■フレッツ・ISDNで常時接続に感動
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ダイヤルアップ時代に活躍してくれたヤマハのリモートルータ「RT80i」
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一眼レフのデジタルカメラで取材風景を撮影し、待ち時間にPowerBookで撮影画像をCD-Rに焼いてその場で納品する――。カメラで飯を食べているのに現像所に日参しなくなって、もう1年が経つ。当時プロの間では様子見されていたデジタルカメラで仕事をするのにさほど抵抗を感じなかったのも、やはり昔からネットに接続していたおかげだと思う。
PC-VANのBBSに始まり、NIFTY-SERVE(現@Nifty)、インターネット接続と、我が家の接続環境は4年間アナログのダイヤルアップだった。当時はメールやメーリングリスト、ホームページのブラウズに使っていたが、時間帯は昼間が多かったのでテレホーダイは利用していなかった。そのため、なんとなく電話代が気になってそれほどは使わず、月額の利用料金は7~8千円程度ですんでいた。
しかし、そうこうするうちISDNが登場し、我が家は番号変更なしで切り替えられるとわかって、アナログから変更。家族が使うようになってルータを導入したときには、その便利さに感動したものだ。そして、ISDNを使い始めて2年ほどして、自宅がフレッツ・ISDNのエリアに入り、常時接続になったところで一気に使い方が変わった。常時接続になって、仕事で行っていたDTPの印刷データのやりとりが、オンラインでもかろうじてできるようになり、ダウンロードだけでなくアップロードも頻繁に行なうようになってきた。
■再開発予定地の落とし穴
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引っ越した先のマンションは「再開発予定地」の中だった
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フレッツ・ISDNで常時接続の便利さを知ったころ、東京都の稲城市から神奈川県の川崎市に引越すことになった。引っ越し先は小田急線沿線の再開発予定地。再開発予定地だけにむやみに手がだせず、結果的にインフラの整備が後回しになるというのはよくある話だが、そこがまさにその状況だった。引越しを機会にそろそろADSLを……と思ったのが、そのエリアだけぽっかり対応地域から抜けていたのだ。仕方なく、そのままフレッツ・ISDNを入れることにした。
「どこでもいいから早く開局しないかなぁ」と首を長くして待つこと1年。やっとイー・アクセス1.5Mbpsのサービスエリアになるというリリースが出た。調べてみると、アナログに戻すのに番号が変わるというのでかなり悩んだけれど、自宅だったので思い切って変更。開局の一カ月前から申し込みが開始されたが、これに速攻で申し込み。サービス開始から一週間ちょっとでスムーズに開通した。接続速度も1.2~1.3Mbps出て、ISDNとのスピードの差に感動。自分としては、フレッツ・ISDNの常時接続化のとき以来の満足感だった。
■8Mbpsサービスへの変更で問題発生
1.5Mbpsが開通して半年後、こんどは我が家が8Mbpsのエリアに入るというリリースが出た。ISDNからADSLになったときの感動を再び味わえるかとワクワク。8Mbps化は、当時ではまだ仲間内でちょっとした優越感を味わえるスピードだったこともあって迷わず申し込んだ。今なら「光」な人が味わえる優越感のようなものかもしれない。
何の問題もなく申し込みが完了し、モデムも開通数日前には予定通り届いた。モデムは1.5Mbpsとの共有タイプだったので、開始日前からモデムは変更しておいた。これで、ある日気がついたら8Mbpsになっていた、という理想的な移行が迎えられる……はずだったのに。
ところが、そうは問屋が卸さない。最初のうちは順調につながっているのに、回線が不安定になり切れてはつながりの繰り返しで、8Mbps→6Mbps→4Mbps→2Mbps→1Mbpsとだんだん遅くなって、最後には1Mbpsあたりで安定する。ずっと遅いのではなく、だんだん遅くなるあたりが納得いかない。モデムの電源を入れなおすと一時的に直るのだが、時間が経つにつれてやっぱりだんだん遅くなる、の繰り返し。
1.5Mbpsのときは快調だったのになぜそんな現象が起きるのかわからず、いろいろな原因を探り始めた。まず思いついたのは「モデムがハズレだったのでは」ということ。同じメーカーのパソコンにも個体差があるように、モデムにもきっとハズレがあるに違いない。
自分の事務所もイー・アクセスを導入していたため、同じモデムがあった。こちらは8Mbpsでも問題なく接続できていたので、このモデムなら大丈夫ではないかと思って取り替えてみる。すると、一週間ぐらいは順調に動いていたのだが、やはりまた遅くなってしまう。逆に、自宅から事務所に持っていた「ハズレ」のはずのモデムが事務所では快調に動いている。どうやらこれはモデムのせいではないらしい。そうなると、考えられるのはADSLの天敵、「ノイズ」しかない。
■ノイズ対策に積極投資
原因がノイズなら対策をしなくては……と思い立ち、自力で調整をはじめた。まずはアナログのノイズに強いシールド線を導入。電源タップもノイズ対策済みのものに交換した。ノイズが電話線に乗ることもあると聞いて、こちらにもノイズフィルタを導入。フェライトコアを合計で5~6個取り付けた。
LANケーブルも比較的ノイズに強いと言われているカテゴリー7のものにすべて交換し、ノイズフィルタも取り付けた。結局、これらのノイズ対策で、もう一台モデムが買えるほどの出費になってしまった。
工夫した甲斐あって、速度は改善前の1.2Mbpsから3Mbps程度まで上がったが、不安定さは残ったまま。「8Mbpsってこんなものかなぁ」となんとなくあきらめの気分になってきて、最後にダメもとでイーアクセスのサポートに電話してみた。「8Mbpsとはいっても環境によってはそのような現象が起こることもあります」と一蹴されると思っていたのだ。
