■CATVがあるから離れられない
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台東CATVから契約当時に届いたマニュアル類
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自宅の賃貸マンションがCATV(台東ケーブルTV:TCTV)のエリアに入ったのは1998年の4月頃だった。当初は、TVの視聴契約だけ加入。マンション横の電柱の使用許可が下りておらず、マンションでもはじめての引き込みだったので、大家の承認に手間取ったのを覚えている。
インターネットサービスが始まったのは同年5月。さっそく申し込み、6月末日まではモニター期間で無料。7月から課金開始され、月額4700円だった。ケーブルモデムは東芝のPCX101J。側面が金属のゴツイ筐体が頼もしくみえたものだ。PCは1台だけだったので、ケーブルモデムとイーサネットで直結だった。
通信速度は、Windows 95+Netscape 4.xのダウンロード時の速度表示で400~500KB/秒ぐらい。当時は、CATVがほぼ唯一の個人用ブロードバンドサービスで、高速な通信速度と常時接続は快適そのもの。当時の会社の環境よりも通信速度は速かった。当時、知人に「CATVインターネットの快適さがあるから台東区から離れられない」と言ったことさえある。
2000年には、DHCPで配布されるIPアドレスがグローバルIPになり、ケーブルモデムが東芝のPCX1000に変更された。プラスチック筐体の縦型のボディは旧型の半分以下の重さしかなく、太いケーブルには似合わなかった。この変更の手数料は1万円、料金は月額5000円となった。ちなみに接続料金は、2002年にADSL対抗策か、4500円に値下げされている。
■CATVならではの制約
しかし、ずっと使い続けていると不満も出てくる。
まず、深夜に接続できなくなることが多かった。徹夜で作業している午前3時~5時ぐらいに突然接続できなくなることがあり、あきらめて寝てしまうと朝には回復している。これはほとんどが、CATV網の工事とメンテナンスが原因なのだが、月に1回ほどあり、仕事に使うには不便だった。
また、CATVでは多い、接続台数の制限。契約ではPC1台に限定されていた。一時は接続しているPCのMACアドレスを確認しており、別のPCに差し替えるとサービスが停止されるチェックも行なわれていた。2台のノートを使い分けていた時期には、何度かこれにひっかかり、サポート窓口へ電話して回復してもらう羽目になった。
現時点のTCTVのホームページ上の契約内容やFAQでは、ルータの使用は禁止されていないし、ルータを介しての複数台接続も禁止されていないが、制限されていた期間が長かったため、窮屈な印象だったし、無線LANルータを導入した際もなんとなく後ろめたい気がしたものだ。
■小さなプロバイダーの限界
また、CATVでは回線業者がプロバイダーも兼ねているわけだが、規模が小さいためか第三セクターのためか、小回りが利かない。例えば、PCのHDDトラブルでメールのパスワードを喪失した際も、再発行が郵送のみで、2日ほど使えなかった。
工事の内容や日時なども内部の連絡があまりよくないと感じることが何度かあった。個々に接するスタッフは良い人なのだが、組織的な力が弱い印象を受けた。些末なことだが、マニュアルが数枚のコピーをホチキス止めしたものだったのも、実用面では問題ないとはいえ、ショボい感じがしたことは否めない。
管理面でいえば、当初、メールサーバーの設置などがブロックされておらず、大量のメールを配布する不心得なユーザーがいて、スループットが極端に落ちたことがあった。ユーザーがどういうことをするかという管理面でのノウハウが当初は足りなかったようだ。
■移転工事料1万円で見切り
8月に引っ越しをすることになったが、新居も台東区内で、難視聴対策か各戸にTCTVの配線も入っている。引っ越しというのは面倒な手続きが山のようにあるので、それを増やさないためにも、インターネット環境はそのままCATVを続けるつもりだった。
ところが問い合わせると、移転工事料が1万円かかるという。配線が入っているので、ケーブルの敷設もなく、モデムも持っているため、接続確認するだけだと説明しても、それでも変わらないというので見切りをつけた。同じ条件の、TV視聴契約は移転工事料がかからないし、実際にセットトップボックスをつなぐだけでなんの問題もなく動いている。
現行のTCTVの接続速度は上り下りとも2Mbpsのベストエフォート、バックボーンは上り100Mbps/下り40MbpsでODNに接続されている。新居の収容局からの線路長は約1340mだし、引き込みもメタルなのは確認済みだ。これを機に光が導入できないのは残念だが、ADSLでも現状よりも下りは速くなる可能性が高い。また、電話回線なのでCATVよりは切れにくいだろう。もうADSLの導入で決まりだ。
