■苦労したインターネット接続
筆者のパソコン通信歴は、アマチュア無線のパケット通信から始まった。通信インフラにアマチュア無線の電波を使うので料金がかからない反面、そのスピードは当時300bps。テキストを読みながらダウンロードするには便利だが、大量のデータをダウンロードするには向かないコスト相応のインフラだったといえる。
その後、大学時代にモデムを購入し、それを皮切りにパソコン通信をはじめた。当時、草の根BBS最大といわれた東京BBSに加入して、パケット通信では遅すぎて落としきれないオンラインソフトなどをダウンロードして楽しんでいた。パソコン通信を始めてしばらくした頃、雑誌でインターネットの存在を知った。世界中がつながるというインターネットに強く惹かれ、ぜひ始めてみたいと思ったのだ。
大学内にはインターネットが使える環境があったものの、なぜかターミナルソフト以外のアプリケーションを使えず、認証が必要なかった友人が通う大学にダイヤルアップすることに。しかし、当時はまだWindows 3.1時代。インターネットを利用するのに必要なソフトウェアはパソコン通信などで入手したものの、ドキュメントなどもすべて英語で書かれている上、当時はネットワークの知識もさっぱりわからず、苦労して読みながら設定を行なったが、なかなか接続できない状態だった。東京BBSのチャットでいろいろと聞いてみたりもしたのだが、相手は大学や企業でインターネットを使っているUNIXユーザーばかりでWindowsの設定方法は知らないという。いろいろと資料を検索して、トライ&エラーを繰り返す事3カ月。はじめてMosaicにページが表示された時のうれしさは今でも覚えている。ちょうどそのころNetscapeのバージョン1が登場し、新しもの好きな筆者はMosaicからNetscapeに移行することにした。
大学卒業後、Windows 95の登場とともにインターネットが世の中に広がり始めた。プロバイダーもいくつか登場してきたので、完全固定課金だったベッコアメ・インターネットに加入した。その後、友人の薦めで回線あたりのユーザー数やバックボーン回線速度を公表していたドルフィンインターネットに切り替え、フレッツ・ISDNでようやく常時接続の世界に足を踏み入れた。
■ようやくフレッツ・ADSL開通、しかし……400K倶楽部設立!?
筆者の住んでいる多摩市でもフレッツ・ADSLサービスがアナウンスされたので、早速ISDNサービスを解約してアナログ接続に戻し、フレッツ・ADSLサービスに申し込んだ。ISDN回線からの変更だと後回しにされるという噂を聞いていたためだ。それまでの常時接続からいきなり退化してしまったが、これもADSLになるまでのわずかな辛抱だ。
アナログに戻してから10日程度で、NTTからモデムが到着した。翌日には接続が可能になるということだったが、辛抱できずにADSLモデムを接続すると、なんとリンクランプがもう点灯するではないか! 早速アクセス……したものの、プロバイダーへの認証が通らない。IDとパスワードを何度確認しても認証されない。さんざん考えた挙げ句、はたと気がついた。ADSLサービスの事前申し込みは、プロバイダー経由と、NTTと2重に行なっていたのだが、今回のサービスインはNTT側だったらしく、プロバイダー側の用意ができてなかったらしい。そこでプロバイダーに電話をかけて確認してみたところ、本申し込みには申し込み用紙をFAXで送る必要があるという。申し込み用紙を送りさえすれば、数時間で接続できるというので、慌ててプロバイダーのホームページから申し込み用紙をダウンロードし、必要事項を記入してFAXを送った。
そのままTVなどを見て待つこと数時間。ADSLモデムに同梱されていたフレッツ接続ツールで接続を試みると、無事プロバイダーに接続できた。さっそく速度計測サイトでスループットを測ってみると、なんと400kbps程度しか出ていない。まぁ、それでも64kbpsだったISDNに比べれば、400kbpsは一気に数倍の速度にはなっている。だが、同じ料金を支払って1Mbps以上出ているユーザーがいるとわかっていたので心中は穏やかではない。
ADSLについていろいろと書かれたサイトを見てみると収容局からの経路にブリッジタップがあったり、ガス漏れ警報機などが設置されていると大幅にスピードが落ちることがあるという。NTTに問い合せてみたが、NTTから筆者宅までの間にはブリッジタップはないらしい。ガス漏れ警報機の類いもないことは確認できたが、この遅さにはやはり納得がいかない。さらにインターネットで検索を続けていると、ローゼット内部にフィルタが設置されていると、回線速度が落ちることがあるという。ローゼット内の工事には資格が必要なので、業者に依頼してフィルタを外してもらったが、速度は誤差程度の変化しかなかった。
アースを取り付ければスループットが伸びるとか、コンセントはほかの機器とは別のところにした方がいいなど、いろいろな情報を見つけるたびに実践し、速度を計測してみたが結果はほとんど変わらない。当時PCに使用するのがはやっていた接点復活材「SETTEN "No.1"」を端子に塗ったりもしてみたが効果はなく、インターネットでADSL関連情報を検索する日々が続いた。
ちょうどこのころ、社内でもADSLを導入する人が増えていた。Watch編集部周辺でも400kbps程度しか出ていない人が何人かいて、集まって話をしていると本誌編集長にひとまとめに「400K倶楽部」などと命名されてしまった。以後は、新しくADSLを導入した人を見つけると、「ね? ね? スループットは?」などと聞いて回り、「ただいま400K倶楽部は会員募集中ですよ」と、速い人には優越感を与え、遅い人にはいやな顔をされていた。
■アップロードは速かったSo-net ADSL
そうこうしているうちに、Yahoo! BBや、So-net ADSLなど、次々と8Mbpsに対応したADSLサービスが発表されはじめた。そこで、対応エリア外でも事前申し込みが可能なサービスをかたっぱしから申し込んでいったところ、So-netから対応エリアに入ったという連絡が来た。申し込み時は何も考えていなかったが、いざ契約するとなると、そのとき使っていたフレッツ・ADSLを解約して新たにSo-net ADSLに契約するのか、それともType2で新規回線を引くかを決めなければいけない。
