それが終わらないと、オーナーさんに説明できないんで、まずNTTの事前調査のための立ち会いをお願いしてるんですけど」
「ですが、オーナーさんの資産ですから許可がないとだめですよ」
「ですから……」
(以後繰り返し)
もしかしたらとは思ったが、堂々のお役所仕事。相手の言うこともわかるのだが、筆者が契約している相手は、住宅供給公社であり、オーナーとは面識もなければ契約上の店子でもないのだ。結局オーナーと直接交渉ができないため、担当者と話をしても一向に進む気配がない。結局、供給公社からNTTとオーナーへ連絡をしてもらう約束を取り付けた。
■マンションタイプとの勘違い
その後、供給公社より連絡があり、話の進展に期待しつつ電話に出る。
「NTTさんに連絡しまして、NTTさんの方からオーナーさんへ、他の居住者から同じような要請が出ているかを確認してもらうことになりました。NTTさんも採算を考えなきゃならないとのことでしたから」
うぉー、マンション内で複数の申込みがないと引けないというのは、マンションタイプの申込みの場合です~!! 話が進んだと思ったら、ちょっとベクトルがずれてしまったようだった。この話を元に戻すべく、NTTへ連絡し、管理会社が言っていることと、筆者が申し込んだ内容の差異にについての確認をしてもらう。すると、
「申し訳ないんですが、公営住宅へのBフレッツベーシックタイプの導入はできないんです」
ええ!申込み確認のときにはっきりと公営住宅である旨を告げているんですけど(泣)受付の人には手違いで間違った案内をしてしまったことを謝られたが、ホームページではっきりと表記するか、受付のときにちゃんと言ってくださいよNTTさん。
その後、マンションタイプで使用するための光ケーブルをMDF(Main Distribution Frame:集合住宅内の主配線盤)まで引き入れることに関しての許可が出たとのこと。とりあえずこれを使えばマンションタイプのBフレッツ導入が可能になる。グローバルIPでの運用はできるが、これは100Mをマンション内の加入者で共有する形のベストエフォートタイプ。ベーシックタイプ100M導入を期待していた筆者にとっては失望感が大きく、また実際の導入工事もいつになるか全く不明な状態に陥ってしまった。
■ADSLサービスへの不安
とりあえずこのまま変化があるまで放置しようかとも思ったが、やはり広帯域の回線があきらめきれない。
光導入に関しては、回線引き込み問題に真っ向からぶつかってしまった。では、光がだめならばメタル線での広帯域接続サービスに頼るしかなかろう、ということで、いくつかのサービスを比較した結果、NTT東日本のフレッツ・ADSLを利用したKDDIのBusiness-DSLエコノミーがよいのではないかと考えた。
一応サーバーサービスをしている都合上、回線品質はなるべくよいものを使いたい。しかし、いろいろなADSLに関する情報をみていると、モデムのトラブルやノイズの問題などで、思った速度が出ないとか、接続そのものができないとか、トラブルばかりが目に付く。まぁ、よくない情報ほど目立つので、あまり気にすることもないかなとも思ったがとりあえず気になる部分をリストアップしてみた。
・局との距離は直線で約1km
・マンションと局の間には大きな幹線道路がある
・仕事柄家の中はPCや電化製品であふれている
・現在の専用線はもちろん、電話もISDNだ
・家のモジュラージャックはもう空きがない
局との距離が1kmというのは結構幸せな状態かもしれないが、その他は減衰する原因そのものだったり、そもそも新しく回線が入れられるかどうかわからないという根本問題だったりするのが気になる。
単純にインターネットに接続できる環境だけであればこんなに悩まないのだが、知り合いとはいえ、利用者がいるインフラのサービスを簡単にやめるわけには行かず、どうしてもグローバルIPを安定した回線で使いたいという事情が足を引っ張っている。筆者の住んでいる都内がどんなに光回線の普及率が高くても、建物内に引き込めなければ意味がない。昔は快適なインターネット接続環境を手に入れるためには都内が一番だったはずなのに、いつのまにか八街在住の知り合いにまで遅れをとってしまい、くやしい限りだ。
解決策として、とりあえずタイプ2で前述のADSL回線を入れて実験してみるつもりだが、あまりに悔しいので、一気に解決するべく穴あけOKな田舎の一軒家にでも引っ越そうかなぁ、とも考えはじめている。
■参考データ(デジタル128k専用線)
居住地区 | 東京都世田谷区 |
線路距離長 | 直線で約1km |
伝送損失 | 非公開 |
接続事業者 | NTT東日本(DA128) |
プロバイダ | DION |
スループット | 128kbps |
(2002/07/11)
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