■国際FAXは、電話代が大変!
1992年に友人がロサンジェルスに渡り、そこに住み着いてしまった。それまでその友人とは、FAXを使って情報交換をしていたので、以降は国際電話回線を使ったFAXのやり取りをすることになってしまった。当然、国際FAXにかかる費用は膨れ上がり、電話代は莫大なものになってしまったのだ。
筆者がインターネットの存在を知ったのは1995年5月ごろ。それまでNifty-Serve(現@nifty)で、毎日せっせと国内の友人たちとメールをやり取りしていたが、Nifty-ServeからINETゲートウェイを介せば、ロスにいる友人ともやりとりができるということがわかった。しかも、国際電話ほどの電話代もかからない。それに気が付いてから半年ほどは、Nifty-Serveのメールを使ってロスの友人とやりとりを繰り返していた。インターネットといっても、このころはまだWebの存在さえ知らず、もっぱらテキストのメールのやりとりだけ。FAXと違って、「なぜ国際電話代が不要なのか?」ということさえ理解できず、不思議に感じたものだ。
当時、日本ではインターネットブームに火がつき始めたころ。筆者も10月末にはプロバイダーと契約し、11月からアナログモデムによるダイヤルアップ接続を開始することにした。そこでは、Webのグラフィカルな表現や瞬時にやり取りされるメール交換に驚きの連続。また、それを体験することの満足感に浸っていた。ダイヤルアップによる電話代はこれまた莫大になってしまったが、インターネットにはそれをも超越する満足感があったのだ。
■ドメイン取得とISDN化
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ISDNターミナルアダプタ「MN128」。しかも、初期ロット品 |
当時、1.5Mbpsの専用線は月額250万円ほど。米国でも同じ速度のT1回線が月額2,000ドルだった。これはもう、とても個人では手が出せるものでなく、高速常時接続なんて全く別世界のものだと思っていた。しかし、ロスに住む友人から「T1回線で常時接続にし、インターネットサーバーを設置したよ」と連絡が入ったのだ。さらに、筆者のために「kaze.com」ドメインを取得してくれたとのこと。やはり米国は進んでいるなぁ……と感心したものだ。ちなみに、この「kaze.com」の由来に深い意味はなく、ドメイン名取得にあたって英単語はほとんど登録されていたので、日本語から選んだらしい。当時、日本語の.comドメインは登録が少なく、取得が容易だったそうだ。kazeはアフリカの言葉では良い意味があるそうだが、米国では「kaze = kami-kaze」と捉えられることが多く、過去に何度もサーバーハッキングのアタックを受けている。
サーバーのOSにはFreeBSDを使っているとのことで、筆者もこの時期からFreeBSDを猛勉強し、とうとう友人の会社があるロスにインターネットサーバーを所有するに至った。現在は.comドメインのサーバーを日本に設置しても構わないが、インターネット初期は.comドメインは米国に、.jpドメインは日本に置く必要があったのだ。そして、サーバーメンテナンスと米国のコンピュータ事情を知るため、このころより頻繁にロスへと出かけることになった。現在は、TelnetやFTPを使って日本からメンテナンスしているが、年に1度はサーバーを拝みに行くという理由で、渡米は今でも続いている。
しばらくはアナログモデムによるダイヤルアップ接続に満足していたものの、だんだんと速度が気になり始めた。それまで存在を知っていたものの、手を出していなかったISDNに興味が出て、インターネット接続からわずか2カ月ほどの年末にはとうとうISDN化をしてしまった。当時人気があったMN128というTAを、知り合いを通して6万円ほどで購入。ISDNで一般的な64kbpsではなく、2Bチャンネルを使った128kbpsで通信。これはとても速いと感じた。
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フレッツ・ISDN時に使用していたMN128-SOHO SL11 |
フレッツ・ADSL 1.5Mbps時代に使用していたブロードバンドルータBEFSR41とADSLモデム |
■ISDNからADSLへ。電話番号が変わる?
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下は、T-comからレンタルのADSLモデムルータ「TE4121C」。ルータ機能に優れている。上に乗っているのはスイッチングHUB |
人間というのは欲が深いもので、2000年8月29日に「フレッツ・ISDN」を導入。2Bチャンネルによる128kbpsは使えなくなったが、24時間いつでも接続できることには満足。少々遅くても電話代を全く考えなくてイイというのはまるでパラダイスだった。自分専用のアクセス電話番号があるというのも優越感が満たされる。FreeBSDのオンラインインストールを就寝前に起動し、起床するとインストールが完了していたのには感激したものだ。
自宅がある埼玉越谷でも、フレッツ・ADSLのサービスが開始されることになった。しかし、気が付いたのはすでに申込が始まったあと。急いで登録したこともあり、開通はかなり早い時期だった。1年も経たずして「フレッツ・ADSL 1.5Mbps」に切り替えたわけだ。開通1週間前にNTTから連絡があり、「電話番号が変わってしまうことになりました。誠に申し訳ありません」とのこと。申し込み時に電話番号が変わらないことを確認していただけに「それじゃ、イイ番号でなきゃイヤだ!」と文句をいってみる。すると、なんと良い番号を準備できるということなので了解することにした。
開通当日の2001年5月25日は会社を休み、電話の前でじっと連絡を待ち受けていた。
「これからISDN回線を切離しADSL工事をします。30分くらいで終わります」
よし! 早速TAを取り外し、替わりにスプリッタ、ADSLモデム、ブロードバンドルータ、電話機を接続。しばらくしてADSLモデムのリンクランプが点灯し、テストをすると実行速度で1.2Mbps以上が出る。あっけなく繋がってしまった物足りなさはあるが、まぁよしとしよう。
