■1年縛りの恐怖
思い返せば1998年後半。インターネットが仕事にもなくてはならないようになってきた。ADSLどころかフレッツISDNもまだ現われず、ブロードバンドなんて言葉もなかったころ。ダイヤルアップ接続での電話料金が月2万円を超えたところでブチ切れた。多少高くとも、つなぎっぱなしのほうがはるかに精神衛生上いいはずだ、そのぶん仕事も快適になるだろう、と。そして専用線を入れることにした。
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微笑む小泉今日子。それにしても、なぜα-LCRなんだ?
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専用線にしようと決めても、次は事業者を選ばなくてはならない。回線をどうするかで頭を悩ませていた頃、たまたまDDIに取材に行くことがあった。取材のテーマは「モバイル用途向きプロバイダー」だったのだが、取材後、くつろいで話しているときについ口を滑らせてしまった。「小泉今日子のポスターをいただけるなら、DIONで専用線を引きますよ」。
DDIの対応は早かった。2日後にはポスターと申込書を抱えた営業担当氏がやってきた。私も男である。約束は守る。そんなわけで今日も私の事務所では、小泉今日子が微笑んでいる。
とまあ、きっかけは人それぞれだが、専用線は快適だった。64kbpsは決して速いとは言えないが、いつもつながっているという安心感はナニモノにも変えがたい。落ちることもほとんどなかったように思う。しかし計画性のない私のこと、専用線が入って3カ月もたたないうちに会社勤めをすることになった。当時、自分の会社は私ひとりでやっていたので、当然休眠となる。そこで問題になったのは専用線をどうするか、だ。
普通の電話なら116に電話して、「休みにしてください」といえばそれで終わり。しかし専用線はそうはいかない。最低1年間の縛りがあったのだ。そのまま放置することもできなくはないけど、月4万円は負担が大きすぎる。すったもんだの揚げ句、結局は知り合いのネットワークエンジニアに引き取ってもらうことになったが、えらい苦労してしまった。その後、携帯電話だろうとなんだろうと、私は期間縛りのあるものにはいっさい手を出さなくなった。
■電柱1本4カ月
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さっき見に行ったら、昔の事務所のケーブルはそのままだった。懐かしい
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会社勤めを終え、自分の会社に戻ってきたのは2000年の夏。事務所はそのままだったが、回線をなんとかしなければならない。専用線はコリゴリだし、ADSLもまだ一般的ではなかった。そこで目を付けたのが東急ケーブルテレビ(現:イッツコム)。世田谷・三宿は東急沿線。Webで調べてもエリア内になっている。さっそく電話したところ、その場で調べてくれた。対応は異様に早かった。
「その住所ですと、となりの路地まではケーブルが入っているんですが、電柱1本分届いてないんです」。……なんだそりゃ?
つまり、自前で電柱を持たない東急ケーブルテレビは、東京電力やNTTの電柱を借りて架線しているのだけど、ウチの事務所に線を引くには新たに電柱を借りる契約をしなければならないのだという。
「それって余分にお金がかかるんですか?」
「いえ、電柱の借用は東急ケーブルテレビで持ちますので、お客様には負担はかかりません」
「それなら電柱を借りるよう、話を進めてください」
「もちろんそうしますが、許可が下りるまで4カ月かかるんです。それに、許可が下りるかどうかもそのときまでわからないんですが、それでいいですか?」
「……」
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これが借りるのに4か月かかった電柱。すぐむこうの通りまではケーブルが来ていたのに……
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なにやらトランスが乗っている電柱などは貸してくれないことも多いそうで、確率は五分五分だとのこと。時代の最先端たるインターネットの普及が、こういった旧態依然としたシステムに依存しているとは思わなかった。
それでもダメもとで東急ケーブルテレビをオーダーし、それまでのつなぎにフレッツISDNを利用することにした。もちろん契約時には「すぐに止められますね?」と確認することを忘れてはいない。
そして待つこと4カ月。運良く電柱が借りられたようで、東急ケーブルテレビ開通。スペックの14Mbpsは最初からあきらめていたけど、1Mbps強の速度は必要にして十分(当時)。64kbpsに比べれば格段に速く、それほど不満は感じなかった。なにより、NTTとはまるで無関係の太い同軸ケーブルは、なんとなく頼もしそうに見えたものだった(当時)。
■次のステップに行こうと思う
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現在の事務所へのケーブルの引き込み。こちらは通りに面しているので、すぐに移転可能だった
