■Nifty-Serveで通信初体験
初めてPCをネットワークに接続したのは1996年の春、Windows 95マシンを購入して旧Nifty-Serveに接続したのがはじまりだ。世の中では個人向けのISPも数多く開業し、既にパソコン通信からインターネットへと移行し始めていたが、そもそもPCを購入した動機のひとつが、「Niftyを使うこと」だったのだ。
接続環境はPC内蔵の33.6kbpsモデムを使用してのアナログダイアルアップ接続。引越しを機にISDNへの切り替えを考えてはいたものの、当時ISDNは人気が高く、開通するまでずいぶんと待たされるという話だった。さらに、接続に利用するTAも品薄でなかなか手に入らない。また、実際に使い始めてみると、33.6kbpsが64kbpsになったところであまり大きくは変わらないのではないか? 月々のランニングコストも高くなることだし……と考え、ISDN化計画は棚上げになってしまった。
インターネットを利用するようになったのはそれから半年後の1996年秋。ISPは、当時住んでいた東京市部にアクセスポイントがあり、なおかつ低料金・定額制のドルフィンインターネットをセレクト。電話料金を節約するために、もちろん定番のテレホーダイを併用。学生ということもあり、夜な夜なあちこちのWebサイトを見てまわっていた。確かに通信速度は速いとはいえなかったが、まだ重いコンテンツもあまりなく、ページが表示されるまで時間がかかるのは当然と思っていたので不満はなかった。それよりも、家に居ながらにして世界中の情報が手に入るということのほうが重要だったのだ。
このアナログダイアルアップ時代は、途中でモデムが56kbpsになり、その後もしばらく続いた。また、ノートPCと同時に携帯電話用のカードも手に入れ併用したが、さすがに9.6kbpsの遅さと通信料金の高さがきつく、急ぎの用事でメールをチェックするくらいにしか使用しなかった。
初めて常時接続環境に触れたのは、バイトとして潜り込んだ某企業だ。メガサイズのファイルのやり取りが苦にならない、Webブラウズもサクサク進む、なんてすばらしい! と思ったものだ。しかし、個人の常時接続導入については、まだサービスがないわけではないがかなり高額、CATVによる接続サービスが比較的安価ということで注目されていたものの、自宅近辺のCATVは集合住宅は基本対象外ということでNG。そんな状況が一変したのは、2000年秋に自宅のポストに投げ入れられていたチラシがきっかけであった。
■光ファイバが突然やってきた!
それは、有線ブロードネットワークスのチラシ。個人向けFTTHサービスの先鋒として知られる有線ブロードネットワークスだが、本格的にサービスインする前の実験区域に、偶然、私の家も含まれていたのだ。チラシには「光ファイバ接続による100M高速インターネット接続」とある。100M! 検討していたCATVインターネットが512kbps~1Mbps程度だった当時、100Mbpsのインフラが個人宅に引けるなど、想像もしていなかった。
しかも、半年間はモニターとしてアンケートに回答するだけで、接続費無料、初期の工事費無料、さらにPCを1台貸与という好条件。先着順とのことだったので、すぐに電話を掛けてモニターに申し込んだのは言うまでもない。
ひょっとして申し込みが殺到していて既に締め切りかも……と思いつつ電話を掛けたのだが、あっさりと受理されてしまった。集合住宅のため懸念していたケーブル引き込みなどによる外観工事も、エアコンの配管から引き込むとのことで問題ないとのこと。
数日後、工事が行なわれ、ついに自宅が常時接続環境となった。詳しい接続方法などは後述するが、当たり前だが速い! 速すぎる。半年間、快適な常時接続環境を享受し、モニター期間終了が近づく2001年春に発表された本サービスを当然のごとく申し込んだのであった。
モニター用に引き込んだ光ファイバケーブルをそのまま使用するのかと思いきや、本サービスに移行するにはいったん撤去し、新たに引き込み直すことになるとのこと。なるべく早く工事を行なってくれと希望は出したが、工事予定は2001年のGW、1カ月ほどの間、ダイアルアップ環境へと逆戻りすることになった。
待っている間は1カ月が非常に長く感じたものの、Web上の掲示板などを見る限りではかなり恵まれていたほうのようである。現在はどうかチェックしていないが、その頃はサービスエリアの広がりも遅く、予約開始と同時に申し込んでも一向に予定すら立たない、という人が非常に多かった。一向に工事の予定すら立たない状況に耐え切れずに、そのころ急速に普及し始めたADSLに変更した人もかなりいたようである。
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光ファイバは電話線の配管を通り、自宅内へと引き出される。ローゼットを改造して二段構造にし、下側に延びている黒いケーブルのようなものが光ファイバケーブルだ
