■いつでも、どこでも使いたい!
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自宅ではUSBでAir H"対応電話機と接続。パソコンはSOTECのe-one。PCカードスロットが付いているが、ボディ下部の奥にあるためカード型端末だと使いづらい。USB接続なら融通がきく |
筆者がパソコン通信を始めたのは300bpsの手動発信モデムのころ。ネットワーカーなら誰もが「いつでもどこでも接続したい!」という夢を見ていた時代。当時は定額制プランなどなく、一般電話回線で3分10円、遠距離のホストやアクセスポイントならそれ以上の通信料金を電電公社(現NTT)に支払わなくてはならなかった。携帯電話もまだ現在のように普及しているわけではなく、「どこででも」というのはそれこそ夢の話だった。
後にモデムは56kbpsまで速くなり、ISDNもスタート。CATVやADSL、光接続と回線はどんどん高速化し、通信料金もテレホーダイから、フレッツなどの定額制へ。携帯電話やPHSの普及で、どこでもネットに接続できるという夢も実現されてきた。ここまでわずか十数年……。いやぁ、技術の進歩って凄いものだ。
現在、筆者はDDIポケットのAir H"を使用している。「32kbpsのAir H"がブロードバンドかよ!」というツッコミもありそうだが、いつでもどこでも常時接続という環境を手に入れ、生活が変わってしまったという話なので、どうかご了承を。
■テレホーダイの呪縛
以前の筆者は、アナログ回線にテレホーダイというごく一般的なネットサーファーだった。ISDNにも興味はあったが、56kbpsと64kbpsの違いを見いだせず、また基本料金が上がってしまうことや、手続きが面倒だということで移行できずにいた。テレホーダイが始まる23時にネットに繋ぎ、集まった仲間とチャットでワイワイと賑わう。そんな日々を送っていたのだ。
当時はひどい混雑で、テレホーダイの始まる23時に接続することは一苦労だった。チャットに乗り遅れると寂しいので、23時よりも少し前にアクセスしたり、プロバイダーに苦情を入れてみたりと戦いの毎日だった。だんだんと混雑は緩和され、チャットや掲示板も快適に楽しめるようになってきたある日、23時のチャットメンバーが少なくなってきていることに気づいた。フレッツ・ISDNの普及で、いつでもネットに接続できるようになり、わざわざ眠い深夜にやる必要がなくなったのだ。たまに昼間に盛り上がっているログを目にすると、ひとり置いていかれた気分にもなる。
「フレッツ・ISDNにしても、基本料金が上がるし、昼間は仕事で使えない時間がもったいないから……」と自分を納得させてみるものの、なんだか23時から始まる仲間との楽しい時間を奪われたようでさびしい。「あぁ、どこでもネットできたらなぁ。いつでもみんなに会えるのに……」
■モバイルの時代
このころになるとPDA、持ち歩ける情報端末の普及で、モジュラー付きのISDN公衆電話が増えてきた。モバイル時代の幕開けだ。筆者もNECのモバイルギアを購入し、ISDN公衆電話でのモバイルアクセスを開始。パソコン通信は、かなり優秀なソフトが入っていたので快適にアクセスすることができたが、インターネットはテキストブラウザのためチャットは無理。しかし、掲示板を読むくらいならなんとか大丈夫だった。後にWindows CEのPDA(H/PC)も購入。「ポケットIE」でのネットサーフィンはそれなりに満足できるものになった。
公衆電話を探してのアクセスというのは、これがなかなか窮屈なのだ。現在よりもモバイルアクセスの認知度が低かった時代。公衆電話でアクセスしていると、他人から奇異な目で見られたり、「電話かけないのならどけ!」と怒られたり。「携帯電話を買おう」とも考えてみたものの、9.6kbpsというパソコン通信時代並みの通信速度ではなんとも。料金も高くてちょっと手が出ない。PHSなら料金も安く、通信速度は32kbpsと高速。でも、「電波が弱く切れやすい」という噂から手を出すことができなかった。
そんな時、さっそうと現れたのがDDIポケットの「H"」。ツインウェーブで切れにくく、通信速度は64kbps。PHSの弱点をカバーしながらも、料金はPHSと同程度。はい、即加入しましたとも。通信カードも同時購入し、快適なモバイル通信ライフが始まったかにみえた。しかし、いくらH"の通信料が安いといっても1分10円。当時は従量制が当たり前で、調子に乗って使い過ぎた月の請求書は……(汗)。
■ADSLにしよう! え、ダメなの?
