■深みのはじまり
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歴代PCのなれの果て。無残にも捨てきれないジャンクの山に。ケースの中身は詰まっています
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筆者がパソコン通信を始めたのは約10年前。当時勤めていた某紳士服量販店の初任給でPC-9801BXを購入し、28.8kbpsモデムでNifty-Serveという、当時ではスタンダードなパソ通生活を送っていた。それから1年もしないうちにWindows 95が発売され、早速 GATEWAY P5-75に乗り換えて、Niftyのインターネット接続サービスでネットサーフィンを満喫していた。当時すでにテレホーダイというサービスもあったが、会社の寮生活では電話回線を個人で独占するわけにもいかず、今になって考えるとシャレにならないくらいの電話料金と接続料金を支払っていた。それでも当初はまだ、節度のある使い方をしていたのだが、PC雑誌に収録されていた体験版ゲームが人生を一気に狂わせたのだ。
そのゲームの名は「Quake」。id Softwareが「Walfenstein3D」、「DOOM」に続いて世に送り出した中毒性の高いアクションゲームだ。寝食を忘れひたすら、帰宅~PCを起動~「Quake」~朝になり出勤……と、まさしく「廃人の生活」を繰り返す日々。より快適に遊ぶため自作PCに手を染め、ひたすら速いCPUとグラフィックボードを求めて、Voodooが速いと聞けばVoodooを、RIVA128が最速と聞けばRIVA128を……と、気が付けば家には数台分のPCパーツのジャンクの山が。
シングルプレイでもソコソコの成績を収めるようになり、噂のマルチプレイで世界の強豪に殴りこみ! と、無謀な挑戦をしたものの見事に玉砕。世界の壁は厚かった! もちろん腕の差もあるが、それ以前に回線の遅さが致命的。世の中はすでに56kbpsモデムが主流で、28.8kbpsで戦うには限界があった。タイムラグ(ネットワークの通信速度が遅いために生じるズレ)がひどくて、気が付いたら死んでいる。こりゃイカン、と56kbpsモデムを購入。回線は速くなったが、ネット対戦でのタイムラグは改善されていない。どうやら接続業者の違いや、サーバーの選択で速度差があることがわかった。しかし当時、市内のアクセスポイントはNiftyにしかなく、市内通話料金で済ますためにはNiftyを使う以外の選択肢はない。風の噂じゃ、アメリカでは日本に比べ定額常時接続という夢のようなサービスがあるとか……うらやましいぞアメリカ人! 結局、通信費がバカにならないくらいの金額になり、泣く泣くネット対戦から一時撤退することにした。
■再び深みへ
それから数年後、会社を辞め、家業を継いだ。プロバイダーもNiftyからSo-netへ変更し、新しい仕事のためにISDNを導入した。仕事用の回線なので自宅ではなく、隣の工場の事務所に設置。通信ゲームは自宅でやるため、相変わらず56kbpsモデムを使用していた。世間ではテキスト主体のパソ通から、動画や音楽が派手なインターネットの時代に移り変わり、ゲームの世界も「Quake」から「QuakeII」と世代交代があった。ほかにもマルチプレイに重点を置いた「Unreal」、ネットワークRPGという新しいジャンルを切り開いた「Diablo」、数千人が遊べる世界規模のRPG「ULTIMA ONLINE」、対人戦にチーム戦の要素を持ち込みネットワークで生まれた「Counter-Strike」などが登場し、ゲームをするために、高性能のPCと高速な回線が必要な時代になっていたのだ。
もっと高速な回線を! と望んでみても、筆者が住んでいる場所は山の中の一軒家。下水が通ったのは2年前、隣の家まで池を挟んで直線で50mという立地条件の僻地では、そう贅沢はできない。しかし、まったく期待していなかったADSL開通のお知らせが来た。喜び勇んで申し込みを! と思ったが、その前にまずPCの配置を考えなくてはならない。仕事場のISDNをADSLにするのはよいが、本来、回線を速くしたいのは自宅のゲーム専用マシン。当時、仕事場にはMacが2台、Windows機が1台。これらはLANを組んでISDNに接続していたが、ゲーム専用マシンは隣の自宅で通信離れ小島状態。とにかく安く、そして簡単に全てのパソコンを繋ぎたい。そうでなければADSL導入もあまり意味がないのだ。
工場から自宅まで、直線距離約20mを繋ぐためには何をすればいいのか? いろいろと雑誌やネットを調べて、無線LANがオモロイかも! と関西人的ウケ狙いの思考で決断し、いざ日本橋へ。9,000円で投げ売りされていたオムロンのMW640UWを実験用に購入した。説明書には通信距離が屋外100m、屋内50mとある。工場と自宅のPCとの接続を試みたのだが、繋がらない。お互い室内だからなのかと思い、今度はアンテナを両方とも屋外に出しチェック。やはりダメ。予想はしていたが、どうも無線はNGのようだ。とすると残るは有線だが、直線20mの距離を配線すると速度低下はどのくらいになるのだろうか。それよりも予算は?