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待ちに待ったGW、ついに工事が行なわれた。モニター期間とは異なり、今度は光ファイバケーブルを電話線の配管の中を通して部屋の中へ引き込む。このため、建物の所有者に許可が必要となったが、幸いなことに大家さんが理解のある人で、私の場合は障害とはならなかった。
引き込んだ光ファイバケーブルは、電話線のローゼットを改造して部屋の中に引き出し、レンタル品のメディアコンバータへと接続される。このメディアコンバータにLANケーブルを接続し、PCなりルータなりに接続することになる。工事担当者が持参したノートPCをメディアコンバータと繋ぎ、接続できることを確認して工事は完了だ。工事時間は2~3時間といったところだろうか。
なお、当時は初期投資として工事費が30000円~となっていたが、私の場合は最低料金の30000円で済んだ。ランニングコストとして接続・利用料がメディアコンバータのレンタル費を含めて月6000円程度であり、ダイアルアップでテレホーダイを利用していたときでも、テレホーダイ1800円+ISPに2000円の月額3800円だったので、常時接続+高速回線でこの値段は安いと感じたものだ。
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光ファイバはメディアコンバータへ接続、コネクタなどは使用せず、内部に直結されている。ちなみにPCが集中している机の足元に設置、なぜかタイヤで有名なイタリアのピレリ製だ
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メディアコンバータのカバーを外すとこんな感じ。一番右の黒いケーブルが光ファイバ、真ん中の青いケーブルはスイッチングハブへ接続しているEthernetケーブル、左がACアダプタのケーブルだ
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■噂に違わぬ高スループット、時として70Mbpsが出ることも
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各PCや無線LANのアクセスポイントへはスイッチングハブを経由して接続(下側)。上に乗っかっている黄色いボックスはまったく関係ないMIDIインターフェイス
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現在の自宅のネットワーク構成は、メディアコンバータ→スイッチングハブ→各PC and 無線LANアクセスポイントとなっている。通常であればルータを使用するところだが、今のところは使っていない。これは、FTTH開通当時の2001年春には、WAN側100Mの個人向けルータがまだ発売されていなかったからだ。ADSLの普及に伴い、手ごろな価格帯のルータは次々と発売されていたものの、10Mの製品ばかりでこれではFTTHのスループットに対応しきれないだろう、と判断しベンディングとした。今ではWAN側100Mの低価格ルータも数多く登場し、買おうかなと思いつつも、ついつい後回しにしている状態だ。
また、有線ブロードネットワークスはグローバルIPを5個振ってくれた(当時)ため、とりあえずルータを使用しなくてもIPが足りていたというのも理由の一つ。さすがに、素でPCをネットワークに参加させてはセキュリティ上危険なので、各PCにはソフトウェアファイアーウォールを常時稼動させて対策している。
この状態で、Web上のスループット計測サイトで計測してみると、平均的に30~40M程度、時として70M程度を叩き出すこともある。理論値の100Mはさすがに無理とはいえ、充分すぎるほど高速だ。
では、その高速回線を何に使っているかといえば……ごく普通にメール、Webブラウジングが主な用途。PC系のライターという職業上、製品のプレスリリースのPDFファイルやアプリのアップデータといった大きなファイルをダウンロードする機会が多いので、そういった場合には重宝しているが、正直言って常時接続でさえあれば、多少速度が遅くても困らないだろうとは思っている。
逆に、常時接続であることのメリットは非常に大きく、ライフスタイルが一変した。たとえば、出かける前に天気予報をチェックしたいというとき、以前なら117に電話するか、TVをつけっ放しにして天気予報をチェックしていた。これが、常時接続環境となることで、ちょいちょいとブラウザを操作して天気予報サイトを見るだけでよくなる。こういった具合に、知りたいことがあればすぐにWebで情報収集できるというのは、自分にとっては便利なことこの上ない。
■トラブル対応も基本的に満足、現在は安定運用
