■幸運なのかな?
|
自宅近く。とにかくマンションが多いんです
|
筆者の家は都内のJR駅から1.5kmほどの場所にある。昔は小さな町工場が軒を連ねていた下町的な地域で、今では住宅地化してちょっとしたマンション街。そんな中にある木造の一軒家に家族と同居している。
数年前までコンピュータ雑誌に記事を執筆していた関係で、自宅には数台の端末があり、当時からLANを組んだりもしていた。通信に関してはインターネット以前、パソコン通信時代からのユーザーである。そんな筆者が高速な常時接続に興味を持ち、移行していくのは自然な流れだった。
今のところ、インターネットへの接続にはNTT東日本のフレッツ・ADSL モアを利用している。実をいうと、当初の1.5Mから8M、モアへと順番にステップアップし、もう2年ほどフレッツシリーズを使い続けているが、その間トラブルらしいトラブルに出くわしたことがない。リンクしなかったり思うように速度が上がらなかったりで、さまざまな対策を試みている知人に言わせれば、かなり幸運ということになるらしい。確かに比較的安穏にブロードバンド環境が整ってしまった筆者ではある。しかし別の面で、それなりの努力はしてきているのだ。
■家族の白い目に堪えつつ
話は数年前にさかのぼる。当時の筆者は別の仕事に専念しており、ライターとは縁遠い生活を送っていた。コンピュータはあくまでも趣味のレベルだったのだ。家族にしてみればパソコンはメールの送受信と年賀状の印刷ができれば十分という程度の認識。LANにつながれたモロモロはお金のかかるオモチャにしか見えない。当然、風当たりは強く、好きなように機材を揃えられる状況ではなかった。通話用の電話回線とは別にモデムとFAXのための回線だけは確保していたが、高価な接続線を引くなんて夢のまた夢。白い目で見られながら細々と環境を整えるのが精一杯という日々だったのである。
そんな逆境の中、なんとか常時接続を実現できたのはフレッツ・ISDNが登場してからだ。2本の電話回線をISDNに一本化。番号はiナンバーサービスで一方をもう一方の子番号として残せたため、移行にはなんの問題もなかった。常時接続の便利さに感動しつつもテレホーダイで夜中だけでも128kbpsで接続したいなぁ、なんてなことを考えていた時期である。
■世間に乗り遅れたくない
|
自宅近く。写真ではわかりにくいが、電柱から延びた電線が複雑に交差している。これを見て、ちょっと不安になったりも
|
筆者の接続環境が大きく変わったのは2001年の初夏だったと思う。CATVやADSLが話題になり、あちこちでブロードバンドという言葉が聞かれ始めたころだ。世間が盛り上がっているのに取り残されていては元ライターとしての面目が保てない。価格的にもフレッツ・ISDNと大差ないということで家族を説得し、ADSLの契約に踏み切ることにしたのだ。
筆者の家には周辺のマンション建設による難視聴地域対策で、すでにケーブルテレビが引き込まれていた。しかし、料金が高価だったこと、端末の接続台数に制限があったこと、それにプロバイダーの選択肢を残しておきたかったという理由から、フレッツ・ADSLを選ぶことにした。
契約するにあたって、2つほど気になる点があった。1つはちゃんとリンクして十分な速度が出るかどうか。問い合わせてみても、ADSLはベストエフォートサービスなので、やってみなければわからない、という答えしか返ってこない。ともかく収容局との距離だけでも知ろうと思い、地図を調べたり、車の距離メーターで測ってみたり。結果は約1kmから1.5kmの間。よほど条件が悪くない限り問題になる数字ではないので、この点については運を天にまかせることにした。
もうひとつは工事。ISDNの2番号をアナログ2回線に戻し、ついでに別の屋内配線に割り振るというプランを立ててみた。ところが我が家は大きくもないのに電話線の引き込みが4本もあるというワケのわからない家なのだ。作業そのものは普通の切り替えと変わらないはずだが、電話だけでは希望がうまく伝わらず、窓口まで出向いて下手な絵まで描くハメになってしまったのである。ちゃんと工事してもらえるんだろうか?
