「お世話になっております。通信機器設置工事及び光ファイバ工事日が決定しました。」
1通のメールが来ました。うちのマンションの理事長となり、初めて受けたメールでした。そうです、有線ブロードネットワークス(以下USEN)からの工事の日程が決まったお知らせでした。昨年はBフレッツマンションタイプ導入、さらにその1年前は、地元の多摩テレビのCATVインターネット導入を実施したので、これでうちのマンションでは、3社のブロードバンドサービスから選べる事になります。
「IT革命」なるものが叫ばれて数年経過しました。会社では、業務連絡、稟議決済、給与明細などさまざまなものが電子化され、インターネットを活用するのが当たり前になり、IP電話導入する企業も増えてきました。そんな中、家庭内を見ると、ブロードバンドを活用するサービスが少ないというのが実感です。通信販売やオークションはすっかり定着しましたが、アダルト関係の方が積極的にブロードバンド活用しているような気がします(笑)。
ブロードバンドならではの使い方が流行るには、コンテンツの内容よりも、著作権のあり方を変える必要があると思うのは私だけでしょうか。また、ADSLとFTTHの速度合戦・シェア合戦に目を奪われ、何か大切なものを見落としている気がするのも、私だけでしょうか。
今回は、マンションに住む側から、高速なブロードバンドサービスは本当に必要かどうかや、ブロードバンドの有効活用法について考えたいと思います。
■引越し・懐かしい56K
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廃棄マシン再生が趣味
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7年ほど前、私は八王子市南大沢に、神奈川県から引っ越してきました。引越し前のインターネット環境は、懐かしいテレホーダイで、毎晩時間を気にしながらインターネットに接続するという状況。
引越ししたら、「きっとニュータウンと呼ばれるからには、インターネット環境は恵まれているだろう」と甘い予想をしていました。しかし結果はというと、ISDNかモデムによる接続のみ。日曜の朝8時まで「ピー、ヒョロヒョロ」で目を真っ赤にしていました(笑)。
■ケーブルテレビ(CATV)でインターネット
そんな数年間が過ぎたある日、入居時に加入し、通常のTVを見ているCATV回線でインターネットサービスを開始する事が決まりました。早速申し込みを行ない、テレビ局の設備と、家庭内のアンテナ変更だけでサービス開始可能なので、特に理事会や総会で問題になることもなく、スムースにサービス開始されました。初めて体験する256kbpsは夢のような速さでした(笑)。また、定額料金で使い放題の環境に感激したのを今でも覚えています。しかし、間もなくADSLによる常時接続サービスがNTTから開始され、ADSLに押されるようにCATVも増速を行ない1Mbpsを超えました。CATVが、ADSLと良い意味で競争した結果でした。
普通なら、これで当分は安泰なのですが、常時接続でTOP40などの洋楽を流している方がインターネットを使って楽しいと感じる私は、この「常時接続」に傾倒していきました。会社から帰ると深夜までインターネット三昧の常時接続が毎日の習慣になると、どこからか「どうせ常時接続なら自宅サーバー」の声が反響し、私の頭の隅に居座るようになったのです。廃棄寸前マシンをベースに、立ち読みや自宅サーバーサイト巡回で勉強開始しました。調べていくと、CATVから振られているIPアドレスが、プライベートIPアドレスなので、サーバーなんて出来ない事がわかりました、当時は、1万円を超えるサービスへ変更しないと、グローバルIPアドレスはもらえなかったのです。
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CATVでのPC環境
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■あきらめたADSL――Bフレッツ光への挑戦
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光ファイバの引き込み