さっそく馴染みの電気屋に相談すると、ケーブルさえ用意してくれれば工事費は5,000円でとの事。すぐさま工事に掛かってもらいました。最初っから有線にしておけば……と後悔先に立たず。とりあえずADSLの申し込みを済ませ、50mのLANケーブルとコレガのブロードバンドルータ「BAR SW-4P」、ゲームPC用のLANボードを購入。ケーブルの設置工事も無事に済み、あとはADSLの開通を待つだけの状態。ちなみに申し込んだのは、NTT西日本のフレッツ・ADSL 1.5Mプランだ。
1カ月後、NTTより工事日のお知らせがあり翌日には工事完了。ADSL開通となったはずだが繋がらない。工事の人が試したら繋がったのに、なぜ? 慌てて倉庫に放り込んだモデムを取り出し、工場の電話に繋いでネットに接続。ん? 接続? あっ! プロバイダのコース変更をするの忘れていた。そりゃあ繋がらないわ。急いでコース変更をして、数時間後に再度ADSLで接続。今度は無事に繋がった。
さて、速い回線を手に入れ、世界へのリベンジの時は来た! 選んだゲームは「Return to Castle Wolfenstein」のマルチプレイデモ。「Counter-Strike」と同じくチーム戦を主体とするゲームだ。プレイヤーの視点でプレイするシューティングゲームで、娯楽性がより強くなっている。
もう軟弱な回線とは呼ばせない! PINGで一番速いサーバーを探して、銃弾飛び交う架空戦場へ! ……カクカクしか動かない。回線は軟弱なボウヤではなくなったものの、どうやらPCが時代遅れの遺物に成り下がっていたようだ。とりあえず必要最低限のビデオ設定に変更し、再度参戦。今度はもたつく事なく順調に遊べて快適。画面スカスカだけど。
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屋根の下あたりから伸びているのが、5,000円で工事をお願いしたLANケーブル。仕事場のルータから自宅まで伸びている
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今まで使っていた通信機器。すでに時代遅れでジャンク品と成り下がっている
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■更なる深みへ
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適当な増設を繰り返したのがわかる回線終端装置まわり。これを整理するだけでも接続速度が速くなりそう
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ゲーム用PCも高クロック機を導入し、存分にネット生活を楽しんでいた半年前。NTTから「Bフレッツはじめます」という電話があった。つい最近、大阪の一部で試験的にサービスを開始したとは聞いていたが、まさかこんなにも早く光が僻地に来るとは思っていなかった。しかし、よくよく話を聞いてみると、「近々、この地域もBフレッツのサービス対象地域になる予定です。Bフレッツのサービスは、申し込み件数が必要数に達した場合に開始されます」という内容。なんだ、開始したんじゃないのね。しかも筆者だけが申し込んでも、いつ開始するかどうか。でも、今申し込めばサービス開始と同時に工事してくれるというので、取り敢えず申し込んでおいた。
NTT西日本のサイトで確認してみると、確かに我が町はサービス対象予定となっている。ただ、「我が町」が対象地域なのであって、我が家は山の中の一軒家。町の中心地域は山の向こう側である。それからしばらくは週に1回、NTTのサイトでサービスがいつ開始されるかドキドキしながらチェックしていたが、何カ月後かには頭の中からBフレッツの事はきれいサッパリ消え去っていた。
Bフレッツが完全に頭の中から消え去って数カ月後の2002年11月12日。NTTから「Bフレッツの取り付け工事が11月15日から開始されます」と電話がありました。えっ? そんな急に? まだ準備も何もしてないのに。とりあえず、後で返事をすると答えて、急いでネットでBフレッツを導入するためにはどんな機器が必要か、設定はどうするのかを調べてみた。すると、プロバイダのコース変更手続き以外はADSLのままでOK、今回はADSLの時のように慌てずに済みそうだ。
調べ終わってからNTTに電話すると、15日の工事受付はすでに終了し16日になるとのこと。電話があってからかけなおすまで30分くらいの間に1日遅れをとってしまったようだ。16日の工事をお願いして、あとは工事を待つばかり……だったのですが、15日に今度はNTTの代理店の工事会社からという電話があり「16日は土曜日ですので、NTTは休日になります。18日の月曜日でよろしいでしょうか?」と。休みなら仕方がないので18日でお願いしますと返事をして18日を待つことにした。
16日の土曜日はNTTが休みでも筆者は仕事。しかも月曜日に納品する仕事があり、土曜日中に仕事を仕上げないと間に合わない。PCの周りは資料や材料でヒッチャカメッチャカの混沌状態だ。その中で仕事をしていると、「すみませーん、Bフレッツの設置にきました」とNTTの人がやってきた。「16日は休みで、18日になったのでは?」と聞くと「そんな連絡はしてませんし、今日は休みじゃないですよ」との返事、いったいなんだったのでしょうか? あの電話は。
とりあえず工事が早くなったのは良い事なので、わけのわかんない電話は気にせずにお願いすることに。さっそく作業開始だが、部屋は足の踏み場がないくらいに積み上げた資料や材料の山。すごく無理な体勢で作業をさせてしまった。NTTの人ごめんなさい。本当は、PC周りは綺麗にするつもりだったんですよ。ただ今日は来ないって電話があったし。普段から綺麗にしていればいのだが締め切り前だったし……ね?