しかし、ここから事態が好転する。サポートによると、当時その8Mbpsに変更する際送られてきたモデムの中でノイズに弱いというトラブルが他にあったらしく、「基準モデム」を送るのでそれでテストしてほしいとのこと。ただ、そのモデムは1.5Mbps用だという。「1.5Mbpsのときは問題なかったんですけど」と話しても、どうしても基準モデムでテストしてほしいといわれ、納得いかないまま言われるままテストをしてみた。テスト結果はもちろん問題なし。以前と同じ1.5Mbpsで安定してリンク接続できた。もちろんそうだろう。1.5Mbps契約のときは問題なく動いていたのだから。
テスト結果をサポートに連絡すると、今度は「宅内調査にうかがいます」という。予想外の丁寧な対応に好印象。とりあえず、宅内調査の日を待つことにした。
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ノイズフィルタを取り付けたカテゴリー7のLANケーブル
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モデム周りは、ノイズ対策に取り付けたグッズで山盛り
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■教訓:ノイズ対策はプロに相談しよう
スピードが出ないという相談でちゃんと調査にきてくれるんだなぁとちょっと感動しつつ当日の調査を見守った。ちょうど同じ時期、イー・アクセスはノイズ対策用のスプリッタを配布しており、我が家もホームページ上でもちろん申し込んだ。
最初は宅内のリンク速度を計り、次にマンションの住んでいる階の分配器をチェック。最後に大元の1階にある基盤もチェックし、調査は完了。調査の結果わかったのは、マンション内の伝送損失がとても大きいということだった。同じ階にISDNが3本入っており、それが干渉していることが原因らしい。これは、6~8Mbpsのエリアで拾っているノイズをカットすることで軽減できるらしく、リンク速度に6Mbpsの帯域制限をかけると解消できる可能性があるという。
言われるままに帯域制限をお願いし、一日様子を見てみると、本当に6Mbpsのフルリンク速度で安定している!! アップロードも800kbpsでフルリンクするようになった。
嬉しいと同時に、あれだけ投資してノイズ対策したのはなんだったんだという後悔の念も。無理して自力で解決を図る前に、一言サポートに相談すればよかった!
うまくサポートを受けるポイントは、トラブルを相談する際に、こちらのケータイの番号を伝えてコールバックをもらうようにすること。ケータイならチャンスを逃すこともない。プロバイダと回線事業者が別々の場合は特に効く。サポートへの電話がつながりにくいのは仕方ないとして、コールバックがもらえれば延々リダイヤルする必要もないし、直接回線事業者に説明ができて一石二鳥だ。
このコールバックがもらえないサポートだとまったく使えない手なのだが、イー・アクセスの場合は遅くとも翌日には電話がもらえ、スムーズにトラブル解決ができた。おかげでイー・アクセスから乗り換えようと思ったことはまだ一度もない。
イー・アクセスでは12Mbpsのサービス近く開始される予定だが、「速い回線に乗り換えればいいというわけではない」ということを今回学んだだけに、まだどうするかは決めていない。とりあえずサポートにいちばん最初に電話して相談することだけは間違いないだろう。
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イー・アクセスから配布されたノイズ対策されたスプリッタ
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配電盤を調べたところ、同じ階にISDNが3本引かれていることが判明
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■次は絶対光接続
普段データをアップロードしていると、アップロードとダウンロードの割合が自由に設定できたらいいのに、とつくづく思う。常時接続に慣れてくるにつれ、アップロード速度がほしくなってくる。たとえば合計4Mbpsの速度なら、2Mbpsづつに設定できたら楽になるのに、などと思ってしまう。
再開発予定地でADSLに出遅れた我が家だが、今ではBフレッツ、USEN、SpeedNetと光接続も数社から選べるほどインフラが一気に充実した。デジタルカメラの画像データやDTPの印刷データなど数十~数百MBをネットでやりとりすることを考えると、やはり上下対称の光接続は魅力。次に乗り換えるなら光接続しか考えられない。
しかし、ADSLとは違って自分が決心すればいいという問題ではない。全体で30戸のマンションに、光接続にしたい家族が8戸も集まるものだろうか……。とりあえず同じ階で干渉しているISDN3本分は可能性があるかもしれないから、我が家を入れてあと4戸は……などと皮算用してみても、これ以上はマンションの管理組合を巻き込まなければ話が進まない。インターネットの接続環境ひとつで、話が大きくなってしまう。
フレッツ・ISDNで常時接続に感動していたはずなのに、1.5Mbpsで十分速く感じたはずなのに、より速く、というスピードへの欲求は本当につきないものだ。光接続になっても、2秒が1秒になるという理由で将来回線を乗り換える時代がくるかもしれない。回線問題とスピードへの欲求の関係というのは、つくづく難しいものだ、と思う。
■参考データ
居住地区 | 神奈川県川崎市 |
線路距離長 | 1520m |
伝送損失 | 36dB |
接続事業者 | イー・アクセス |
プロバイダー | ASAHIネット |
スループット | 3.7Mbps |
(2002/08/22 取材・執筆:荒田淳子[ウインディ])
□イー・アクセス
http://www.eaccess.co.jp/
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