■地味な選択でも改善効果は大
引っ越しまで日がないので、決めてしまったらどんどん動かなければならない。日にちがないことと、仕事でも使う回線なので、安心感を優先して回線もプロバイダーもメジャー指向で選択。回線はNTTの「フレッツ・ADSL 8M」、電話回線は手持ちのものを利用し、移転工事と一緒に開始ということで申し込んだ。プロバイダは@nifty、これもパソコン通信以来の手持ちIDを無制限コースに変更しただけだ。
電話は居間に、モデムは自室に置きたかったので、けっきょく工事は頼んでしまった。モデムは10Mbps以上のサービスが始まる可能性があるのはわかっていたが、さほどの上積みはないだろうと思い買い取りにした。
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移転後の居間の電話回線の引き込み状況。スプリッタを経由して壁に戻る
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自室のADSLの引き込み状況。写真右がADSLモデム、左の無線LANルータは背が高いので、横倒しに設置せざるを得ない
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あまりにスクエアな選択ゆえ、もうあまりお話しすることは残っていない。
工事は予定通り順調に終わり、無事に開通した。回線は居間のローゼットに入り、スプリッタで分けられて、室内の回線を経由している。結構無駄な配線も多いし、マンションの10階ということもあって、心配していたが、設置直後のフレッツスクエアの計測で、Windows XPのPC直結で4.2Mbps出ていたので、充分だろう。工事担当者も「局との距離で決まるので、室内配線はあまり影響ないですよ」と言っていた。
ルータはメルコの無線LANルータ「W-LAN-L11-L」という旧型なので、これを経由すると有線接続でも2.2Mbpsぐらいしか出ない。次に手を入れるとしたらこっちだろう。IEEE 802.11a対応製品が安定するであろう来年に考えたい。
【参考:BNRスピードテスト】(測定日時 2002/10/03 12:01:39)
ダウンロード速度 |
WebARENA | 2308.277kbps(2.308Mbps) 295.45KB/sec |
PLALA | 2291.194kbps(2.291Mbps) 293.22KB/sec |
3.ASAHI-Net | 2363.959kbps(2.363Mbps) 302.73KB/sec |
推定転送速度 | 2363.959kbps(2.363Mbps) 302.73KB/sec |
アップロード速度 |
データ転送速度 | 738.12kbps (92.26KB/sec) |
転送データ容量 | 600KB |
転送時間 | 6.503秒 |
測定サイト:BNRスピードテスト Ver2.103
URL: http://www.musen-lan.com/speed/
接続速度は、有線接続ではWebの閲覧でも体感でわかるぐらいに速かったが、すぐに慣れてしまった。一番ありがたいのは、VPN経由で会社のメールサーバーにアクセスする際の速度が上がったことで、メールの受け取りの待ち時間が半分ぐらいになった印象だ。また、VPN接続のコネクションも速くなった。経由する回線が短くなって、サーバーが近くなったような印象を受ける。仕様上2Mbpsから1Mbpsへと遅くなる上りについても、サーバーへのファイル転送などを見る限り速くなっている。というわけで、工事費やモデム代など、予定外の出費はかかったが、ADSLへの移行は正解だった。とりあえず継続しているTV視聴契約についても、衛星放送の動向をみながら、考え直すつもりでいる。
結局、台東区に住み続けていた理由の1つであるCATVはやめてしまったが、それでも浅草という土地は気に入っているので住み続ける決心をしたことは後悔していない。管理組合も動き始めたばかりで、光が導入できるのは当分先になりそうだが、それまではインターネット接続のことは考えずにすみそうだ。
■参考データ
居住地区 | 東京都台東区 |
線路距離長 | 1340m |
伝送損失 | 25dB |
接続事業者 | NTT東日本「フレッツ・ADSL8M」 |
プロバイダー | @nifty |
スループット | 約4.7Mbps(ルータを通すと2.2Mbps) |
(2002/11/07)
□NTT東日本 フレッツサービス
http://www.ntt-east.co.jp/flets/
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