工事はなんとか終了し、いよいよ接続テストだ。NTTの人が持参したノートPCを接続すると、きちんと繋がっている。次は期待の速度チェックです。結果は、おおう! 84Mbpsとな! 速い! 8.4Mbpsの間違いでなかろうな? 8.4Mbpsでも十分速いのですが、もう一度確認してもやっぱり84Mbpsです。う~ん、これであと10年は戦える!
NTTの人も帰り、早速Bフレッツの世界を体験! といきたいトコだが締め切り前だし、プロバイダーのコース変更手続きもまだ。So-netのサポートセンターに電話してコース変更の手続きをお願いし、ケーブル類の接続だけはしようとルータを接続する。あれ? なんか変だぞ? NTTの人が自前のノートPCで繋いだ時とランプの光り方が違う。4つあるランプのうち、LINKが黄色で、FULLがまったく反応していない状態だ。
コース変更の手続きをした時に1時間ほどしたら使えるようになると返事があったので、まだ繋がっていないのかもしれない。取り敢えず仕事に戻りましたが、1時間たっても2時間たってもランプは黄色と無点灯のままです。まだ変更手続きが終わらないのだろうか? 試しにブラウザを立ち上げてみるとネットに接続できている。確かにADSLの時に比べ、重たいページもサクサク表示されるので確実に回線は速くなったようだが、回線終端装置のランプは黄色と無点灯のままだ。まあ、接続できる以上問題はないだろうと思いながら回線速度のチェックをしてみた。
下り:4.334Mbps 上り:2.67Mbps
あれ? ADSLの時よりは確実に速くなっているが、84Mbpsはどこにいったのだ? あれは夢だったのだろうか。ルータを通さずに直接PCを接続すると全てのランプが点灯した。どうやら原因はルータらしい。何か設定が間違っているかと、物置からルータの説明書を取り出して読むと……あっ、BAR SW-4PのWAN側は10Mbpsだったのね。そうか。そりゃ、いくら接続が正しくても対応してなきゃ回線の性能は100%発揮できませんね。気を取り直してPCを直結して再度回線速度のチェックをしてみる。
下り:5.123Mbps 上り:2.64Mbps
ちょっとは速くなったが、84Mbpsどころか8.4Mbpsすら届かない。残る原因としてはプロバイダーだろうか? プロバイダーだけが原因でなくケーブルやルータ、LANカードなども見直す必要があるかもしれない。とりあえずプロバイダのサポートに電話してみた。
筆者:「すみません、今日からBフレッツに変更したのですが、速度が遅いんですけど」
サポート:「回線は幾つかの中継点を経由していますので、そちらが光でもサーバー側が対応してない場合は速度が出ない場合があります。Internet ExplorerよりNetscapeの方が、よい結果が出る可能性がありますのでそちらで試してください。またウイルス対策ソフトや、ファイアウォールなどを常駐している場合も遅くなります」
フムフムなるほど。確かに我が家だけ光でも、接続先と我が家の間の1カ所でも遅ければ遅くなるし、ウィルス対策ソフトや、ファイアウォールを利用すると遅くなるというのは聞いた事がある。しかしさすがに怖くてそれらは外す事はできない。ここはひとつ、使ったことがないNetscapeを落として再度計測してみよう。
下り:5.4Mbps 上り:2.7Mbps
かわらんやん! 微妙に速くなっているのも、誤差の範囲だ。やっぱし回線の問題だろうか。一人で考えても手詰まりっぽいのでネットで色々調べてみると、MTUだのRWINだのTTLだのと、筆者には全く理解のできない設定で通信速度が変わる場合もあるとのこと。そういえばPCショップでも通信の最適化を目的にしたソフトが売っているし、フリーソフトでもその手の最適化ソフトがある。
検索を続けるとプロジーグループ(http://www.pro-g.co.jp/index.html)の「Xpturbo for ADSL」というフリーソフトを発見。どうやら製品として販売されているXpturboの一部機能を無料で使えるようにしたソフトのようだ。使える機能は[システムレポート]と[インターネットの最適化]の2種類。今回はインターネットでの最適化が必要なので、これで充分だろう。筆者の使用しているOSはWindows XPだが、最適化をすれば多少なりとも速くなるかもしれない。プロジーグループのサイトからダウンロードをして起動。メニュー画面から[インターネットの最適化]を選び、[インターネット接続の自動設定]で使用している接続方式から[FTTH]を選択して再起動。再び計測してみる。
下り:19.34Mbps 上り:3.28Mbps(IE)
下り:20.871Mbps 上り:3.28Mbps(Netscape)
速い! こりゃ速い! 効果抜群だ。しばらくはこの環境で我慢したいと思う。あっ、そうそう。ネットゲームの方は、自分だけ速くなってもサーバーが重けりゃ結局ダメ! 世界中の回線がもっと増速されますように。
(2003/02/27)
■参考データ
□Bフレッツ(NTT西日本)
http://www.ntt-west.co.jp/ipnet/ip/bflets/
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