■実際工事を頼んでみると
|
机の端に置いてある通信関連機器。左からパーソルブロードバンドルータPBR005、NTT-MEダイヤルアップルータMN128スロットイン、NTT東日本ADSLモデムMNII
|
期待と多少の不安を残しつつも工事の日を迎える。都合で工事に立ち会えなかったため、家族にも下手な絵を渡しておき、何度も連絡を入れる。結果を言ってしまえば、なんの問題もなかったそうである。帰宅後に確認すると工事はこちらの希望通り行なわれており、リンクもしっかりと確立している。スピードテストページでスループットを測ってみると1.2Mbps。いろいろなトラブルの話を聞いていた筆者としては、あっさりしすぎていて拍子抜けしてしまったというのが正直な感想だ。
メガbpsの世界は他所で経験済みだったが、これが自宅で実現したとなると、やはり感動モノである。ストリーミングが美しい! インターネット放送局の音が途切れない! ダウンロードの速さにファイルが壊れてるんじゃないかと不安になり、いちいちチェックしていたくらいである(笑)。
■調子に乗って無線LAN
|
単なる無線LANアクセスポイントと化したMN128スロットインの後面。PCカードスロットひとつとLANコネクタひとつしか使っていない寂しい光景
|
物事が順調に進み、調子に乗った筆者は家族用の端末を用意することを考えるようになる。インターネットを使い始めれば逆風も弱まるんじゃないかと計算したからだ。64kbpsの頃はとても接続を共有する気にはなれない速度だったし、家族もジワーッと表示されていく画面を見て「インターネットってこんなもの?」みたいな反応だったのだ。しかし今や1Mbps超。我が家には最新鋭と言えるようなマシンはないが、幸い数だけは揃っている。古い機器の中から大きめのノートを引っぱりだしてLANに仲間入りさせた。
このノート、はじめは10m以上もある長いLANケーブルを使ってつなげていたのだが、そのうち「つまずく」だの「ドアが閉まらない」だの、文句を言われるようになる。当時、接続に使っていたのはISDN時代から愛用していたNTT-MEのMN128スロットインというダイヤルアップルータ。本体後面にPCカードスロットが2つあり、そこにLANアダプタを差し込むことでPPPoE接続に対応できるため、そのまま使い続けていた。実はこのルータ、オプションに無線LANカードが用意されていたのである。
文句が出たのをいいことに、さっそくこのカードを購入。狭い木造家屋のためか、どの部屋にいても有線と変わらない安定した速度で接続できる。LAN内でファイルを共有したときの速度はイマイチだったが、必要なときはケーブルをつなげればいいので気にならない。一応、ここに我が家のブロードバンド環境の基礎が完成したのである。
■1.5Mから8M、モアへとステップアップ
2002年春、1.5Mタイプから8Mタイプにステップアップ。ルータを通したスループットは4Mbpsほど。ISDNからADSL 1.5Mに切り替えたときほど大きな変化はなかったものの、1Mbpsクラスのストリーミングでも余裕で再生できるのはやはり感動的だ。ブロードバンドコンテンツをよく見るようになったのはこのころからである。
これほどの速度ともなると本来はISDN用のルータがボトルネックになってるんじゃないかと気になりだしてしまう。結局、高スループットのブロードバンドルータを手に入れ、有線接続用のLANアダプタも100BASE-TXに一新。MN128スロットインはルータ機能を停止させ、単なる無線LANアクセスポイントとして利用することにした。実際のスピードアップはわずかなものだったが、目的よりも手段に突っ走ってしまう性格の筆者にとっては、LAN環境が整っていくだけで満足だったのである。
2002年秋、フレッツ・ADSL モアのサービスを開始とほぼ同時に切り替え工事。モアにしたからといって速度が上がる保証はなかった。逆に不安定になるかもしれないというウワサも聞く。しかし少しでも速くしたいという衝動は抑えようがない(笑)。それに気になる点があった。8Mタイプ用モデムから出る頭が痛くなりそうなキ~ンという高周波音だ。机の下に隔離してしのいではいたが、これがなくなるだけでも価値はあると思い、早くから申し込んでいたのである。
工事日の3日ほど前にモア対応のモデムが届き、さっそく入れ替え作業。耳障りな音はまったく聞こえない。しかも少しだけ接続速度が上がっている。これだけで目標の9割が果たされたようなものだ。局側の工事終了後、改めて測ったスループットは6Mbps。今のところ、少なくともダウンロードに関しては、まるでLANを使うような感覚でインターネットを利用できている。
全般的にいって現状に不満はない。しかし、こういった妙に順調なステップアップは無用な向上心に火をつけてしまうらしい。次はFTTH、さらには自宅サーバーへと密かにモチベーションを高めている今日この頃である。
■いちばん変わったのは家族
|
家族用に引っぱりだした古い東芝DynaBook。PCカードスロットにMN128スロットインと同じ無線LANアダプタを差し込んである
|
筆者自身は、どちらかといえば古くさいインターネットユーザーで、メールのやりとりやホームページ上の資料を探すといった使い方が多い。自宅がブロードバンド化して、さまざまなコンテンツを楽しむようになったのはもちろんだが、それよりもネットワーク上のオンラインストレージを使う機会が増えたのがいちばんの変化だと思っている。
そんな筆者にくらべると、むしろ家族のほうが大きく変わったようだ。数Mbpsクラスのスループットなら同時に何台かの端末を使ってもストレスを感じることはない。筆者に気兼ねすることなく、テレビのチャンネルを切り替えるような気軽さでインターネットを利用できるようになったのである。
今ではつたないながらもニュースや天気予報、さらに映画の予告や料理番組のストリーミング放送を当たり前のように楽しんでいる。冷蔵庫にぶら下がっている家庭内伝言板の代わりにメールをやりとりするようになった。携帯電話宛てに買い物を頼んでくることもしばしばだ。まぁ知人に巨大な画像データを送りつけてヒンシュクを買ったりもしてるのだが……。
(2003/02/13)
■参考データ
居住地区 | 東京都北区 |
接続事業者 | NTT東日本 |
回線の種類 | フレッツ・ADSL モア |
局からの線路距離 | 1410m |
伝送損失 | 29dB |
プロバイダー | @nifty |
スループット | 約6Mbps |
□フレッツサービス情報(NTT東日本)
http://www.ntt-east.co.jp/flets/
□@nifty
http://www.nifty.ne.jp/
|