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実は事務所に東急ケーブルテレビを引いたのと前後して、自宅にも東急ケーブルテレビを引いた。自宅はインターネットだけでなく、本来のテレビサービスにも加入している。まあ、BSで放映されているWGP(モーターサイクルロードレース世界選手権)中継もキレイに見られるし、アンテナも要らないし、いいんじゃないかなあ、と軽い気持ちで入ったのだった。
しかし弊害も気になるようになった。小学生の子どもが2人いるのだけど、コイツらが朝から晩まで某アニメチャンネルを見続けるのだ。日本のちゃんとしたアニメならまだしも、外国産の思考力の要らないドタバタアニメがひっきりなしに流れるのには参った。もちろん見ないようには言うのだけど、ずっと監視してるわけにはいかないし、見られるものを見るなというのもなんだか理不尽だ。
東急ケーブルテレビのチャンネルは、基本の番組セット+オプション番組という仕組み。オプションなら単独で止めることもできるけど、基本セットに含まれている番組は止めることができないのだという。仕方がない。東急ケーブルテレビを止めることに決めた。この夏の話だ。
次なる線はどうするか? とりあえずYahoo!BB(ADSL)を試してみようと思う。先日Yahoo!を取材したとき、初期のトラブルをフォローすべく、必死になっているスタッフに心が動いたというのもあるし、BBフォンも何やら面白そうだ。もしかしてNTT料金を減らせるかもしれない。もちろんまともに速度が出なかったら、すぐに止めるつもりではいるけども。
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ケーブルモデムは当然レンタル品。以前は何度もリセットした記憶があるが、このところ特にいじっていない
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ACCTONのルータはもらい物。モデム→ルータ→ハブ→各PC と接続している
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そして事務所。こちらはいまだ東急ケーブルテレビのままだが、スタッフも増えて、回線に対する不満も増えてきた。まず気になったのは、よく落ちること。障害報告に出ないような細かな異常が多い。メールが30分ぐらい落とせなくて、ふと試してみると元に戻っているとか、そんなことが度々あった。
現在、なにより困っているのはアップロードが遅いことだ。本連載の第4回で荒田さんも書いているけれど、仕事で使うならダウンロードだけでなく、アップロードの速度がものすごく重要になってくる。
東急ケーブルテレビのダウンロードは2~3Mbpsとそこそこだが(現在)、アップロードはたった200kbps前後。加えて会社のサーバーを線の細いところに置いていることもあって、アップロードの遅さは致命的な問題になりつつある。こちらも、そろそろ東急ケーブルテレビにさよならしようと思う。
【参考:スピードテスト】
ダウンロード | 2.87Mbps |
アップロード | 174.42kbps |
測定サイト:speed.rbbtoday.com
測定日:2002年8月16日
URL: http://www.rbbtoday.com/speed/
本当にに高速なアップロードを求めるなら、手元にサーバを置くのがベストだ。有線LANなら100Mbpsだ。幸いなことに、USEN(Usen Broad Networks)、Bフレッツなど、我が事務所はいろいろなサービスが選択できる場所にある。マンションでもないし。ただ、グローバルアドレスを取るとなるとコストが高く、どれも帯に短し襷に長し。
USENの場合、固定IPで商用利用をするなら法人契約しかダメで(まあ、それはかまわないが)、IP 5個の場合、毎月の料金が3万2000円もする。IPひとつでも2万2000円だ。コレだけならそれほど高く思えないかもしれないけど、個人契約ならたった6100円だという。この差はいったい何? と思ってしまう。
ただ、これにも抜け穴があって、商用利用しないなら個人契約(6100円/月)で固定IPが5個利用できるという。うーん、これは狙い目かもしれない。
いま使っている東急ケーブルテレビでも、最近グローバルアドレスの使えるサービスが始まった。ダウンロード30Mbps、アップロード10Mbpsで月5900円とリーズナブル。これはいいと思ったのだけど、わが三宿はエリア外なのだった。
あとはASDLやBフレッツを利用した固定アドレスを含めた接続サービスがある。ただ、このあたりはまさにいま戦いの真っ最中で、毎月のように値段が変わっていたりする。見極めにはもう少し時間がかかりそうだ。どなたか、オススメの回線やプロバイダーがあったら教えてくださいな。
■参考データ
居住地区 | 東京都世田谷区 |
線路距離長 | 非公開 |
伝送損失 | 非公開 |
接続事業者 | イッツコム(旧:東急ケーブルテレビ) |
プロバイダー | イッツコム(旧:東急ケーブルテレビ) |
スループット | 約8Mbps |
(2002/09/05)
□イッツコム(旧:東急ケーブルテレビ)
http://www.itscom.net/
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