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狭い家ながらも、やはり無線LANは便利。あまり設置場所も考えずにディスプレイ上に置いてあるだけ
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最近はトラブルに遭遇していないが、開通当初はちょくちょくあった。内容としては、完全にネットワークが死んで外へ出て行けなくなるというもの。pingを打っても通らず、こうなるとサポートセンターに頼るしかない。
困ったのは、このトラブルが発生するのがなぜか真夜中に集中したということだ。有線ブロードネットワークスでは当然電話でのサポートセンターを設けているが、受付時間は平日10~21時、休日10~17時としごく常識的。ところが、こちらは締め切り前ともなれば時間など関係ないヤクザな稼業なので、せっぱ詰っているときにネットワークが使用できなくなるのはかなり焦る。もちろん、こういったときのために@niftyのアカウントも残し、ダイヤルアップ環境も整えてあるのだが……。
この症状は確か3回ほど発生し、サポートセンターに電話して工事担当者に自宅へ来て調べてもらった。結果、外部のネットワーク機器に問題があったようだ。おそらく時間もなかったのであろうが、その外部のネットワーク配線を繋ぎなおし、問題は解決。ただし、割り振られていたグローバルIPがそのたびに変更となった。また修理の際、屋内のメディアコンバータも、新しいバージョンへと一度交換が行なわれた。
特に記録などは取っていなかったので多少記憶があいまいだが、この障害は2002年に入ってからは発生していない、つまり現在はかなり安定して使用している。個人的にはサポートセンターの受付を24時間にしてもらいたいという希望がないわけではないが、電話さえすれば修理も当日、または翌日には完了していたので、サポートの対応自体はかなりよいほうだと思う。
■ランニングコストはちょっと高め
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ノートPCはすべて無線LANでも使用できるようにしてある。大きなファイルのやり取りをしない限りは、11Mの無線LANでも不便は感じない |
今まで述べてきたように、基本的にFTTHによる超高速常時接続環境には満足している。しかし、誰にでもすすめることができるか? というとちょっと疑問符がつく。
その主な理由はやはりコストだ。現在、月々のランニングコストは回線使用料4800円+メディアコンバータのレンタル代900円で5700円を支払っている。これに対し、ADSLであれば月3000円程度。100Mの回線が月5000円台というのは確かに大バーゲン価格なのだが、現状、ほとんどの個人ユーザーはその帯域を活かしきれないのではないだろうか。
Webは相手サーバー、そしてその間のネットワークにかなり速度が左右されるし、メールは多少大きなファイルを添付したところでそんなに帯域は必要としない。個人ユーザーの利用目的の中心となるこの2つは、ADSLでも必要にして充分な速度が出るはず。その帯域を生かし、ストリーミング配信の動画や音楽配信を行う有料サービスも出てきた。有線ブロードネットワークスにも同種のコンテンツはあるものの、正直いって現状ではまだ魅力は感じず、利用したことはない。この点に関しては、先日リリースされたWindows Media 9テクノロジーによって「お金を払う気にさせる」コンテンツが充実することを期待している。
逆に、頻繁に外のFTPサーバーとファイルのやり取りを行なうような人にはこの速度は魅力的だろう。ただし、グローバルIPが割り振られるとはいえ、DNSが必要となるサーバーの運用は規約上、行なうことができない。
また、初期費用としてどうしても工事費が掛かってしまうのもコスト的には厳しい。特に、私のように賃貸物件に住んでいる場合は、次に引っ越したらまた回線を引きなおさなければならないというのが頭にあるからなおさらだ。
とはいえ、次の住居がFTTHのサービスエリアに入っていれば、またFTTHに加入してしまうんだろうな、とも感じている。現状では帯域が生かしきれなくても、余裕があるというのは先々まで安心して使えそうな気がするからだ。それに、やはり単純に「速い」ということに惹かれてしまうのである、たとえ今はその帯域が宝の持ち腐れであるとしても。
(2003/02/20)
■参考データ
居住地区 | 東京都世田谷区 |
接続事業者 | NTT東日本 |
回線の種類 | 有線ブロードネットワークス |
プロバイダー | 有線ブロードネットワークス |
スループット | 47.5Mbps ( http://www.bspeedtest.com/ で計測) |
□有線ブロードネットワークス
http://www.usen.com/
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