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以上のような事から、グローバルIPアドレスを何としても手に入れる決心しCATVは辞めることにしました。そしてグローバルIPアドレスでサービス提供のADSLに自然と傾いて行きました。早速、神奈川で入っていたSo-netのADSLに申し込みました。その後工事のメールを待ちました。しかし結果は「光装置収容回線の為」サービスは提供できないという悲しいメールが来ました……。
南大沢付近の新しいマンションの電話用メタル線引き込みは、光ファイバでマンションのMDF室手前まで引き、そこからメタル線へ変換しているケースが多かったのです。ADSLは、経路の全てがメタルである必要がありますから、結果ADSLは、光収容ですと、開通できないということになるのです。
期待のADSLが無理とわかった途端、「こうなったら、ISDN入って、サーバー専用にするぞ!」と自暴自棄なアイデアに向かいかけました。その時、まだ検討していない「光ファイバ」を思い出しました。2001年の終わりも近い深夜、エリアを確認すると、NTTのBフレッツが南大沢で唯一サービス提供していました。また、提供されるIPアドレスはグローバルと判明。2002年元旦にはホームページからファミリータイプの申し込みをしていました(笑)。
■あきらめた直収
数日後、NTT-MEから連絡があり、光ファイバの経路確認を行ないたいとの事。早速スケジュール調整し、私の部屋で確認が始まりました。私の部屋は、8階建てマンションの2階にあります。NTT-MEさんと話をした結果、うちのような電柱の無いマンションで光ファイバを部屋まで引くには、メタル線の配管の中に、メタル線と一緒にファイバを通す方法が無難だろうとの事。その結果、まず家の中の配管確認を行ない、次に玄関からMDF室やRT室までの経路を確認する事になりました。
家の中の配管を確認すると、最初にメタル線が来ている居間から、希望する部屋までの管が細く、ファイバが通らない事が判明。また、玄関からMDFまでの経路も配管が細いため、同じ経路に2本光ファイバを通す事は困難と思われるとの事。直収を目指すと、初めの人はOKでも、あとから同じ経路を通る人が現れた場合、その人はファイバを引き込めず、早い者順となってしまい、公平ではなくなってしまう可能性があるという事です。結果、マンションの管理において不都合が発生するでしょう。またしても、サービス断念か? ……いえ、もうひとつ、最後の方法がありました。それは、NTT Bフレッツマンションタイプです。
■Bフレッツマンションタイプ――管理組合との協力
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Bフレッツ開通&速度テスト(白い箱はPNA)
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MDF室にHomePNAやVDSLを設置し、NTTからその装置までは光ファイバで接続し、MDF室から各部屋までは既存の電話回線を使ってインターネット回線を引き込む方法が、NTT Bフレッツマンションタイプです。この手法こそが、既設マンションには適していると思いました。しかし、良い事だけではありません。MDF室は、マンションの共有部分ですから、MDF室にインターネットの為の機器を設置するとなると、一般的には総会での承認が必要になるかもしれないという、大きなネックが存在するのです。そこには、区分所有法の解釈の違いから、以下の3つの考えがあるかと思います。
(1)マンションタイプは、MDF室に機器を置くだけということになり、総会決議が必要となる“施設の変更”にはあてはまらない。
(2)区分所有法の考え方では、光ファィバーの敷設などに関しては、共有部分の変更手続きと見なされることがあったため、区分所有者、議決権者の4分の3の賛成を必要とする。
(3)光ファイバの敷設に関しては、空き管路を利用すること、外観を損ねないということ、さらに家庭内へのラストワンマイル部分を無線・HomePNAなどを利用するといった措置をとることで、共有部分の形状を大きく変えるものにはならないとし、区分所有者、議決権者の過半数の賛成で敷設が可能になる。
上記の(1)は、あまり多くないとは思いますが実際に理事会の決定だけで導入できたケースもあります。(2)は、一番多い解釈ではないでしょうか。(3)は2002年1月31日開催のIT戦略本部(第9回)で示された考え方で、2分の1の総会での賛成を得られれば導入可能となってきました(詳しくはこちらを参照してください)。