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筆者が住んでいるのはこんな田舎。すぐそばに見える山まで行くと、もうPHSは圏外となる。2005年日本国際博覧会(愛知万博)の会場予定地もすぐ近く |
外出先ではH"を利用していたが、自宅の環境はというと、56kbpsモデムにテレホーダイ。電話料金を気にせずに使用できるのは夜だけ。しかも速度が遅く、とても満足できるものではない。
しばらくするとADSLが登場。既存のアナログ回線で1.5Mbpsの速さ、しかも定額! こんなオイシイ話はない。ISDNにしていたらアナログに戻す手間もあったのだろうが、ウチはアナログ回線。もう、行く手を阻む壁はないっ!
……あ、エリアの問題があったか! 自宅は市内だが、かなりの田舎。まぁ、取りあえず調べるだけ調べておこうと、ネットでエリアや距離等をチェック。取りあえず提供エリア内ではあったものの、距離をNTTのサイト(線路情報開示システム)で調べてみると「測定不可」! なぜ? どうして! 直線距離は約3kmと微妙なところではあるのだが……。
試しに近所の電話番号で調べてみても、どれも「測定不可」。周辺一帯のすべてが測定不可と出ている。自宅の前には山、その向こう側に電話局。それで線路長が長くなって……と思っていたら、自宅の近くで「RT-BOX(※注)」なるモノを発見。どうやらこれが原因らしい。たまにやってくるセールスマンが、口を揃えて「ISDNを……」という理由がわかった。ADSLにできない事情はよく聞くが、まさか自分もそうだったとは。
※編集部注:RT-BOX型の局舎は、電話サービスに必要な交換機などの装置のみを収容した、物置のようなコンパクトな建物。RT-BOX型の局舎ではADSLサービスを提供するのに必須の集合型モデム装置DSLAMなどを設置するスペースがほとんどの場合ない。このほか電源容量の問題もあり、RT-BOX局舎に収容されている回線ではまずADSLは利用できない。
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■いつでもどこでも常時接続!
ADSLへの移行は壁にぶつかってしまった。今さらフレッツ・ISDNにするのもどうかと思うが、CATVも縁がないし、光なんかまだまだ。「あきらめてフレッツ・ISDNにするしかないかなぁ」と、一足先にADSLに移行した知人のTAを譲り受けたものの、手続きの手間などを考えるとなかなか重い腰が上がらない。そんな時、ふと気付いたのが「Air H"」。使っている電話機はAir H"にも対応していたのだ。早速DDIポケットにAir H"を申し込んだ。
申し込みからわずか2日。あっという間に常時接続環境を手に入れることができた。家の中どころか会社や外出先など、いつでもどこでも使える常時接続を。
接続速度は最大32kbps。ADSLに比べるとはるかに遅い、ISDNよりも遅い。しかし、それ以前が56kbpsモデムだったこともあり、それほど苦にはならない。それよりも「いつでも、どこでも」ネットに繋がるほうが快感なのだ。仕事の昼休み、外出中の待ち時間、もちろん自宅でも。どこででも、好きな時に好きなだけ接続できる楽しさ、そして便利さ。もう固定回線には戻れそうにもない。
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会社のデスクで利用している98NOTE。PCカード経由でAir H"対応電話機と接続。仕事の合間に接続しているが、さすがにPC自体が旧型なので動作が重い |
電源が確保できないところや、外出時にはNECのモバイルギアIIとAir H"。古いモノクロの機種だが、太陽の下ではモノクロのほうが見やすく、乾電池で動くので便利 |
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電源が確保できる場合はノートパソコンとAir H"。モバイルギアでは手におえない時は、ちょっと気合い入れてパソコンで。大画面でカラーは気持ちがよい |
いままで利用してきた通信機器。上:Air H"対応USBケーブル。中段左から:みなし音声通信方式ができるモデムカード、32kbps通信のカード、64kbps通信のカード、Bluetoothカード、Air H"通信カード。下段:H"、feelH"。右端が現在使用中のAir H"対応H" |
■空気のようなインターネット、Air H"に賛成
筆者の場合はADSLが使えず、結果として行き着いた先がAir H"だったが、すでにADSLをはじめとしたブロードバンド環境を手に入れた諸氏にもオススメしたい。それほど「どこでも使える」ということがもたらすものは大きい。
昨年からサービスが開始された128kbpsパケット通信サービスは、料金がまだ高いことや音声端末が未対応ということなどもありまだ利用するには至っていないが、やはりその速度は気になるところ。この春、NTTドコモも「@FreeD」というサービスを始めるし、モバイルブロードバンドはまだまだこれから。非常に楽しみだ。
(2003/04/03)
■参考データ
回線の種類 | Air H" |
接続事業者 | DDIポケット |
プロバイダー | PRIN |
スループット | 20kbps程度(最大32kbbs) |
□DDIポケット
http://www.ddipocket.co.jp/
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