ADSLは光ファイバが開通するまでのつなぎと考えていたし、何年も使っているメールアドレスを変えたくなかったので悩んだ末、高くつくがType2で回線を新設し、様子を見ながらフレッツ・ADSLと併用することにした。屋内工事で、これまで使っていたローゼットを2口に交換してもらい、1本を電話回線兼用でフレッツ・ADSLとして使い、もう1本をSo-net ADSL用に新設してもらうことにした。
工事が終わり、はやる気持ちを抑えながらモデムとPCを接続した。1.5Mbpsのサービスで、400kbpsなのだから、8Mだったら5倍くらいの速度は出るかななどと考えながら、我が家で最速のマシンを接続していざ速度を計測してみたところ、なんと700kbps程度しか出ていない。ところが、アップストリームを計測してみると、なんと下りよりも速い900kbps以上が出ているではないか! とりあえず、アップロードするには便利という理由をつけて強引に納得することにした。
そのころLinuxサーバーを構築していたこともあり、外部からのアクセスをテストするのにグローバルIPが2つあるのは便利だった。しかし、ルータ同士を接続するブリッジなどなく、将来使わなくなるであろうブリッジを買うのもばからしいので、LAN内でファイルのやりとりをするときには、イーサネットケーブルを接続しなおさなければいけないのが面倒だった。
しばらくすると、So-net ADSL接続で使用されている回線事業者アッカ・ネットワークスのサイトに新しいファームウェアが掲載された。新ファームウェア最大の変更点は、FBM(FEXT Bit Map)モードが搭載された事だ。FBMモードでは、最高リンク速度が下り3,424kbps/上り416kbpsに制限されてしまうが、ISDNの干渉を抑える機能が強化されている。どのみち1Mbpsも出ていない環境では、3Mbpsも出れば御の字なので、早速アップデートしてみると、スループットは上りが350kbps程度にまで減少したものの、下りは900kbps程度にまで向上した。それほど期待はしていなかったが、タダでスループットが向上したのは非常にうれしい。
■念願の光ケーブル導入
事前申し込みだけはしていたBフレッツから、ついにお知らせメールが届いた! やっと多摩市がBフレッツ対応エリアになったのだ。すでにニューファミリータイプがアナウンスはされていたものの、いつサービスインするかわからないので、ファミリータイプを選択して、さっそくプロバイダー経由でADSLからBフレッツへコース変更の手続きをした。
申し込んでしばらくすると、事前調査に来るという連絡があった。実際に光ケーブルを屋内に引き入れる事ができるかどうかという調査で、光ケーブルを通せる配管があるかをチェックするようだ。筆者宅は、1棟4世帯の小さなアパートだが、すでにADSL回線を1回線追加した実績もあったし、電柱からの引き込み口が筆者宅のベランダなので、最悪電話用の配管が使えなくても、エアコン用ダクトの穴を通せばいいやと気楽に考えていた。
事前調査の結果、アパートのMDFはちょうど1階と2階の間にあり、室内のローゼットまでほぼ水平に配管が通っているので、光ケーブルの引き込みには問題ないとのこと。調査も無事終了し、あとは引き込み工事を待つだけとなった。工事の前日には電柱まで光ケーブルは敷設され、部屋の外にある電柱にも、すでに中継機の設置が完了していた。「あ~、明日になればウチも念願の光ファイバに……」などと思いながらその夜はベッドに入った。
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工事前日には、すでに光ファイバとメディアコンバータが窓の外まで敷設されていた
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光ファイバはすんなりローゼットから出すことができた
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工事当日、4月22日は朝から自宅で待機することにした。自宅近辺は住宅街の外れにあるという事もあり、ほかで聞くようなガードマンなどはいない。1時間半程度で工事は完了し、いよいよ準備が整った。喜び勇んでPCを接続してスループットを計測してみたところ、なんと、8.9Mbpsという数値が表示されている。いままで1Mbpsすら超えていなかったのが、いきなり8.9Mbps! 夢のような数字だ。
現在はニューファミリータイプのサービスも開始されている。一度ファミリータイプで開通しているので、100Mbpsへのアップグレードには工事費がいくらか安くなるものの、さらに2万円近くの支払いがあり、ややためらわれる。また、8.9Mbpsのスループットが必要になるシーンはそうそうないので、現状でも満足している。将来、お得なサービス変更プランなどが発表されたり、さらにランニングコストの安いサービスが提供されたら、その時に乗り換えればいいやと考えている。
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工事の合間、作業員のいない隙をねらって光ファイバを撮影。思っていたより細いことがわかった。残念ながら光っていない
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屋内からメディアコンバータに接続されるケーブル。特殊な工具を使って接続していた
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工事終了後のローゼット。上段が今は使用していないSo-net用。下部から出ているのが光ファイバ
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メルコのルータ「BLR3-TX4」とメディアコンバータ。メディアコンバータのLEDが青色だったのがちょっとうれしい
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(2003/02/06)
■参考データ
居住地区 | 東京都多摩市 |
接続事業者 | NTT東日本 |
回線の種類 | Bフレッツ(ファミリータイプ)東京都多摩市 |
プロバイダー | ドルフィンインターネット |
スループット | 約8.9Mbps |
□Bフレッツ(NTT東日本)
http://www.ntt-east.co.jp/flets/opt/
□ドルフィンインターネット
http://www.din.or.jp/
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