■1.5Mbpsから8Mbpsに。今までなかった問題も発生
フレッツ・ADSLはすごく快適で、下り1,536kbps/上り512kbpsとフルリンクだったが、各プロバイダーがADSL 8Mbpsサービスを次々に開始。1.5Mbpsから8Mbpsになるとどんなに素晴らしいだろう? と思い、受け付けが始まったばかりのYahoo! BBを申し込みをした。開通はいつかいつかと待っていたが、待てど暮らせどYahoo! BBからはなんの連絡もなく、とうとう怒りも頂点に達する。Yahoo! BBをあきらめ、11月5日にT-comに申し込む。申し込んでからわずか5日後にはADSLモデムルータが届き、その月には開通してしまった。
しかし、今までのように順調というわけではなく、大きく2点の問題があった。
・電話がかかってくるとADSLリンクが外れてしまう
・ADSLリンク切れがよくおこる
電話がかかってくるとADSLリンクが外れてしまう現象は、フレッツ・ADSL 1.5Mbpsではなかった。調べてみると、わが家に設置されているNTTの保安器「6PT」の初期型は、着信時にADSL回線が切断されてしまうらしい。この保安器部品をADSL対応の「6PS」に交換することでこれは解決。
次に、ADSLリンク切れがよくおこる件だが、コモンモードノイズフィルタのミヨシ「NTF-22」とNTT-AT「DMJ6-2L」を直列にして、モジュラージャック~ADSLモデム間に入れてみたらほぼ解消。このフィルタを入れることでリンク速度も大幅アップし、下り7,616kbps/上り928kbpsを確保することができた。
問題ばかりあったわけでもない。T-comからレンタルしていた「TE4121C」というADSLモデムルータのルータ機能は非常に良かった。ドキュメントがしっかりしており、非常に細かい設定をするのも苦労しなかった。このTE4121Cのルータ設定はとても楽しく、おもちゃで遊んでいるようだった。
設定をいろいろと遊んで楽しくなったからというわけではないが、自宅でインターネットサーバーを構築してみた。ところがT-comでは、IPアドレスの割り当てがコロコロ変わってしまうのだ。接続し直すと必ず変わるし、利用回線内にIPパケットが流れないと30分くらいでT-com側から接続を切離しにきてIPアドレスが変わってしまう。こりゃ~たまらん! というわけで別のADSLプロバイダーを考え始めるのだった。
■再びYahoo! BBに申し込み。その先にあるものは……?
以前に、対応が悪いことでキャンセルしたYahoo! BBだったが、最近はサービスや対応もずいぶんと改善されたと聞く。また、Yahoo! BBのシンプルなIPネットワークが、他のプロバイダーの方式(PPPoEのような認証手順が必要)と違って非常に魅力的に思えてきた。そこで世の中が12Mbpsになりつつあるのと同期して、思い切って再度Yahoo! BB 12Mbpsを申し込んでみたのだ。
そのためには、まずT-comを解約する必要がある。T-comでは解約後にNTTにジャンパー外しを依頼するようで、このため、Yahoo! BBが開通するまで2週間以上もアナログモデム生活を強いられることになった。しかし、Yahoo! BBは無料のダイヤルアップ接続をサポートしていたので料金的には非常に助かったが、やはり30kbps前後はつらかった。
2002年11月18日にYahoo! BB 12MbpsもBBフォンも開通。そしてこの記事を書いている現在も利用している。開通したときは、地獄から天国に舞い戻った感激があった。すでにNTT回線に対する対策は終わっていたので、リンク速度は下り8,544kbps/上り992kbpsも出た。わが家のNTT回線は、開示情報によると「1,910m/35dB」と出るので、どうやらこの辺りが限界のようだ。しかし、ADSL関連掲示板を見ていると、筆者の場合はまだかなりマシみたいなので良しとしましょう!
懸案の自宅サーバー問題も、Yahoo! BBではIPアドレスの割り当てがほとんど変化しないのでクリアできたようだ。例えリンクダウンしても、DHCPサーバーが割り当てたIPアドレス生存期間が24時間なので全然変わらない。準固定IPアドレスのように使える。まさにインターネットサーバー設置にはピッタリのADSLプロバイダーだといえるかもしれない。
さて、あまり期待していなかったBBフォンだったが、これもまたイイ! 例のロスの友人宅へ電話しても音質に問題はないし、1分たったの2.5円は安い! 隣の家に電話(国内は3分7.5円)するのと同じくらいに安い! 筆者にはまさにうってつけのIP電話なのだ。
そしてわが家は今、このYahoo! BB 12Mbpsのおかげでブロードバンド・パラダイスとなっている。家族は1人1台パソコンを所有し、ブロードバンドルータ「BUFFALO BLR2-TX4L」とスイッチングHUBを使って、ネット環境を共有している。家族同士の連絡にも、メールを使うほど。いつでもBフレッツでFTTH化できるのだが、ADSLでも7Mbps以上のスループットが出ている現在、まだまだYahoo! BBで満足できそうだ。
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左の、OMRON PAWLI BX35XFというUPSの上に置いてある四角いのがインターネットサーバー。ほかは、ブロードバンドルータやYahoo! BBのトリオモデムで現在稼動中 |
(2003/05/15)
■参考データ
居住地区 | 埼玉県越谷市 |
接続事業者 | Yahoo! BB 12Mbps |
回線の種類 | ADSL |
線路距離長 | 1,910m(NTT開示情報表示による) |
伝送損失 | 35dB(NTT開示情報表示による) |
プロバイダー | Yahoo! BB |
スループット | 7.5Mbps |
□Yahoo! BB
http://bbpromo.yahoo.co.jp/
□T-com ADSL
http://www.t-com.ne.jp/
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