ここで注意するポイントとして、ブロードバンドだけで臨時総会を開くことは、おそらく無理だと思いますので、通常総会でブロードバンド導入に関しての議案を提出してもらう必要があります。結果、1月あたりから積極的に動く事が求められるでしょう。私は理事さんに相談し、頻繁にメールでやりとりしました。そのうちに意気投合し、一緒にBフレッツマンションタイプ導入に尽力してきました。そして、うちのマンションの理事会では、総会での4分の3以上の賛成が必要と判断し、2002年5月の総会で是非を問う事になりました。
その結果、無事総会で、ブロードバンドとしてBフレッツマンションタイプの導入と、今後ブロードバンド選定に関しては、理事会に一任することが、賛成多数で承認されました。マンションへのブロードバンドは、理事会との連携プレーが不可欠で、積極的に動く事が、スムースな導入への近道だと実感しました。
■ホームページ開設で情報交換
ここまで来る間、理事会のメンバーや、一部の住民から情報を求める声が数多くありました。1年程前は、まだマンションタイプ導入の事例が少なく、参考になるHPもほとんどなく困ってしまいました。思い悩んだ末、私は「情報公開」のためではなく、「情報収集」のためにHPを立ち上げることにしました。時系列で導入記を掲載し、その内容に興味を持った人が、質問や意見を投稿できる掲示板を設置しました。
また、マンションタイプ以外のブロードバンド導入関連サイトの方とリンクを張る事により、少しずつ幅広い情報が集まることに成功し、微力ながらブロードバンド導入を目指す方の力になれたかと思います。また多くの方から励ましのメールを頂いたり、実際にお会いしたり、ルーター等の機器を貸して頂いたりしました。サイトを立ち上げてから、大変有意義な1年間になったと思います。
■BフレッツでTV電話や自宅サーバー
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HomePNA 2.0です
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やがてCATVインターネットの最後の日が来ました。そうです、Bフレッツマンションタイプが開通したのです。
詳細は南大沢ブロードバンドを見ていただくとして、ついにグローバルIPアドレスのサービスを受けられるようになり、速度も6Mbpsを超え、加入したプロバイダーの「ぷらら」の各種サービスもあいまって、快適なブロードバンド環境へと移行できました。またその驚異的な安定感には驚きました。早速、念願のグローバルIPアドレスで自宅サーバーを練習し、LINUX初心者のHP立ち上げました。
いろいろなブロードバンドの使い方をトライしているうちに、Bフレッツは2セッションとなり、本来はインターネットをしながらでも、フレッツスクエアのコンテンツにアクセスできる事が目的でしょうが、私は、ぷららとは別のプロバイダーのexciteにも加入しました。結果2セッションで自宅サーバー構築することにより、非常にわかりやすいシステムができました。
■高速化~VDSL登場
約一年間を振り返って見ると、ブロードバンド導入から活用まで、有意義な活動ができましたが、満を持して2002年12月、NTTがマンションタイプに高速なVDSLを投入してきました。今までのHomePNA2.0は最大で10Mbpsですが、VDSLはなんと最大50Mbpsもの高速ブロードバンドサービスです。今のマンションタイプの速度に不満はないとは言っても、ほぼ同じ金額を払う場合なら、速い方が良いの当然でしょう。早速私はNTTの営業さんにコンタクトする事にしました。しかし、このあと予想もしない展開が私を待っているとは夢にも思っていませんでした。果たして、VDSL導入できるのか? 次回にご期待下さい。
(2003/07/31)
■参考データ
| 自宅 | 管理組合 |
居住地区 | 東京都八王子市南大沢 |
接続事業者 | NTT東「Bフレッツ マンションタイプ」 | 有線ブロードネットワークス |
回線の種類 | FTTH(HomePNA2.0) | FTTH(VDSL) |
プロバイダー | ぷらら・エキサイト | 有線ブロードネットワークス |
スループット | 下り6~7Mbps | 下り8Mbps以上 |
□フレッツ ドット コム(NTT東日本)
http://flets.com/
囗有線ブロードネットワークス
http://www.usen.com/
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